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適性テストから見抜くハイパフォーマーと早期退職の傾向

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  • 社名 ほけんの窓口グループ株式会社
    設立 1995年4月
    従業員数 3,326名(2019年6月末現在)
    URL http://www.hokennomadoguchi.co.jp/
  • 課題

    • 感覚に頼ってしまいがちな面接現場に選考基準を設けたい
    • 人事部門としてもハイパフォーマーを定義化したい
  • 成功ポイント

    • ハイパフォーマーの持つ素養を分解し共通言語化
    • ハイパフォーマーだけでなく、退職につながりやすい社員の傾向も把握
    • 採用基準や面接のポイントなどをマニュアル化。選考基準の統一化を促進

Qハイパフォーマー分析をしようと思った経緯を教えてください。

Q以前はハイパフォーマーとされる方がどのようなパーソナリティを持っているか、ということは言語化されていなかったのですか?

市川:弊社は、個人ノルマがありません。他の企業でいう売り上げは、当社では手数料のこと。ですので、いただいた手数料だけを見てハイパフォーマーと判断していいものか、という考えもあり、明確なハイパフォーマーの定義は今までありませんでした。

千葉主任(以下、千葉):ハイパフォーマーの定義づくりをするために、まずは売上成績と人事考課、会社の施策をピックアップして、実施率を算出。その後、ハイパフォーマーとミドルパフォーマー、ローパフォーマーのマトリックス表を作成し、表をもとに営業本部とディスカッションし定義を言語化していきました。

Qでは、適性テストから見えてきたハイパフォーマーの定義とはなんでしょうか?

千葉:まず2つの軸が見つかりました。1つは、適性テストの結果項目にある「努力思考」と「マイペース」のうち、「努力思考」側にメモリが振れているほうが良いということ。もう1つは、「エネルギー量」。これはエネルギー量が高いか低いかで見るのですが、高いほうが良いという結果が見えてきました。

市川:さらに結果を元に現場のリサーチをすることで、もう1つ大事な資質がわかりました。「他者への貢献意欲」です。この要素は当社で働いていく上でとても重要です。

なぜなら、ほけんの窓口は来店型のビジネスモデルですので、ご足労いただいたお客さまの期待に保険を通じて応えようとする思いが大切になる。その思いは、強いほどお客さまに伝わると思っています。「この人は私のことを思ってくれている」「信頼できそう」という気持ちがお客さまのほうに芽生えると「この人から保険に入れば安心できる」となります。

適性テストには直接的な項目はありませんが、いくつかの項目を総合的に見て「他者への貢献意欲」がどれくらいあるのか、というところもハイパフォーマーの資質として大切な部分だと私たちは定義しています。

Qハイパフォーマーの定義が明確に見えたことで、採用品質は向上したのでしょうか?

千葉:そうですね。近年では保険商品の数が増えていることもあり、商品の知見を深めることも大切なのですが、それ以上に地頭力が求められるようになってきていると考えています。「パーソナリティ検査OPQ」では、様々な行動特性を把握できるため、「地頭の良い方」や「言語能力の高い方」など、採用を進めていく方針が明確になって、採用品質はどんどん向上しています。

Q地頭の良い方とは、具体的にどのように定義されているのですか?

市川:私たちの仕事は「話す仕事」と思われがちですが、実は「聴く力」が大変重要です。お客さまのお話を伺い、ご要望の本質を把握したうえで、一歩先を読んだ提案をすることで、ご信頼の証としての契約をいただけるのです。

千葉:そのため、弊社の求める「地頭力」には「言語能力」が非常に影響していることがわかってきました。私たちの仕事は来店型で、お客様のご相談に乗るスタイルの営業のため、いかに情報を引き出せるかという会話力が重要。こう言うと意外に思われるかもしれませんが、当社のハイパフォーマーの中で、意外と口下手だったり、人見知りと言う人がいます。しかし、適性テストの結果を見ると、確かに言語能力が高い数値が出ているのです。

一方で、言語能力が一見高そうなのに成績が思わしくない社員の適性テストを確認すると、実は、言語能力が低い傾向にありました。商談で一方的に話してしまうため、お客さまは売り込まれてしまっていると感じ、信頼を勝ち得ることができていないと考えられます。

話し上手ではなくても、しっかり話を聴くことができ、相手の気持ちになれるというのが、言語能力の高さであり、弊社において重要な要素なのです。

適性テストの結果と現場観察を繰り返すことで、客観的な採用要件の設計ができ、採用においても判断基準として信頼できるものになってきていると感じています。

Qハイパフォーマーの分析だけではなく、早期退職者の傾向も分析するようになった経緯を教えてください。

Q適性テストのデータを分析して、どんなことがわかってきたのですか?

市川:当社では試用期間が3ヶ月あります。その3ヶ月間は研修にほぼ専念できるのですが、試用期間満了となったタイミングで退職となってしまう方が4名も同時に出た時期がありました。普段、ここまでタイミングが重なることはないため、その4名の適性テストの結果を照らし合わせて共通点を探してみることにしたのです。すると、「タフさ」と「上昇志向」の数値の高さが共通して4名から出てきました。

SHLさんからは、「タフさ」は、打たれ強さや、レジリエンスに近しいイメージがあるため、一見良さそうに感じますが、逆を言えば、人の目を気にしないという側面があると教わりました。

私たちの多くの店舗は6人前後のコミュニティで、人の目を気にしないと相談会の品質も上がらないし、数字も上がらない。チームプレーができないとマイナスに作用することがあります。

そういう環境の中で仕事をしていくため、タフさの数値が高い人は周囲を気にせず個人プレーに走り、結果的にパフォーマンスが低くなる傾向が出ていました。実際、研修中に苦戦するタイプは周りからアドバイスを受けても自分を変えられない特徴が見受けられました。そのため、成長を実感できず、試用期間が満了で退職となってしまう事態が起きていたようです。

Qなるほど、説得力がありますね。「上昇志向が高い」場合は、どのような傾向が見られるのでしょうか?

千葉:「上昇志向が高い」というのは、相手との勝ち負けではなく、自分の中で過去の自分を超えていきたいとか、上を目指していきたいという要素のこと。チームで仕事をする場合、良い意味で上昇志向が発揮できればいいのですが、そうではない場合もあります。

来店型で個人ノルマはない、お客様はチーム全体でフォローするという環境の中でベクトルが自分だけに向いて、自分だけの数字を上げればいいというような志向性ですと当社では力が出せないでしょう。

そのため上昇志向が高い応募者の場合の面接は、自分を進化・進歩させるタイプなのか、自分だけのことを考えるタイプなのかを見極めるようにしています。

こうしたデータ分析から見えた早期退職者の傾向を踏まえて面接や育成をすることで、これから離職率はどんどん下がっていくと考えています。

Q適性テストを分析することで見えてくる部分はたくさんありますが、分析結果の見方などのフォローはあったのでしょうか?

市川:分析結果のフィードバックという形で、SHLさんから結果をレポートにまとめていただきました。そのレポートを見ながら、見方のポイントなどを細かくご案内いただいて、「こういった面を持っているが、裏を返すとこういう面もある」など、私たちでは気づけない部分をレポートを通じて丁寧に教えてくれるので、アドバイスをもらった内容をもとに採用基準を決めていきました。

Q採用面接は色々な方がされると思うのですが、そこの目線合わせはきちんとできているのでしょうか?

千葉:当社では、SHLさんからいただいたレポートをベースに、採用基準や面接のポイントなどのマニュアルを作成しています。今までは面接官によって基準の甘辛がありましたが、マニュアルを社内イントラで共有するようになってから、そこの統一も徐々にできるようになってきたと思っています。

Q適性テストのデータが蓄積されていく中で、今後こんな風に活用していきたいなどのビジョンを教えてください。

市川:具体的なビジョンは3つ。ひとつは、ハイパフォーマーやローパフォーマーの分析や退職者全体の分析をさらに進めること。もうひとつが、適性テストの結果を活かして人材要件や採用基準をブラッシュアップしていくこと。そして最後が、採用基準の統一化・平準化です。さらに付け加えるとすれば、採用が新卒にシフトしている中で、新卒の分析もしていきたいと考えています。

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