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再入社数が増加!カムバック採用窓口に特化したアルムナイコミュニティの活用法とは?

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  • 社名 株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイド
    事業内容 ホテル・旅館
    設立 2021年
    従業員数 6,921名 ※2024年3月31日現在
    URL seibuprince.com

西武・プリンスホテルズワールドワイドは、西武グループの中核として、国内外の宿泊施設、スキー場、ゴルフ場などのレジャー施設を運営するオペレーター会社。コロナ禍以降、業界全体に雇用の流動化が急速に進む状況に対し、人的資本を強化するためのアルムナイ施策として2024年3月よりYELLoop(エーループ)をご導入いただいています。コミュニティ運用を始めて約1年が経過し、登録者や再入社数に徐々に効果が見えている中、導入の背景や運用の効果、今度の課題などについてお話を伺いました。

アルムナイとは?

アルムナイとは大学などの「卒業生」「同窓生」「校友」を意味する言葉。 雇用の流動性が高い欧米企業を中心に、企業の「退職者」や「OB・OG」という意味合いも広まっており、日本でも雇用形態の変化、⼈⼿不⾜、多様化する働き方など、経営課題を解決する新たな⼈材戦略として導入する企業が増加しています。


  • 課題

    • 退職者と会社のコミュニケーションや情報発信の手段が限られている
    • 再入社時までのコンタクト方法の工数がかかっている
    • カムバック制度の利用を希望する際の連絡のハードルが高い
  • 成功ポイント

    • コミュニティなどシステムを活用したコミュニケーションの増加
    • コミュニティ内の投稿アクセス数増加・興味関心の確保に成功
    • チャット効果によるコンタクトの簡易化
    • カムバック採用の窓口として特化した運用をし、再入社者が増加

コロナ禍を経て、アルムナイとの繋がりの重要性を感じるきっかけに


Qアルムナイコミュニティを立ち上げた背景を教えてください

堀田 真央 様(以下、堀田): 退職者がいつでも戻ってこられる会社でありたいという想いから、2015年にカムバック制度を開始していますが、積極的に活用されているとは言えない状況でした。その理由として、制度に登録できる条件が勤続3年以上、育児や介護、配偶者の転勤などの退職事由、と限られていたからです。退職者と会社間のコンタクトは、退職者が再就職を申請する場合や、年に一度送ってもらう現状報告のタイミングのみでした。

福田 健太郎 様(以下、福田) : 事由が限定されていた2019年度は、退職者のうちカムバック制度登録者は僅か1%、再入社された方は1名です。開始当初から登録率も再入社率も低く利用は本当に限定的でした。2022年に制度改定を行い、登録できる事由の拡大をしていますが、その先に退職者とのタッチポイントを増やし、弊社への興味関心を維持する方法を模索していました。アルムナイコミュニティを開設するに至った背景にはそういう事情があります。

Q2022年のカムバック制度の改定はどういった内容でしたか

堀田: 当時、観光業全体でコロナ禍の業界への不安から離職率が高まり、退職者数が増大しました。弊社でも従業員の退職が止められない状況にあり、人的資源の損失に危機感が高まる中で、アルムナイの活用も課題となりました。

そこでカムバック制度の登録条件を見直すことになり、勤続年数の規定をなくし、転職などの自己都合での退職でも登録ができるように変更しました。これには一定の効果があり、2022年度の退職者のうち6割弱が登録という成果が出ました。再入社についても同年度では2名、翌年度が8名、今年度では9名見込みとなり、徐々に増加しています。

アルムナイコミュニティ「YELLoop」を立ち上げて見えてきたこと


QYELLoopを導入した主な目的はどんなことですか

堀田: 導入前も退職者の個人情報は管理されているため、こちらから連絡は取れるようにはなっていましたが、交流はほぼありませんでした。再入社を希望する場合だけ、退職者から連絡がある程度でした。しかし、会社が進めている人事制度改革や事業拡大などの変化を積極的に発信し、かつての職場の今の姿を伝えることが、退職者の再入社につながるのではという強い期待があり、アルムナイコミュニティを導入しました。

QYELLoopを選んだ理由を教えてください

堀田: 複数のサービスを比較検討しましたが、その中でもYELLoopは1番使いやすい印象でした。コミュニティの運用担当者が初心者でしたので、トライアルプランを使ってみたのですが、機能がシンプルで簡単に扱えた点が決め手でした。

これまで手作業で行っていた退職者の情報管理をシステム化することで、担当者の労力を省くのも導入目的の1つでしたが、退職者の登録数が一目でわかり、投稿した記事への反響も簡単にチェックできるので、効率が上がりました。

他にもYELLポイント(エールポイント)が設定できるのも魅力的だと思います。今後こうしたポイントを活用して、登録や情報へのアクセスを促す仕組みを作っていきたいと考えています。

YELLポイントとは?

YELLoop上で設定したミッションを達成したり、インタビュー等への協力、新規ユーザーの招待などのユーザーのアクションに対して付与できるポイントです。ユーザーはポイントを貯めて、ギフト券に交換することができます。


福田 : 選んだ理由のもう一つに、弊社はコミュニティ内での退職者同士の交流を望まないという事情があります。制度を運営管理しやすいように弊社ではカムバック制度への登録はYELLoop登録をもって完了することとしています。退職者同士の交流の場があると、過去の職場の人間関係で何かしらの不本意な強制力が働いてしまう可能性を否めません。

再入社を想定していても、そうでなくても、各自の意思で自由に利用してほしいと考えています。他社のサービスでは、アルムナイ同士の交流の場が強調されている場合がありますが、YELLoopでは退職者への情報発信、再入社の窓口としての運用に特化できることが評価点でした。

Q実際に運用してみて気づいたことはありますか

堀田: 導入当初は、登録はしても退職した会社に興味を持ってくれないのではないかと不安でした。退職された方には何らかの事情があるわけですから、会社が嫌になっている方も少なくないだろうと予想していました。しかし会社情報を発信してみると、新しい投稿に一定数のアクセスがあり、退職しても当社に興味を持ち続けてくれていて、ブランドとしてのホテルに好意的なのだと感じ、正直驚きました。退職者の皆さんが登録だけで終わらず、わざわざクリックして投稿を見てくれる、会社の動向に興味を持っていることがわかって、とても嬉しかったですね。

秋山 薫 様(以下、秋山): やはりチャット機能があるのは大きかったと思います。これまでカムバック希望などで退職者が会社に連絡をしようと思ったら、人事に直接話やメールをしなくてはならず、ハードルが高かったのですが、チャット機能の活用により、気楽に連絡がとれるようになりました。

従来は会社側から退職者に連絡をとることはほぼなかったのですが、退職者とのつながりを維持できるようになったことが、大きく変わった点です。窓口がメールや電話からチャットになっただけですが、担当者とのやりとりが頻繁になっています。チャットなら連絡してみようかと考える退職者が増えているのではないでしょうか。

Qコミュニティ立ち上げで苦労されたことはどんなことですか

堀田: すでにカムバック制度に登録している退職者の扱いが大変でした。YELLoop導入前の登録者をどうやってYELLoopに繋げるか、新しい仕組みに登録してもらうかが最大の課題で、現在もまだ試行錯誤しています。

まずは登録者のメールリストへの一斉配信で案内をしましたが、メールが戻ってきたり、住所が変わっていたりと、一方通行で情報が届かないケースがあります。

導入後のYELLoop登録率についても100%ではありません。退職時、カムバック制度に登録する意思表示をしていてもYELLoopへの登録を行っていないことも少なくありません。退職手続き時に仕組みの丁寧な説明を行い、登録率を100%に近づけることが今後の課題です。

福田 : 退職時は次のステージへの準備が優先され、再入社用の手続きが後回しになってしまうことも理解できます。登録の必要性を感じるのは再入社を考えるような状況になってから、という方もいます。退職者一人ひとりにYELLoopの目的と意義を丁寧に案内したり、カムバック入社者の活躍事例を社内発信することで登録率を高めていくことが、さらにカムバック入社者を増やしていくことにつながります。それにはYELLポイント制度も、活用できそうですね。登録するメリットを提供していくことも今後の目標です。

QYELLoopの担当者のサポートはどうですか

堀田: 導入前のガイダンスやミーティングでとても親身に話を聞いていただきました。機能や使い方に納得がいくまでトライアルを延長ができたのも助かりました。導入後の対応も丁寧で、2ヶ月に一度は運用についてのオンラインミーティングがあり、直面している悩みや日々の業務で困ったこともメールでも相談できます。

担当の方は私たちと同じレベルでコミュニティのことを真剣に考えてくださっている、と感じています。昨日も定例ミーティングがあり、目下の課題である「既存のカムバック制度登録者をいかにYELLoopに登録してもらうか」について話し合いました。問題点を洗い出して登録までのフローを変えてみる工夫や、案内用のチラシ制作をご提案いただくなど、問題があればすぐ相談できる手厚いサポートはとても頼りになります。

これからのビジョンについて


Q現在取り組んでいることはありますか

堀田: アルムナイの皆さんに各ホテルのイベント情報や賃上げ、人事制度の大きな改革点など、一般的なリリースと同様の内容を配信しています。

福田 : 転職後、退職した会社のニュースリリースをチェックすることはあまりないと思うのですが、YELLoopに登録している退職者には、コミュニティがあることで今後の成長戦略や人事制度改定など、改善されていく会社の情報が届きやすくなるというメリットがあると感じています。

堀田: そうですね、会社の人事制度や、賃上げ、人事異動のニュースリリースなど、会社の現状報告には関心が高いようです。「健康経営優良法人」認定や、カスタマーハラスメントに対する基本方針の制定といったニュースなど在職時と比べて、労働環境が改善されている点に注目が集まっています。カムバックを考える際にも、賃金や待遇が良くなっていることはポイントになるのではないでしょうか。やはりコミュニティがあることで情報が届きやすくなり、評価もされやすくなることはかなり大きいですね。

実は経営関係ばかりではなく、ホテルのイベント情報も頻繁に発信していますが、退職されても当社のファンでいてほしい、利用してもらいたいという思いがあります。また、今後はアルムナイ向けに、社内ポータルと外部用リリースの中間くらいの情報発信やオンラインイベントも実施したいですね。

福田 : ホテルなど事業所が全国規模で、退職者も広域にいるので、実際に集合するのは難しいこともあり、オンラインであればイベントが実現できると思います。

堀田: オンラインイベントではYELLoopを利用してカムバック入社した退職者にインタビューを行い、例えば会社に戻ってくるに至ったプロセスや、職場に受け入れてもらうために努力したことなど、実情を発信できたらいいですね。経験者の話を聞けば、カムバック再入社に対するハードルが下がって、カムバックに関心を持つ方が増えるのではないかと思います。

Q今後、同業界内でアルムナイへの取り組みは進むと思いますか

堀田: ホテル業界は人財の流動性が高いので、ニーズはあると思います。私たちは一度経験を積んで、転職先でまた新しい分野での経験を通して蓄積したスキルを持って戻ってくる人財を貴重な存在だと考えています。そういったことからも、今後もアルムナイの採用を継続的に続けていく方針です。

そのためにこうしたコミュニティがあることはとても有利です。退職者が会社を去って何年経っても、当社のファンとして利用してもらったり、機会があれば転職先として考えてもらったりすることがあるように、引き続き情報発信をしていきたいです。コミュニティがあることで、会社のことを頭の片隅に置いておいてもらえるように運営していこうと思っています。

アルムナイは一度働いた経験があるからこそ会社のこともよくわかっていて、即戦力にもなるポテンシャルが高い人財です。一度転職した方は他社での経験を積んでみて、古巣の良さがわかることもあると思います。そういう方がもう一度弊社で働きたいと思ったときに、気軽にチャットで問い合わせできる窓口があることは、アルムナイと会社をつなげる新しい力になると考えています。

西武・プリンスホテルズワールドワイドに学ぶアルムナイの価値


10年前からカムバック制度を開始され、22年には改定するなど、YELLoop導入前からカムバック採用の対策を取られていた西武・プリンスホテルズワールドワイド様。お話を伺うなかで、カムバック採用の促進施策としてだけではなく、会社に関わる人の輪を広げ、程よい距離感でつながり続ける手段としてのコミュニティの活用方法も見えてきました。以下に、アルムナイコミュニティを導入するメリットについて2つのポイントをまとめました。

①キャリア採用の推進

アルムナイコミュニティの存在は、キャリア採用を推進するうえで2つのメリットがあります。
1つはコスト面です。近年経験者採用を進める企業が増え、仲介業者に払う高額なコストが課題にあがる、というケースが見受けられます。経験者を募集する場合も自社のアルムナイコミュニティにいる人財も採用対象となりうるので、紹介料などを削減できます。
2つは、人財の質という観点です。アルムナイであれば、すでに会社を知っていることからミスマッチが少なくて済みます。カルチャーフィット面でも問題が少なく、在職時に培ったスキルに加えて、転職先で身に着けたスキルも持ってくることになり、即戦力として期待できます。

②会社全体の成長につながる

アルムナイとのネットワークの構築を機に「退職者の帰属心や興味を維持したい」という意識が働き、働き方改革や事業推進など、多方面での経営努力につながります。対外的に会社の魅力を向上させることはもちろん、社内に向けても、社員のエンゲージメントを向上することができます。結果的に、事業推進の要である人財力の増強に寄与することができるのです。

今、その存在に注目が集まるアルムナイコミュニティ。自社の退職者との確かな関係構築は、優秀な人財を確保するチャンネルとしてだけではなく、社内の意識改革につながる人的戦略のカギとしても重要になっています。いよいよ深刻化する採用難の時代、課題解決の次の一手として導入を検討してはいかがでしょうか。

  • $タイトル$
  • Q 株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイド
    ヒューマンキャピタル部
    福田 健太郎 様

    新卒で入社。箱根でベル・宴会サービス、本社で営業・人事、札幌で管理人事・ブライダル、富良野で管理人事と、全国の様々な業務を経験。
    現在は現職にて、「最高の処遇を実現する」という考えのもと、人財力向上のため「働きがいの創出」と「働きやすさの実現」の両面を重視した人財戦略を推進。

  • $タイトル$
  • Q 株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイド
    ヒューマンキャピタル部
    秋山 薫 様

    新卒で入社。本社人事部にて福利厚生を担当。その後、一度ウエディング会社へ転職。
    出産を機に、働きがいのある旧株式会社プリンスホテルへ再入社しヒューマンキャピタル部に配属。
    現在はカムバックしやすい職場環境づくりや、仕事と育児・介護の両立など従業員の多様な働き方を推進。

  • $タイトル$
  • Q 株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイド
    ヒューマンキャピタル部
    堀田 真央 様

    2022年新卒入社。入社後、全国各地のホテル・ゴルフ場・スキー場で勤務。
    その後ヒューマンキャピタル部に配属となり、現在は人事・処遇面を担当。
    現場での経験を活かし、最前線のスタッフを含め各ホテルの従業員に寄り添った人事制度の見直し・策定に尽力。

ページ上の各種情報は2025年4月時点のものです。

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