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【会員限定】2022年卒採用動向からひも解く、これからの採用戦略

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この記事は、2021年7月20日に開催された人事向けオンラインセミナー「マイナビ市場動向報告会」にてお送りしたセミナーの内容を基に再構成して作成しています。



新型コロナウイルスの影響により私たちのライフスタイルや働き方だけでなく、コロナ禍における採用活動の姿も大きく変化しました。採用担当者の皆さまも「コロナ禍の採用にどう対応するか」から、「いかにこの環境下で計画どおりに採用活動を行うか」という観点へと意識が変わったのではないでしょうか。
2022年卒採用における企業・学生双方の動きを分析しながら今後の動向予測について解説していきます。
20年10月には0.97まで落ち込んだ有効求人倍率は、今年に入り徐々に回復。4月には1.12倍となりました。
次のグラフのとおり、2021年6月に実施した企業調査では、22年卒の採用予定数を前年の「採用予定数」「新卒入社数(実績)」と比較すると、どちらも「前年並み」が最多となっています。「新卒入社数」との比較では「増やした」が2割を超えました。
前年の採用では、コロナウイルスの影響で予定どおりに人材が確保できなかった企業が多かったのではと推測されます。
新卒採用を実施する主な理由は、「組織の存続と強化」「年齢などの人員構成の適正化」の割合が大きくなっています。新卒採用は人手不足解決のためよりも、将来的に組織をつくっていくために確保していきたいという目的で実施する企業が7割以上を占めています。
企業文化の継承や人材の長期育成、チームワークの強化など新卒採用には多くのメリットがあります。

しかし、大学進学率は上昇している一方、22歳人口は減少傾向です。よって、新卒採用の競争は今後さらに激しくなることが予想されています。

正社員全体の採用意欲は回復傾向にあります。新卒採用の目的は、「人手」ではなく「人材」獲得が目的。今後22歳人口は減少するため、若年層採用の競争が徐々に加速するでしょう。
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コロナ禍により、学生の通学やアルバイト、旅行、サークル活動などさまざまな経験をする機会が激減しています。それにより「ガクチカ」(学生時代に力を入れたこと)不足となり、採用面接の際の「自己PR」の構築が難しくなっています。
また、生活の変化に伴い社会人との交流機会も減りました。実生活の中でキャリアを考える機会や、仕事への興味を持つ「きっかけ」も減少しているのが現状です。
22年卒学生は研究活動やゼミ活動が開始・本格化する3年次の授業の多くがオンライン化されました。また、「アルバイト」や「学生時代に打ち込んだこと」などについても、コロナ禍で日常生活が制限されていたことで、話しやすいエピソードや実績が減り、採用面接で答えづらいと感じた学生も少なくないようです。

実際に、当セミナーを受講していた企業の方からも、「面接で自分のことをアピールするぞ!という学生が少なかった」「面接では、一問一答のような答え方しかできない学生も目立った」などの声が挙がっていました。

そんな中、学生自身が手応えを感じた内容は、「コロナ禍で工夫したこと・努力したこと」や「今後・将来の展望」でした。
「キャリアの軸の明確化がしづらい環境でも、自分なりに考え、行動できた経験」を明確に言語化し、面接時に伝えられていたかどうかは、企業側にとっても見極めのカギになったはずです。
09年卒〜13年卒のリーマン・ショック直後に見られたように、経済状況の悪化や大きな災害などが起こった際には「楽しく働きたい」が減少して、「人のためになる仕事をしたい」が増加傾向になり、コロナ禍にある今も同様の傾向がみられます。
学生の関心のある社会問題を見ると、コロナ禍をきっかけに、関心のある社会問題は、「伝染病・感染症対策」が増加しています。またコロナ禍が浮き彫りにした「格差社会」も上昇しました。
また、学生がニュースなどを見る機会が多くなったこともあり、「地球温暖化」「国際政治・民主化運動」「LGBT」なども注目度が上昇しています。
学生の多くは、景気後退や買い手市場をイメージし、就職活動が「厳しくなる」と感じながら準備に取り組んでいたようです。
コロナ禍のため行動範囲が狭まり、キャリアについて考える機会も大きく減少するなど、 「不安」が後押ししたこともあって、学生の行動量はインターンシップ期間から広報解禁後まで、全体的に増加傾向となりました。この点を詳しく次章にて解説していきます。
企業側のインターンシップ実施率は昨年に比べて減少したにもかかわらず、学生の参加率は84.5%を維持しました。その理由としては、WEB開催で受け入れ人数が拡大したため、学生一人当たりが参加できるインターンシップ枠数が減少していないからだと考えられます。
上場企業ではWEB活用が広がっていますが、非上場企業では対面実施がメインという調査結果となりました 。
一方でインターンシップに参加した学生の95.0%がWEB形式を経験していることから、コロナ禍においてWEB対応が可能だった上場企業が相対的に学生との接点を多く持てたと推測されます。
インターンシップの参加目的は「特定の企業のことをよく知るため」が最多で、次いで「特定の企業が自分に合うかを確かめるため」となっていますが、ほぼ同程度で「視野を広げるため」も続いています。

志望企業との相性を見極め絞り込む方向と、視野の拡大の両面からインターンシップに参加しているようです。
インターンシップで接触を持った企業だけでなく、インターンシップを通じて広がった知識や興味を基に、新たなエントリー企業を探していることが分かります。
このように、学生は就活準備期間中に「発見」と「絞り込み」を繰り返しながら、企業の理解を深め、志望度を上げているようです。
コロナウイルスの影響でインターンシップの実施企業の割合は微減となりましたが、WEB化により学生のインターンシップ参加総数はほぼ横ばいとなりました。
22年卒の選考活動はWEB活用の拡大や感染対策の準備ができたことにより、計画どおりに進行しています。個別企業説明会をWEB開催にしたことにより、企業規模にかかわらず前年よりも学生の参加率が上がっています。

一方で、プレ期間から本選考に至るまで、学生は「視野の拡大」と「絞り込み」を継続的に行っています。インターンシップ参加が学生の志望企業選択を全て決めるわけではないことは念頭に入れて置くと良いでしょう。
22年卒の内々定率は、緊急事態宣言の影響を強く受けた昨年4〜5月とは異なり、21年卒の経験を糧に、事前の準備対応がスムーズに進行したことで順調に推移しています。
全体で7割弱の企業が、最終面接は対面で実施しています。内々定率が6月に入って若干停滞した背景には、首都圏における緊急事態宣言により、対面で予定していた最終面接を延期するなどの影響もあったと予測されます。
内々定を保有している学生に「入社企業を決めた理由」を聞いたところ、51.8%の学生が 「説明会で興味を持ち、選考を経て志望度が上がったから」と回答しています。「就職活動を開始する前から第一志望の企業だった」を21.0ptも上回りました。
学生は就職活動中の企業との接点を複数回経て、その企業への志望度を上げていく割合が高くなっています 。

企業側は選考を学生の見極めの場としてだけでなく、学生が志望度を上げる場としても活用すべきであることが分かります。最終面接を「対面」で行うことの背景には、企業側が学生を見極める目的だけでなく、学生に自社をしっかり理解してもらうために実施する企業が多いのではないでしょうか。
6月時点で内々定を保有している学生のうち「入社予定先以外の内々定先に(辞退を)連絡済み」という割合は72.0%となりました。

また、次のグラフは、6月末時点での活動継続学生についてまとめています。5月・6月で活動を終了する学生は22.6pt増えていますが、それでも約46.0%が活動を継続しています。また、全体の約2割が、内々定を保有した上で活動を継続していました。

未内々定者に対して就職活動の進行状況を聞いたところ、「第一志望企業群の面接を受けており、内々定が得られた企業から選ぶ予定」と結果を待っている割合が最多でしたが、次いで「当初受けることを決めていた企業選考が全て終了したので、企業選定からやり直している」「選考を受ける企業を選定している」など、改めて活動を再開しようとしている割合が多くなっています。
上記のグラフにはエリア別の割合が記載されていませんが、後半戦の行動として7月以降に新たな企業を発見し就職活動を仕切り直す学生の割合は、地方の方が高くなっています。

エリア別の総括セミナーのアーカイブ配信を合わせてご確認ください。
採用充足率が高い企業は、インターンシップ、個別企業セミナー、選考以外の「学生との接触」を積極的に行い、不安払しょくを通じたフォローに力を入れている傾向が高まっています。単純に接触回数が多ければ良いというわけではありませんが、企業が学生に真剣に向き合う熱量は、学生にも伝わるのではないでしょうか。

「面接以外の接触」というフォロー施策の充実はもちろんのこと、「面接という選考の場」も学生の志望度をUPする接触の場と捉え、「相互理解の場づくり」としていく必要がありそうです。
では実際に、WEBと対面を使い分けた情報発信や、内定フォローなど、それぞれの接触ポイントにおいてどのようなことに留意し、情報を伝えていくべきなのでしょうか。次の章では「WEB化」についてまとめています。
22年卒のインターンシップについては、WEB化への対応に迷いや遅れがあり、実施企業の割合も減少しました。しかし23年卒の予定を見ると、対面実施も含め「会社見学・工場見学・職場見学」「実際の現場での仕事体験」の割合が高くなっていることが分かります。インターンシップにおいてもWEBと対面の有効な使い分けがより一層進みそうです。
最も企業のWEB化対応が早かったのは「個別企業セミナー」です。情報伝達メインではWEB、コミュニケーションと見極めが目的の場合は対面など、企業は21年卒の採用活動の経験から、フェーズによってWEBと対面を使い分けるようになっています。
また、学生側もインターンシップ期間にWEB活用を多く経験していたことから、21年卒学生に比べると、よりWEB利用に対して寛容になっていることが分かります。
面接で注視することと、WEB・対面での見極めの可否を聞くと、「企業・業界理解の深さ」「大学で学んでいることをきちんと説明できるか」などは、WEBでも十分見極められたことが分かります。

こうした情報から非言語情報は対面、言語情報はWEBがそれぞれ効果的であると推測され、コロナが終息したと仮定してもWEB/対面の有効な使い分けは定着していくと予測されます。それぞれの特徴を踏まえた戦略的な活用がより一層求められていくでしょう。
地元就職を希望する割合はここ数年減少傾向にあり、22年卒学生も入学時は前年より減少していました。しかし、現時点では当時より6.9pt増加し、数年ぶりの増加となっています。地元企業への就活で最も障害となるのは「地元までの交通費」でしたが、22年卒で大きく減少したことで、地元就職希望割合が増加したのではないでしょうか。
地元にやりたい仕事があるか、など本質的な問題はありますが、それ以外の阻害要因がWEB活用によって取り除かれたことは、Uターン採用を行う企業にとっては追い風となりました。
21年卒採用と同様に対面実施の可否は、企業の出社制限に左右されています。対面ができないまま内々定まで進むケースや、一度も対面を実現しないまま入社まで至るケースもあります。
上場企業を中心に出社制限が厳しいため、人物の見極めや内定フォローに対する不安や課題は、大手企業の方が強くなっています。

そこまで出社制限の厳しくない中小企業は、積極的に対面での機会をつくる貴重なチャンスとなる可能性も秘めています。
「実際に自分が働く姿をイメージできない」「自分を理解してもらえているかが分からない/何を評価してもらえているか分からない」「同期の様子が分からない・交流が足りない」など、企業の情報が少ないことが学生の不安へとつながっているようです。
内々定を得ている学生に不安を聞いたところ、「社会人としてやっていけるか」「この会社できちんと務まるか」「自分がこの仕事に向いているか」などの、【自分軸】の不安が大きいことが分かります。
そのため、不安を抱えている学生への気持ちのフォローこそが、社会に出る一歩を踏み出す後押しにつながると考えられます。

マイナビ2022年卒内定者意識調査(2021年6月)
先輩社員や人事との面談、研修は「WEB」。内定者同士の交流(懇親会・内定式)や、社内・工場見学は「対面」で使い分けされる傾向が高いことが分かります。

実際に当セミナーの参加企業からは「内定者全員とオンラインで懇親会を1時間ほどした」「懇親会を対面で実施した」「オンラインで若手社員との座談会を開催した」「完全WEBで懇親会を行ったが、学生同士の連絡先交換の場を設けた」などの声が挙がりました。

マイナビ2022年卒 大学生活動実態調査(2020年6月)
企業側がさまざまな内定者フォローを実施する中、実際に最も学生の不安軽減に有効なのは、「具体的な業務内容」について理解することでした。

単なる内定者フォロー施策としてだけでなく、選考開始前・選考中も含め、仕事や業務の具体的な理解が、学生の意思決定に非常に重要と考えられます。

マイナビ2022年卒 大学生活動実態調査(2020年6月)
「RJP理論〜Realistic Job Preview」をご存じでしょうか。学術的には1970年代に発表された歴史のあるロジックですが、改めて見直すべき考え方であるため紹介をさせていただきます。

企業や組織が新しい従業員の採用プロセスにおいて、ありのままの企業実態や、仕事の良い面と悪い面の双方を求職者に対して情報提供することで、ミスマッチを防ぎ、定着率を促進する効果が確認されています。

ネガティブな情報を含め、職場や仕事のリアルな情報を積極的に伝え、マッチング精度と定着を高めようという考えです。
入社前に「納得感」を醸成することで、学生の意思決定にもつながりやすくなると考えられます。

参考文献:「採用時点におけるミスマッチを 軽減する採用のあり方 RJP (Realistic Job Preview) を手がかりにして」 東京大学助教/堀田聰子 2007年10月

「どのような情報を開示すればいいのかが分からない」「既に十分に情報は伝えている」と思われる方も多いかもしれません。
しかし、実際には企業が学生に提示できる情報は非常に多くあります。
選考プロセスの進行や企業の体質によって情報開示できる「タイミング」と「情報の粒度」に差はあるものの、広報~選考~内定フォローまで、細かな情報提供を通じた不安払しょくを行えると良いでしょう。

上記の3点を大切にすることで、企業と学生の「相互理解」を高め、双方が納得した状態で入社してもらうことを目指していきましょう。
22年卒採用実施企業に対して23年卒の計画を聞いたところ、85.7%が継続して新卒採用を実施すると回答し、上場企業では94.4%となりました。
今後、22歳人口の減少とともに若年層の人材確保は難しくなっていくことが予測されています。継続的な新卒社員の獲得を通じて、企業のコア人材育成と組織活性化を目指していただけると幸いです。
22年卒採用は、スタートから終了まで「コロナ禍」での採用活動となりました。行動や対面接触が制限される中、学生、企業の双方が情報発信や相互理解のためにさまざまな創意工夫と挑戦を行った1年になったのではないでしょうか。

「WEB」「対面」の使い分けという視点だけにとらわれるのではなく、伝えるべき情報とタイミングを整理したコミュニケーション設計が、より重要になるはずです。

「内定承諾」ではなく、「入社後のギャップ解消」と「活躍・戦力化」をゴールに設定することで、お互いに「納得できる」採用活動を実現していきましょう。
  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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  • 人材採用・育成 更新日:2021/09/15
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