定期昇給とは?平均額・実施率、計算方法、実施方法を紹介
定期昇給とは、企業の基準に基づき従業員の賃金を定期的に増額する取り組みを指し、通常は従業員の勤続年数や業績に基づいて賃金が上がります。
定期昇給は、従業員のモチベーションを維持し、長期的な雇用を促進するために重要な役割を果たすため、従業員の満足度と企業の成長に密接に関係しています。
従業員の働きがいを高め、より良い職場環境にするために、どのように定期昇給制度を導入していけばよいのでしょうか。
本記事では、定期昇給とは何か、ベースアップとの違いや、実施するメリット・デメリット、平均額や平均実施率、計算方法についてお伝えするとともに、定期昇給の実施方法についても詳しくお伝えします。
定期昇給とは
定期昇給とは、企業の定めた時期に、基準従業員の賃金を上げる取り組みです。一般的には毎年4月に実施されることが多いものの、1月に定期昇給があったり、4月と10月の年2回だったりと、時期や回数は企業によってさまざまです。
また、必ずしも定期昇給が実施されるわけではなく、企業の業績や状況によっては実施されないこともあります。
各企業の規定にもよりますが、一般的には年齢・勤続年数・業務成果に応じて昇給が発生します。
定期昇給の目的
定期昇給は、従業員の勤続年数やスキル、これまでの成果に見合った給与を実現しやすくするとともに、定期的な昇給があることで、従業員のモチベーションを長期的に維持する助けとなります。
定期昇給とベースアップの違い
従業員の賃金を引き上げる「賃上げ」には、定期昇給とベースアップの2種類があります。
定期昇給は、個々の従業員の勤続年数やスキル、成果に基づいて定期的に行われる賃上げで、主に個人の成長や貢献度に応じて賃上げ額が調整されます。
対してベースアップは、全従業員の基本給を一律に引き上げることで、企業の業績や生産力が向上することで行われるほか、物価上昇に対応するために行われることもあります。
ただし、個々で昇給率を調整できる定期昇給と異なり、ベースアップは従業員に対して一律でおこなう昇給であるため、企業の金銭面での負担が重くなりやすいといえます。
また、基本的にベースアップしたものを後から下げることができないため、ベースアップ後に業績が悪化した際には支出のバランスが崩れ、リスクとなるでしょう。
昇給・昇格・昇進の違い
昇給、昇格、昇進は、企業において従業員のキャリアや給与に関連する異なる概念です。それぞれの違いを以下の表にまとめました。
昇給 |
|
---|---|
昇格 |
|
昇進 |
|
昇給制度の種類
定期昇給以外の昇給制度には、主に以下の3種類があります。
臨時昇給(特別昇給・ベースアップ)
臨時昇給とは、特定の時期を設けずに実施される昇給で、企業の業績が好調な場合などに行われます。臨時昇給は、対象となる従業員の範囲に応じて、さらに「特別昇給」と「ベースアップ」に分かれます。
特別昇給 |
特定の従業員に対して、実績や功労を加味して行われる昇給 |
---|---|
ベースアップ |
全従業員に対して一律で行われる昇給 |
なお、特別昇給は、特殊な職務を遂行したり、特別な業績を上げたりした場合に行われる昇給です。この昇給は、後述する普通昇給とは異なり、特定の理由に基づいて実施されるため、発生する頻度は低いといえます。
定期昇給(自動昇給・考課昇給)
「自動昇給」とは、従業員の勤続年数や年齢を基準として、実績や能力に関係なく全従業員が一律に昇給する制度です。
一方、従業員の実績や能力を査定し、その結果を基準として昇給を行う制度は「考課昇給」といい、査定の有無により自動昇給とは区別されます。
定期的に昇給が行われるため、定期昇給の一部といえます。
自動昇給 |
査定をおこなわず、勤続年数や年齢を基準として行われる昇給 |
---|---|
考課昇給 |
査定の結果を反映して行われる昇給 |
普通昇給
普通昇給とは、従業員の職務遂行能力や技能の向上に基づいて行われる一般的な昇給です。
定期昇給を実施するメリット・デメリット
定期昇給のメリットとデメリットには、どのようなものがあるでしょうか。
メリット
- 決まったタイミングの昇給のため、従業員がライフプランを立てやすい
- 人件費の変動が少なく、企業側も管理しやすい
定期昇給制度では、決まったタイミングで年齢や勤続年数に基づいた昇給が見込まれているため、従業員は将来の収入を予測しやすくなります。これにより、結婚や出産、住宅購入など、長期的なライフプランを立てやすくなり、就労意欲の向上や離職率の低下につながります。
また、企業側も毎年の退職者数と入社人数が一定の範囲内に収まるため、人件費の変動が少なくなります。これにより、昇給の基準を予め設定しておくことで、企業側は人件費の管理もしやすくなります。
デメリット
- 実績が給与に反映されるまで時間がかかり、高い成果を持続させなくてはいけない
- 勤続年数や年齢を重視するため、実力ある若手社員のモチベーションが低下する可能性がある
- 業績が悪化した際に人件費の抑制が難しい
定期昇給は決まったタイミングで実施されるため、従業員の成果が直ちに給与に反映されるわけではありません。このタイムラグにより、実績が給与に反映されるまでに待たなければならない点や、高い成果を持続させないといけない点について、従業員から不満を招く可能性があります。
また、勤続年数や年齢を重視するため、実力のある若手社員がベテラン社員よりも低い待遇を受けることがあり、モチベーションの低下につながる可能性があります。
加えて、業績が悪化した際でも、定期昇給を継続することで人件費の抑制が難しくなり、企業の経営を圧迫するリスクがあります。
定期昇給の計算方法
定期昇給固有の計算方法は定義されていませんが、最初に述べたように一般的には年齢・勤続年数・業務成果に応じて昇給額が決定されます。
企業の賃金制度や給与体系に基づき、従業員の基本給が一定の割合または固定額で引き上げられ、勤続年数、職位や職務内容、そして業績評価が考慮され、長く勤めたり高い職位に就いたりした従業員や業績が良い従業員ほど昇給率が高く設定されることが多いでしょう。
昇給額と昇給率の計算方法は以下の通りです。
昇給額
昇給額は以下の計算式で算出できます。
例えば、現在の基本給が25万円で、昇給率が3%であれば、昇給額は7,500円となります。
昇給率
昇給率は以下の計算式で算出できます。
例えば、基本給が25万円から25万5,000円に昇給した場合、昇給率は2%となります。
定期昇給を実施する方法・注意点
定期昇給を実施する方法と、注意点について見ていきましょう。具体的な方法や手順については、業種や企業規模によっても異なるため、従業員のフィードバックを取り入れながら、自社の実態に合わせて改善していくことも重要です。
昇給の基準を明確にする
職務内容、責任、業績、勤続年数などの評価基準を設定し、従業員に対して明確に伝えます。昇給の基準の透明性を確保することで、不満や誤解を防ぎます。併せて、評価基準を客観的で公平なものにするために、評価の際に使用する指標を明確にします。売上や顧客満足度、プロジェクトの完了率などが挙げられます。また、従業員が新しいスキルや資格を取得した際にも、昇給の基準として考慮するとよいでしょう。
明確化した昇給基準は、社内で公開し、全社員が理解できるようにします。
予算の確保
定期昇給の実施に必要な予算を、計画的に管理することが大切です。具体的には、毎年の予算計画に定期昇給のための予算を組み込みます。昇給率や従業員数、役職の数に基づいて必要な金額を見積もり、予算を確保しておきましょう。
定期的な評価制度の導入
年に一度、もしくは半年に一度のペースで従業員の評価を実施します。評価を行う際には、評価基準に基づいて公平に評価を行い、特定の社員だけが優遇されるようなことがないように注意します。複数の評価者による評価を導入することで、公平性を保つことができるでしょう。
また、昇給の理由や基準について、上司や人事部門が十分に説明する体制を構築することも大切です。定期的なフィードバックを従業員に提供し、どの点で改善が必要か、どの点で優れているかを具体的に伝えます。もし昇給に至らなかった場合でも、その理由を明確に説明し、従業員の今後の成長をサポートする体制を整えましょう。
定期昇給のタイミングを決める
昇給を行う時期を統一し、毎年同じ時期に実施する 体制を構築することで、昇給制度の透明性を確保することに繋がります 。 自社の会計年度と同じタイミングで実施すれば、予算計画が立てやすいとともに、新会計年度の始まりは、従業員の新たな目標設定やモチベーションを持つタイミングとしても適しています。
また、業績評価の後も、昇給のタイミングとして適しているでしょう。例えば、半年ごとに業績評価を実施している企業では、年2回の定期昇給を行うことになります。
従業員の満足度を高め、企業の成長に繋がる定期昇給のしくみを作ろう
従業員の勤続年数や業績に基づいて賃金が上がる定期昇給は、従業員のモチベーションを維持し、定着を促進するために重要な役割を果たします。
企業の持続的な成長と従業員の満足度向上を目指して、定期昇給制度のしくみを見直してみてはいかがでしょうか。
- 経営・組織づくり 更新日:2024/08/21
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