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生産性を向上させるための取り組み1:効率化の推進

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賃上げができる状態をつくり、人材確保のしやすい企業、社員満足度の高い企業をめざすには賃上げの原資となる売上が伸び、利益を出すことが必須です。

では利益を出すにはどのような手段があるでしょうか。

人手不足が大きな課題となっている現在、多くの社員を動員して稼働率を高めることで利益を出すには限界があります。 注目しておきたいのが、社員一人ひとりの生産性 です。限られた人数であっても、社員ひとりひとりが持てる能力をより高く発揮できれば、全体の生産性も伸び、利益につながります。

今回は、企業内部の組織改革や業務改善など、ムリ・ムダ・ムラを排除しつつ、社員の生産性を伸ばす方法として「効率化の推進」に注目をして考えてみましょう。

生産性とはインプットとアウトプットの比率

生産性というのは、あるモノを作るときに、それを作るために必要な要素(設備、原材料、労働力、エネルギー等)がどれだけ効果的に活用されたかを割合で示したものです。

生産性=産出(アウトプット)÷投入 (インプット)の計算式で考えます。

生産性を測る方法は、計算式の分母(インプット)に着目したもの、分子(アウトプット)に着目したものがあり、それぞれ2つの視点で考えることができます。それぞれをみておきましょう。

生産性は2つの視点で考えられる(分母:インプットの違いによるもの)

分母(インプット)に着目をした生産性を考える視点として2つあります。

  • 労働生産性
  • 資本生産性

労働生産性

ひとつは労働生産性です。これは、生産するためにどれだけの労働が必要であったかをみる視点です。

労働生産性は、労働投入量1単位当たりの産出量(産出額)で表します。

たとえば、労働者1人当たり、どれくらいの生産量(生産額)を生み出しているかを図ります。計算式の分母は、労働者数です。あるいは労働1時間当たりでどれくらいの成果が出ているかをみる場合もあります。この場合の分母は、労働者数×労働時間になります。

つまり、生産性が向上したという場合は、同じ労働量(労働時間)で、より多くの生産物を作ることができたことになります。

資本生産性

もうひとつは資本生産性です。こちらは労働投入量の代わりに資本をどれくらい投入して、どれくらいの生産ができたのかを測ります。

資本生産性=付加価値額÷有形固定資産 という計算式で求めます。

資本生産性の計算式の分母は資本ストック量(有形固定資産)です。

たとえば、保有している機械や設備の稼働率をあげて、生産量を向上することができたとしましょう。こうした場合に資本生産性は高くなります。また、生産に使用する機械を維持するさいに必要なコストを削減することで効率良く生産ができた場合も資本生産性は高くなります。

生産性を測定する方法(分子:アウトプットの違いによるもの)

上記で見てきたように生産性を考えるとき、2つの視点「労働量」と「資本」を分母として計算することで、何に対する産出量の割合なのかを求めることができます。

この2つの視点で求めた生産性「労働生産性」と「資本生産性」にはそれぞれ2つの種類の測定方法があります。物的生産性と付加価値生産性です。

生産性が向上したという場合、何を意味しているのか、を知るために、定量的な数値で表すことになりますが、その数値(分子)に何を用いるかによって、測るものが異なってきます。

  • 物的生産性
  • 付加価値生産性

物的生産性

物的生産性というのは、生産するものの大きさや重さ、個数等の物量を単位とした測定方法です。

たとえば、労働者100人で1万個の製品を10時間で作った場合の物的労働生産性(1時間当たり)は 10000個÷(100人×10時間)=10個 ということになります。つまり、労働者1人が1時間当たり10個の製品を作ったことを意味します。

付加価値生産性

付加価値生産性というのは、企業が事業を行う過程で新しく生み出した価値、つまり付加価値を単位として測定するものです。

付加価値というのは、生産額(売上高)から原材料費、外注加工費、動力費など外部に支払った費用を除いた残りの金額です。 付加価値生産性は生産性の向上した結果をどのように分配するのかを考えるさいの重要な指標のひとつになります。

たとえば、付加価値額1000万円を生み出すために労働者100人が10時間かかった場合の付加価値労働生産性(1時間当たり)は 1000万円÷(100人×10時間)=1万円ということになります。つまり、労働者1人が1時間当たり1万円の付加価値額を生み出したということになります。

生産性を向上させる具体的な方法 :効率化を図る

生産性の計算式がアウトプット÷インプットですから、アウトプットを大きくするか、インプットを小さくすることで生産性は向上することになります。 生産量や生産数を伸ばす、付加価値を高める、あるいは、労働量、労働時間、資本を小さくして同じ成果を出すことで生産性はあがります。

つまり、基本的には、社員1人当たり、あるいは時間あたりの能率を向上させること、また、保有している機械や設備の稼働において発生するムダを省くことで生産性は向上するわけです。 そのための具体的な方法をみていきましょう。

  • ムリ・ムダ・ムラを削除する
  • 業務の効率化を図るためのITツールの活用を考える
  • 他部署、他業務との業務フローを見直し、連携できる仕組みを考える
  • 人的リソースを最大限活用するための人材配置を考える
  • 社員のスキルアップの機会を作る
  • 社員が働きやすい環境を作る

ムリ・ムダ・ムラを削除する

ムリなものをなくすという効率化

「ムリなものをなくす」というのは、「ムリな労働時間」で働いている社員がいないかどうかの確認や「ムリな生産体制」で納期設定をしていないか、さらには工場の生産能力以上の注文を受けて人も機械もフル稼働が常態になっていないかなど、業務を遂行するためにどこかでムリをしなければならない状況が発生していないかどうかを確認することです。

PDCAをまわして、つねに計画の見直しと評価をする視点をもつことが重要です。

ムリをした現状を維持していると、やがて破綻します。たとえば社員のエンゲージメントが低下し、離職率が高まったり、商品生産ラインに問題が生じたり、検品作業にムリがあれば商品の質への影響も出る可能性があります。

ムリなものをなくすことも、業務を維持し、効率的に継続させるための重要なポイントなのです。

ムダなこと・ものをなくすという効率化

もっともわかりやすいのが「ムダなこと・もの」をなくすことによる効率化です。当たり前になっている業務プロセスや社内、組織の常識を見直し、なんのために必要としてきたのか、またこれませ常識とされてきたプロセスに期待されていた効果と実績を公正に再確認します。

通例として行われてきたことや段取りなども、その意義や価値を見直して、必要がなければ省きます。 こうすることで、業務のスピードを速めて多くの仕事を成し遂げたのと同じ効果が期待できます。

また、オフィスの構造(デザイン)の見直しもムダを省くという効率化にあたります。

たとえば、動線が複雑で動きにくい、社員同士がスムーズに移動できず混雑する箇所がある、休憩室が狭くて混み合うために利用しづらいといった状況があれば、存在の見直し、デザインの見直しが必要です。効率的に使えていないことを含めたムダなこと・ものを見直すことが重要です。

ムラのあるものをなくすという効率化

やり方が標準化・マニュアル化されていたいために、作業量が一定でなく、ムダな作業やムリな作業を繰り返している状態をムラのある状態だといいます。また、情報が共有されておらず、社員によって理解度が異なるという状況もムラのある状況だといえます。

つまり、「ムラのあるもの」をなくすというのは、プロセスのなかで、担当者によって、あるいはその時々の状況によって手法を変更したり、工夫を必要としたりする必要のある状況を改善するということです。

ムラをなくすことで、余計な動作や作業がなくなり、許容範囲を超えた無茶な計画を見直すことにもなり、精度の高い作業がつねに実行できる環境が整うのです。

業務の効率化を図るためのITツールの活用を考える

現状の業務フローを見直して、自動化を図ることを検討しましょう。たとえば、RPAやAI機能を搭載したシステムを導入して定型業務を自動化すれば、人手不足の解消や人的ミスの軽減が期待できます。

また自動化した分の人材をクリエイティブ業務に振り分けることで、生産性の向上につなげることもできるでしょう。

他部署、他業務との業務フローを見直し、連携できる仕組みを考える

たとえば多くの部署、多くの業務がかかわることになる生産管理 について考えてみましょう。

多くの企業では自社独自の方法で製品を製造しています。たとえば顧客からの注文を受け、生産計画を立て、じっさいに製造をし、多くの作業を経て完成した製品を検品し、納品する。さらには顧客に請求をしたり、製品を製造する原材料を発注したり、在庫を確認したりを行います。じつに多くの業務が、受注を受けて納品し、在庫を保管する間に存在しています。

こうした作業は多くの場合、複数の部署がそれぞれに管理をしています。つまり同じ内容のデータがそれぞれの部署で入力され、管理されているということです。この状況ではミスが発生してもすべての工程で適時、更新ができないことや、大きなトラブルに発展するおそれもあります。

そこを改善し、すべての工程を効率的に実行できる体制にする方法のひとつが生産管理の見直しです。

生産管理で重要な目的は、QCDの適正化だといえます。つまり「品質の高い製品(Quality)を、なるべく原価(Cost)を抑えながら、短期間で作る(Delivery)」ことを適正に管理するために、たとえば、生産管理システムを導入することも有効な手段です。

システムを導入することで、他部署とのデータ連携が可能となります。それぞれの部署で保有していたデータの整合性の低さも解消できるようになります。また、人的ミスや業務の滞りも改善され、全体のムリ、ムダ、ムラも削減でき、利益増加に期待がもてます。

人的リソースを最大限活用するための人材配置を考える

人手不足の背景には社員が採用できていない、という面もありますが、もうひとつ、属人化している業務があり、適材適所に人材配置ができていないという面もあります。

属人化した業務は簡単に担当者を変更することができません。そこでまずは業務のマニュアル化によって、誰にでも同等の作業が行える環境を整えることが必要です。そのうえで、社員それぞれの能力やスキルに応じて、最適な業務を担うことができる環境を整えましょう。

職務給の導入によって、社員のモチベーションアップを狙うことも可能です。

社員のスキルアップの機会を作る

業務の見直しとなると、削る、効率化することに目を向けがちですが、投資も必要です。とくに、将来的な投資でもあり、社員のモチベーションアップにもつながる研修や教育の機会を提供することは重要です。

なかでもIT人材の不足が深刻化する今後は、社内でITスキルアップをめざす社員を選び、研修の機会を提供することは、将来の生産性向上や業務効率化にとって有効な投資だといえます。

社員が働きやすい環境を作る

さらに、人材投資の視点で働きやすい環境づくりも忘れてはなりません。たとえば、キャリアを積み、働き続ける意欲が高い社員であっても、介護が必要な家族がいる場合や、子育ても仕事も両立したいと模索している場合には、テレワークやフレックス勤務の導入を検討する必要があります。

勤務評価の見直しやリモートでも社内と同様の仕事ができる環境の整備も必要になります。

投資をし、環境を作ることで、家庭の事情によってキャリアが中断することがない働き方の自由度を高めることができます。

就労環境が整った企業は、人材採用のさいも魅力的な条件提示ができるほか、経験豊富でやる気のある社員の定着にもつながり、生産性の向上が期待できます。

賃上げは生産性の向上の結果、実施するもの。まずはさまざまな点で効率化を進め、社員の働きやすい環境の構築をめざす

労働力人口が減少し、人手不足は社会全体の課題となっています。企業においても、規模の大小を問わず、人材確保は業務を潤滑に行い、業績を伸ばすために成功させたいところでしょう。こうした背景のなか、賃上げの動きが活発になり、2024年春闘では高い賃上げ率が出ました。

たしかに賃上げ実施には大きなメリットがあります。人材採用のさいには、企業の魅力のひとつとして高い給与水準を示すことができます。また社員の満足度を高める効果も期待できます。

しかし、賃上げは企業の内情を把握し、将来的な見通しのもとで実施すべきものです。まずは、企業の魅力アップや、社員の満足度を高めるための取り組みとして、業務フローの見直しをし、さまざまな点でムリ、ムダ、ムラを省き、効率化を進めることが先決です。

業務の効率化が進み、部署連携やデータ共有ができる環境が整えば、社員の業務負担が軽減されると期待できます。業務負担が軽減されれば、気持ち的にも、実際の労務的にも余裕も生まれるでしょう。こうした余裕が新しい発想やアイデアが出る可能性を高め、イノベーションへとつながります。

意識すべきは「賃上げの実施」ではなく、働きやすい環境の構築と、人材への投資です。こうした取り組みの結果として、生産性が向上し、利益が拡大することで、無理なく賃上げが実施できるものだと考えられます。

  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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  • 経営・組織づくり 更新日:2024/06/20
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