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賃上げとは?企業が取り組むべき理由、近年の動向をわかりやすく解説

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賃上げとは、従業員の給料を引き上げることを指します。 企業が従業員の生活水準を維持・向上させるために行うケースが多いですが、結果的に企業の採用競争力を高めることにも繋がる重要な取り組みです。

実際に、今後も続いていく労働力人口の減少や、近年の物価上昇といった背景を受けて、2023年から賃上げの動きが急速に活発化しています。 今後ますます困難になっていく人材獲得への対策としても、賃上げが注目されており、今まさに賃上げに取り組んでいる企業も多いのではないでしょうか。

この記事では、賃上げとはなにか、賃上げの2つの方法である「ベースアップ」と「定期昇給」についてもわかりやすく解説します。 また、企業が賃上げを行う理由や、近年の賃上げの動向についても詳しくお伝えしていますので、ぜひ、賃上げについての理解を深めるきっかけとなれば幸いです。

賃上げとは?実施のための2種類の方法を解説

「賃上げ」とは従業員の給料を引き上げることを意味する言葉で「昇給」とも呼ばれます。 なお、昇給前と昇給後を比較して、どのくらい給料が上がったのかを示した数字は「賃上げ率(%)」と呼ばれます。

賃上げを実施するかどうかは企業が決定しますが、企業の判断に影響を与えるのが、労働組合との交渉です。 日本では、毎年2月頃から、労働組合が企業に対して賃上げ要求の交渉を行うことが多く、この交渉は「春闘(しゅんとう)」と呼ばれています。

春闘では、大企業をはじめ、日本の主要な労働組合が連携し、統一的に賃上げを要求することで、企業側に対する交渉力を高めるねらいがあります。

賃上げの種類

企業が行う賃上げには、以下の2種類があります。

■ ベースアップ(ベア)
■ 定期昇給(定昇)

それぞれの特徴やメリットとデメリットについて見ていきましょう。

ベースアップ(ベア)

ベースアップ(ベア)とは、従業員に支給する基本給の水準を一律的に引き上げる方法です。

例えば、全社員に対して「3%のベースアップ」を行う場合、以下の昇給率となります。

基本給25万円の場合
25万円×0.03=7,500円=ベースアップ後25万7,500円

ベースアップの実施は、企業の業績や物価などに左右されることが多いため、ベースアップを実施する企業の割合には、毎年ばらつきがあります。

厚生労働省が実施した「令和4年賃金引上げ等の実態に関する調査」(*1)によると、一般職でのべースアップ実施率は、平成22年が最も低く約10%でした。 最も高かったのは令和元年で約30%です。

しかし、高い水準となった令和元年に続く令和2年・令和3年は、前年より低く、令和3年は約20%まで低下しました。 これは新型コロナウィルスの影響による業績の悪化や経済の不安定さが要因と考えられます。 その後再び上昇して、令和4年のベースアップ実施率は29.9%と、再び高水準となりました。

定期昇給(定昇)

定期昇給とは、企業の昇給制度にもとづき従業員の賃金を上げる方法です。 定期昇給はベースアップとは異なり、毎年1回もしくは2回の頻度で、人事考課などをもとに決められた時期に実施している企業がほとんどです。 また、従業員個人の勤続年数や業績、評価などに応じて、個別に昇給額が決定される点が特徴です。

厚生労働省が実施した「令和4年賃金引上げ等の実態に関する調査」(*1)で定期昇給を実施した(もしくは実施する)企業の割合を確認してみると、一般職では平成21年が最も低く約60%でした。 最も高かったのは令和元年で約80%となりました。その後は低下傾向が続き、令和4年は74.1%の実施率でした。

定期昇給のメリットとデメリットを以下の表に示しました。

メリット

デメリット

ベースアップ

● 業績向上によるベースアップの場合、企業の利益を従業員に還元することになり、全社的なモチベーション向上に繋がる
● 物価上昇によるベースアップの場合、従業員の安心感に繋がり、働くモチベーションを維持できる
● 企業の力をアピールできて、採用活動によい影響を与える
● 従業員に対して一律で実施するため、企業の負担が大きい
● 個人の業績が反映されないため、成果を上げている従業員方不満が出る可能性がある

定期昇給

● 個人の成果に基づいた評価体系の場合、納得感が高く、仕事へのモチベーション向上に繋がる
● 年功序列型の賃金体系の場合、勤続年数が長くなるにつれて給料がアップするため、従業員に長く働いてもらいやすい
● 評価基準が曖昧な場合や、勤続年数を重視した評価体系の場合、成果を上げている従業員からの不満出やすい

企業が賃上げを実施しなくてはならない理由

賃上げは、企業の戦略に基づいて実施される場合もあれば、外部環境の変化への対策として実施される場合もあります。

企業が賃上げを実施する代表的な理由を見ていきましょう。

従業員の生活水準を維持・向上するため

企業が賃上げを行う一つ目の理由として挙げられるのが、従業員の生活水準の維持・向上です。

総務省の「2020年基準消費者物価指数【2024年(令和6年)3月分】」(*2)によると、2024年3月は2020年全体と比較して、物価が6~7%上昇していることがわかります。

物価上昇の主な原因として挙げられるのが、2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻です。 エネルギーや穀物をはじめとした原材料の価格高騰を招いていることで、全体的な物価上昇に繋がっていると考えられます。 加えて、日本とアメリカの経済政策や金利差に伴う円安が続いていることも、物価上昇に拍車をかけています。

物価が上昇すると生活費が増加しますが、賃金水準が変わらないままだと、従業員の生活水準が下がり、暮らしが苦しくなります。 従業員の生活水準を守り、安心して暮らしてもらえるように、賃上げを実施する企業が増えています。

人材の確保のため

企業が賃上げを行う理由として、人材確保も挙げられます。 株式会社マイナビが、2023年に転職を経験した正社員に対して実施した「転職動向調査2024年版(2023年実績)」(*3)によると、転職活動を始めた理由として最も多く挙がったのが「給与が低かった」でした。 給与が低い・上がらないことへの不満が、離職のきっかけになっているといえるでしょう。

さらに、2040年問題として知られる将来的な労働人口の減少にも触れる必要があります。 少子高齢化の進行に伴い、2040年までに労働人口が大幅に減少することが予測されており、これにより人材の獲得競争がますます激化することが予想されます。

こうした状況下において、従業員に長く働いてもらうためにも、賃上げによるモチベーションの維持・向上が効果的と考えられます。

実際に、独立行政法人労働政策研究・研修機構が実施した「企業の賃金決定に係る調査」(*4)では、 2022年に賃上げを実施した企業に、賃上げによる効果について質問した結果、「社員の離職率の低下を認識した」と回答した企業は17.6%と、一定の効果が見られています。 また、「既存の社員のやる気向上を認識した」と回答した企業は32.3%にも上りました。賃上げは、人材のモチベーションを高め、人材確保に効果が見込めることがわかります。

賃上げの動向

物価上昇や採用市場の激化に伴い、賃上げが企業の重要な施策となっています。 企業が賃上げに向けて動き始めてきたことに加えて、政府の支援も大きな影響を与えています。 賃上げに関する動向について、詳しく見ていきましょう。

2023年から賃上げの動きが活発化

2023年は大手企業を中心に賃上げが相次ぎました。 日本労働組合総連合会が発表した「2023 春季生活闘争 第7回(最終)回答集計結果」(*5)によると、 平均3.58%の賃上げ率となり、1994年以降はじめて3%台を記録しました。

その翌年となる、2024年の春闘でも、引き続き高い賃上げ率が回答されており、5.17%(*6)の賃上げ率を記録しています。賃上げ率が5%台に達したのは、1991年以来の33年ぶりとなりました。

賃上げに対する支援制度の創設

政府も企業の賃上げを後押しすべく、支援を強化しています。 なかでも2022年からスタートしている「賃上げ促進税制」は、企業が賃上げの取り組みを行う際に活用できる制度として注目を集めています。

賃上げ促進税制は、大企業や中小企業において、一定以上の昇給を行った場合に、増加額の一部を法人税から控除できるようになる制度です。

もともと、大企業は最大30%、中小企業は最大40%の控除でしたが、2023年12月に「令和6年度税制改正の大綱」が閣議決定されたことに伴い、税額控除率が以下のように変更されました。

【改正前】
大企業および中堅企業:最大30%
中小企業:最大40%

【改正後】
大企業および中堅企業:最大35%
中小企業:最大45%

政府が「構造的な賃上げ」を推進

政府は2023年からの賃上げの動きが一過性にならないように、構造的な賃上げを目指しています。

構造的な賃上げとは、以下に示した構図です。

  • 賃上げにより、高いスキルを持つ人が各企業に入社する
  • 企業の生産性向上に貢献する
  • 更なる賃金引上げを生み出す

2023年5月、政府は構造的な賃上げを目指すために「三位一体の労働市場改革の指針」(*7)を取りまとめました。 そのなかで、企業が注力すべきこととして、以下が挙げられています。

  • リスキリングによる能力向上支援
  • 個々の企業の実態に応じた職務給の導入
  • 成長分野への労働移動の円滑化

リスキリングとは労働者が新しい知識を学ぶことであり、職務給とは業務内容により給与制度が決まることを指します。 労働移動とは、労働者が賃金をはじめ労働環境がよりよい職種や企業に移ることです。

構造的な賃上げのためには、政府の支援だけではなく、個人や企業の意識改革が求められるといえるでしょう。

賃上げの重要性を知り、今後の実施に向けた準備をしよう

賃上げにはベースアップと定期昇給があり、それぞれに特徴およびメリット・デメリットがありますが、従業員だけではなく、企業にとってもプラスにはたらくものです。

政府の支援もあり、2024年以降も賃上げの動きは続くことが予想されます。 今後も政府の動向に注目しながら、学び直しや給与制度の見直しなど、自分たちの現状にあった行動をすすめていきましょう。

  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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  • 経営・組織づくり 更新日:2024/07/10
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