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採用要件とは?意味や決めてはいけない事項・設定手順まで基本を解説

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「採用要件って、そもそも何?どうやって決めればいいの?」

この疑問は、これから初めての採用活動に取り組む新興企業や、新たに人事や採用を担当することになった方が、最初に抱くものかもしれません。

採用要件とは、採用したい人材のスキルや経歴などの条件を、言語化して定義したものです。適切に採用要件を定め、その要件に焦点を合わせて採用活動を行うことが、組織力向上のカギとなります。

本記事では、初めて採用要件に携わる方にもわかりやすく、採用要件について基本的な事項を解説します。

採用要件とは?基本の知識

まずは採用要件とは何か、基本的な事項から見ていきましょう。

「採用要件」に含める項目の例

冒頭でも触れましたが、採用要件とは、採用したい人材の条件を定義したものです。企業が求める人物像の基準を言語化して、明確にします。

具体的な要素としては、以下が挙げられます。

  • 学歴
  • 実務経験
  • 保有資格
  • 保有スキル
  • 人柄
  • 価値観
  • 仕事に対する姿勢
  • その他

上記は一例であり、「要件として、○○を決めなければならない」といったルールはありません。

各企業の経営方針や企業文化によっては、非常にユニークな採用要件を定めている企業もあります。新卒採用・中途採用など、フェーズごとに分けて定義するのも有用です。

採用要件として決めてはいけないもの

前述のとおり、「○○を決めなければならない」というルールはありませんが、逆に、採用要件として決めてはいけない事項はあります。

とくに注意したいのが、「年齢・性別・差別につながるおそれのある事項」です。

初めて採用活動を行う企業の方にとっては、見逃しやすいポイントかもしれません。ここで押さえておきましょう。

採用・選考時のルール

1 募集・採用における年齢制限の禁止について
平成19年10月から、事業主は労働者の募集および採用について、年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならないこととされており、年齢制限をしてはなりません。⇒ 詳細はこちら

2 募集・採用における性別による差別の禁止について
事業主は、労働者の募集・採用において性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならないとされています(男女雇用機会均等法第5条)。

3 公正な採用選考について
厚生労働省では、就職の機会均等を確保するために、応募者の基本的人権を尊重した公正な採用選考を実施するようお願いしています。⇒ 詳細はこちら

4 募集・採用における障害者への差別禁止と合理的配慮の提供について
平成28年4月より、事業主は労働者の募集及び採用において、障害者であることを理由に差別することが禁止されています(障害者雇用促進法第34条)。また、障害者から必要な配慮の申出等を受けた場合は、合理的な配慮の提供が義務付けられています(障害者雇用促進法第36条の2)。⇒ 詳細はこちら

*1より引用

たとえば、以下のような年齢に関わる採用要件は、すべて不適切(法律違反)となります。

*2 出所)厚生労働省「その募集・採用年齢にこだわっていませんか?」p.3 より作成

以下に関しては、採用要件にするのはもちろんのこと、企業が把握する(書類に記述させたり面接で質問したりする)のも、不適切となります。

<a.本人に責任のない事項の把握>

  • 本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
  • 家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)
  • 住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近隣の施設など)
  • 生活環境・家庭環境などに関すること
<b.本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)の把握>
  • 宗教に関すること
  • 支持政党に関すること
  • 人生観、生活信条などに関すること
  • 尊敬する人物に関すること
  • 思想に関すること
  • 労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動に関すること
  • 購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
<c.採用選考の方法>
  • 身元調査などの実施 (注:「現住所の略図等を提出させること」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があります)
  • 本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用
  • 合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施

*3 関連記事参照


採用要件と人材要件の違い

採用関連の用語を学んでいる方のなかには、
「採用要件と、人材要件の違いは何?」
と気になっている方もいるかもしれません。

結論からいえば、一般的には、採用要件と人材要件は同じ意味で使われています。より多く使われているのは、「人材要件」です。

参考までに、以下はGoogle検索結果のヒット件数です。

なお、厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「job tag」では、「人材採用要件」の語句が使われています。*4

「人材採用要件を、“人材要件”と短縮するか、“採用要件”と短縮するかの違い」と捉えることもできます。


採用要件の具体例

「具体的に、採用要件ってどんなもの?」
という疑問に関しては、以下の事例をご覧いただくと、イメージしやすいかと思います。

●人材要件の事例

営業の部署で新チームを立ち上げるために、リーダークラスの人材を募集したい。
取り扱っているSaaS商品を一人でクロージングできるレベルの営業力と、新チームを統率するマネジメント経験、そして、営業管理に用いているSalesForceを活用できる人材が好ましい。また、商品資料は英語が多いため、英語力も必要である。

●必須条件
  • BtoB向けSaaSの営業経験3年以上
  • SalesForceを用いた営業管理
  • TOEIC700点以上
  • 5人以上の組織マネジメント経験
●歓迎条件
  • ビジネス英会話
  • 海外赴任経験 1年以上
  • MBA取得
  • BIツール開発経験
  • 課題を発見し自走する能力
  • エンタープライズ営業の経験 1年以上

*5より引用

応募に際して満たすべき「必須条件」と、満たしていると望ましい「歓迎条件」に分けて定義しておくと、実用的です(具体的な設定手順は、後述します)。

採用フローにおける採用要件の役割と重要性

続いて、採用フロー全体のなかで、採用要件はどのような役割を担うのか、確認していきましょう。

評価項目や募集要項へ展開する前段

*6  出所)マイナビ研修サービス「採用基準設計研修」より作成

採用要件は、企業理念などの全体戦略をベースとして、企業が求める人物像の条件を明確にするものです。
設定した採用要件は、「評価項目」に落とし込んで、「評価基準」の策定へと展開します。加えて、就活生や転職活動中の方へ公開するための「募集要項」にも、反映させます。

採用要件は単体ではなく、相互に関わり合う “つながり” として理解する必要があります。

採用要件が重要な理由

採用要件の設定は、採用業務のなかでも、きわめて重要です。その理由として、3つのポイントが挙げられます。

1.適切な候補者の特定と選考を容易にする

採用要件が明確であれば、適切な候補者を効率的に見つけることが可能です。業務適性のない応募者を早期に見極め、時間とコストを削減できます。

2.組織の目標との整合性を確保する

採用要件を事前に定義することで、組織の長期的な戦略や目標と、整合性のある人材を採用できます。たとえば、イノベーションを推進する企業文化を築きたい場合、革新的思考や新しいアイデアを生み出す能力を重視した採用要件を設定する手法が考えられます。

3.組織文化と採用人材の適合性を高める

採用要件には、スキルや能力だけでなく、組織の価値観やカルチャーに適合する性格や態度も含めることができます。たとえば、チームワークを重視する企業では、協調性やコミュニケーション能力を採用要件に加えることで、組織全体の協働を促進させられるでしょう。


サポネットが2020年に実施したアンケート調査では、“そもそも「人材要件」を持たない企業が約2割” という結果でした。
*7

しかしながら、採用要件を定めない採用活動は、タイヤをひとつ失ったまま走るクルマのようなものです。企業が目指す目的地へ、まっすぐ走れません。

採用要件の設定手順

では、採用要件はどのように設定すればよいのでしょうか。ここでは、3つのステップに分けて、実務のポイントをご紹介します。

  • Step1:組織としての方針を確認する
  • Step2:草案となる文章を書き出す
  • Step3:誤解が生じない明確な要件に定義する

以下で、それぞれ見ていきましょう。

Step1:組織としての方針を確認する

採用要件の設定に先立ち、組織としての根本的な方針を、深く理解することが肝要です。これには、組織の基本的な理念や目指す方向性を、明確にする作業が含まれます。

具体的には、経営理念、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)、中長期の経営計画、人材戦略、要員計画などを、総合的に確認します。これらの要素は、採用要件を決定する基盤です。

もし、組織の方針が明確でない場合は、まずはその策定から始めることをおすすめします。採用活動を組織の全体戦略と一致させることが、合理的な人材採用につながるためです。

以下に、全体戦略の策定に有益な記事をご紹介します。


Step2:草案となる文章を書き出す

基本的な方針を確認した後、次のステップでは、求める人材の特性を言語化し、文章へとまとめていきます。

※ 前出「採用要件の具体例」でいえば、以下の部分が該当します。

●人材要件の事例

営業の部署で新チームを立ち上げるために、リーダークラスの人材を募集したい。
取り扱っているSaaS商品を一人でクロージングできるレベルの営業力と、新チームを統率するマネジメント経験、そして、営業管理に用いているSaleceForceを活用できる人材が好ましい。また、商品資料は英語が多いため、英語力も必要である。

必要に応じて、チームメンバーや関係各署に対する社内インタビューも行います。どういった人材が適しているのか、さまざまな面から調べて、十分に検討しましょう。

Step3:誤解が生じない明確な要件に定義する

採用要件は、関係するすべての人に、意図した内容が誤解なく正確に伝わるように、表現しなければなりません。

社内スタッフ、人材サービス会社など社外の担当者、そして求人への応募者など、多くの人が触れる情報となるためです。

「必須条件」「歓迎条件」の2段階に分けて、明確な要件として定義しましょう。

※前出「採用要件の具体例」でいえば、以下の部分が該当します。

●必須条件
  • BtoB向けSaaSの営業経験3年以上
  • SalesForceを用いた営業管理
  • TOEIC700点以上
  • 5人以上の組織マネジメント経験
●歓迎条件
  • ビジネス英会話
  • 海外赴任経験 1年以上
  • MBA取得
  • BIツール開発経験
  • 課題を発見し自走する能力
  • エンタープライズ営業の経験 1年以上

なお、十分に吟味して設定した採用要件でも、経年によって齟齬が生まれたり、情勢に合わなくなったりすることがあります。定期的に内容および表現を見直すことも、大切です。

さいごに

本記事では「採用要件」をテーマに解説しました。さらに詳しく知りたい方におすすめの記事を、以下にリンクします。



ぜひ続けて、ご覧ください。

  • Person 三島 つむぎ

    三島 つむぎ -

    ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。

  • 人材採用・育成 更新日:2024/06/18
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