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新卒採用はなぜすべき? 中途との違いから最新動向、採用手順までを解説

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この記事は、初めて(または久しぶり)の新卒採用にチャレンジされる皆さまに向けて、新卒採用の基本、中途採用との違い、近年の傾向、基本フロー、インターンシップにまつわる現状などの基本情報から、具体的な採用準備の方法までをまとめています。

サポネットには、それぞれの内容についてより専門性の高い記事も掲載されていますので、この記事を入り口として、さらに深い内容を知るために他の記事にも目を通していただけると幸いです。

では、早速一から解説していきましょう!

まず、企業にとって「新卒採用」とはどのような意味があり、価値のあるものなのかを考えていきましょう。
すでに新卒採用をすることを決めている方も、今一度この基本に立ち返ると、これからの施策がより良い方向へと進んでいくと思います。

新卒採用とは、就業経験のない学校卒業見込みの学生を採用することです。多くは大学・大学院を卒業・修了した学生を採用することを指します。


一方の中途採用は、「すでに社会人経験を持っている(他社での勤務経験のある)人材を採用すること」を指します。

この2つの採用方法の違いを改めて考えることで、新卒採用をする意義と目的が明確になります。表にまとめました。

こうして見ると、新卒採用は中途採用と比較して


  • 長い準備、選考期間を必要とする
  • 採用、育成にコストがかかる
  • 社会人経験のない学生を選考するため、ポテンシャルを見る力が必要

と、企業にとっては課題ともいえる項目も目立ちます。しかし、それでも多くの企業が新卒採用を続けているのは、それらを覆す大きなメリットがあるからです。

新卒採用のメリットは大きく分けて2つです。1つは、「自社の文化になじみやすい」という点、もう1つは「一括採用が可能」という点です。

「自社の文化になじみやすい」というメリットは、単に職場になじみやすいというだけでなく、幹部候補、コア人材候補となる可能性も秘めています。
社会経験がない状態で入社してくるからこそ、深く自社の社風や文化を理解した人材になり得るため、会社の経営を担う人材へと育成しやすいのです。

次に「一括採用が可能」というメリットには、社内の人員構成比を適正化する力があります。若く、年齢が近い社員を一括で採用できるため、続けることで社内の年齢構成比を一定に保つことができるのです。

一部の社員が転職などで自社を去ることは避けられませんが、新卒採用を続けていれば年次が上がるごとに少しずつ社員数が減っていく「ピラミッド型」の人員構成比を保つことができます。
もちろん、100名や200名といった単位で採用する予定のない企業にとっても、全体の社員数に対して適切な人数の新卒採用をすることで同じ効果が得られます。

では続いて、新卒採用市場の最新動向を数字で見ていきましょう。

このグラフは、正社員の労働者過不足D.I.(不足と回答した企業の割合から過剰と回答した企業の割合を差し引いた値)を時系列で並べたものです。

リーマンショックの影響下にあった2010年ごろまでは「過剰」に振れていますが、それ以降はずっと「不足」の状態にあります。
つまり、この10年以上、企業側の従業員不足が慢性化しており、学生側の「売り手市場」が続いている状態です。

加えて、少子化の影響による採用難易度の上昇も収まる気配はありません。24年卒として入社する2002年生まれ世代の出生数は約115万人と、今から50年前の1973年と比較して100万人近く減少している上に、アフターコロナへの対応を見越した採用意欲の高まりも相まって、競争は激化の一途をたどっています。

ここまでに解説したように、事業の永続性を担保し、会社を健康な状態に保つために新卒採用は欠かせない採用手法のひとつですが、その難易度は上がり続けています。
各社とも、採用広報や採用フローの工夫によってしのぎを削っている状態です。

では続いて、具体的な採用フローについて確認してみましょう。
上に示した画像が、一般的な新卒採用のフローです。経団連の要請に従って、採用に関する広報活動(※1)の開始は卒業前年度の3月から、採用選考活動(※2)の開始は卒業年の6月からにしている企業が多く、その2つのマイルストーンを基準に前後のスケジュールが決まってきます。

※1 採用広報活動:採用を目的として業界情報、企業情報、求人情報などを学生に対して発信していく活動のこと。マイナビなどで学生が企業に対して興味を持っていることを示す「プレエントリー」が行えるようになるのも、この採用広報活動開始時点から。

※2 採用選考活動:一定の基準をもって学生を選抜すること。いわゆる「書類選考」や「面接」の他、学生が入社試験を受けるために必須となる場合には「説明会」なども含まれることに注意。

近年は採用広報開始前の「インターンシップ」が非常に重要な意味を持っていますが、こちらに関しては次の章で詳しく解説しますので、まずは採用広報以降について解説します。

多くの企業は3月1日に合わせて就職情報サイト(マイナビなど)に募集情報を掲出し、それに応じる形で学生が「エントリー」を行います。
以下の図に示すように、「①集める」ステップであるエントリーは選考への申し込みではなく、「企業に興味がある」ことを学生が意思表示するものです。

自社にエントリーした学生と企業とは個別にやり取りができるようになるため、次の「②理解させる」ステップに進めるための説明会や選考の案内を送ることができます。
そのため、エントリーした学生(「採用母集団」と呼びます)を多く集めることが、採用成功のために重要な一つの指標となっています。

あくまでも一般論ですが、エントリーが100名だとすると、個別企業説明会に30〜40名、そこからようやく、「③見極める」段階として応募者の選考に20〜28名、とだんだん数が減っていきます。最終的に「④留める」に至るまでに内定出しができる学生が3〜5名、内定者へのフォローなどを経て、内定承諾(入社決定)が2〜4名程度となります。

この数字をもとに、自社が必要なエントリー数(採用母集団の人数)を計算し、そこを目指して採用広報を行うことになります。
採用広報にはさまざまな手法、事例がありますので、ぜひサポネットの他の記事も参考に、自社に合った採用広報の手法を考えてみてください。


<関連記事>
新卒採用広報とは 「母集団形成」の基本とテクニック

まずは、エントリー、会社説明会を経て自社の選考に参加することを決めた学生の選考を行います。
エントリーシートや履歴書などで1次選考を行い、2次以降は現場社員や管理職の面接、そして最終選考では経営陣による面接を行うのが一般的な方法です。
しかし、学生の志向や動きも多様化している今、これまでどおりの選考方法では人材確保が難しいことから、選考方法も多様化しています。
こちらも、サポネット内に関連記事がありますので、ぜひ参考になさってください。


<関連記事>
選考手法と特徴について

最後は最終選考まで残った学生に「内定出し」をし、「内定承諾」をした学生が、翌年度の新入社員となります。
いまは学生不足で「超売り手市場」ですので、学生が複数の内定を持って、その中から「内定承諾先」を選ぶことが一般的です。
そのため、内定承諾をしない(内定辞退をする)学生が一定数は出るであろうことを見越して、多めに内定出しをする必要があります。

ただし、内定出しが完了しただけで安心していると、思わぬタイミングで内定辞退が発生することもあります。内定式から入社までの約半年間は、気持ちをつなぎ止めつつモチベーションを高め、入社後の早期戦力化を見据えた「内定者フォロー」にも力を入れましょう。


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内定者フォロー記事・コラム一覧

先ほども少し触れましたが、採用広報の開始前に行われる「インターンシップ」の重要性は近年増しており、23年卒を対象としたインターンシップを実施した企業の割合は全体で55%、上場企業では82%と、高い数字を示しています(※)。
※ 出典:マイナビ2023年卒企業新卒採用予定調査

理由は、採用活動全体の早期化です。学生から見ると、3月の採用広報解禁から6月の選考活動開始まで、わずか3カ月で選考に参加する企業を選ばなくてはいけません。
また、人気のある大手企業は7月中に選考活動を終了することも珍しくなく、なおかつ、選考に入ると企業も学生も忙しくなるため、新たな選考に参加することが難しいという現状もあります。

そのため、採用広報解禁を待たずに企業の情報、業界の知識を身に付けられるインターンシップが学生に強く支持され、企業もそれに応えるようにインターンシップの開催数を伸ばし続けています。

このような現状があるため、インターンシップ本来の意義であった「企業が学生にキャリアについて学ぶ機会を提供する」という側面が弱くなりつつある、という別の問題も生じています。
採用広報解禁前に実施できるのは、これが「キャリア教育の一環」として学生のキャリア観育成に重要な役割を果たしているからですが、実情としては「単なる会社説明会にインターンシップの名前を付けただけ」というものも少なくありません。

そんな状況を改善し、学生のキャリア観育成という本来の役割をより明確にするため、25年卒以降の学生から「インターンシップ」の定義が明確に示されるようになりました。
「インターンシップ」の呼称を使うためには実施期間、実施内容などに一定の基準が設けられていますので、詳細はサポネットの解説記事をぜひご覧ください。


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三省合意改正で何が変わった?2025年卒からの「インターンシップ」とは
新卒採用の意義、実施フローの解説を終えたところで、ここからは具体的な採用準備の進め方を説明していきます。

まず重要なのが、「どのような人材(学生)を採用すべきか」を定める採用基準の作成です。「人材要件」とも呼ばれ、採用する人材に求める要素を一覧にして定めるのが一般的な方法です。

人材要件の作り方については、サポネットにもさまざまな記事が掲載されていますが、最も重要なポイントだけをこの記事の中で解説します。


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今こそ検討したい人材要件


それは「全社的な統一基準を作ること」です。
たとえば、社として「自立心が強く、物事を深く考えられ、チームプレイの精神を重んじる人材」と、採用基準(人材要件)を定めたとします。
しかし、このように言葉に多義性があると、面接官、経営者、人事の間で採用基準に対する認識に「ブレ」が生じかねません。

「自立心が強い」を「反骨精神がある」と解釈する人も、「自律的に仕事を進められること」と解釈する人もいるからです。この2つの解釈の間には、大きな違いがあります。
このような解釈のブレが生じない、一義的な言葉で定義することを心掛けましょう。

また「経営者の声」や「現場からの声」だけで採用基準を作るのも危険です。必ずしも現場で求められている人材像を経営者が把握しているとは限りませんし、現場が経営者の考えている長期的な経営方針を理解しているとも限らないからです。
経営層と現場双方へのヒアリングと、今いる社員を分析したデータをもとに、人事部が主体的に採用基準を作ることが大切です。
もちろん、多岐にわたる職種や配属先で採用を実施する場合などは、全体の統一基準をベースにしながらも、職種別に細分化された異なる基準が必要になるケースもあるため、策定に当たり留意しましょう。

次に、採用予定人数を確定します。採用において最も明確かつ重要な数字目標となるものです。
社内の、どの部署(地域)に、何人、どのような人材が必要なのか。この棚卸しをして数字目標を立てていきます。

ポイントは、先ほども解説したように「内定を出した学生=採用する学生」とはならないことです。内定辞退は「必ず出る」と思って、採用予定人数よりも2〜3割多めの内定を出せることを目標に、そこから逆算して各選考段階で残す学生の人数、採用母集団(エントリー数)の人数目標を立てていきましょう。

しかし、どうしても自社の採用基準を満たす学生の数が足りないという事態は起こり得ます。そのとき、人数を優先するか、採用基準を優先するかは大きな判断です。
多くの企業では採用基準を優先しますが、事業の内容によっては人数の確保の方が重要だということもあるでしょう。
採用予定人数を満たせなかったとき、どのように動くか(採用を打ち切るか、採用基準を下げて採用予定人数を確保するか)は先に決めておくとスムーズです。

採用には予算が必要です。経営の観点から見れば「投資」なので、自社の採用力(学生からの好意度など)を勘案した上で、どの程度の投資をすべきか、経営陣を交えた議論が必要となります。


主な費目は

  • 広告費(就職情報サイト掲載・イベント出展)・採用管理システム使用料
  • 採用ホームページ制作料
  • 入社案内などの採用ツール作成料
  • 上記発送料
  • 会社説明会・選考会などの会場使用料
  • 面接学生の交通費
  • 内定後の各シーンでの交通費・飲食費・宿泊費
  • 学校訪問などの交通費
  • 他、人事採用担当者の活動費

です。一部業務をアウトソーシングする場合は、その外注費用も加わります。

採用予算には各社ごとに大きなバラ付きがありますが、参考としてマイナビの調査によって判明した採用費の平均を以下にご紹介します。会社規模により大きく変動があるため、あくまで参考としてご覧ください。


■採用費総額平均
全体:約298.7万円/上場企業:約771.9万円/非上場企業:約267.4万円

■入社予定者1人当たりの採用費平均(1社ごとに採用費を入社予定の人数で割った数値の平均値)
全体:約45.0万円/上場企業:約38.1万円/非上場企業:約45.5万円

※出典:2023年卒マイナビ企業新卒内定状況調査

続いて、社内の組織体制を整備します。学生からの問い合わせ窓口などのインフラと、説明会などに登壇してもらう現場社員の協力などのヒューマンリソースの2つに大きく分かれます。

インフラは、採用専用のメールアドレスと電話番号の準備、学生対応マニュアルの作成、会社説明会の手配、選考会場の手配などを指します。

採用専用窓口での対応の早さは、学生からの評価を大きく左右します。そのため、対応業務のみをアウトソーシングする企業も増えているようです。

また、会社説明会は他社と時期がかぶりますので、早めに会場の手配をしないと来場予定者数に対して適切な会場を手配できない恐れがあります。
選考会場は自社の会議室などを利用するのが一般的ですが、会議室を長時間、複数キープする必要もあるでしょう。こちらも、早めに動き出すとスムーズです。

その上で検討すべきなのが、ヒューマンリソースです。
まず大切なのが、採用担当者の人員確保です。企業も学生も限られた時間の中で採用活動・就職活動をしていますので、過不足なくスムーズな運営ができる人数を確保しましょう。
参考までに、マイナビの調査によると、上場企業では新卒採用担当部署の平均人数が3.4人、非上場企業で2.7人です。(※ 出典:2023年卒マイナビ企業新卒内定状況調査

面接官や会社説明会登壇者として協力してもらう人事部以外の社員にも、早めに声を掛けて協力体制を築きましょう。

最後に、採用活動の具体的な内容とスケジュールの検討をします。
特にスケジュールは、一般企業とは異なるリズムで動いている学校のスケジュールにも配慮する必要があるため、注意が必要です。

以下に、一般的な企業と大学のスケジュールを掲載します。

大学側のスケジュールは、夏休みなどの長期休暇、試験などの学事行事はもちろん、公務員試験なども考慮が必要です。

同業他社がどのように動いているかなどの情報を集め、いつ・何をすべきかを考慮し、余裕をもったスケジューリングをしてください。

冒頭でも解説したとおり、新卒採用は「自社の文化になじみやすい」「コア人材候補になる」など、企業を成長させるチャンスを持った採用手法です。

インターンシップの設計、採用広報の手法、選考の設計と手法、内定者研修のポイントなど、サポネットでは新卒採用において必要な情報を網羅した詳細な記事が多く掲載されています。事例も豊富で、初めてや久しぶりの新卒採用に踏み切る方々にとっても参考になる情報が満載です。

またマイナビでは新卒採用に関するご相談を無料で承っています。市場動向の情報提供からお手伝いいたしますので、お気軽にお問い合わせください。

  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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