三省合意改正で何が変わった?2025年卒からの「インターンシップ」とは
そんなインターンシップの定義が、2025年卒以降で大きく変わることはご存じでしょうか?
これまでは、経済産業省・文部科学省・厚生労働省による「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方(通称:三省合意)」によって、インターンシップを通じて得られた学生情報を採用広報活動に利用できないことになっていました。
それが、22年4月に「採用と大学教育の未来に関する産学協議会(通称:産学協議会)」で、一定の条件を満たした場合に限り、学生情報の利用について合意が結ばれ、これに対応する形で三省合意も改正されています。
この改正によって、25年卒以降の「インターンシップ」が新たに定義され、一定の基準を満たす内容のインターンシップを実施することで、学生情報を採用活動開始後に活用できるようになりました。(※)
しかし、22年9月にマイナビが調査した「2023年卒 企業新卒内定状況調査」では、企業の理解度は全体として4割程度と、まだまだ理解が進んでいないのが現実です。
※参考:現大学2年生より、インターンシップのあり方が変わります!│経済産業省
そこで今回の記事では、三省合意改正により何が変わったのか、また特に企業側が気を付けるべき点を中心に分かりやすくお伝えします!
従来の就業体験型のインターンシップ。
5日間以上であること、より充実した内容などが求められる代わりに、採用活動での学生情報活用が可能に。
「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」は、3年次以上を対象として実施されてきた従来の「インターンシップ」に似ています。
ただし、プログラム必須条件として、「学生の参加期間の半分以上を職場での就業体験とする(テレワーク可)」「必ずフィードバックを行う」などの条件が付加されているので注意が必要です。
また、日程も5日間以上(専門活用型の場合は2週間以上)と最低期間が定められており、企業側もしっかりとした準備とリソースの確保が必要となるでしょう。
ただし、インターンシップで取得した学生の個人情報を、一定の条件を満たせば採用活動に使えるという企業側にとっての大きなメリットもあります。
【24/7/25更新】※26年卒以降の学生を対象に、インターンシップで取得した学生の個人情報利用ルールが新しくなります。
(25年卒まで)汎用的能力型・専門活用型いずれも「採用活動開始以降に限り、インターンシップで取得した学生の個人情報へ採用情報の案内が可能」
(26年卒以降)専門活用型、かつ卒業・修了年度に入る直前の春休み以降のタイミングで参加した学生情報に限り、「時期を限定せずインターンシップで取得した学生の個人情報へ選考情報の案内が可能」(汎用的能力型は現状どおり)
栗田:これを定めた産学協議会は、これからの日本社会において活躍できる人材を産学が共同して育成していくことを目的として、19年に経団連と大学によって立ち上げられました。
これまで、インターンシップと呼ばれていた活動には「5日以上の就業体験」という定めしかなく、特にその運用方法や呼称について厳格な取り決めはなかったんです。結果、だんだんと言葉が拡大解釈されてしまい、実態としては単なる「会社説明会」があったのも事実です。
また一方で、大学側は学生のキャリア教育は重要なテーマですが、大きく2つの課題がありました。
1つは、やはり大学だけでできるキャリア教育には限界があり、産業界(企業)の協力が必要であるということ。そしてもう1つが、インターンシップに時間を取られて学業に時間を割けない学生が増えつつあることです。
— そういった背景から「インターンシップ」に明確な定義を与え、なおかつ産学が連携してキャリア教育ができる下地をつくった、ということですね。
栗田:そうです。ただ、注意していただきたいのは、「インターンシップ」という呼称を使えるのは「タイプ3」と「タイプ4」のみだということですね。タイプ1と2は、あくまでもそれぞれ「オープンカンパニー」と「キャリア教育」で、インターンシップではありません。
ただ、タイプ3・4も単に長期間のプログラムを組めばいいというだけではありません。質の高いインターンシップであることを産学協議会が認定する「産学協議会基準準拠マーク」もあることから、企業側もそれなりの対応が求められるでしょう。
また、インターンシップの場合は実施時期を「学部3年・4年ないしは修士1年・2年の長期休暇期間」に限るという制限が設けられました。これによって、内容のあるインターンシップと学業の両立を実現したいという狙いがあるでしょう。
— となると、タイプ1・2を実施する企業のメリットが薄く感じられます。
しかし、早期から自社や業界についての理解を深めてもらう機会をつくることで、学生にとっては長期スパンで自分のキャリアを考える機会を、企業にとっては採用活動時に理解の深まった学生と出会うチャンスが広がるというメリットがあります。
特に学生にとってのメリットは大きいですね。これまではほんの数カ月という短い就活期間で人生を左右する決断を迫られていましたが、1年次から興味のある業界や企業について学ぶ機会が増えることで、じっくり探すことができますから。
— そういった機会を提供した企業として印象に残るということもありそうです。
— 先ほどお話に出ました「タイプ3・4」では、インターンシップで取得した学生の個人情報を採用活動に利用できるようになります。タイプ3に関して、利用に当たっての5つの条件はこちらです。
学生の参加期間の半分を超える日数を職場での就業体験に充てる(テレワークが常態化している場合は、テレワークも「職場」)
就業体験では、職場の社員が学生を指導し、インターンシップ終了後、学生に対しフィードバックを行う
・汎用的能力活用型は短期(5日間以上)
・専門活用型は長期(2週間以上)
学業との両立の観点から、学部3年・4年ないしは修士1年・2年の長期休暇期間(夏休み、冬休み、入試休み・春休み)。ただし、大学正課および博士課程は、上記に限定されない
タイプ3の実施に当たり、募集要項などに、以下の項目に関する情報を記載し、ホームページなどで公表
- ●プログラムの趣旨(目的)
- ● 実施時期・期間、場所、募集人数、選抜方法、無給/有給など
- ● 就業体験の内容(受け入れ職場に関する情報を含む)
- ● 就業体験を行う際に必要な(求められる)能力
- ●インターンシップにおけるフィードバック
- ●採用活動開始以降に限り、インターンシップを通じて取得した学生情報を活用する旨(活用内容の記載は任意)
- ●当該年度のインターンシップ実施計画(時期・回数・規模など)
- ●インターンシップ実施に係る実績概要(過去2~3年程度)
- ●採用選考活動などの実績概要 ※企業による公表のみ
—個人情報を採用活動に利用できるようになるのは大きなメリットだと思いますが、注意点はありますか?
栗田:基本的な個人情報取り扱いの注意事項はもちろん守った上で、「利用可能になる時期」と「利用目的」は特に注意が必要です。
- 個人情報を採用活動に利用できるのは「タイプ3・4」のみ
- あらかじめ、インターンシップに採用活動・選考活動の趣旨を含む旨が示されている場合のみ利用可
- 活用できるのは卒業・修了年次の学生情報のみ(1・2年生の情報は使えない)
- 採用広報に使えるのは3月1日~、採用選考に使えるのは6月1日~
- 学生が選考に参加するにはエントリーが必要
【24/7/25更新】※26年卒以降の学生を対象に、インターンシップで取得した学生の個人情報利用ルールが新しくなります。
(25年卒まで)汎用的能力型・専門活用型いずれも「採用活動開始以降に限り、インターンシップで取得した学生の個人情報へ採用情報の案内が可能」
(26年卒以降)専門活用型、かつ卒業・修了年度に入る直前の春休み以降のタイミングで参加した学生情報に限り、「時期を限定せずインターンシップで取得した学生の個人情報へ選考情報の案内が可能」(汎用的能力型は現状どおり)
これまでは企業側も3年次以降の学生を対象にインターンシップ、合同会社説明会、会社説明会……と矢継ぎ早に施策を打ち出し、学生側も大急ぎで自分の将来について考えなくてはいけないという状態でした。
これが、学生は1年次から充実したキャリア教育を受けながら、3年以上かけて自分に合った業界や企業をゆっくり探し、ある程度、射程を定めた状態で就職活動に参加するようになりますよね。
企業側にとっても、基礎知識をしっかり持って、志望も定まった学生と出会いやすくなるということなりますので、双方のメリットは大きく、より実のある採用活動・就職活動ができるようになるのではないでしょうか。
ぜひ、ダウンロード資料も参考にしながら新しい、インターンシップの形をよく研究して実行へ移していただきたいと思っています。
- 人材採用・育成 更新日:2024/07/25
-
いま注目のテーマ
-
-
タグ
-