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内定者120名のモチベーションを維持する株式会社キャンのコミュニケーション術 ―【連載】内定者と深くつながる研修・コミュニケーションのキモ 第4回

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採用・育成に関するステップの多くがオンラインへと移行している現在。
会社説明会や面接についてはノウハウの蓄積も進み、順調にオンラインで実施できているという方も多いと思いますが、内定者とのコミュニケーションはいかがでしょうか?

内定者一人ひとりのモチベーションをオンラインで把握することには限界があると感じていらっしゃる方も多いかもしれません。

そんな中、今回お話を伺ったのは、アパレル企業である株式会社キャン。120名もの内定者がいますが、オンラインとオフラインを交えた独自の施策で内定者同士の関係構築や企業理解を深めることに成功しています。

― 今日はよろしくお願いします。2021年卒の内定者研修やコミュニケーション施策は例年どおりにいかないこともあったかと思いますが、実際いかがでしたか?


湊谷さん: はい。例年は宿泊形式で「報・連・相」など社会人の基礎や、電話の取り方、店舗運営のポイント、接客のロールプレーイングなどを学んでもらっていました。

今年はコロナ禍の影響で宿泊研修は断念し、そこで伝えていた内容を複数の短い動画にまとめ、配信を行う形に変更しています。

― それぞれ学生が自宅で見るようなスタイルでしょうか?

湊谷さん: いえ、弊社では内定アルバイトとして入社までの数カ月間、店頭に立ってもらっていますので、業務の一環と認識してもらうためにその勤務時間内で動画を視聴します。自宅ではなく内定アルバイト中に見せていたのは“ながら”ではなく、業務の一環と認識してもらうためです。

― 内定アルバイトを行っているんですね。どのようなタイムラインで研修を進めているのでしょうか。


湊谷さん: 弊社の新卒採用では、全員がライフスタイルアドバイザー(販売スタッフ)としての採用になりますので、入社までに店舗での動きをある程度知っておいてほしいという意図もあり、内定アルバイトを推奨しています。

タイムラインとしては、8月ごろに内定アルバイトに関するアンケートを配信し、10月にオンラインでの内定式を実施後、アンケートの回答内容を基に、通学ルートや自宅との距離などの条件を考慮して店舗を決めて順次、店頭に立ってもらうという流れです。

加えて、21年卒については、そのアルバイト中にバックヤードで研修用動画を視聴してもらったということになります。

― 通常のアルバイトと違い、自店舗での配属かどうか分からない学生が店頭に来て一緒に働くとなると、受け入れ側の準備も必要だと思いますが、いかがですか?


湊谷さん: 私自身もそうですし、社員のほとんどが内定アルバイトを経験して、今があります。長年受け継がれてきていることなので、受け入れに当たって問題はまったくないですね。

何より弊社の場合、店舗を非常に大切にする文化があるんです。マニュアルに書いてあるわけではないのですが、店舗に入るときには上着を脱いで一礼、閉店後も同じように一礼して帰るという行為が、自然と浸透しているくらいです。

その文化を知るという意味でも、内定アルバイトは重要な内定者研修の一つだと考えています。

― なるほど。単に入社前に仕事を覚えてもらう場であるだけでなく、会社の文化を知る場でもあるわけですね。店舗選びには、学生の条件面以外に何か基準はありますか?


湊谷さん: 約480店舗ほどある中から、基本的にはお手本となるような店長のいる店舗が選ばれます。次に、対象店舗スタッフの数ですね。スタッフの人数が多すぎても内定者は動きづらくなると思いますし、逆に少なすぎると内定者にかまってあげられない……という難しいラインです。

― お手本となるような店長というと、例えばどういう力のある方を選んでいますか?


湊谷さん: 内定者の皆さんには、動画での研修も合わせて入社までに店舗で必要となる一連の接客マナー、店舗運営のノウハウを知っていただきたいのと同時に、「こんな人になりたい」と思えるようなロールモデルを発見してもらいたいと思っています。

企業文化の理解、店舗運営者としての能力、そして人柄。これらを兼ね備えた店長の背中を見て、目指してほしいと思えるような店長を選んでいます。

― なるほど。ロールモデルであると同時に、最も身近な社員として相談に乗るようなこともできそうですね。

湊谷さん: はい、それも期待しています。キャリアプランであったり、仕事の姿勢であったり、実際に現場に立っている社員にしか答えられないこともあります。研修でつまずいたところを相談することもできますよね。

― ちょっと失礼なことをお聞きするかもしれませんが、実際に現場に立つことで現実を受け止め切れずに内定辞退をする学生もいらっしゃるのではないでしょうか?


湊谷さん: それは、毎年少数ですがいますね。昨年は内定アルバイトをしている皆さんにアンケートを送って、「向いていないかもしれない……」というような悩みを抱えた方とは個別に面談をしました。

最終的にはマッチングなので、どうしても向かないということであれば本人が納得する進路を見つけられるよう、できるだけ早期にそのサポートをしてあげたいと考えています。

― 店長や湊谷さんをはじめとした人事の方以外で、社員と内定者が話す機会はあるのでしょうか。


湊谷さん: はい。オンラインの交流会を開催しました。やはり私たち人事には聞きにくいこともあるようで、盛り上がりました。

月々どのくらいの洋服代がかかってますか?などリアルな質問が多かったですね。

― できるだけ多くの社員と話して、働き始めた後の自分をリアルに想像したいというニーズは強いですよね。内定者同士のつながりはどうですか?


湊谷さん: 同じくオンラインでの交流会では、コンテンツの中にグループワークも設けていました。いくつかのチームに分かれてもらって、画面に映った自分たちの姿を利用しながらロゴマークを作るような内容です。

例えば、1人が手を大きく広げて、他の人がその手につながるように自分の手を伸ばしてハートや円を画面上で作っていく、とかですね。

― オンラインミーティングツールって、自分が鏡像で映るので難しそうですね(笑)。


湊谷さん: そうなんですよね。それに、それぞれの人の配置も違ってくるので。こうして、あえて難しい、コミュニケーションの必要なワークを共同でやってもらうことで、お互いの理解が深まればいいなと思っています。実際盛り上がりましたよ。

― 内定者にとっては、いまお話しいただいたような内定者同士の「横のつながり」もまた、重要だと思います。その点では他にどのような工夫をされていますか?


湊谷さん: 例年ですと、先ほどお話しした宿泊研修や対面での内定交流会が「横のつながり」を形成するきっかけになっていたのですが、21年卒ではそれができませんでしたので、22年卒ではオンラインの交流会に加えて、Instagramアカウントを使った施策を取り入れています。

― 具体的に、どのような施策でしょうか。


湊谷さん: 人事側でInstagramに内定者向けの非公開アカウントを立ち上げ、内定者にそのアカウントをフォローするように案内しています。

その後、Instagramから氏名と学校名を記載したメッセージを送っていただき、内定者情報との一致を確認できれば、フォローリクエストを許可していく仕組みです。

― 御社の内定者だけがフォローしているアカウントが出来上がる、ということですね。


湊谷さん: はい、そのとおりです。アカウントから何かを発信するのではなく、内定者同士がお互いのInstagramアカウントを知ることのできる場として用意しました。

気になる人がいれば投稿を見て、気が合いそうだと思った人同士が連絡を取り合うきっかけになればと。内定者同士でどんな会話をしているか、誰と誰がInstagramでつながっているかといった情報がこちらでは把握できないのも、メリットの一つと捉えています。

安心して、誰に気兼ねすることなく同期と話ができる場になればいいですね。

― 実際、効果は感じていらっしゃいますか?

湊谷さん: そうですね…… 先ほどもお話ししたように、内定者同士のつながりはこちらで把握できないので何とも言えないところもありますが、数字的なことで言えば対面でのフォローができていないにもかかわらず、内定辞退率はここ数年よりも低く推移しています。

― それはやはり、内定者同士の横のつながりが効果を発揮したということでしょうか。


湊谷さん: 私自身の内定者時代は、よく同期のいる店舗へ行って話をしたりしていました。同じように仕事をしている仲間がいると、心強いですし、会社への愛着も増していきますよね。

さまざまな要因が複雑に関わる部分なので断言はできませんが、お互いに直接は会えない分、Instagramアカウントでの施策が一定の効果を果たしていると考えています。

― 今日はありがとうございました!

今回お話を伺ったキャンさんでは、店舗を軸に内定者同士が同じ体験をすることで生まれる一体感が、コミュニケーションの重要な要素になっていると感じました。

店舗のない業態の企業ではまねしにくいように見えますが、重要なのは「同じ釜の飯を食う」仲間意識の形成ではないでしょうか。
研修プログラムの工夫次第では、あらゆる企業に応用できる要素なのかもしれません。

また、すぐにまねできる手法としてInstagramアカウントの活用方法は参考になった方も多かったはずです。
今の学生のほとんどが利用し、日常での出来事や自分の価値観を表現しているInstagramアカウントを活用することで、なかなか対面での機会を用意しにくい昨今であっても、「直接会ったような」体験が提供できているようです。

Z世代の心を上手につかんだ内定者コミュニケーション戦略、ぜひ参考にしてみてください。

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