【連載】コロナでどう変わった? ―大学・学生のリアル 第2回
22年卒の見極めポイントは例年とは違う? 「普通の」大学生活を送れなかった学生と向き合う
マイナビには、大学でのキャリア・就職指導などを中心に学生と向き合い、彼らにとってより良いキャリアを築く手助けをしている「キャリアサポート」というチームがあります。
誰よりも大学と学生を近くで見てきているからこそ得られるリアルな現場の声を読者の皆さんにお届けする連載の第2回。今回は、企業の採用担当者が22年卒学生と向き合うポイントを中心にお伝えします。
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「【連載】コロナでどう変わった? ―大学・学生のリアル 第1回 22年卒の感じている閉塞感、孤独感。オンライン化で大きく変わった学生生活のリアル」
― (前回記事の続き)ここまで大学生活が大きく変化すると、面接のポイントも変わってきそうですね。
大塚: はい。面接官からの掘り下げ方を他の年度とは少し変えるべきなのではないかと思っています。
部活を3年生までやり通して、それ以外に学外活動やアルバイトをして、卒業論文を書いて… というような「普通の」大学生活を送れていないわけなので、先ほどもお話ししたように学生側も「3年生の引退試合では後輩の指導もしつつチームワークを大切に…」のような、いわゆる分かりやすい自己PRエピソードは持っていないことが多いですね。
つまり、「大学生活を通じて頑張ったことは?」という聞き方をしてもポテンシャルを測れるような答えは返ってこない可能性が高いわけです。
学生のポテンシャルを探るためには面接官側も「普通の」質問をしていては駄目だということですね。
― なるほど。具体的にどんなことを聞くといいと思いますか?
大塚: 「コロナ禍で大変だったと思いますが、大学生活を送る上でどんな工夫をしましたか?」のような質問ですかね。
日々をどう過ごし、学業を修めてきたかという点を聞くことで本人のポテンシャルや困難な状況の中でどう対応するタイプなのかを測ることができると思いますよ。
― とはいえ、学生は不安を抱えているでしょうね。
大塚: そうですね。面接の場にしっかり単位を取って「卒業見込み」を持っていけただけでも大したもんだと、個人的には思います。オンラインで友達の頼りもなく授業を受け、図書館も閉まっているなかでテストの代わりに膨大なレポートを書いて、ゼミや卒論などにも取り組んでいるわけですからね。
今の1年生(24年卒)、2年生(23年卒)も似た状況になると思いますが、コミュニケーションの経験が減るため、面接の場で自分のことを上手に語れるようになるまで少し時間がかかると思うので、長い目で見てほしいなとは思います。
― 見極めのハードルを下げるような?
大塚: いえいえ、その必要はないですし、するべきではないでしょう。ただ、状況がこれまでとは大きく違うということを念頭に入れて対応するべきだとは思います。
学業での苦労だけでなく、学生同士の横のつながりが希薄になったことで、例年であれば他の学生の熱に感化されて就職活動を本格化させていた中間層の盛り上がりが構造的に起こりにくくなると思っています。大学生活での経験が不足することから、選考や入社後の成長を見込んだ見極めがより重要になるということです。
その理解を持って選考をし、じっくりと相互理解を深めて内々定を出せるとロイヤルティの高い社員となるかもしれません。
― 学生のモチベーションについてもう少し伺いたいと思います。学生同士の横のつながりが希薄になったことで中間層が「発火」するタイミングが遅れた、もしくは持てなかったという場合もあるんでしょうか。
大塚:はい。通常、大学の就職指導プログラムは3年生前期のインターンシップ時期を厚めにして行われる傾向が強かったです。就活生を自覚する新年度のスタート時期、かつインターンシップの実施時期でもあるその頃が、一番熱量を持ちやすいからですね。
ただ、22年卒についてはその時期と新型コロナウイルスの流行開始が重なっています。すでにお話したように、この時期に行うべき就職指導が延期、中止になっているんです。
なので、モチベーションの発火タイミングを逃した学生は多いでしょう。
通常であれば、私たちもサポートさせていただいている大学の就職指導プログラムを通じて、「意識の高い」学生の熱量が他の学生にも移っていきました。
― その時期を逃してしまったと。大学側も苦慮しているのでは?
大塚: そうですね。学生の気持ちがちゃんと付いてきているのか、準備が進んでいるのか、心配しています。もちろんやれることは全てやっている、という大学がほとんどでしょう。ですが、接点がWEB中心になっているので、支援が十分かどうか見極められないというのが現状です。
― 学生のモチベーションを測る一つの指標として、キャリアセンターへの相談数というのがあると思います。それについてはいかがでしょうか。
大塚: 例年並みに戻ったと聞いています。が、これをどう見るかは難しいですね。これまでの話からお分かりのように、22年卒の学生はこれまでになく就職活動において苦境に立たされています。「例年より増えた」というのが本来あるべき姿なのかもしれません。
一方、個人的な見解ですが「こんな状況なのに、ここまで戻ってきた」とポジティブに捉えることもできると思います。周りに気軽な相談相手がいないにもかかわらず、自分自身で疑問を見つけ出して相談しに来ているのはいい傾向だと思います。
― では最後に、このような環境下で企業がとれる大学、学生へのアプローチはどのようなものなのでしょうか。
大塚: まずは、すでにお話ししたように「現場の生の声」を届けられる機会を増やすことです。人事の言葉ではなく、現場社員がコソッと学生に話すような現場感が学生にとって今最も不足している情報だと思います。
ネットで情報を集めなくてはいけない時間が長すぎて、疲れが出ているんですね。「自分に向けた言葉」に飢えているということもあると思います。
― OB・OG訪問などの手段もありますね。
大塚: はい。大学にとっては話を聞かせてくれるOB・OGを紹介してくれることはうれしいことです。ただ、ノーアポでOB・OGを連れてくるケースもあるようで、うれしい一方で、急な訪問では十分な対応ができないこともあるため困っているようです。
だんだんと対面式が増えてきているのですが、必ず大学側にアポイントを入れましょう。コネクションのある研究室への訪問も同様です。
― 今日はありがとうございました!
<次回へ続く>
前回の記事で見てきた学生の苦境、それに伴う就職活動に対する態度の変化はなかなか採用現場では見えてこないものですよね。
採用現場で、これまでどおりの目で見ていると「やる気のない学生」「意識の低い学生」に見えてしまったとしても、実は大きな可能性を秘めているかもしれません。
この記事が、今の学生のリアルな状況を知る一助となり、読者の皆さんがより良い採用をする手助けになれば幸いです。
次回も引き続き、キャリアサポートチームに大学と学生のリアルな声、状況を伝えてもらおうと思います。
バックナンバー
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【連載】コロナでどう変わった? ―大学・学生のリアル 第3回
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- 人材採用・育成 更新日:2021/04/08
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