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【連載】コロナでどう変わった? ― 学生の志向に変化はあった?

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― コロナ禍になり、企業も学生も置かれている状況が一変しました。そんな中、学生の志向に変化があったのではと考える方も多いようですが、大塚さんの目からみていかがですか?

大塚: コロナ禍以前から見ても、特別大きな変化というのはないように思いますよ。

― 例えば、求人票に「リモートワーク可」となければ応募が減るのではないかと考えている企業も多いと思いますが、そういう面でもあまり変化はありませんか?


大塚: リモートワークができないと学生が集められないということはないと思いますが、コロナ禍前からの傾向として「リスク回避志向」はありますので、ポジティブな要素として働くことは間違いないですね。

「リモートワークができないと絶対に嫌だ」というのではなく、今後、どのように情勢が変化するのかが不透明な中で、「リモートワークもできる」という選択肢を持っておきたいという思考です。

これはリモートワークに限らず、リスクと感じるものを避ける傾向は非常に強いですね。調べれば大抵のことが分かるという環境で育っていますので、「分からない」「予測できない」ことを避け、確実な道を歩みたいと考えている学生が多いと思います。

― なるほど。それは企業側としても採用広報で気を付けたいポイントですね。


大塚: そうですね。

連載の第2回 でもお話ししたように、いま学生は情報の不足に悩んでいます。企業とのリアルでの接点が絶たれ、ネット上にある情報だけで企業選びをしなくてはいけない状況下において、「分からない」を減らすという観点は非常に重要です。

特に、テキストでは伝わりにくい社員の雰囲気や会社の日常的な空気感などですね。「こんなやりがいのある仕事があります!」というようなキラキラした情報だけでは不十分で、社員の声をできるだけ聞かせることを意識しましょう。

― オンラインでの説明会でチャットの受け答えをしっかりやるとか、そういったことも含まれそうですね。


大塚: はい。繰り返しになりますが、学生は企業から一方通行で伝えられる情報だけで企業選びをすることにストレスと限界を感じています。オンライン企業説明会でのチャットは、まさにその逆です。自分の質問に相手が応えてくれるという満足感があるのではないでしょうか。

― オフラインでの説明会であれば、説明会が終わった後に個別の質問をする機会がありましたものね。


大塚: はい。そういうところで社員がコソッと話すような、不特定多数が聞いている状況では答えにくいようなことを求めているのです。「自分に向けられた声」に飢えているという印象があります。

手間もかかりますし、企業として対応できることの限界もあるでしょうが、「企業と学生」という関係性ではなく、できるだけ「人と人」という関係性を築く努力をすると、コロナ禍で就職活動をしている学生には強く響くと思います。

― オンライン説明会が一般化して、今年でようやく2年目なので企業側も不慣れなことが多いようですが、うまく使って効果を高めたいですね。

大塚: ただ……オンライン独特の空気感に戸惑うことも多いようです。例えば、開始からすぐに「私の声は聞こえていますか?」と呼び掛ける方が多いのですが、ほとんどの場合、何もレスポンスがなくて困ってしまう。

― えっ。「はい」とか「聞こえています」とか言うだけだと思いますが……。


大塚: 先ほどお話しした「リスク回避志向」を思い出していただきたいのですが、学生は多くの人がいる中で「自分だけが何かを話す」ことには抵抗があります。それで失敗したくないですからね。

なので、先ほどの例で言えば「聞こえている方、チャットに“○”と書いてください」とか「聞こえている方は手を挙げてください」のように、学生側が自発的にアクションを起こさなくても済むようにしてあげるような気遣いは必要ですね。

― なるほど。これは気付かない方が多そうですね。


大塚: あと、アイスブレイクでちょっとした冗談を言う方もいますが、意外と反応が薄いという経験もあるかと思います。これも先ほどと同じく「自分だけが笑っている」という状況を避けたいという学生側のリスク回避志向です。

― 対面していれば「笑わせようとしているのだな」と分かっても、オンラインだとその微妙な空気感が伝わらないということはありそうですね。


大塚: まさにそういうことです。「ここで笑っていいのか?」と迷ってしまうと、笑わないんですね。

― 「リスク回避志向」のように、コロナ禍とは無関係なものでもここ数年で顕著になった傾向のようなものはあるのでしょうか。


大塚: 10年くらいの大きなスパンで見てみると、「地元志向」は高まっているかもしれません。

就職のタイミングでUターンする学生は元々一定数いますが、大学選びの時点で地元に絞る割合が高くなってきたように思います。

理由として、まず挙げられるのが情報流通量の増加です。SNSなどを通じて東京の情報が簡単に仕入れられるなか、「東京にしかないもの」を求める学生が減っているんですね。

特に首都圏の私立大学は学費も高いので、親に負担をかけてまで行くべきか?と考えたとき、それが合理的な選択肢ではなくなってきているということです。また、東京の方が就職に有利というイメージを持たない学生も多いかもしれませんね。

― 一方で企業は「一度東京に出た学生」を採用したいと考えているパターンも多いようですね。


大塚: そうですね。地方学生が東京に魅力を感じない、また逆に東京の学生が地方企業に魅力を感じないというのは、どちらも情報不足が理由の一つにありますので、知ればマッチングする可能性は十分にあるでしょう。

― 今日はありがとうございました!

コロナ禍によって学生側に大きな志向の変化があると考えている方もいらっしゃると思いますが、実際にはもう少し長いスパンでみた傾向の変化の方が採用活動には大きな影響があるようです。

特にキーワードとして挙げられた「リスク回避志向」と「自分に向けられた声」は具体的なノウハウとして生かしやすいのではないでしょうか。

ポイントは、単に「リスクがない」ことを伝えるのではないことでしょう。

「知らない」「分からない」ということ自体をリスクと受け止める学生が多いという話から分かるように、自社の情報をできるだけ網羅的に棚卸しし、さらにテキストでは伝わらない「空気感」を社員の声やチャットでの応答で伝えることが重要です。

マイナビで大学と学生に最も近いところで活動するキャリアサポート部門へのインタビュー連載は今回が最終回となりました。 他にも聞いてみたいテーマなどがあれば、ぜひお知らせください!

バックナンバー
【連載】コロナでどう変わった?―大学・学生のリアル 第1回
【連載】コロナでどう変わった? ―大学・学生のリアル 第2回
【連載】コロナでどう変わった? ―大学・学生のリアル 第3回
  • 人材採用・育成 更新日:2021/05/13
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