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確かな成果があるから続けられる マイナビ流「採用担当制」とは? ―【連載】内定者と深くつながる研修・コミュニケーションのキモ 第2回

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内定者とのコミュニケーションの基本は「不安を取り除く」こと。自己完結性の高い「Z世代(1990年代後半~2010年代前半生まれ)」の彼ら・彼女らは胸に大きな不安を抱えながらも打ち明けにくい傾向があります。

それに気付かないでいると、最悪の場合「なぜか分からないけれど内定を辞退してしまった」という状態に陥りがちです。

内定者と企業、お互いのためにも内定者の不安を取り除くコミュニケーションは大切なのですが、次年度の採用が始まるなかで、適切なリソースの配分が難しいのも事実。また、コロナ禍において対面での頻回なフォローが難しい状況において、安心感を与え、信頼関係を構築するための工夫も必要とされています。

そこで今回は、マイナビが自社の新卒採用に取り入れている「採用担当制」をご紹介します。内定辞退率を低く抑え、コロナ禍においても内定者との関係構築に成功しているこの制度、どのようなものなのでしょうか。

― 松村さん、今日はよろしくお願いします。今回は採用担当者としてマイナビが実践している内定者フォローの体制、方法についていろいろ聞かせてください。まずは、内定者の人数とそのフォローの体制について教えていただけますか?

松村: よろしくお願いします。マイナビでは2021年卒の内定者が約200名。承諾証を提出してくれた人からの内定辞退は、前年よりも減少している状況です。

内定者フォローは参加型のものとして、内定者面談、エリア別の内定者イベント、内定式、3回にわたる内定者研修、内定者フォロー面談などを実施しています。コロナ禍以降はオンラインでの開催が主流になっていますね。内定者・採用担当ともに対面での実施を望んでいる部分はありますが、手段としての選択肢は増えたように感じます。

また、内定者の情報管理につながる内定者向けサイトや、オンラインプラットフォーム型の学習・研修ツール、配属希望調査や学生生活に関するアンケートなども運用しています。

併せて、当社の内定者フォローの特徴ともいえるのが「採用担当制」です。採用担当者が自分の「受け持ち」として、内定者を10〜20名程度担当して入社まで指導やサポートを行うというもので、もう10年くらい続いています。

― 担任みたいなものでしょうか。

松村: はい。自身が採用面接を担当した学生(内定者)をそのまま担当することになっています。選考初期の面接は割り振りがランダムですから、自分がどの学生を担当することになるのかは分かりません。ただ、採用担当者自身がその面接で合格を出し、無事に内定者になった暁には、その内定者の担当として研修のフォロー、配属・入社に関するサポート、その他の相談を受ける窓口になるという形です。

― 採用と研修は担当が分かれているという企業も多いのですが、マイナビでは違うのでしょうか。

松村: いえ、マイナビでも採用担当と研修担当は分かれています。が、研修担当からのフィードバックは、採用担当に情報共有されます。そして、そのフィードバックの情報を基に各採用担当が、内定者一人ひとりに評価点や課題を戻していくというスタイルをとっています。

― 各教科の担当教諭から上がってきた学生ごとの評価をまとめて渡す…まさに担任という感じですね。

― ただ、マイナビも他社と同様に毎年、採用を行っているわけなので、採用担当も忙しいと思いますが、どのように実現しているのでしょうか。

松村: 当社では採用チームが約20名と比較的多く、その中でさらに数名が「内定者フォローチーム」として内定者フォロー期間の採用担当制をリードしています。

マイナビの採用担当は複数エリアにまたがっており個別対応していますが、内定出しから配属・入社に至るまでの長期の内定者フォロー期間を網羅的に管理するチームがあることで、採用から研修まで一貫したイニシアチブを握ることができます。そのため、新卒採用チーム全体として制度の高い意思決定が素早く可能になるというのが1つ目の大きな効果です。オンラインでのプログラムや、内定者向けサイトの設計などもこの内定者フォローチームで考えています。

― 迅速かつ柔軟な対応が求められるコロナ禍においては重要ですね。一方で、採用担当のマンパワーも必要になると思います。

松村: はい。前提としてある一定のマンパワーが必要になる仕組みです。ですが、その価値があると会社が判断してくれているので、10年も続いているのだと思います。選考段階から1対1でコミュニケーションを密に取れることで、その変化をきめ細かく見ることができ、内定辞退の抑制や適性配属に効果があるように感じます。

― 面談や日々の連絡を通じて迷いを見抜いて説得するような動きもできるということでしょうか。

松村: もちろん、自分が担当している学生にはぜひ入社してほしいと思って採用していますので、当社への入社に迷いがあることが分かれば、できるだけ説得はしたいものですよね。

一方で、入社が迫ってきてからの辞退となると、内定者・会社の双方とってデメリットが大きいことも事実です。例えば、就職という選択肢以外にどうしても諦められない夢があって別な道を目指したいというような場合には、できるだけ「早期」にそれに気付くことができるかが重要になります。そして、対話を重ねてその選択を尊重してあげることも大切だと考えています。

また、毎年少数ですが、必ず「卒業単位不足」での内定辞退は発生します。これを防ぐために声を掛けることもできます。とはいえ不可抗力的な側面もあるため、「もしも」に備えて準備をしておく、などの対応も可能になります。

― なるほど。早い段階で察知し、アプローチすることが企業と内定者双方にとって良い結果につながるということですね。学生にとっても相談しやすい環境ではないでしょうか。

松村: はい。採用担当制を敷くことで、選考から研修まで1人の担当者が自分に付いてくれている、という安心感を与えられているんじゃないかと思います。

学生から見ると連絡をしてくる相手が1人しかいないので、会社についての迷いや疑問はすべてその人にぶつければいい、そういう窓口がある感覚になれると思います。

― 先日行った新入社員座談会でも、1名だけ選考から研修まで同じ人事担当者が付いてくれたという方がいて、安心感が強かったと話していました。

松村: そうですよね。いま、大学の授業も選考過程もオンラインに移行して、生身の人間との接触が極端に減っています。加えて、サークルもアルバイトもできなくなったという学生も少なくありません。

そういった環境なので、今年は特に学生からのコミュニケーションも多かったなという印象です。

― やはり、学生から社会人になる途上で不安を抱えながら、それに寄り添ってくれる人を探しているんでしょうか。

松村: そうですね。採用担当も、人情として自分の担当学生には入社後も活躍してほしいので自然と指導に力が入りますし、AOL(Access On Line:マイナビが提供する採用マネジメントシステム)に自身の担当内定者の情報を事細かく入力して社内共有できる体制も整えているので、情報量が増えるほど、その後の研修や適性配属の精度が高まっていくはずです。

― 人情とシステムがうまく融合している印象です。

松村: それがこの制度の目指している姿の一つかもしれません。また、重要な考え方として「内定者をマネジメントする」ということもあります。

内定者とその担当者は、内定者期間を通じて擬似的に「上司と部下」のような関係を築くんです。研修の結果が芳しくなければ、採用担当は時には厳しく指導もしますし、必要に応じて練習にも付き合います。

また、当社側の情報も適切に開示していきます。例えば、実際のテレアポの件数を伝えるなど、入社後にぶつかるであろう壁に対してもあらかじめ伝えます。

RJP(Realistic Job Preview:現実的な仕事の情報開示)という言葉もありますが、それは会社が社員に向けて自社の状況、情報を開示することと何ら変わりません。要するに、相手を信頼して情報開示することで、相手からの信頼も獲得する。

これが「内定者をマネジメントする」ということです。そのための「採用担当制」というのが、もう一つの姿ですね。

― なるほど。その濃い信頼関係が、内定者の愛着を高めるとともに、入社までの成長を促すんですね。最後に、22年卒の内定者フォローで考えていることを教えてください。

松村: 22年卒もオンラインでの内定者フォローは多くなると思います。大枠は変えることなく、新入社員や受け入れ先の上長の意見も踏まえながらブラッシュアップしていきたいと思います。

個人的にはオンラインで内定者同士の横のつながりを自然に作ることができ、お互いに学べるような「きっかけ」や「仕組み」を作っていきたいですね。

―今日はありがとうございました!

内定者と企業の関係というのは、実はもろいものです。相手は学生であり、企業側の管理下にあるわけではありません。また、社員のように事細かく状況を把握することも、なかなか困難です。

こうした前提の中で、オンラインを中心に内定者の不安を取り除き、関係を構築していくことは簡単ではありません。

今回取材した「採用担当制」は、オンライン/オフラインにかかわらず内定者との窓口を一本化することで学生側に安心感を与え、「内定者をマネジメントする」という考え方の下、上司と部下のような関係を早期に構築することで彼ら・彼女らの状況を把握することができるものです。

また、長期にわたって内定者の成長や失敗を見続けた担当者がいることで、配属後に活躍するための情報を事業部に提供できるのも大きな魅力です。

しかし、最も重要なのは最後に出た「適切な情報開示」かもしれません。RJPの重要性が叫ばれるようになり久しいですが、その情報開示を擬似的ではあっても「上司と部下」という関係性の中で行うことで、企業側には開示の責任が、学生側には社会人になる覚悟が生まれるのではないでしょうか。

効果をあげ続けているからこそ、「採用担当制」にマンパワーが割けると語る松村。その制度は、コロナ禍において強い内定者フォローを行うための一つの解であるようにも感じました。

バックナンバー
【第1回 】内定者の8割近くが望んでいる「入社前研修」押さえるべきポイントとその効果は?

【第3回】覆面新入社員座談会 内定者時代に感じていた「不安」について教えてください

【第4回】内定者120名のモチベーションを維持する株式会社キャンのコミュニケーション術
  • 人材採用・育成 更新日:2021/06/02

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