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内定者の8割近くが望んでいる「入社前研修」押さえるべきポイントとその効果は? ―【連載】内定者と深くつながる研修・コミュニケーションのキモ 第1回

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まさに入社前研修が終わり、新入社員研修の真っ最中という読者の方も多いと思います。今回の特集は「内定者コミュニケーション」、そしてこの記事では特に「内定者研修」について取り上げます。

「マイナビ 2021年卒 学生就職モニター調査 8月の活動状況」によると、2021年卒の内定者のうち、「入社までに内々定者フォロー・内々定者研修を希望するか」という質問に実に87.1%が「入社前研修を希望する」と回答しました。 それほど求められている内定者研修をいかに効果的に実施するかは、新入社員がどれだけ入社後に活躍できるかという成果にもつながります。

そこで今回は、マイナビで研修事業を手掛ける原 真一朗より、効果的な内定者研修を行うにあたっての考え方とポイントについて聞いてみました。

― 原さん、今日はよろしくお願いします。早速ですが、多くの内定者が研修を望んでいる理由は何なのでしょうか。

原: はい。まず、今の学生は「失敗したくない」という傾向が強いことが理由として考えられます。学生を取り巻く環境は年々充実していて、就職活動においても事前によく調べて対策し、内定を獲得する学生が多いんです。結果、社会人になるというこれまでにない未知の体験を前に「事前に知っておきたい」「勉強しておきたい」という思いがより強く出て、内定者研修を望む声につながっていると感じます。

― コロナ禍によってその不安は増大しているのでしょうか?



原: 私もそうなると予想していたのですが、実は「入社後に不安を抱えている」と回答する学生の割合は一定しているんです。

コロナ禍によって就職活動がオンライン化し、社員や同期となる内定者との直接的な接触がないまま社会人になることの不安は抱えているのですが、一方で人材の流動性が高かったり、仕事よりもプライベートを優先する志向の学生が増えているという理由から、数字には反映されなかったものと思います。

とはいえ、21年卒の内定者を対象としたアンケートでは50%が「本当にこの会社でいいのか」と不安を抱えており、さらにそのうち約60%は不安が解消されていない、とも回答していますので、依然として厳しい状況であることに違いはありませんね。

― 具体的に、不安の中身はどのようなものなのでしょうか?

原: まず、職場を一度も自分の目で見ていないという「会社に対する不安」、同期となる内定者とも直接会っていないという「仲間に対する不安」、そして自分が社会に出て通用するのかという「自分に対する不安」に分解できると思います。

このような不安を抱えたまま内定者でいると、内定辞退にもつながりますし、不安が強いまま入社すると活躍できるまでに時間がかかってしまいます。企業と学生、双方のためにもこの不安を解消できるような内定者研修や懇親会が必要でしょう。

― 確かに、不安が募っての内定辞退や、入社後に萎縮してしまって期待したパフォーマンスが出ないということがありそうです。具体的にこの不安をどう解消していくのが良いのでしょうか?

原: まずは「会社に対する不安」ですが、これは実直に会社の情報を伝えることに尽きると思います。

RJP(Realistic Job Preview:現実的な仕事の情報開示)を徹底し、リクルーターや採用担当者、先輩社員など内定者に近しい社員から正直なところを伝えるべきです。

また、実際の仕事環境、内容を知ることのできるカジュアルな場を設けてもいいですね。若手社員の声を届けるような内容で、キラキラした情報ばかりでないものが好ましいと思います。

― 逆にそれが原因で内定辞退……という不安も企業側にはあると思いますが、いかがでしょうか。

原: 採用段階では、学生だけでなく、企業もある意味で「取り繕って」相手に接していますので、どうしても見えてこない現実というものがあります。 一方で、内定者であればこれから会社の一員となるメンバーです。入社後すぐに退職するよりは、内定辞退の方がお互いの今後のためになると思って内定者に接していただくのが良いのではないでしょうか。

― なるほど。勇気はいりますが、そのとおりですね。では続いて「仲間に対する不安」についてはどうでしょう。

原: 仲間、つまり同期になる内定者がどんな人物なのか知らない、ということが不安につながっているわけなので、基本的には懇親会のような場を設けることが必要になります。

ただ、いきなり懇親会を行うことはあまりお勧めできません。初対面でのオンライン飲み会が想像しやすいですね。パーソナリティーを知らない同士だと共通の話題もなく、苦労した経験はあるのではないでしょうか。同じようにお互いがどんなことを思っているかを理解した上で実施した方が効果が高いですし、先ほどの「会社に対する不安」が解消されないまま開催すると、不安を共有し合って増幅させるだけの場になってしまう恐れもあります。まずは「会社に対する不安」を解消する場を設けてから、と考えた方が良いですね。

ポイントとしては、「就職活動は個人戦、内定者として過ごす時間は団体戦であること」です。孤独な就職活動を終え、そこに同じ釜の飯を食う仲間がいる、という状況を知ってもらいましょう。内定者同士が協力し合えるような課題を与え、成功体験を共有するような研修がお勧めです。

― 実際に会って話して… ということは難しくても、できる限りのことはしたいですね。では最後に「自分に対する不安」についてはどうでしょう。

原: 学生にとっては、これが一番大きな不安かもしれません。冒頭にもお話ししたように、大きな失敗を経験していない学生が多いので、社会人になって何か失敗するのではないか…という不安が強いんです。実際、アンケートでも最も強い不安材料として「仕事をうまく進められるか」が挙がっています。

―確かに、社会人生活はこれまでの学生生活の延長からは切り離されたものなので、自分が通用するか不安に感じるのは分かります。

原: そうですよね。学生生活の延長上に、自分が到達すべきゴールが見えないことが不安につながっているので、「こうなっていれば、新人として一人前」という姿を明確にして、そこへ導くことを考えると良いと思います。

つまり「成長過程をデザインする」という考え方です。現場に放り込んで勝手に成長するのを期待するのではなく、ゴール設定をし、そこに到達できるようにサポートすることが重要でしょう。

―具体的にはどのような方法でしょうか。

原: 最近の学生の傾向として、「真面目である」という面もありますので、ゴールをきちんと示してあげれば、努力してそこに到達する力は多くの学生が持っていると思われます。

その上で、多くの企業で取り入れやすい1年目のゴール設定として「後輩を迎えられるようになっているか」というものがあります。 例えば、優秀な2年目社員をメンターのような形で内定者と近しい立場に配置し、まずはそこを目指して頑張ってもらうといいでしょう。お客さまからの電話が取れる、自分一人で商品説明ができるといった基礎から、会社に対する理解といった抽象的な部分まで、目指すべきものが具体的になると思います。

― 入社後にメンター制度を取り入れている企業は多いですが、それを内定者のうちからやっていくイメージですね。

原: そうですね。これは、社員にもいい効果があります。自分自身の仕事の面白さ、苦労、そういったものを人に話すことでより深く仕事を理解して、やりがいが深まっていくんです。一挙両得ですよね。

現場の社員のアサインが難しい場合は、採用担当者がその役割を担っていってもいいと思います。

― 先ほどの「成長過程をデザインする」という考え方からすると、一人ひとりに対するサポートも別に必要になりますか?

原: 内定者一人ひとりが持っているポテンシャルはさまざまですので、苦手分野と得意分野も当然、人によって異なります。そして、全くつまずくことなく研修を終えて「一人前」になるということはないでしょう。

なので、選考を通じて得ている一人ひとりの特性に合わせてeラーニングをカスタマイズして提供するとか、人事面談で状況を細かく聞きながらアドバイスするとか、そういったサポートは必要になります。

― では最後に、内定者研修がうまくいく企業の特徴を聞かせてください。

原: 内定者研修に社員を巻き込む効果はいまお話ししたとおりで、内定者にとっても社員にとっても、そしてひいては会社にとってもいい効果があるのですが、これが文化として根付いているとやはりうまくいきます。自分たちがしてもらったことを後輩につなげていこうという雰囲気が出来上がっているんですね。

ですが、実情としては「採用」と「育成」で人事部内の担当が分かれていることが多く、採用過程で得られた情報がうまく育成に生かせなかったり、入社後も含め一貫したフォロー体制が築きにくい側面もあります。

― 採用と育成の担当が分かれているというのは、確かによく聞きます。が、実際にはそれで運用できてしまっている例も多いのでは?

原: そうなんです。日本の新卒採用はポテンシャル採用なので、現場でたたき上げられて一人前になれてしまいます。

しかし、「内定者の不安を解消する」という点に軸を置いて接していかないと、冒頭でもお話ししたように不安にかられて内定を辞退したり、ポテンシャルが生かせなかったりといった弊害が生まれてしまうんです。これは、内定者にとってはもちろん、会社にとっても不幸なことです。

― 採用と育成を一貫した体制で支えるにあたってのハードルと、その乗り越え方はあるのでしょうか?

原: 採用と育成が分断してしまう理由の一つに、組織が分かれているだけでなく、それぞれが持っているKPIが違うということがあります。採用担当は採用予定人数に対する達成率に設定され、育成担当は内定者の企業理解度やパフォーマンスの向上率、研修の満足度などに設定されている場合が多いですよね。

これを、社内で決めた「一人前」の姿に入社までにどれだけ近づけるか?ということを共通の目標にしてみるのも一つの手かもしれません。

採用担当と育成担当がその一つの目標に向かって情報を共有し合い、一人ひとりにきめ細かい対応をしていく。そんな体制が築けるといいのかもしれませんね。

― 今日はありがとうございました!

内定者の不安を解消し、ポテンシャルを引き出す。社員を巻き込んで、社員のポテンシャルもまた、最大まで引き上げる。

そんな内定者研修が実現できれば会社にとってももちろん利益があるので「三方良し」ですが、採用と育成の担当やKPIが分かれていることが理由で情報の連携がうまくいかず、実現が難しいという読者の方も少なくないのではないでしょうか。

また、そもそも入社前の内定者に割けるリソースがない…という切実な問題を抱えた方もいらっしゃると思います。

実際にこうした課題をどうクリアしているのかという点については次回、マイナビで人事を担当している松村宏和へのインタビューで聞いていきたいと思います。

バックナンバー
【第2回】確かな成果があるから続けられる マイナビ流「採用担当制」とは?

【第3回】覆面新入社員座談会 内定者時代に感じていた「不安」について教えてください

【第4回】内定者120名のモチベーションを維持する株式会社キャンのコミュニケーション術
  • 人材採用・育成 更新日:2021/05/26

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