介護人材の定着率を上げるには? 新人より〇〇への教育が有効!
毎年のように離職者が出ると、自法人は特に離職が多いと思ってしまいがちです。しかし、離職に悩む介護法人の採用担当者に実際の離職率を聞いてみると、それほど高くないケースが少なくありません。
まずは、介護業界と全業界の離職率の平均値を確認し、自法人と比べてみましょう。
介護労働安定センターの調査によると、2021年10月から2022年9月までの介護職、訪問介護員の2職種合計の離職率は14.4%です。(※出典:介護労働安定センター「令和4年度介護労働実態調査」)
一方、厚生労働省の調査によると、2022年1年間の常用労働者の離職率は15.0%です。(※出典:厚生労働省「令和4年 雇用動向調査結果」)
上記のデータからわかる通り、自法人の離職率が15%前後であれば、平均的な数値であり、けっして高いとはいえません。
業種にかかわらず、どの法人でも、ある程度の離職は発生するものです。もちろん法人側になんらかの原因があることもありますが、本人の適性や家庭の事情など、法人とは関係のない理由で離職することも多々あります。
採用担当者は、採用した新人のうち1割程度は離職するかもしれないことを想定して採用を進める必要があります。対策の一つとして、採用の目標人数を多めに設定しておくのもよいでしょう。
新人の離職対策というと新人研修に力を入れる法人が多いようですが、離職を防ぐためには、新人よりも管理者・リーダーへの教育が重要です。
というのも、どんなに優秀な人材を採用して研修を実施しても、施設長やリーダーのマネジメントや部下への接し方に問題があれば、新人が業務へのモチベーションを維持できなくなったり、この職場では適切なフォローが受けられないと諦めの気持ちを抱いたりして、転職を検討するようになるからです。
介護労働安定センターの調査によると、介護職員を含む介護労働者が仕事を辞めた理由としてもっとも多かったのは「人間関係に問題があった」で、全体の約3割(27.5%)を占めます。(※出典:介護労働安定センター「令和4年度介護労働実態調査」)
当然ながら人間関係の問題には、管理者・リーダー職といった上司との関係性も含まれます。なかには、無自覚にハラスメントをしたり、威圧的な態度をとったりする上司もいるかもしれません。
具体的な解決策としては、管理者・リーダー職に、マネジメントや人材育成に関する研修を受けてもらうことが考えられます。法人内で研修を実施するほかに、外部の管理者・リーダー向けセミナーを利用するという選択肢もあります。
一般的に介護法人の管理者・リーダー職は、現場の介護職員からキャリアアップした人が多く、マネジメント教育を受けた経験がある人は多くはありません。だからこそ、研修を通して改めて教育することで、職員への接し方が改善され、離職防止につながる効果が期待できます。
定着率を上げるためには、上記のような新人が離職しないための対策や新人へのフォローも必要ですが、実は最も重要なポイントは「採用」にあります。
介護法人のなかには、選べるほどの応募が集まらず、応募してきた人材をとりあえず採用しているという法人も少なくありません。しかし、人手不足だからと人材をよく見極めずに採用していると、自法人の雰囲気に合わない人やそもそも介護業務への適性のない人はすぐに辞めてしまいます。
その状態でいくら離職対策をしても、定着率はなかなか上がらないでしょう。つまり選考段階で自法人にマッチする人材をしっかり見極めて採用することこそ、離職を最低限に抑え、定着率を上げるために有効な手立てといえるのです。
採用力が高まると、人手不足が解消され、職員がより休みを取りやすくなるなど労働環境もよくなるため、さらに新人が定着しやすくなります。
若手人材を採用したいのであれば、採用に関連する一連の業務を人事や管理者だけで行わず、入職して数年の若手職員を巻き込むことも大切です。
なぜなら若い世代の求職者から見ると、既存の若手職員は、その法人に入職した場合のモデルケース(実例)だからです。
また、管理者やベテラン職員よりも若手職員のほうが話しやすく、気軽に質問しやすいのも利点です。
選考過程で求職者と若手職員の接点を増やすことで、自法人に興味を持ってもらい、志望度や入職への意欲を高める効果が期待できます。
具体的な巻き込み方としては、たとえば合同説明会などのイベントや説明会の場で、自法人に入職した理由や仕事の魅力について若手職員にスピーチをしてもらうと、求職者が入職後のリアルな働き方をイメージしやすくなるでしょう。
そのほか、選考の初期段階で若手職員が応募者とオンライン面談を行う、採用ブログやSNSなどの採用広報の企画に若手職員の意見を取り入れたり、登場してもらったりするといった巻き込み方もあります。
ただし、選考過程で求職者に接する若手職員には、基本的なマナーや求職者への適切な対応を教育しておく必要があります。
- 人材採用・育成 更新日:2023/12/27
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