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採用における「歩留まり」の重要性とは?選考過程の歩留まり低下要因と改善策<ダイジェスト版>

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採用フローにおいて、各フェーズ(段階)に進んだ人数の割合を「歩留まり」と呼びます。採用が激化する状況で企業が採用を成功に導くには、各フェーズの歩留まりを把握し、改善に努めていくことが特に重要です。
その理由や背景、歩留まりが低下する要因と改善策について、マイナビで企業の採用業務に関わる4名に聞きました。今回は応募~内定までの要点をまとめています。
より詳細な内容は下記の特集ページよりご確認頂けます。 特集:マイナビ社員が答える!歩留まり改善方法とは?

このインタビューに答えた社員

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  • 執行役員 転職総合企画・採用支援統括本部 統括本部長 坂本 宏

    入社以来、一貫して中途採用領域を担当。 近畿、東海、東京エリアの営業責任者を歴任後、 現在は大手企業専任チームと、採用商材の企画運用を行う採用支援セクションの責任者を務める。15年間で約3,000社以上の企業の採用を支援。

 
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  • 転職総合企画・採用支援統括本部 統括部長 安高 隼平

    2007年4月入社。 採用代行(RPO・アウトソーシング)、採用管理システム(アクセスオンラインキャリア)や、市場ニーズの高まりを見せる採用動画など様々な商品の企画・運営・管理を担当。

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  • 転職インサイドセールス部 部長 茅野 航太

    2012年よりマイナビ転職(求人サイト)の営業として約10年間、大手から中小企業までのクライアントの中途採用に携わる。 2022年6月よりインサイドセールス部へ異動し、戦略的市場分析を担当。

 
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  • 転職キャリアパートナー統括部 部長 鎌田 ゆうか

    2012年新卒入社。マイナビ転職(求人サイト)の営業を経験した後、2020年より転職キャリアパートナーへ異動し求職者と企業のマッチングを行う成果報酬サービスに従事。

ページ上の各種情報は2022年11月時点のものです。

Q採用にはどんなフェーズがあるのか、歩留まりとは何を指すのかを改めて教えてください。

坂本宏(以下、坂本):「応募→書類選考→面接設定(日程調整)→面接→内定→内定承諾→入社」というのが基本的な流れです。

各フェーズから次のフェーズに移った際に残った人の割合が「歩留まり」です。それぞれ「面接設定率」、「内定率」などと言い換えることもできます。一方、「面接辞退率」や「内定辞退率」など、残らなかった人の割合にも注目する必要があります。

Qなぜ採用において歩留まりを重視する必要があるのですか。

坂本:歩留まりを把握することで、採用フローにおけるボトルネックをあぶり出すことが出来るからです。
というのも、近年は有効求人倍率が高く、採用を考える企業にとっては厳しい状況が続いています。そんな中では、応募者を集めて母集団を増やすことはもちろん、せっかく出会えた候補者を逃さないようにすることが非常に重要になってきます。

求職者が企業を認知し、応募して採用されるまでのすべての体験を「採用CX(候補者体験)」と呼びます。候補者を逃さずに採用につなげるには、採用フローの各フェーズで適切な対応をして採用CXを向上させる努力が欠かせません。歩留まりの把握は、採用CXを設計するにあたっての最初のステップといえます。

Q各フェーズの歩留まりを把握すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

安高隼平(以下、安高):これまでに多数のクライアント企業の人事・採用担当者から相談を受けてきましたが、担当者の多くは「十分な人数が採用できない」「マッチする人材が応募してくれない」などの悩みを持ちながらも、その理由や原因をはっきり認識できていません。

そんな場合でも、歩留まりを算出して細分化して見ていけば、採用フローのどこに課題があるのかが明確になります。歩留まりの改善策は各フェーズで異なるので、まずはどのフェーズで歩留まり低下が生じているかを把握する必要があるのです。

坂本:歩留まりは、指標として数値化できるのがポイントです。例えば、20名から応募があって、書類選考の通過者が10名で、そのうち面接を受けた方が3名、内定者が2名で、最終的に内定を承諾したのが1名だけだった場合、書類通過率(有効応募の割合)と面接設定率が低い可能性があるという気づきが生まれます。歩留まりを知ることで採用工程の解像度が上がり、数値から課題を見出して対策を考えられるようになります。

Q中途採用での主要な歩留まりの平均はどれくらいなのでしょうか。データがない場合は感覚的な平均値を教えてください。

坂本:まず書類選考通過率(有効応募の割合)は、募集職種やエリア、求める経験値、その他の条件によって大きく異なります。そのため平均を出しづらいのですが、有効応募が少数しか残らない場合は、歩留まりが低いといえます。 面接設定率(面接の予約が完了した人)については、応募者の企業や募集内容の理解度などによって異なるため数値では平均を出せませんが、感覚的な平均値でいうと、対面の面接が主流だった頃は50~60%でした。ただ、近年はオンライン面接が増えた影響で、70~80%に高まっていると感じています。
内定率は、2021年度の実績をもとにしたマイナビの調査によると、約45%です。 ※出典:マイナビ「中途採用状況調査2022年版(2021年度実績)」(2022年1月調査)

Q面接後の辞退率や内定後の辞退率の平均はどれくらいですか。

坂本:面接後の辞退は、一般的には面接実施前の辞退率ほど高くありません。ただ、このフェーズまで残った応募者は内定につながる可能性が高いので、ここで辞退されるのは企業にとっては大きな痛手です。内定後の辞退は、感覚的な平均値としては40%ほどです。一般的な転職者は、複数の求人募集に応募して内定後、その中から比較検討して転職先を選びます。もちろん最終的に入社できるのは1社だけなので、このような歩留まりとなります。

各フェーズの歩留まりが平均より悪い場合は、課題を明らかにして改善策を講じる必要があります。

Q各フェーズで歩留まりが低い場合に考えられる要因とは?改善策もあわせて教えてください。

【総応募が少ない場合】

坂本:ターゲットと採用手法がマッチしていない、もしくはその手法で開示されている求人情報が不足しているか、うまく拡散されていない可能性があります。総応募を集めるには、多種の求人サイトや人材紹介といった採用手法の中から、自社が求めるターゲットが集まりやすい手法を選択し、そこで情報が十分に拡散される状態にしなければなりません。改善するには、採用手法とターゲットが合っているかを確認したうえで、そこでの情報開示の仕方を見直す必要があります。

鎌田ゆうか(以下、鎌田):適した採用手法は、業種や職種、エリア、ターゲット、採用の緊急度の高さなどによって異なります。どの採用手法も、それぞれに特徴があるため、複数の手法を組み合わせるのが基本です。

【有効応募が少ない場合】

坂本:まず考えられるのが、人事・採用担当者と人材を求める現場との合意形成が十分にできていない可能性です。例えば、市況感を理解していない現場の管理職が高すぎる基準で書類選考していて、本来なら残すべき人材を落としているケースはよく見られます。改善するには、人事・採用担当者と現場とで、市況感を改めて共有し、募集要件を入念にすり合わせる必要があります。

安高:もう一つの大きな要因が、求人サイトや自社の採用サイトなどでの情報開示が不足 していることです。特に多く見られるのが、「こんな人材を求めている」という基本的な情報開示が十分にできていないケースです。有効応募を増やすには、業務内容とその業務に必要となる専門知識やスキルはもちろん、「コミュニケーションが得意」「自身で考え行動できる」といったヒューマンスキルも、もれなく表記することが重要です。

茅野航太(以下、茅野):基本的な情報開示はできていても、自社の魅力や社風を求職者に伝えきれていないために有効応募が集まらないケースも少なくありません。その場合は、まず求人サイトや採用サイトの求人情報に自社の特徴や強みをしっかり盛り込む必要があります。そのうえでさらに、インタビュー記事やブログ記事、動画、SNSなどの方法で、社員のキャラクターや社内の人間関係が伝わるコンテンツを発信していくといいでしょう。というのも、最近の求職者は、職場の人間関係を給与額と同程度に重視する傾向があるからです。

安高:自社サイトや求人サイトなどに社員のキャラクターや人間関係、職場のカルチャーが伝わるコンテンツがあると、「こんな環境なら自分に合いそう」と感じた人が応募してくれるようになります。例えば社内で活躍しているAさんのような人を採用したいと思っているなら、インタビュー記事やインタビュー動画のようなAさん自身が登場するコンテンツがないと、求職者には、企業が求めている人材の具体像が伝わりません。

求人サイトなどの求人媒体でも社員の人物像に迫るアプローチはしてくれますが、自社のコンテンツとして自社の採用サイトにも掲載するのがベターです。

【面接設定率・来社率が低い場合】

鎌田:いずれも根本的な要因は、企業への認知・理解度が低いために、候補者の志望動機が十分に形成されていないことです。志望動機があいまいだと面接の候補日に都合をつけづらいときや多忙なときに面接の優先度が下がり、「無理に面接を受けなくていいや」という判断になってしまいます。対策は、タッチポイント(応募者と接触する機会)を増やし、細やかに情報提供することです。大きく分けると、日程調整をしやすくするための情報提供、志望動機を形成するための情報提供という2種の対策が必要です。

まず日程調整をしやすくする工夫をあげると、企業から応募者に日程調整の連絡をする際に、面接に関する詳細な情報開示を行うことです。面接設定率が低い場合、企業側からの面接の日程調整の打診メールの文面が簡潔すぎて、必要な情報が不足しているケースが目立ちます。求職者は、他社の選考状況に応じて面接の優先順位を判断します。中途採用では在職中の方が多いので、平日は仕事の都合もあります。そんななかで、企業からのメールに候補日しか書かれていないと「日程が合わないから」と諦めてしまいやすくなります。

対面が基本だけどオンライン面接も可能、18時以降の夜間対応や土日の面接が可能、という場合は、その旨をメールに付記すると、設定率が上がるはずです。また、面接の所要時間や面接時の適性検査・会社見学の有無についても、書類選考を通過した段階で情報開示しておくと、日程調整しやすくなると思います。

茅野:志望動機を形成して来社率を高めるための工夫としては、例えば私が担当した求人広告のクライアント企業には、面接予定の応募者全員への前日の電話・メールでの連絡を徹底してもらっていました。さらに、本番の面接の前に0.5次面接を実施して、応募者と軽く面談しておくという方法もあります。また、応募者が並行して他社にも応募していることを考えると、選考のスピード感を高めることも対策の一つです。

【面接後の辞退が多い場合】

鎌田:面接後に辞退する理由は、やはり、実際に行ってみたら求人情報のイメージと違った、というものが多いです。面接官の態度がドライだった、会話のキャッチボールができなかったと感じて辞退する候補者もいます。面接で職歴などを聞いた結果、応募していたのとは違う職種を提示されたというケースもあります。

面接後の辞退を防ぐには、面接中のフィードバック(求職者の発言などに対して面接官が感じたことを伝えること)が重要です。いいなと感じた候補者には、その場で来てほしいと率直に伝えていただきたいですね。「あなたのこういった経験はうちでも活かせそう」、「入社後はこんな業務を任せます」などと、候補者が入社後に働くイメージができるような言葉をかけると、歩留まり改善につながると思います。

坂本:企業によっては、面接官が現在の売り手市場の市況感を理解しておらず、企業側が選ぶ立場という認識のままで面接を行っているために、高圧的な態度と受け取られて面接後辞退を招いているケースもあります。このようなケースでは、面接慣れしていない現場の社員が面接官をしているパターンが多いので、社員に対して市況感・マナーを含めた教育をすることが改善策になります。

安高:ほかに、この時点ですでに他社で内定が出たからという理由で辞退されるケースもあります。つまり、他社との選考スピードに負けたケースです。こうした事態を防ぐためには、面接段階で他社の選考状況を聞いておくことも有効な対策になります。そうすれば、他社の最終面接が1週間後に控えているのであれば、自社ではその前に最終面接を入れるというように、手を打てますから。

【内定辞退が多い場合】

鎌田:内定辞退の理由は、ハード面(物理的な条件)とソフト面(社風や社員の人間性、転職軸といった目に見えない価値)の2種に分かれます。ハード面で多い辞退理由の一例が、提示された年収額が希望額より低かった、というケースです。

坂本:一方のソフト面の辞退理由は、例えば「社風が合わないと感じた」「他社の業務の方がおもしろそう・経験を積めそう」といったものです。内定後の最終段階でソフト面を理由に辞退される場合、入社後の働くイメージをさせきれなかったことや、惜しくも他社との比較で選んでもらえなかったことが主な要因と考えられます。

茅野:加えて、面接で来社した際に、すれ違った社員が挨拶をしなかった、エレベーターで順番を譲らなかったといった来社時の対応がソフト面の辞退理由に影響している可能性もあります。

鎌田:内定辞退を減らすには、ハード面・ソフト面にかかわらず、内定後フォローに力を入れて、入社を迷う原因となる候補者の不安を払拭する必要があります。例えば辞退理由になりやすい年収額については、事前に候補者に希望額を聞いたうえで、その額を提示できるのであれば明確に伝えましょう。年収額が候補者の希望額を下回る場合には、2年後3年後の年収アップイメージやモデル年収を伝えておくといいでしょう。

坂本:年収額に関しては、他社との差額が数百万円なら難しいかもしれませんが、 多少の差なら、内定後のフォロー次第で入社してもらえるケースもあります。条件面で他社に劣っていれば勝てないと思い込みがちですが、実は候補者にとっては、社風や人間関係、自分の転職軸といったソフト面も無視できない要素です。「他社より年収額が多少低い代わりに、自社にはこんなソフト面のメリットがある」とアピールできれば、入社してもらえる可能性は十分にあります。採用担当者が候補者の目線に合わせて口説けるかどうかで、内定辞退率は変わってきます。

鎌田:内定後フォローのコツは、これまでのフェーズで足りない部分を補うことを意識することです。例えば人事・採用担当者や役職クラスが面接官をしている企業では、採用フローのどこかで現場の先輩社員との接触の機会を設けると、候補者をグリップしやすくなります。私が担当する人材紹介の現場では、内定後のタイミングで、クライアント企業に、現場の社員もまじえたオファー面談の設定を依頼しています。

茅野:内定後の対応は、条件面や業務内容の話がメインで、事務的になりがちです。経営者やトップに近い立場の社員から会社の将来性やビジョンを伝えて、目標を共有する機会も必要だと思います。

坂本:さらに、採用フロー全体を通して採用CXを高める努力も不可欠です。一連の採用フローで、候補者の疑問に対して情報をしっかり提供できるかどうか、面接時のフィードバック、候補者が訪問した際の社員の態度……それらすべてのタッチポイントにおける対応(候補者にとっては体験)の足し算が、その企業の評価となります。採用CXは、これとこれをしたからすぐに高まるというものではないため、継続的に求職者への情報発信や対応の仕方を改善していかなければなりません。

Q複数の歩留まり改善策を教えていただきましたが、実践するとなると難しい場合もあるのでは。企業が歩留まり改善を実現するためには、何が必要でしょうか。

坂本:歩留まりの改善をスムーズに進めるには、社内の理解・協力が欠かせません。本来、採用は企業の成長がかかった重要課題ですが、多くの企業では採用活動が人事任せになっています。そういう状況では、人事・採用担当者がどんな改善策を講じてもうまくいきにくいのは当然です。
解決策はというと、発信力のある社内のキーマンを巻き込むことが第一歩になります。そのキーマンが、採用活動や歩留まり改善の重要性を理解して発信に協力してくれれば、自然に他の社員たちも協力してくれるようになります。そのような巻き込み力が、今の人事・採用担当者には求められているのではないでしょうか。
採用サイトやブログ、SNSなどでの情報発信に現場の社員を登場させて巻き込んでいくと、社内に採用活動への理解が広がる効果が期待できます。

安高:歩留まりや辞退の理由といったデータを取っておいて、今後に活かせるかどうかもカギになると思います。
例えば、内定辞退者に辞退の理由をヒアリングしたところ、「他社の方が好条件だから」という答えが得られたとします。もし他社でも選考に進んでいることをもう少し早い段階でつかんでいれば、他社より良い条件を出せていたかもしれませんよね。こうした分析を「次は一次面接から他社の選考状況を聞いていこう」というように採用フロー全体に反映させて、PDCAサイクルを回していければ理想的です。

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