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障がい者採用も「プレ期間」がカギ 最新動向から見る新卒採用のポイント

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企業が守るべき障がい者の法定雇用率が2021年3月に引き上げられ、間もなく2年が経過しようとしています。
その影響もあり、障がい者採用者数・実雇用率ともに過去最高を記録しています(※ 厚生労働省発表「令和3年障害者雇用状況の集計結果」より)。

一方で、一般の学生と比較すると障がい学生の母数は少なく、障がい学生の新卒採用はまだまだ難しいことも事実です。そこで今回は、障がいのある学生を対象に行った就職活動に関する調査結果を読み解きながら、就職活動の実態と採用のポイントをお伝えします。

<調査概要>
調査手法:WEB調査
調査期間:2022年8月1日〜8月4日
回答数:200名
調査対象:次の条件を全て満たす方

  • 「障害者手帳」を持っている、または申請中(種別・程度は不問)
  • 下記のいずれかを卒業した方、もしくは卒業予定の方 ※()内は今回の調査の割合
    大学院(21%)/四年制大学(54%)/専門学校(13.5%)/短期大学(6%)/高等専門学校(5.5%)
  • 新卒での就職活動経験のある2021年卒~24年卒

調査委託先:GMOリサーチ株式会社

― 障がい者の法定雇用率がアップし、多くの企業が採用のためにさまざまな施策を行っている一方、障害者法定雇用率未達成の事業主は納付金を納める義務があります。
しかし、事業主が納付金を納めるだけですと強制力は弱いように思われます。まずは企業が障がい者採用を進めるメリットについてお聞かせください。


井上: はい。たしかにそれだけでは強制力は弱いと思います。一方で、雇用率を守らない状態が続くことで社名を公表されるペナルティもありますので、それを避けたいという企業側のお考えはあると考えられます。

ただ、障がい者採用には法定雇用率の順守という以外にも、企業側にメリットがあることをぜひ知っていただきたいと思っています 。

― 具体的にはどのようなメリットでしょうか。


井上: 障がいにはさまざまな種別があり、人によって「できる・できない」が一定ではありません。そのため、障がい者を雇用するに当たっては「社内のどのポジションで、どのような業務をお任せできるのか」を精査する必要があります。

その際に、必然的に社内の仕事の棚卸しし、最適化を併せて行うことができるというのは大きなメリットです。

― なるほど。働き手が不足している時代ですから、障がい者採用に限らず、そういった整理を行うことで採用戦略を最適化できますね。


井上: そのとおりです。障がい者採用を考えることは、採用戦略全体を考えることにつながります。それはもちろん、障がい者の雇用にも役立ちますし、一般の社員を採用する際にも有効です。
また、大企業を中心にダイバーシティの観点から障がい者採用を積極的に進めている企業もあります。
ぜひ、積極的に障がい者の採用を行っていただきたいですね。

― ではここから、調査結果を見ながらお話を伺いたいと思います。まずは近年の就職活動前の学生にとって定番となっているインターンシップについてです。参加時期を尋ねた項目では、ほぼ一般の学生と変わらないグラフの形になっています。

井上: はい。昨年と比較すると7月に参加したという学生が大きく増えていますが(8.5%→20.0%)、この傾向も一般の学生とほぼ変わりません。
インターンシップ実施時期の早期化というトレンドが、障がいのある学生にも見られます。ただし、インターンシップの開催形式について尋ねると、「対面形式」のものに参加した方が一般の学生よりも多く、また体験型のプログラムに参加する方が多い傾向です。

― 確かに、一般の学生では群を抜いて人気のある「グループワーク」が4位で、それより上は全て体験・見学のプログラムですね。


井上: そうなんです。理由は2つあります。まず、例えば視覚や聴覚に障がいのある学生は、グループワークに参加することが難しいケースがあるということが1つ。そして、障がいのある学生は、「自分がその職場や職種で働けるかどうか」を、インターンシップを通じて見極めたいと考えていることがもう1つの理由です。
障がいの種別によって、それぞれ「できること・できないこと」が異なりますから、実際に体験して確認したいという希望が表れているのです。

― 「内々定企業に入社したいと最初に思ったタイミング」を尋ねたアンケートでも、「インターンシップ参加時」は上位にあります。

井上: はい。こちらも一般の学生とほぼ変わりませんが、先ほどお話ししたような理由によって、障がいのある学生を採用する場合には、インターンシップを含めたプレ期間の採用広報が特に重要です。

体験型のプログラムで現場のリアルを知ってもらい、できれば先輩に当たる障がい者の社員を紹介するなどして、彼ら・彼女ら自身が判断できる材料を早い時期に提供する。障がいのある学生を採用する際にはご留意いただきたいポイントです。

― 早期に判断材料を提供するという点では、会社説明会も有効かと思いますが、いかがでしょうか?


井上: はい、WEBで参加できる合同会社説明会に参加したことがあるという障がいのある学生は多くなっています。
井上: 移動に困難を感じる学生にとってメリットがあるのはもちろん、近年は技術の進歩によって字幕のリアルタイム表示などの精度も上がってきましたので、聴覚に障がいのある学生や視覚優位の発達障がいの学生にとっても参加しやすくなっています。

― 障がいのある学生向けにWEB説明会をする際に配慮する点はありますか?


井上: 字幕表示があるかどうか、顔出しの必要があるか、といった点は先に伝えるべきだと思います。

― 聴覚に障がいのある学生向けの配慮として「字幕」は理解できるのですが、顔出しの必要性はどういった理由でしょうか?


井上: 精神障がいや発達障がいのある学生の場合、周囲にオープンにしていない可能性があります。顔出しをすることで、意図せずに知られてしまうことを避けようという方は少なくありません。

― なるほど。企業側に求められる重要な配慮ですね。


井上: そうですね。ただ、障がいのある学生に配慮しようと思うばかりに、タイミングを逸した施策を行ってしまいやすいという現状もありますので、ここは気を付けたいポイントでもあります。

― 配慮が裏目に出ることもあるということですか?


井上: 最初に見たグラフ(障がいのある学生のインターンシップ参加時期を示したもの)からも分かるように、就職活動をしている時期は一般の学生と何ら変わりません。

一方で、企業側は障がいのある学生の採用活動を一般枠採用の後に実施している場合もあり、タイミングのミスマッチが起こっています。

基本的には、障がいのある学生も一般の学生と同時期に就職活動をしていますから、時期を合わせて採用活動を行い、インターンシップも一般の学生と同じタイミングで参加してもらう方が望ましいですね。

― とはいえ、その場合は企業側もサポート体制を整える必要があるのではないでしょうか? それがタイムラインのズレの原因にもなっていると思います。


井上: 事前に電話やメールなどで学生側がプログラムを確認できるような仕組みは必要だと思いますが、逆に言えばそれさえ整備しておけばあとは学生本人が参加できるか、できないかを判断できますので、企業側にとっても負担の少ない方法だと思います。
「配慮」によって学生の機会が損なわれるよりは、その方が良いと考えます。

― なるほど。なかなか気付きにくい視点ですね。


井上: そういった「配慮」によって、それまでの学校生活では自分自身を「障がい者」であると感じてこなかったが、就職活動を通じて初めて意識するようになったという学生も多くいます。

学生時代は自分の障がいのことを知っている友人や教師、親と過ごす時間が多いですから、あまり意識することなく暮らしている学生も多いんです。
しかしながら、就職活動では自分のことを知らない人とも多く出会いますから、その都度、面接官や採用担当者に自分の障がいについて説明することで、改めて自分の障がいを実感するそうです。

― 実際、仕事をする上で必要な合理的配慮を考える上でも重要な情報のやり取りになりますので、そういった場面は多そうですね。


井上: はい。前述のとおり、障がいのある学生の活動時期や企業を選ぶプロセスは、基本的には一般の学生と変わりません。一方で、「やりたい仕事」が障がいによって「できる仕事」ではない可能性があるという点においては、一般の学生と異なります。
そのため、障がいのある学生は対面式で体験型のインターンシップに積極的に参加することで、自分の希望する仕事が自分にとって「できる仕事」なのかを見極めようとしています。

必要な情報はきちんと提供しながら、特別扱いすることなく学生本人の判断を促す。そのような態度を意識すると良いかと思います。

― 実際、学生側の動きを見ると、「一般枠のみ」または「一般枠と障がい者枠の併用」で就職活動を行っている方が多いですね。

井上: はい。障がい者募集枠のみで就職活動をしている学生は21%にとどまり、一般枠と障がい者募集枠の両方を各求人情報によって応募を分けている学生が大半です。
そのため、障がい者募集を行っている専門媒体だけではなく、採用ホームページや就職情報サイト内でも障がい者募集に関する情報をPRしていただくことが重要です。

― 企業が障がい者採用を行う際に役に立つサービスは他にありますか?


井上: 採用工数があまり掛けられない企業の方や、初めて障がい者採用を行う場合には、エージェントによる紹介が受けられるサービスがお勧めです。
障がい種別や必要な配慮について熟知した専門家が、学生自身にヒアリングをして個別の事情を熟知した上で企業とのマッチングを図れますので、双方にとってメリットの大きいサービスです。

障がい学生のための就職情報サイト:マイナビチャレンジド
就職活動情報はもちろん、障がいのある学生向けの就活に役立つコンテンツを提供しています。企業を検索する際、「障がい者への配慮」や「雇用実績」での軸を用意しており、より企業を探しやすいサイトにしています。

障がい者に特化した人材紹介サービス:マイナビパートナーズ紹介
マイナビグループの特例子会社であるマイナビパートナーズが行う、障がい者に特化した人材紹介サービスです。
特例子会社として培った雇用経験と独自の採用ノウハウを生かし、無料の面談など手厚いフォローで障がい者採用のお手伝いをさせていただきます。


― 企業側にとっても事前に必要な配慮が知ることができるのはありがたいですね。


井上: そうだと思います。「どのような障がいがある学生が来るかが分からない」という状態で準備をするのは大変なことですが、事前に「車椅子なので段差を少なくしましょう」とか、「視覚に障がいがありますので社内に点字ブロックを設置しましょう」というような具体的なアドバイスを受けることができます。

また、企業の事業内容・業務内容からアドバイスすることもできます。雇用率の義務はあるのに、自社での採用は難しいと感じている企業の方は一度ご相談いただけるとお力になれると思います。

― 今日はありがとうございました!

数字からも分かるように、障がいのある学生の就職活動は一般の学生とさほど変わりません。
就職活動時期も、企業選びの動機も基本的には一般の学生と同じでありながら「できる仕事」の中で自分の就職先を探さなくてはならない彼ら・彼女らへの理解は求められますが、一方で過剰な配慮が気持ちを遠ざけてしまうことも往々にしてあるようです。

法定雇用率が引き上げられて間もなく2年。障がい者採用を本格的に考えているという企業の方も多いと思いますので、今回の記事が参考になりましたら幸いです。
  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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  • 人材採用・育成 更新日:2022/10/07
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