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【専門家インタビュー】新卒で障がい者雇用を行う企業側のメリットと、その導入方法とは?

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社会的意義の面からも、法的義務の面からも注目されている障がい者雇用。2021年3月に法定雇用率が0.1ポイント引き上げられ、民間企業の場合、2.3%となりました。さらに、対象となる事業主の範囲が、従業員45.5人以上から43.5人以上に広がり、対応に迫られている企業が増えています。

しかし、目の前の「法定雇用率の達成」が目的となってしまっている採用担当者が多いのが実情のようです。一人ひとりが能力を活かし、企業の成長に貢献しながら、長く働いてもらうためにはどうすればよいのでしょうか? そのひとつの方策として、障がい者の新卒採用が挙げられます。

そこで今回は、企業向けに障がい者雇用を実践するためのコンサルティングやサポートを行う「障害者雇用ドットコム」代表の松井優子さんに、新卒の障がい者を採用する企業側のメリットとノウハウについてお話を伺いました。
まず、新卒障がい者の就職ルートですが、大卒の場合には、一般の学生と同じように就職活動をします。専門の就職サイトやエージェントサービスもあり、利用する学生も増えています。

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より配慮が必要な場合には、ハローワーク主催の合同面接会や就労支援機関を通して就職することになります。
独立行政法人日本学生支援機構の調査によると、令和2年5月1日現在、全国の大学、短期大学及び高等専門学校における障がい学生数は35,341人で、学校全体の学生数の1.09%に相当します。前年度と比較すると減少していますが、コロナ禍のオンライン授業により通学しなかった場合もあったため、大学によっては学生の把握が十分にできなかったのではないかと推測されています。

つまり、障がい学生数は継続して増加傾向にあり、専門知識や高い能力を有する学生を採用しやすい状況にあると言えます。
まず、「障がい者雇用は一般の雇用とは違う難しいもの」「何か特別のこと」と考える必要はありません。

もちろん配慮や理解はある程度必要ですが、本来、人材採用は、組織が必要とする人材を獲得するためのものです。しかし、なかにはその本質を考えず、法定雇用率の達成だけを目的として採用するケースが見られます。
そのため、障がい者の業務を無理やり作り出したりするので、組織への負担が大きく、当事者にとっても「やりがいが感じられない」といったことが少なくありません。

反対にうまくいっている会社では、採用の本質的な目的が理解されています。障がいの有無に関わらず、求める能力を有する人材を採用し、本人の特性を把握しながら、仕事の進捗を確認したり、目標達成をサポートしたりする……といった、いわゆる“普通”のマネジメントができているということです。
障がい者を組織に迎え入れるにあたり、全体の業務フローを見直すことによって、仕事の効率化を図ることができたり、外注していたものを内製化することによって、コストを削減できたりします。

人材育成においてもメリットがあります。企業によっては、新卒の社員がなかなか配属されない部署もあるでしょう。そのような組織では、中堅に当たるような社員でも、マネジメント経験がない場合が少なくありません。こうした社員が障がい者へのレクチャーを行う機会を得ることで、マネジメントを経験することができます。ある企業の人事部長の方は、「育成を担当した社員が、自分の仕事以外にも気を配れるようになり、リーダー的な役割を果たしてくれるようになった」と、人材育成上のメリットがあったことをお話してくださいました。

また、こうした社員が、将来的に部署移動をしたり、役職についたりした際に、培われた新たな視点を新規事業計画や組織設計に役立てることで、SDGsの観点からも企業の成長が期待できます。
法定雇用率を達成するなら、中途で就労経験のある人材を採用したほうが効率的だと考えてきた採用担当者も多いかもしれません。個人差があるため一概には言えませんが、一般的な中途採用のメリット・デメリットについてお伝えします。

メリット

  • 就労経験があるため、企業で働くということについてある程度の認識ができている
  • スキルや経験が職務経歴書から読み取りやすく、任せられる業務がある程度事前に把握できる

デメリット

  • 一定のスキルや能力がある人は市場価値が高く、採用難易度が上がる場合がある

新卒採用の大きなメリットは、大学生活を送り、卒業をしていることが前提なため、コミュニケーション能力がある人材を採用しやすいうえ、組織に合わせて育成しやすい=長期定着が期待できるという点です。具体的には、以下のような例が挙げられます。

  • ある程度の学力や専門知識を備えている人材で母集団(採用候補者)を形成できる
  • 他社を経験していないので、自社の文化をスムーズに内面化しやすい
  • 企業の成長をけん引するコア人材として期待ができる
  • 学生生活を送ってきたため、通勤や、職場環境に対応できる可能性が高い
  • 新卒の同期とのコミュニケーションが期待できるため、長期定着が期待できる
  • 内定から入社まで時間があるため、受け入れ態勢が整えられる
学生に会う方法としては、障がい者採用専門の就職サイトやエージェントサービスをもっている人材紹介会社に相談する方法が挙げられます。

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その後、実際に選考から入社するまで、採用担当者が押さえておくべきポイントをご紹介いたします。
新卒の場合は就労経験がないため、通勤できるかどうかや、障がいにまつわる問題がどのようなときに表出するかが事前に分かりづらいといった問題があります。そのため、実習(インターンシップ)を一定期間、できれば2週間以上行うのが理想です。

学生にとっては、通勤できそうか職場の雰囲気や環境は合っているかがわかり、企業にとっては、本人の能力や必要な配慮が事前にわかるため、お互いがやっていけそうか、お試しができるというメリットがあります。
障がい者雇用をする企業では、「合理的配慮」を示す義務があります。どのような配慮を本人が求めているのかを把握し、それが組織として対応できることなのかどうかを判断し、難しければ、それに対して説明をすることが求められます。中には人事担当者が障がいについて聞くのを遠慮してしまうケースがあるのですが、そうすると入社前に十分なすり合わせができず、後々お互いの負担感が増えてしまうことがあります。そのため、お互い腹を割って話しておくことが重要です。

また、発達障害など、見た目でわからない障がいであればあるほど、一緒に働く社員が障がいを認識しづらい場合があります。どのような特性があって、どのような対応があると仕事がしやすいのかなどを、事前に配属先に共有しておくと、理解してもらいやすくなります。

加えて、障がい者の就労を支援する公的な機関もたくさんあります。もし雇用後に個人的な課題が出てきて、組織として対応することが難しい場合には、適切な支援機関に連絡がとれるように、前もってどのような機関があるのかを知っておき、コンタクトをとれるようにしておくと良いでしょう。
企業がどのようなことを求めているのかを、本人に伝わる形で伝えることが重要です。その企業でどのように活躍してほしいのか、キャリアビジョンを共に描いていくことが大切です。

障がい特性によっては、伝わりにくかったり、違うとらえ方をしていたりする場合もありますので、繰り返し伝えることや、伝えたことを本人の口から話してもらう方法は有効だと考えます。
障がい者雇用は、「事前に会社としての方針を決めておくこと」「配属先や担当者と情報を共有しておくこと」「マネジメント」の3つのポイントを押さえておけば、それほど難しいものではありません。

もしうまくいかないことが出てきた場合は、業務内容や配属先を変更するなど、柔軟な対応をすることもできるでしょう。障がい特性によっては、能力を発揮できるまでに、一般よりも長い時間がかかることもあります。少し長い目で、柔軟な姿勢で育成していくという心づもりで、企業と学生、お互いwin-winの関係を築いていきましょう。
  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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  • 人材採用・育成 更新日:2022/02/22
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