AtCoder学生ユーザー座談会「内定先、どうやって決めましたか?」
あらゆる業種で「DX」の必要性が叫ばれる昨今、これをお読みの採用担当の皆さまもなんとかして「先端IT人材」の採用をしたいとお考えではないかと思います。
とはいっても…… そもそもどこにいるの? いくらの年収を提示すればいいの? 面接のときに気を付けるべきことは? などなど疑問も多いもの。このあたりは、競技プログラマを見続け、企業とのマッチングも手掛けている AtCoder株式会社代表、高橋直大さんのインタビュー で多くの示唆を頂きました。
となると、気になるのが実際の学生の声。そこで今回はAtCoderユーザーの学生3名に協力してもらい「内定先を決めるまで」にどんなことを考えたのか、覆面座談会で率直な意見を伺いました!
Aさん(以下、A): 就職活動がきっかけです。2020年夏に国内の大手SIerのインターンシップに参加したのですが、そこの社員さんに「これ面白いよ」と紹介してもらいました。そこから続けています。
AMさん(以下、M): 高校生の頃から情報オリンピックに参加していて、自然とAtCoderにも参加したという流れでした。周りで普通に有名でしたし、競技プログラミングというもの自体が面白いと思いましたね。
AOさん(以下、O): 大学入学時に、何か特技を身に付けたいと思ってプログラミングサークルを探したんです。サークルメンバーの多くがAtCoderに参加していたのと、僕自身も数学オリンピックに出場したことがあったりして、競技プログラミングの面白さにはすぐ引かれました。
A: 学内の会社説明会や合同会社説明会がメインでした。
M: AtCoderJobsは使いました。後は、ICPC(※1)のスポンサー企業を調べたりして、競技プログラミングやテクノロジーに理解のありそうな企業を探していました。
O: AtCoderJobsは、自分のスキルレベルと求められているレベルが高い品質で可視化されているところがいいですよね。他の就職情報サイトも見ましたが、スキルの評価基準が曖昧に感じて、結局利用はしませんでした。
※1:International Collegiate Programming Contestの略。国際大学対抗プログラミングコンテスト。2020年大会ではGoogleやIBMといった国際的な大企業の他、日本国内からもPFN、freee、KLab、メルカリなどが協賛した。
M: これは採用面接ではなく、企業奨学金の面接だったのですが、人事役員とまったく話が合わず、嫌な思いをしました。「できる仕事・やりたい仕事・求められる仕事のどれをやりますか?」と質問されて、自分の思いを正直に答えたのですが、双方の意見を出し合って議論するのではなく、かたくなにその方のお考えを聞かされて…(笑)。
多くのエンジニアを抱える大企業で、しかも奨学金の面接だったので、自分のスキルやポテンシャルについて話すものだと思っていたのですが、結局はご機嫌取りが必要だったんですよね。
あれは何だったんだろう?と今でも思います。しかも奨学金はもらえませんでした(笑)。
O: 分かります(笑)。 僕は試されるように「何か質問はありますか?」と聞かれるのが嫌でした。僕は就職活動をマッチングと認識しているので、コミュニケーションが取れることが重要だと思っています。スキルや知識については、いくらでも吟味してもらっていいと思うのですが、そうでない部分で一方的にこちらを試すようなことをされると、残念な気持ちになります。
A: 僕は面接後の人事面談でズレを感じました。技術系の社員さんと話しているときは専門的な話で通じ合えるんですが、人事の方が出てくると…。こちらのスキルを曲解してスーパーマンだと思っているんじゃないか? ということがありますね。
スキルやポテンシャルを測るのは技術系の社員、カルチャーフィットを測るのは人事、みたいなすみ分けがあるといいのになと思います。よく分かっていないのに技術系の話に踏み込まれると、コミュニケーションは難しいと思います。
O: そうですよね。面接で自分のスキルについて話していて、相手が「じゃあこんなこともできそうですね」と見当違いなところで盛り上がっているような場合、「いや、全然違うから」とはやっぱり言いにくい(笑)。入社後のギャップにつながりそうなので、警戒してしまいます。
A: そういった求人を見たこともありますが、スーパーマン的に扱われて「なんでもできる」と思われても困るな… と手を出しませんでした。ある程度、自分のスキルセットがはっきりしてから、中途でなら興味があるかもしれませんが。
M: 大手アニメーション会社から演出エンジニア・開発職のアプローチは実際にありました。私は制作系の趣味もあり、その方面でも活動しているので非常に魅力的でしたが、IT業界の待遇と比較すると条件面で折り合わず、先に進みませんでした。しかし自分のスキルと照らし合わせて合致しそうだと思えれば、もちろんやってみたいですね。
O: 僕もAさんと同じく、自分が1人目だと厳しいな…と思います。何でもできるわけではないですからね。中途の方が一緒に入社して、その方と一緒にということであれば考えるかもしれません。
A: 大手企業にありがちなのですが「こんなことしています!」と大々的に宣伝しているにもかかわらず、コアな技術を自社で持っていない… というパターンに何度か遭遇しました。結局は外注を使っていて、社内ではSIer的な動きしかしていない。それでは、技術系を志望する場合にまったく魅力的に映りません。
しかも、見抜くのが難しいですよね。僕もインターンに行ってようやく知ったという感じでした。脚色なく、詳細に話をしてくれないと、結局は入社後にギャップを感じて辞めてしまうんじゃないかと思います。
M: 一口にプログラミングといっても、いろいろありますよね。何を、どんな方向性で、どのくらいのレベルを要求しているのかということは明確にしていただいた方がいいなと思います。
O: ある面接で具体的な業務の話もなく、唐突に「サーバーサイドとフロントエンド、どっちやりたいの?」と聞かれて戸惑ったことがありました。最初から求人を分けているなら話は別ですが、現場の状況にもよると思いますし、例えば新卒採用なら、その後に研修もあると思うので、いま聞くことではなくない? などいろいろ思うことがありました。その面接ではしばらく平行線をたどりましたが、双方の理解が深まっていたらまた話が変わっていたと思います。もちろんこちらも完璧とはいきませんが、お互いに丁寧なコミュニケーションを心掛けたいものです。
途中でMさんから出た「結局はご機嫌取りだった」面談の話では、他のお二人も身に覚えがあるようで、とても盛り上がりました。
Mさんの話は少し極端だったとしても、カルチャーフィットを探りたい、仕事観を知りたいなどの理由で「答えのない」質問や、逆に相手の意見を聞いているようで実は「人事側の考える答えがある」質問は、ついついしてしまいやすいのではないでしょうか。
彼らも、カルチャーフィットなどのソフトスキルを軽視しているわけではなく、「技術の話を聞かれるかと思ったら、そうではなかった」というシチュエーションに強く違和感を覚えているようです。
面接の目的は明確に、かつ、技術の話をする場合には彼らと同じレベルで話すことのできる人材を充てる必要があるのでしょう。
また、総合職採用への強い警戒感も印象的でした。自らのスキルに自信があり、また技術系の仕事がしたい、技術系のスキルを伸ばすのが好きだという優秀な人材だからこそ、の思いかもしれません。
いずれにせよ、これまでどおりの画一的な採用フローでは採用しにくい人材だと感じられたと思います。
インターンを上手に生かしながら、自社の求めるスキルを明確に伝え、彼らのスキルとの「マッチング」を考えること。これが、先端IT人材を採用するコツなのかもしれませんね。
- 人材採用・育成 更新日:2021/03/04
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