内定者研修は何をすればいい? 学生が持つ「3つの不安」を解消してスムーズなオンボーディングを
多くの企業では10月に内定式、翌年4月に入社式を行います。
この半年の「内定者期間」に、内定者は学生から社会人になるための準備をしなくてはなりません。
人生の中で、そう何度も訪れることのないこの大きな変化を内定者が安心して迎えるために重要なのが、「内定者研修」です。
しかし、前年踏襲で同じ研修を続けている企業や、そもそも内定者研修を行っていない企業も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、内定者研修の重要性や実施のポイントについて、マイナビで教育研修事業を手がける原 真一朗に聞きました。
この半年の「内定者期間」に、内定者は学生から社会人になるための準備をしなくてはなりません。
人生の中で、そう何度も訪れることのないこの大きな変化を内定者が安心して迎えるために重要なのが、「内定者研修」です。
しかし、前年踏襲で同じ研修を続けている企業や、そもそも内定者研修を行っていない企業も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、内定者研修の重要性や実施のポイントについて、マイナビで教育研修事業を手がける原 真一朗に聞きました。
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内定者研修を望んでいる学生は約8割 その理由とは?
— 2021年に同様のテーマでお話を伺った際には、コロナ禍による社会不安の増大や他者との接触減少によって内定者研修を望む学生が増えているというお話がありました。それから3年、状況はどのように変わりましたか?
原: はい。当時は学生が他の学生と話したり、職場を実際に見たりといった機会がないまま社会人になる不安を強く持っていました。そのため、マイナビのアンケート調査では約9割の学生が内定者研修を望んでいる、という結果が出ていました。
現在はコロナ禍も一定の落ち着きを見せ、当時とは状況が異なりますが、実は内定者研修を望む学生の割合はそれほど大きく変化していません。
— ぜひ、その背景について教えてください。
原: この背景には、今の学生が持つ「3つの不安」があると考えています。
まず1つ目が「一緒に働く仲間に対する不安」です。
コロナ禍を境に面接をオンラインで実施する企業が増えたため、それ以前と比較して「新卒同期」となる学生との接触割合が相対的に下がっていることが挙げられます。
以前であれば、グループ面接やグループディスカッションで会えていたはずの学生たちと会えていないということです。
そのため、「どんな人たちと同期になるのだろう」「同期とうまくやっていけるだろうか」といった不安を抱えてしまっているのです。
次が、「会社・働き方に対する不安」です。
現在の就職・採用活動はインターンシップに重心が置かれています。インターンシップは社内で実施されることも多いので、職場を見る機会は行動制限のあったコロナ禍と比較して増えているはずです。
しかし、インターンシップは実質的に採用活動の一環として行われているものであると学生は認識しているため、「本当の職場(働き方)を知らない」と考えているのです。
そのため、本当に自分が望むような環境・職種で働けるのか、知らない情報があるのではないか、という不安を持っています。
そして最後が「自分自身に対する不安」です。
この背景は複雑で、いくつかの要因が絡み合っています。まず、コロナ禍や円安、物価高、年金問題など、近年の情勢による社会不安です。「このような不安定な世界で、自分自身が社会人としてやっていけるのか」という根源的な不安があります。
さらに、社会不安は新卒で入社する企業はあくまでも「ファーストキャリア」であると捉える学生の増加にもつながっています。 その中で、「自分は本当にこの会社(内定先)で今後の社会人人生の基礎となるような学びを得ることができるのか」という不安も同時に持っているのです。
加えて、インターンシップによる仕事内容・情報の開示が進んだり、ジョブ型採用が広がったりしたことで、入社後に自分がやらなければならないことが具体的に想像できてしまうため、必要なスキルを本当に獲得することができるのか、という不安も生まれています。
— 売り手市場で、学生は不安なく就職活動をしているかと思っていましたが、実情は不安でいっぱい……ということですね。
原: もちろん、情報を取得する手段が豊富になって会社選びはしやすくなりましたし、希望した企業からの内定獲得もしやすくなりました。
そういった良い面もある一方で、「学生から社会人」という大きな変化を迎えるに当たっては不安も抱えている、ということですね。
内定者の「3つの不安」を解消するポイント
— ではここから、具体的に「3つの不安」を解消するために企業が内定者研修でできることをそれぞれ伺っていきたいと思います。
1:一緒に働く仲間に対する不安
原: 内定者研修というと、座学やワークショップなど、いわゆる「学び」の場を想像しがちですが、実はそれだけではありません。実際、学生アンケートでも多様なスタイルの内定者研修(フォロー)が求められていることが分かっています。
例えば、同期や先輩社員との懇親会や、グループワークなどもいいでしょう。また、SNSやチャットツールなどを使って内定者同士が交流できる場を提供することも有効です。
参考記事:運用ガイドDLあり|成功の極意は「Win-Winな関係」
新入社員に最高の状態で入社してもらうための内定者コミュニティ運用術
2:会社・働き方に対する不安
原: 内定者が「会社・働き方に対する不安」を持つ理由は、インターンシップや会社説明会、面接などの就活期間に触れる情報は「良いことしか言っていないだろう」と考えているからです。
つまり「社風や企業文化は本当に自分に合っているのか」「仕事とプライベートのバランスは取れるのか」「希望するキャリアを積めるのか」などについて本当の情報を知りたがっています。
それを解決するためには、まず採用活動の中で伝えてきた情報をさらに深掘りし、より具体的な情報を提供する必要があります。
特に近年はワーク・ライフ・バランスに関心を持つ学生も多いので、残業時間や休暇制度など働き方についての情報は厚く伝えていくと効果的だと思います。
真実を伝える中で、「自分とは合わない」と内定辞退を考える学生 も出るかもしれませんが、入社後のミスマッチやリアリティショックと比較すると、企業側はもちろん、内定者にとっても「むしろこのタイミングで良かったのだ」と捉えましょう。
また、歳の近い先輩社員との交流で「本音」の話を聞ける場を設けたり、内定者期間中、気軽に連絡の取れるメンターを付けたりするのもいいですね。
参考記事:確かな成果があるから続けられる マイナビ流「採用担当制」とは?
原: さらに、人生全体のキャリア形成についてしっかりフォローしていくことも重要です。
先ほどもお伝えしたように、最初に入社する会社は、あくまでも「ファーストキャリア」と考える学生も増えています。
もちろん社内でのキャリアパスも大切ですが、それ以上に、その後の長い社会人生活の基礎をつくり上げることのできる会社なのか、という視点でも見ているわけです。
そのため、内定者期間から社内だけでなく、「人生におけるキャリア」についても学ぶ機会を設けてあげることで、「(ファーストキャリアとして入る)会社に対する不安」だけでなく、次にお伝えする「自分自身に対する不安」の解消にも効果を発揮できます。
3:自分自身に対する不安
原: 最後に、「自分自身に対する不安」についてです。先ほど解説したように背景は複雑ですが、「自分のキャリア・人生に対する不安」と「自分のスキルに対する不安」に大別できます。
キャリアや人生に対する不安は1つの研修や施策で解決できるものではないので、ここまでに解説したようなフォロー施策を複合的に提供することで内定者自身が解決していくことを期待するしかありません。
一方、自分自身のスキルに対する不安は、「社会人としての基礎力」を養成するプログラムを提供することで、大部分が解消・低減できます。
名刺の渡し方や電話の取り方、メールの書き方といった基本的なビジネスマナーから、職場での人間関係構築を助けるコミュニケーション研修や、自己理解を助けるようなワークショップもいいでしょう。
また、ジョブ型採用などですでに担当業務や配属先が決まっている場合には、その職務に必要な基本スキルを育成する機会も設けると、さらに安心感につながります。
それらの研修を通じて、少なくともスキル面での不安を取り除いてあげることができれば、あとはキャリア研修など他の施策との組み合わせで学生が持つ不安の大部分を軽くしてあげることができるのではないでしょうか。
内定者研修には企業側のメリットも
— 最後に、内定者研修を行うことで得られる企業側のメリットも教えてください。
原: 第一に、内定者が不安を解消し、自信を持って入社してくれることでオンボーディングがスムーズに進み、組織にもなじみやすいというのが大きなメリットです。
それに加えて重要なのが、「内定者のことを理解できる」という側面でしょう。
内定者研修を通じて、採用担当者と内定者とが密に交流する機会が自然と生まれるため、一人ひとりの個性や能力が見えてきます。そうすると、配属決定の際にミスマッチが起こりにくくなったり、改善すべき職場環境・風土が見えてきたりもします。
これは長期的に見て社員の定着、活躍を促すことにもつながっていくので、企業側にとっても大きなメリットになりますね。
— 単に「スムーズにオンボーディングするため」ではなく、「内定者を理解するため」にも研修は大切ということですね。
原: はい。内定者向け研修とは、就職・採用活動期間に着飾っていたものを捨て、お互いに「本音で」交流することのできる機会です。
ぜひ、相互理解を深めて信頼関係を築く大切な時間であると認識して、企業側も主体的に内定者研修を実施していただけるといいと思います。
内定者の成長を支援することは、企業の成長にもつながる
最後に原が言っているように、内定者期間・内定者研修とは「相互理解」を深める良い機会です。不安定な社会状況の中で、学生から社会人へという大きな変化を迎える内定者が抱える不安を理解し、主体的な態度で研修に取り組むことで、内定者の成長はもちろん、企業の成長も期待することができるでしょう。
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- 人材採用・育成 更新日:2024/11/18
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