地元就職意向の推移と、学生が思う「地元就職者を増やすカギ」
有効求人倍率と地元就職希望者の推移を比較すると、ゆるやかな相関が見られます。有効求人倍率はそのときの経済状況を反映していることから、経済状況が地元就職意向にも影響していると言い換えられると思います。つまり、経済状況が比較的良いときは都市の大手志向が高まって地元就職希望者の割合は減少傾向になり、コロナ禍のように経済状況が不透明な状況下などでは倍率の高い都市部の大手企業に挑戦するよりも地元企業で堅実に就職しようと考える学生が増える傾向が見られるということです。
また、コロナ禍以降はそのような経済状況との関連以外にも、オンラインでの採用選考が導入されたことにより、地元を離れている学生がオンライン上で地元企業の情報収集をしたり、選考に参加しやすくなったりしたことで「距離」という障害が減ったことがこの傾向を後押ししていると考えています。
しかし、調査結果からは、“学生の中で地元や地方に対する人気が高まった”とは言い切れないデータも見られました。そこで今回のコラムでは、23年卒学生の働く場所と住む場所への考え方について、『2023年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査』を元に考察していきます。
また、コロナ禍以降はそのような経済状況との関連以外にも、オンラインでの採用選考が導入されたことにより、地元を離れている学生がオンライン上で地元企業の情報収集をしたり、選考に参加しやすくなったりしたことで「距離」という障害が減ったことがこの傾向を後押ししていると考えています。
しかし、調査結果からは、“学生の中で地元や地方に対する人気が高まった”とは言い切れないデータも見られました。そこで今回のコラムでは、23年卒学生の働く場所と住む場所への考え方について、『2023年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査』を元に考察していきます。
これには、さまざまな理由が考えられ、一概に「このような考えが背景にある」とまとめられないものだと見ています。学生のコメントにもいろいろな意見があがっていました。
一つには、将来性、やりたい仕事ができるかなど、東京の企業そのものにメリットを感じての意見です。また、給与のよさに関するコメントも見られました。前述のように、地元就職希望者の中には「実家で暮らしてお金を貯めたい」と考えている学生がいましたが、東京の企業に勤めたい学生からは「給与を多くもらえる企業に勤めることで貯蓄をしたい」という意見がありました。“貯金したい“という希望を叶えるために、実家暮らしで出費を減らすという考えもあれば、より高い収入を得るという考えもあり、そのことが地元就職意向も東京の企業勤務意向もどちらも上昇するという矛盾した現象の理由の一つであると見ています。
一つには、将来性、やりたい仕事ができるかなど、東京の企業そのものにメリットを感じての意見です。また、給与のよさに関するコメントも見られました。前述のように、地元就職希望者の中には「実家で暮らしてお金を貯めたい」と考えている学生がいましたが、東京の企業に勤めたい学生からは「給与を多くもらえる企業に勤めることで貯蓄をしたい」という意見がありました。“貯金したい“という希望を叶えるために、実家暮らしで出費を減らすという考えもあれば、より高い収入を得るという考えもあり、そのことが地元就職意向も東京の企業勤務意向もどちらも上昇するという矛盾した現象の理由の一つであると見ています。
住む場所や働く場所の理想に関する学生のコメントを見ていると、将来の暮らしをどのように充実させたいかについての考え方が多様で、それによって居住地や勤務地域の理想もさまざまになっていることが分かります。ただ、これまで見てきたように、地元就職や地方での就職を希望する学生は、主に“その場所に住む”ことにメリットや魅力を感じているようです。
また、「勤務先と居住地域の理想」について、東京出身(地元が東京)の学生を除いてみても「東京の企業に勤めたい」学生の割合が大きくは変わらないことから、地元就職を希望しながら「東京の企業で働くことが理想」と回答している学生が一定数いることが分かります。このような学生は、家族の都合や生活面などを現実的に考えると地元に住んで地元の企業に就職することが最適だが、そのような事情を抜きにして単純に理想を回答するなら東京の企業でやりたい仕事に就いたり、東京に住んで趣味活動を充実させたりしてみたい、と考えている場合があると見ています。
このように、”理想は東京に住んだり東京の企業に勤めたりしたい“という思いがあることを考えると、地方の企業にとっては、地元就職希望者の増加傾向も手放しには喜べず、学生の獲得のために引き続き努力していくことが必要になりそうです。
また、「勤務先と居住地域の理想」について、東京出身(地元が東京)の学生を除いてみても「東京の企業に勤めたい」学生の割合が大きくは変わらないことから、地元就職を希望しながら「東京の企業で働くことが理想」と回答している学生が一定数いることが分かります。このような学生は、家族の都合や生活面などを現実的に考えると地元に住んで地元の企業に就職することが最適だが、そのような事情を抜きにして単純に理想を回答するなら東京の企業でやりたい仕事に就いたり、東京に住んで趣味活動を充実させたりしてみたい、と考えている場合があると見ています。
このように、”理想は東京に住んだり東京の企業に勤めたりしたい“という思いがあることを考えると、地方の企業にとっては、地元就職希望者の増加傾向も手放しには喜べず、学生の獲得のために引き続き努力していくことが必要になりそうです。
まず、学生の意見に多くあがっていたのは「給与や手当を充実させる」というアイデアです。
年収はシンプルに「上げる」という意見ですが、手当に関してはさまざまなコメントが見られました。
家族手当や結婚手当など将来を見据えたものもありますが、住宅手当や自家用車の購入補助など、生活基盤のサポートを求める意見も多くありました。実家から通えないような遠方の企業に就職する場合は引っ越し手当などが支給されることが多いですが、「地元に残るが実家を出たい」というケースでも手当を支給してもらいたいと思っている学生もいました。
また、「奨学金の返済補助」というアイデアもあります。補助があれば、奨学金返済のために都市などのより給与の高い企業への就職を目指して地元を出る必要がなくなるということです。地元で生活していく、ということにあたってさまざまな金銭的支援が必要だと感じている学生が多いことが分かりました。
家族手当や結婚手当など将来を見据えたものもありますが、住宅手当や自家用車の購入補助など、生活基盤のサポートを求める意見も多くありました。実家から通えないような遠方の企業に就職する場合は引っ越し手当などが支給されることが多いですが、「地元に残るが実家を出たい」というケースでも手当を支給してもらいたいと思っている学生もいました。
また、「奨学金の返済補助」というアイデアもあります。補助があれば、奨学金返済のために都市などのより給与の高い企業への就職を目指して地元を出る必要がなくなるということです。地元で生活していく、ということにあたってさまざまな金銭的支援が必要だと感じている学生が多いことが分かりました。
さらに、採用活動の仕方に関するアイデアもありました。
まずは都市部との情報量の違いについての意見として、積極的に情報発信してほしいというコメントが見られました。地元を離れてしまうと地方の企業を知る機会が少なく、情報を集めるのにも苦労している様子が分かります。
また、説明会や面接のオンライン化を求める意見もありました。特に、地元の企業を訪れるための交通費を負担に感じる声が多く、就職活動をするために“わざわざ地元に戻るのが大変”というコメントも見られました。

コロナ禍で授業やインターンシップのオンライン化を経験し、アルバイトの収入も減っている23年卒の学生にとっては、“就職活動=企業を訪れるために交通費がかかるのが当たり前”、という考えが薄れてきており、オンラインで実施できるものが対面で実施されると、例年の学生以上に負担を感じていると考えられます。
選考参加へのハードルを下げるためにオンラインを導入する、対面で実施する場合には交通費の支給も検討する、といった取り組みが必要といえそうです。
まずは都市部との情報量の違いについての意見として、積極的に情報発信してほしいというコメントが見られました。地元を離れてしまうと地方の企業を知る機会が少なく、情報を集めるのにも苦労している様子が分かります。
また、説明会や面接のオンライン化を求める意見もありました。特に、地元の企業を訪れるための交通費を負担に感じる声が多く、就職活動をするために“わざわざ地元に戻るのが大変”というコメントも見られました。

選考参加へのハードルを下げるためにオンラインを導入する、対面で実施する場合には交通費の支給も検討する、といった取り組みが必要といえそうです。
今回のコラムでは、地元就職希望者が増えている一方で、理想としては東京に住みたい・東京の企業に勤めたいという学生も増えている、ということについて見てきました。
東京の“仕事や私生活の楽しみに関する選択肢の多さ”というメリットについては、他の地域の一企業が対抗するメリットを生み出すのは難しいですが、生活に関する不安の解消については、手当や制度の検討など工夫の余地がありそうです。また、少なくとも就職活動を行う上での学生の負担を減らすことは、採用活動の進め方の工夫次第で可能であると思います。
地域性とは関係のない部分で、学生が地元就職、Uターン・Iターン就職の何にメリットを感じ、どんなことに不安を感じているのかを見極めた上で、学生が求める魅力を提供できるようにしていくことが、学生からの人気を集める上で重要といえそうです。
東京の“仕事や私生活の楽しみに関する選択肢の多さ”というメリットについては、他の地域の一企業が対抗するメリットを生み出すのは難しいですが、生活に関する不安の解消については、手当や制度の検討など工夫の余地がありそうです。また、少なくとも就職活動を行う上での学生の負担を減らすことは、採用活動の進め方の工夫次第で可能であると思います。
地域性とは関係のない部分で、学生が地元就職、Uターン・Iターン就職の何にメリットを感じ、どんなことに不安を感じているのかを見極めた上で、学生が求める魅力を提供できるようにしていくことが、学生からの人気を集める上で重要といえそうです。
- 人材採用・育成 更新日:2022/06/30
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