介護業界のイメージアップをして採用力を高める方法
かつて介護職の給与は低めでしたが、近年は改善傾向にあります。主な理由は、「介護職員処遇改善加算」制度の影響です。介護職員処遇改善加算は、介護職の賃金をアップして介護業界の人材不足を改善することを目標に、2012年から運用がスタートしました。
厚生労働省が2022年度に実施した調査では、介護職員(月給の者)の平均給与額は31万7,540円でした。一方、介護職員処遇改善加算が始まる前の2009年度の調査では、介護職員(月給の者)の平均給与額は25万7,880円です。この13年間で、介護職の給与は5万9,660円もアップしています。(※出典:厚生労働省「介護従事者処遇状況等調査」令和4年度・平成21年度)
参考に、一般の労働者の平均給与額も見てみましょう。2022年の厚生労働省の調査によると、全業種の平均給与額は、31万1,800円です。(※出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」)
調査や集計の方法が異なるデータなので単純に比較はできませんが、今や介護職の給与は、ほかの職種と比べても低いとはいえなくなってきていることがわかります。
現在、日本では、少子高齢化の進行を見据えて介護人材確保のための対策に積極的に取り組んでいるため、介護職の処遇改善はさらに進むといわれています。
介護職はきつくて人手不足というイメージから、残業も多いと思われがちです。たしかに、利用者の体を支えて移動させたり、入浴や排泄を介助したりする身体介護は重労働ですが、介護業界では、ほかの業界に比べて残業が多いわけではありません。
介護労働安定センターが2020年に実施した調査をもとに計算すると、介護職(訪問介護員も含む)のひと月あたりの平均残業時間は、3.7時間でした。(※出典:介護労働安定センター「令和3年度介護労働実態調査」 無期雇用の介護職・訪問介護員の1週間の平均残業時間1.3時間×20日÷7日=3.7時間)
一方、日本経済団体連合会の調査によると、2019年の一般労働者の平均残業時間は年間184時間で、ひと月あたりにすると15.3時間です。(※出典:日本経済団体連合会「2020年労働時間等実態調査」)
上記のデータを見ると、介護職の残業時間は一般の労働者に比べれば少ないことがわかります。
介護職の残業時間が比較的少ない理由は、働き方の仕組みにあります。施設で働く介護職の場合はシフト制で交代があり、ホームヘルパーの場合は訪問時間があらかじめ決まっているため、残業が発生しにくいのです。
加えて、介護法人では、国によって人員配置基準が定められていることも影響していると考えられます。
かつて介護職の離職率は比較的高めでしたが、近年は待遇が改善したことにより、全職種の平均と比べても、離職率が低い職種になっています。
介護職、訪問介護員の2職種合計の離職率は、14.4%でした。(※出典:介護労働安定センター「令和4年度介護労働実態調査」)
2職種合計の離職率がピークであった2007年の21.6%と比べると、大きく改善したことがわかります。(※出典:介護労働安定センター「令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要について」)
また、厚生労働省の調査によると、2022年1年間の常用労働者の離職率は15.0%で、介護職の離職率(14.4%)は、これよりわずかに下回っています。(※出典:厚生労働省「令和4年 雇用動向調査結果」)
介護職の給与が今以上に上がれば、それに伴い、離職率もさらに低下していくかもしれません。
未経験者のなかには、介護の仕事はルーティンワークでおもしろみがないというイメージを持つ人もいるようですが、実際に現場で働く介護職からは、仕事が好きという声が多く聞かれます。
介護労働安全センターは、「仕事のやりがい・内容」「キャリアアップの機会」「職場の環境」などの計12項目について、介護従事者の満足度を調査しています。
この結果をもとに計算すると、介護職(訪問介護員も含む)で「仕事のやりがい・内容」に対して「満足」または「やや満足」と答えた人の割合は48.7%を占め、「不満足」または「やや不満足」と答えた人の割合(9.1%)を大きく上回っています。
また、12項目のうち、「満足」または「やや満足」と答えた人の割合がもっとも高かったのが「仕事のやりがい・内容」でした。(※出典:介護労働安定センター「令和4年度介護労働実態調査」)
利用者の生活を直接サポートする介護職は、利用者やその家族から感謝される機会も少なくありません。仕事にやりがいを求める人にとっては満足度の高い仕事といえるでしょう。
仕事のやりがいのほか、介護職・介護業界には、下記のような魅力もあります。介護業界で長く働いている人にとっては当たり前のことでも、介護業界をよく知らない求職者にとっては、応募や入職の動機になるかもしれません。
■経験を積めば手に職がつく
介護業務を経験すると、介護の知識とスキルが身につきます。介護サービスの事業所は全国どこにでもあるため、家庭の事情などでほかの地域に引っ越しても、転職先に困ることはありません。体力を維持する必要はありますが、一度スキルを身につければ年齢に関係なく働けるのも魅力です。
■安定した就労ができる
介護は、公的な制度である介護保険制度に基づいた、人々の生活に欠かせないサービスです。少子高齢化が進む日本社会では、今後もますますニーズが高まると予想されています。景気が悪化しても失業するリスクは低く、長く安定的に働くことができます。
■ライフスタイルに合わせて働き方を選べる
介護サービスの事業所には、特別養護老人ホーム、有料老人ホームなどの入所型の介護施設のほか、通所介護施設(デイサービス)、訪問介護事業所など、さまざまなサービス形態があります。また、施設によっては、フルタイムの正規職員のほかにパート勤務の介護職も雇用しています。
そのため、夜勤ができない時期は通所型や訪問型の事業所で働く、短時間勤務のパートにするといった柔軟な選択が可能です。子育てと仕事を両立したい人にとても働きやすい環境といえます
介護の仕事を具体的にいうと、食事や入浴、移動などの介助、家事代行などの生活援助ですが、未経験者に業務内容をストレートに伝えても、仕事の魅力は伝わりません。
たとえば、「人生の最後に、『こんなふうに過ごしたい・生きたい』という利用者の願いをかなえるような対応や工夫をするのが介護の仕事です」と介護感を伝えるのもひとつの方法です。
未経験の一般学生を対象にした説明会では、介護の仕事の本質や「何のために介護をするのか」という自法人の介護観が伝わるエピソードを紹介するとよいでしょう。ストーリーのあるエピソードを伝えると、参加した求職者の心に響きやすくなり、「自分もこんな仕事をしてみたい」と思ってもらいやすくなります。
紹介用のエピソードは、自法人の職員にヒアリングをして、「仕事をしていてどんなことがうれしかったか」「どんなときにやりがいを感じるか」といった聞き方で引き出しましょう。下記の記事では具体的なエピソード例を紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
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ハローワークや就職・転職情報サイトに掲載する求人を書く際には、応募要件や仕事内容の欄に、自法人の介護観やこだわりを盛り込みましょう。
一般的な介護法人なので、業務内容でほかの法人との大きな違いを打ち出すことが難しいと考える法人は多いのですが、介護観は法人によってさまざまです。介護観やこだわりは、求職者から見るとその法人にしかない魅力であり、「この職場で働きたい」という志望動機にもなりえます。求人の書き方については、下記の資料を参考にしてください。
- 人材採用・育成 更新日:2023/11/01
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