無料の求人募集方法「ハローワーク」で介護職を採用するコツとは?
かつて、ハローワークでの採用は、介護法人にとっても現実的な選択肢の一つでした。しかし、ここ10年ほどで年々難しくなってきています。
もっとも大きな理由は、有効求人倍率が上昇したことです。この10年間の介護サービスの職業従事者の有効求人倍率(パートを含む)を比べると、2013年5月分が1.58であるのに対し、2023年5月分は3.54です。(※出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」平成25年5月分・ 令和5年5月分)
つまり、売り手市場の傾向が強まり、かなり採用しにくい状況になっているのです。無料で利用できる分、法人間の競争率が高いのがハローワークの特徴ですが、近年はさらにハードルが上がっているといえます。
そのほか、インターネットの発展とともに求人募集の手法が多様になり、職探しにハローワーク以外の媒体を使う求職者が増えたという理由もあります。
今すぐ人員補充をしたい介護法人が真っ先にやるべきことは、人材紹介会社に紹介を依頼することです。
人材紹介は、人材紹介会社が、登録している求職者のなかから、採用要件や求めるイメージに合う人材を法人に紹介してくれるサービスです。紹介後は、面接の日程調整から入職までの候補者対応を代行してくれます。
入職が決定した段階で法人が料金を支払う成果報酬型のサービスが多く、依頼した時点では費用は発生しません。しかし、結果的に多数の人材を採用できた場合は、費用が高額になります。
なぜ緊急で人員を必要としているときに人材紹介がよいかというと、ほかの採用手法よりも早く決まるケースが多いからです。たとえば就職・転職情報サイトで求人を募集する方法では、募集から入職決定までに、どうしても2~3カ月以上の期間がかかります。
一方、人材紹介では、候補者の状況や意向次第ではありますが、人材紹介会社の担当者に急いでいることを伝えれば、可能な範囲で対応してもらえます。
法人側、候補者側双方の決定が早ければ、紹介から1カ月程度で入職が決まることも珍しくありません。候補者がすでに離職していて、決定も早い場合、1週間程度で採用できた例もあります。
上記のような状況ではあるものの、ハローワークでも、工夫しだいで介護職を採用できる可能性はあります。カギになるのは、求人票の書き方です。以下に、求人票を書く際のポイントを紹介します。
なお、ハローワークに求人を出すには、ハローワークに事業所登録をしたうえで求人の申し込みをする必要があります。詳しい方法は、ハローワークインターネットサービスでご確認ください。
ハローワークの求人票には表面と裏面があり、事業所名や所在地、職種、仕事内容、賃金、労働時間といった項目ごとに情報を記載する形式になっています。なかでも書き方の工夫で自法人の魅力をアピールしやすいのが、表面の仕事内容欄です。
介護法人の求人票では、「施設内に入居する高齢者の介護・生活支援」というように、仕事内容を一言で簡潔に書いているケースが見られます。しかしこれだけでは、未経験者には具体的にどんな仕事をするのかがイメージしづらいうえに、ほかの法人との違いがわかりません。
仕事内容欄には、最大360文字を記載することができます。この範囲内で、求職者が入職後の仕事内容や働き方をイメージできるように、できる限り具体的かつ詳しく書くことが大切です。さらに、できれば法人の特徴やこだわっているポイントを盛り込むと、その法人らしさが伝わるでしょう。
たとえば次のように、具体的な仕事内容を説明したうえで、自法人がこだわっているポイントを書き加えるのも一つの方法です。
◯仕事内容
認知症対応型グループホームに入居する高齢者の介護。掃除、洗濯、外出などの家事や日常生活のサポート。5~9人の少人数のグループ単位で介護するユニット型の施設で、利用者は日常生活の一部に手助けが必要な要支援度2の方が中心です。
【当法人のこだわり】
1. 食
利用者さまといっしょに買い物や料理をし、いっしょに食事をとることで、食べる・作る・選ぶ楽しみを提供します。
2. 個別ケア
流れ作業のような介護は行わず、個別ケアを基本としています。一つのユニットの利用者さまのみを担当するので、サポートが必要な部分を見極め、一人ひとりに合わせたケアにじっくり取り組めます。
3. 自立支援
ご自身でできることはできるだけ利用者さまにお任せします。職員がサポートしながら、掃除、洗濯、散歩、外出、買い物などを通して生活リハビリを行います。
「仕事内容」の上にある「職種」欄についても、同じことがいえます。「介護職」「ケアワーカー」と簡潔に書きがちですが、表示可能文字数(28文字)の範囲内で、「グループホーム介護職員」「デイサービス介護スタッフ(送迎業務あり)」などと、より具体的に書くと、どんな職場でどんな仕事をするのかが一目でイメージしやすいでしょう。
雇用関係の情報を求人票にそのまま書くと、堅苦しい印象になることがあります。求職者目線で見て、意味がわかりにくい言葉を別の表現に変える、読みにくい漢字をひらがなにするなど、読みやすくする工夫をしましょう。
特に未経験者OKの求人の場合は、福祉・介護業界以外の人に伝わりにくい用語を使わないように気をつける必要があります。たとえば特別養護老人ホームを「特養」と書くと、この呼び方を知らない人には通じないため、略さずに書きましょう。どうしても福祉・介護業界特有の用語を使わなければならない場合は、簡単に説明を加えるとわかりやすくなります。
また、必要な資格として「初任者研修以上」とまとめて表現するケースも見られますが、この書き方だと、どの研修・資格が含まれるのかがわからず迷う人もいるかもしれません。初任者研修、実務者研修、介護福祉士のいずれかが必要だとわかるように、資格名を一つずつ明記したほうがよいでしょう。
数行にわたる文章を書くときに、一文が短めになるように心がけることも工夫の一つです。一文一文が長いと読みにくく、最後まで目を通してもらえないおそれもあるからです。適度に箇条書きを取り入れるのもよいでしょう。
ハローワークの求人票は各欄の記入スペースが小さいため、必要な内容だけを書いてしまいがちです。しかし応募を集めるためには、限られた文字数でも、できる限り自法人をアピールすることが大切です。
文字数が多めでアピールしやすいのは「仕事の内容」欄ですが、アピール要素を盛り込める欄はほかにもあります。
たとえば「求人に関する特記事項」には、600字以内で、資格取得支援制度や研修・教育制度のことなど、ほかの欄に書ききれなかった情報を記載することができます。
また、事業所登録の際に記入する「会社の特長」欄では、90文字以内で、運営理念や職場の雰囲気のほか、子育てと仕事を両立している職員が多い、年齢に関係なく活躍できるといった自法人の魅力ポイントをアピールできます。
いずれも、法人がサイト上に求人募集の広告を掲載し、それを見た求職者がサイト上で応募する仕組みです。掲載プランや回数にもよりますが、一般的には、人材紹介や派遣ほど費用がかかることはありません。
登録者数の多い就職・転職情報サイトに求人広告を掲載し、説明会や面接で応募者の志望度を高めることができれば、十分な数の応募を集めて効率的に人材を確保できるため、コストパフォーマンスの高い手法といえます。
特に、就職情報サイトを利用した新卒採用が軌道に乗ると、若い人材を安定的に採用できるようになります。中途採用は新卒採用よりも景気に左右されやすい面がありますが、転職情報サイトでも、コツをつかめば、目標とする人数のマッチする人材を採用できるようになるでしょう。
ただ、担当者が間に入って採用業務をサポートしてくれる人材紹介と違って、採用担当者自身が応募者対応をしなければならないため、ノウハウを身につけるまでにある程度の期間をかける必要があります。
多くの応募を集めるには、求人情報を掲載して待つだけではなく、法人側からのアプローチも必要です。主要な就職・転職情報サイトには、条件に合う登録者に法人側から「応募してほしい」というメッセージを送れるスカウト機能があるので、積極的に活用しましょう。
多数の法人が集まって合同で行う説明会イベントです。多くの合同説明会は、各法人が会場にブースを設置し、ブースを訪れた学生や求職者に、法人の担当者が対面で自法人の特徴や業務内容などを説明するという形式で行われます。
合同説明会を主催しているのは、大手就職・転職情報サイトのほか、地方自治体、新聞社などです。就職・転職情報サイト主催のイベントの場合、出展の条件として、そのサイトへの求人広告の掲載が求められることが多いでしょう。料金は規模やエリアによってまちまちです。
ブースで直接求職者にアピールできるうえ、会場内で声をかけてブースに誘導したりパンフレットを配布したりといったアプローチもできるのが、合同説明会の魅力です。
一方で、配布資料やブース設置の準備、ブースでの対応、終了後の求職者へのメール連絡などに、複数の人員が求められます。面談の担当者がアピール上手かどうかによって応募数が左右されやすいことも知っておきましょう。
オンラインで開催される合同説明会のことです。参加者はパソコンやスマートフォンを使って、ライブ配信または録画による各法人の説明を視聴します。自宅や遠方からでも視聴できるため、求職者にとっては参加のハードルが低いこと、法人側にとっては対面形式よりも拘束時間が短いことがメリットです。
直接求職者にアプローチできるわけではありませんが、地方在住者など、対面では出会えない求職者にも自法人の存在を知ってもらえるきっかけになります。
ただし、オンラインでは話し手の熱意や雰囲気が伝わりにくいため、対面式の合同説明会以上に、プレゼンテーションや資料作りにテクニックが必要です。また、合同説明会のようにその場で求職者と面接の日程調整をすることはできないので、説明後に面接予約ページの2次元バーコードを画面に表示するといった、次のステップに誘導する工夫があると、より効果的です。
- 人材採用・育成 更新日:2023/10/11
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