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企業と学生の「社会人基礎力」イメージの違い―求める〇〇力をどう伝えるべきか

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社会人基礎力とは「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、2006年に経済産業省が提唱したもので、3つの力(12の要素)から構成されています。

毎年、この社会人基礎力の中で各企業が「新卒採用において選考で重視している力」を調査していますが、今回は大学1・2年生にも同様に、「仕事で重要だと思う力」を聞きました。双方の結果に類似点はありますが、「その力がどのように役立つと思うか」自由に記載してもらったところ、同じ要素を挙げていてもその内容のイメージには違いが見られました。
そこで、このコラムでは企業と学生が重要だと感じる「社会人基礎力」とそのイメージの違いを見ていきます。
まずは企業と学生が重視している要素について見ていきます。企業に「社会人基礎力の中で重視しているもの」をすべて選んでもらったところ、1位が「主体性」、2位が「実行力」、3位が「柔軟性」、僅差で「傾聴力」が続いています。学生が重視している要素について見ると、1位が「主体性」、2位が「実行力」、3位が「課題発見力」となりました。
企業・学生ともに「主体性」「実行力」が1位と2位に入っており、「もっとも重要だと考える要素」としては「柔軟性」が共通して4位に入りました。企業と学生とで特に重要だと考える社会人基礎力には共通点があることが分かります。

「マイナビ2024年卒企業新卒採用予定調査」「大学生低学年のキャリア意識調査(25・26年卒対象)」


ただ、「もっとも重要だと思う社会人基礎力」として挙げた能力を選んだ理由をコメントしてもらうと、双方の意見にはやや違いが見られました。次はそのコメント内容を見ていきます。
まずは企業にとっての「主体性」のイメージを見てみましょう。「主体性」がもっとも重要であると回答した企業にその理由を聞いてみると、「主体性がないと成長しにくい」「入社後にスキルを身に付ける上で前向きに取り組む姿勢が必要」「技術の変化がある業界なので対応するために自ら動く力が必要」などの意見が見られました。

「マイナビ2024年卒企業新卒採用予定調査」

現状の日本の新卒採用は多くの場合、業務に必要なスキルを入社時点で求めない、いわゆるポテンシャル採用です。そのため、入社してから業務に必要なスキルを身に付ける上で、仕事を教えてもらうだけでなく自ら学ぼうという姿勢で業務に取り組むことがより重要となり、「主体性」を重視しているということが分かります。また、業界全体の変化や業務ごとの対応の違いが大きいような業種の場合、その場面ごとにどう対応していくかということは上司や先輩が単純に教えづらいことでもあります。それゆえ、業務をしながら先輩たちがどう対応しているか観察し、それぞれの状況で自分がどう対応すべきか自らしっかり考えながら取り組むことが必要なのだと考えられます。
一方で、学生が「主体性」をもっとも重要だと思う意見を見ると「主体性がないと物事が進まないと思う」「指示待ちにならない方がよい」「迷惑をかけずに済む」という趣旨のコメントが多く見られました。学生にとって、社会人になることをイメージした際にまっさきに思い浮かぶのが「指示待ちになって物事が進まず、周囲の足を引っ張る存在になりたくない」ということであり、それを避けるために「主体性」が重要であると考えていることが推察できます。
「大学生低学年のキャリア意識調査(25・26年卒対象)」

企業のコメントでも、指示待ちにならないように主体性を持ってほしいという意見はありましたが、学生の考える、足を引っ張らないため=“マイナスにならないための姿勢”というよりは、自身の成長やよりよい成果を出すため=“プラスを生み出すための姿勢”として主体性を求めていることが分かります。 まだ就職活動が本格的に始まる前で、将来のイメージが固まっていない段階の学生が多いため当然とも言えますが、同じ「主体性」を挙げていても企業と学生とでは見据えているポイントが異なることが分かります。同様に他の要素についても、企業と学生の考え方の違いを見ていきましょう。
「柔軟性」がもっとも重要だと回答した企業のコメントでは、「状況を見ながら臨機応変に動く柔軟性が必要」「予期せぬ事態が起こっても柔軟性があれば解決に繋がる」という意見が見られました。業務ごと、関わるクライアントごとに異なるさまざまな状況において、相手や場面にあわせて柔軟に対応できるような学生を求めている採用担当者が多いようです。

「マイナビ2024年卒企業新卒採用予定調査」

一方で、学生の意見を見ると「複数人で仕事をする時に柔軟性がないと何も進まない」「周りの意見を聞こうとしないと衝突が増える」という趣旨のコメントが多く見られました。学生は「柔軟性」について、仕事で関わるさまざまな人と上手く連携して業務を遂行していく上で必要な要素としてイメージしている人が多いようです。

「大学生低学年のキャリア意識調査(25・26年卒対象)」

もちろん企業側でも、職場でのコミュニケーションにおいて「柔軟性」が求められるというコメントはありましたが、企業の回答では「クライアントや案件ごとの違い」への対応も含めて考えている回答が多かったのに対し、学生のコメントはあくまで身近な「社員同士の意見の相違」の範囲でのイメージに留まっていました。
最後に、企業と学生の考える「ストレスコントロール力」について見ていきます。社会人基礎力について、学生の回答結果で特徴的だったのが、もっとも重要だと思う力で「ストレスコントロール力」が2位に入っていることでした。「ストレスコントロール力」がもっとも重要だと回答した学生はなぜそう思っているのか、企業の意見との違いを比較します。
「ストレスコントロール力」がもっとも重要だと回答した企業のコメントでは「社内外のさまざまな人とのコミュニケーションが上手くいかないことにストレスを感じすぎると難しい」「未知のものごとへの対処や資格受験のストレスを乗り越える力が重要」などの意見が見られました。それぞれ業種や企業ごとに異なる「ストレスになると考えられるポイント」に対して、それをどの程度ストレスに感じるかも含めて、対応できそうかどうかを注視しているようです。

「マイナビ2024年卒企業新卒採用予定調査」
一方、学生からは「ストレスは絶対感じるもので、対応できないと弊害が出る」「社会人でストレスがたまることは当たり前なので対処法をしっかりしないといけない」などのコメントが見られました。ただ、社会人生活の中で何がストレスになるとイメージしているのか具体的に挙げているコメントは多くありません。「ストレスの問題はよく取り上げられていると思う」という意見に見られるように、過剰なストレスによって起こる弊害を社会人になる前に見聞きしていることで、「社会人=ストレスが溜まるもの」という漠然とした認識が先にあり、心身のトラブルを避けるためにはコントロールが必要だと感じている学生が多いと推察されます。

「大学生低学年のキャリア意識調査(25・26年卒対象)」

企業のコメントで分かるように、業種や職種、職場によって発生しうるストレスは異なりますし、それをどの程度ストレスと感じるのか、そしてどの程度までなら許容できるのかは人それぞれです。「ストレスコントロール力」と一口に言っても、正確にはどのような場面でのストレスを指すかによってやや異なると考えられます。今回の調査結果では、学生は漠然とストレス全般へのコントロール力として回答していますが、今後、自分にとって何がストレスになるかを知ること、そして志望する業界や職種ではどのようなストレスがかかりそうなのかを考えることで自分の「ストレスコントロール力」がより具体的にイメージできるのではないかと思います。
ここまで、社会人基礎力に関して企業と学生のイメージを見てきました。採用担当者と学生で、仕事に重要なものとして同じ要素を挙げていても、その要素がどのように役立つのか、どうして重要だと思うのかについては違っていることが分かります。

企業としては「求める人物像」などで「〇〇力を持っている人物」と提示したい場合、社会人経験がない新卒学生に対しては、業務においてどのような場面を想定してその力を求めているのか、その力を持っていることがどのような成果に繋がるのかをより具体的に提示することが重要だと考えられます。そうすることで学生がより具体的にイメージでき、自己アピールする際のヒントにしやすくなることで、マッチング精度の高い採用にも繋がると思います。
反対に学生は今後、まずは自分の志望する業界や職種において必要な能力を知ること、そしてそれをアピールする際には自分のイメージだけで語らずに、その企業ではどのような場面で能力が活かせるのか考えた上で自身の経験と紐づけて伝えることで、採用担当者にその企業での自分の活躍イメージを持ってもらいやすくすることに繋がると思います。

■関連調査
・マイナビ2024年卒企業新卒採用予定調査
・大学生低学年のキャリア意識調査(25・26年卒対象)

  • Organization 株式会社マイナビ 社長室 キャリアリサーチ統括部

    株式会社マイナビ 社長室 キャリアリサーチ統括部

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  • 人材採用・育成 更新日:2023/04/03
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