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【イベントレポート】組織を強くする採用戦略の勉強会

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Human Capital サポネットでは人事・採用の担当者同士で交流し、悩みを解消したり採用業務に関する知見を深めたりすることができるコミュニティを運営しています。コミュニティでは意見交換が活発に行われ、セミナーや交流会、質問会などを開催しています。
今回は、「採用戦略」をテーマに、採用のゴールや、採用における戦略とは何か、採用計画(3か年計画)の立て方、採用活動における小さな成功要因の探し方について、生和コーポレーション株式会社で人事を務めている横川さんにご登壇いただきました。
また、参加者の方に「採用のゴール」と「それを実現するためのKPI」を立てていただくワークショップを実施しました。

本イベントレポートを通じて、自社のリソースでできる採用戦略について考えるヒントとなれば幸いです。

そもそも採用のゴールとは何か

採用のゴールというと、どうしても人数やポジションの穴埋めといった意識が強くなってしまうもの。
しかし、「本質として忘れないでいただきたいのが、“社員が楽しく活躍する”という人事のミッション」であると横川さんは言います。

横川さん: 採用のゴールを見据える際、業績への貢献も必要ですが、本人が長く生き生きと仕事をしていただくことや、本人が成長することで、会社が大きく繁栄していくためにも、社員が楽しく仕事ができるかどうかが、まずは重要になります。

とはいえ、人事であれば人事評価もしなければいけませんし、「新卒の研修が終わったと思ったら次は中途の研修……」と、毎日とても忙しいと思います。
そこで、以下の点を明確にしていただきたいと思います。

  • 採用において何に注力するのか?
  • 何を選択し、何に集中するのか?

採用戦略とは

横川さん: 戦略とは、「水を配分していく」話に例えられます。一方、「戦術」は、「配分された水をいかに使うか」という話です。
戦略を考えるときに重要となるのは、「どこに配分を集中するのか」です。このとき、ついついやってしまいがちなのが、「採用といったら 広告にお金をかけたほうがいい」といった「あるべき論」でしょう。しかし実際は、資本で勝負をしたらまず勝てません。あるべき論ではなく、「自社はどのポジションを獲っていけばよいのか?」「どこに集中したらよいのか?」を考えるのが、あるべき「戦略」といえます。

では、採用において配分すべきものとは何か。大きくは以下の4つに分かれます。

  • ヒト……採用担当者や、採用に関わる社員の時間や能力(例:採用力が特に高い採用担当者/採用業務に慣れていない担当者など)
  • モノ……自社が見せるべき資産(例:会場、施設・工場や、様々なツールなど)
  • カネ……予算
  • 情報……採用において武器となる情報(例:学生の個人情報、採用ノウハウ、学校とのつながりなど)

上記のような資源について「何を配分するのか」「どこにかけていくのか」が非常に重要です。

採用におけるゴールの例

横川さん: ゴールを1つに絞り、そのためのKPIを3つ以内に絞ることをおすすめします。
例えば、弊社ではゴールを「楽しく活躍する社員の数を増やすこと」として、そのために以下3つのKPIを設定しています。

【採用のゴール「楽しく活躍する社員の数を増やす」ためのKPI】

  • 1週間に40人、新しい学生に会う。(目的:採用数を増やす)
  • 2日以内に学生に連絡する(目的:連絡のリレーションを早める)
  • 1週間に10個の施策を考える(目的:より良い採用の実現)

人事は様々な仕事を抱えていますので、まず「最大のゴールは何か」、そして「目指すべき1つのKPIは何か」を決めるのが重要だと思います。
3つのKPIを設定するのは大変でも、「これだけは絶対にやろう」という1つのKPIを設定して実行していくだけでも、採用活動の見え方が変わってくるはずです。

横川さんのお話を踏まえて、自社の目指すべきゴールと、KPIを考えるワークショップの時間が設けられ、その後、何名かの参加者に発表していただきました。
「働く人の笑顔を作っていく」「社員が能力を発揮できて、やりがいも感じてもらえる」など、社員の幸せを軸とした採用のゴールが多く挙がりました。

戦略として採用計画を立てるために

横川さん: 採用計画をについて考える際に、経営陣や影響力の強い部署から「○人採用してほしい」「こんな人を採用してほしい」という注文が入ると、ついそれに合わせて採用計画を決めてしまいがちです。
しかし重要なのは、未来の価値を生む人材を、活躍するまでの期間を考えて採用していくことです。新卒採用は3~5年、中途採用は1~2年、活躍するまでに時間がかかるといわれているなか、単に「何年後か」だけではなく、組織全体を見たときのピラミッドを作っていただくのが非常に重要です。
できれば、3~5年後の組織を見据えて「今どれくらい採用していないと組織が成り立たないのか」をイメージして、今年の採用にブレイクダウンしていくとよいでしょう。

階層別に細かく分けて考えるのは大変かもしれませんが、例えば「幹部」「管理職」「一般」でざっくり分けてみてください。今在籍している社員の年齢に3~5年足したときに、どのような役職層の人数構成になってくるでしょうか? また、どういったポジションが不足してくるでしょうか? これらを考慮して採用計画を立てると良いでしょう。

採用計画を立てるとき、実現できる計画にするためには、「現状を分析する」ことがとても重要だと横川さんは言います。
現状分析のヒントとなる「外部要因」と「内部要因」とは、どのようなものでしょうか。

外部要因から現状分析する

横川さん: 例えば、「エリア内の人口推移」を確認するために、「採用地域」全体での人口と、「業界」内の人口をチェックすることが効果的です。
さらに、新卒であれば「自社の業界に関わる学部の学生が近年どれくらい増減しているのか?」といったデータも確認するとよいでしょう。これは、学校のホームページの「入学者数の推移」などで確認することができます。

内部要因から現状分析する

横川さん: 上記のような外部要因がある一方で、実際に現場の社員にも話を聞いてみましょう。「人が足りない」と言っている部門があれば、詳しくヒアリングして「育成によってカバーできるのか」または「育成ではカバーできず、採用段階で解決すべき問題なのか」を考えます。
人材が足りない要因を職種別に考え、採用以外の手段も含めて「どこに注力すべきか」を考えることが、内部要因から現状を分析するポイントです。

自社のポジションと施策を考える

ここまで、採用計画を立てるための外部要因・内部要因を踏まえて採用計画を立てても見てきました。しかし、業界内での自社のポジションを見誤ると、手の打ち方を間違えてしまう可能性があると横川さんは指摘します。
適切な施策を打つために横川さんが取り入れている、マトリックスを紹介していただきました。

横川さん: 「会社の人気が高いかどうか(y軸)」と、「採用数が少ないか/多いか(x軸)」に注目することで、自社のポジションを特定し、適した施策を考えることができます。

  • 「優等生」……人気が高く、採用数も多い(例:上場しているような超大手企業)
  • 「平和主義」……採用数は多いものの、そこまで人気が高いわけではない
  • 「変わり者」……人気は高いものの、採用数が少ない(例:職種がニッチで変わっている)
  • 「冒険家」……人気も採用数も少ない

業界内における自社のポジションや、職種のポジションを明らかにしたうえで、ポジションに応じた求める人物像に合わせて、戦略を打っていただくのが効果的です。

自社のポジションに応じた戦略とは

横川さん: 例えば、ステータスと安定を求める「優等生」であれば、評判をいかに持続的に上げていくか、もしくは発信していくかが重要です。そのためにはCMや広告を打つことが最も有効でしょう。
一方、「平和主義」であれば、重要なのは待遇です。ターゲットに「業界ナンバーワンの有名企業には劣るが、待遇は良いからこの会社でも良い」と思ってもらえれば、このポジションにおける採用は上手くいく可能性があります。

「変わり者」の場合、人気は高いものの採用数が少ないため、社内のポジションをいかにアピールするかが重要です。「弊社であれば、入社後に○○のポジションが約束されています」と伝えることで、ターゲットに「大手よりもこの会社に入った方が自分のやりたいことができそうだ」と思ってもらえます。

「冒険家」であれば、今後の会社の成長性や、若手の頃から裁量権の大きい仕事を任せることで、個人が成長できる点をアピールするとよいでしょう。

このように、自社のポジションや職種のポジションに応じて、「何をアピールするか」「どこに資源を投下していくのか」「どう打ち出していくのか」という戦略を考えることが効果的です。

ダイバーシティ採用も視野に入れる

これから、残業規制や働き方改革がさらに進んでいくと考えられるなか、横川さんは「ダイバーシティ採用に取り組む目線が、ますます重要性を増していく」と言います。

横川さん: 例えば、「グローバル」人材は超優秀層の採用戦略として、「シニア」人材は人手不足の解消策として採用戦略に組み込むことができます。また、性別に関係なく、優秀な人材に対してどういう働き方を提案できるのか、という「ジェンダー」の考え方も非常に重要だと思います。

「チャレンジド」は、障がいを持つ方の採用です。簡単な業務など、任せられる業務はたくさんありますので、ぜひチャレンジド採用にも目を向けていただくことをおすすめします。

3か年計画の立て方

横川さん: ここまでの「採用戦略を立てるうえでまず意識したい情報」を踏まえて、「これから3年間どう動くか」という目標を立てていきましょう。

【3か年計画のモデルケース(例)】

  • 1stステップ(量を採用)

採用の「質」ももちろん大事ですが、初年はまず「量(採用人数)」を重視して、色々なことを試す。

  • 2ndステップ(新しい入口開拓)

経験を踏まえて、よりコストパフォーマンスや絞り込みを意識する。上手くいかなかった部分は入れ替えることによって、新しい入り口を開拓していく。

  • 3rdステップ(安定採用+採用基準を上げる)

安定的に様々な手法を実践して、採用のノウハウが蓄積されてきた3rdステップでは、採用基準(質)を上げていく。

最終的には、採用協力を強化し、「全社採用」を目指すことが理想的です。

小さな成功要因の探し方

採用戦略で設定したKPIを確実に実行していくためには、どうすればよいのでしょうか。
横川さんは、「毎週振り返りを行い、“小さな成功要因”を探すことが大切」と言います。

横川さん: 振り返りを行う際、「何が悪いか」というのは火を見るより明らかでしょう。一方で、どこに注力するか(選択と集中)を探すヒントとなるのは、明らかな成功よりも「小さな成功要因(成功の予兆)」であることの方が多いものです。
小さな成功を繰り返していくことで、徐々に良い成功例が増えていくことがあります。

上手くいかなかった原因を考えるのも大切ですが、ぜひ時間をとって、どのような成功要因があるのかを一度考えていただき、その後KPIに従って、毎週振り返る時間を取ってみてください。

まとめ

横川さん: 最初にお伝えした通り、やはり採用のゴールに据えるべきは「社員が楽しく活躍すること」だと私は考えています。
そのための人事の役割としては、大きく以下の三本柱になるでしょう。

【人事の役割 三本柱】

  • 入り口の部分:採用強化
  • 出口の対策:従業員の満足度向上
  • ランクアップ:社員がより活躍していくための能力開発

どれも重要ですが、②と③は、社員がいることが前提の取り組みですので、それらに注力しても、「①採用強化」には繋がりづらいかもしれません。
しかし、採用強化に取り組むことにより、結果的に②と③へ派生していきます。つまり、血流を促すという意味でも、まずは採用強化に取り組むことが、人事の役割として非常に重要なのです。
①採用強化、②従業員満足度向上、③能力開発、という流れを作っていくことで歯車が回り、大きい組織として活躍できていくのではないでしょうか。

採用規模が大きくなっていくと、人事だけではとても手が回りません。
今後、さらに売り手市場化が進んでいくと考えられるなかで、どんな会社であっても、他部門を巻き込んで力を借りながら採用を行う「協力体制」がカギになってくるでしょう。その点を意識しながら採用戦略を立てることで、経営陣へのアピール力を強めていけると思います。

今回のイベントでは、横川さんのお話を踏まえて、参加者の方に「採用のゴール」と「それを実現するためのKPI」を立てていただくワークショップを実施しました。
「このKPIをいつやるか(実行の時間)」を決め、数字で振り返り、振り返りの中で次回のアクション(来週以降どのような活動をするのか)を決めるようにしていくことで、取り組みに対してどれくらいの改善が見られたのかが明確になります。
ぜひ、今回のイベントレポートを通じて、自社の採用を改めて見つめ直す機会となれば幸いです。

  • Person 横川 翔

    横川 翔 生和コーポレーション株式会社

    世界的なコンサルティングファームであるデロイト トーマツ グループにて主に人事領域のコンサルティングに従事。現在は生和コーポレーションにて経営企画室兼人事部係長として戦略的な能力開発や採用を担っている。

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