中途採用が企業にもたらす4つのメリット|短期間・低コストで採用成功させる方法
近年、人材の流動性が高まるなかで、中途採用に取り組んでいる企業が増えており、マイナビの「中途採用状況調査(2025年版)」によると、中途採用に積極的な企業は90.2%にも上っています。そして、即戦力人材の確保に限らず、育成を前提とした将来性重視の採用や、カルチャーフィット(自社の企業文化との相性)を重視した採用など、企業が中途採用に期待するニーズも多様化しています。
本記事では、企業が中途採用を実施するメリットや、中途採用の効果的な活用ポイント、短期間・低コストで中途採用を成功させる方法について詳しく解説します。
中途採用が企業にもたらす4つのメリット
中途採用は、即戦力の確保だけでなく、さまざまなメリットを企業にもたらします。ここでは、企業が中途採用を実施することで得られるメリットを紹介します。
即戦力人材を採用できる
中途人材は、過去の職場で得た知識やスキルを活かして、入社後の早い段階から成果を出すことが期待できます。特に、成果が数字で評価されやすい職種では、即戦力として早期に結果を出せることが大きなメリットでしょう。
例えば、営業職であれば「顧客管理スキル」や「商談の進め方」といったスキル・経験が活かされます。エンジニア職であれば、過去に使用していたツールや開発環境が自社と共通していれば、スムーズに実務を任せることが可能です。
マイナビの調査によると、選考当初に求めていたスキルや資格に、応募者のレベルが満たなくても、「国家資格の有無」や「これまでの経験社数(転職回数)」「職種の経験年数」「プロジェクトリーダー・マネジメント経験」によって最終的に採用したケースが多いことがわかります。これらの要素は、実績や経験として評価しやすく、多少条件に満たなくても即戦力として期待されやすいことがうかがえます。
注意点
スキルや経験が豊富な即戦力人材は、企業間の人材獲得競争も激しいため、企業側が積極的なアプローチをしなければ他社に流れてしまう可能性が大きくなります。条件面だけでなく、仕事内容や働き方、成長機会など、候補者が魅力を感じる情報を適切に伝えることが求められます。
教育コストや時間を抑えられる
中途人材は新卒とは異なり、すでに社会人経験があるため、短期間での戦力化が期待でき、教育コストの削減が期待できます。
異なる職種からの転職や、未経験者であっても「報連相の基本」や「タスク管理の仕方」といったビジネス基礎が備わっていることが多いため、育成に関わる上司やチームの負担も軽減されます。場合によってはOJTの設計をコンパクトにできるなど、全体的な教育リソースの最適化にもつながるでしょう。
注意点
中途人材は、前職での経験から、すでに自分の仕事のスタイルを確立していることがあるため、企業文化や風土と合わなかったり、仕事の進め方において柔軟性に欠けていたりすると、早期離職につながる恐れがあります。マイナビの「正社員のワークライフ・インテグレーション調査2024年版(2023年実績)」 によると、約1割の人が早期離職を経験したことがあると回答しました。
早期離職を防ぐには、カルチャーフィットを意識した面接や、入社前の職場見学などの工夫が必要です。また、オンボーディングの取り組みを省略せずに丁寧に行うことも重要です。
組織の多様化・活性化につながる
異業種からの転職や、海外勤務の経験者など、中途採用では多様な人材が集まりやすくなります。これにより新しい価値観やアイデアが生まれやすくなり、組織の柔軟性が高まるとともに、イノベーションが生まれるきっかけにもなります。
例えば、BtoCサービスを扱う企業から、BtoBサービスを扱う業界へ転職した人材が、顧客視点でマーケティングを見直した結果、新しい施策が生まれるケースもあります。異なる職種・業界で培った視点やノウハウが、既存のメンバーに新たな気づきを与える効果も期待できるでしょう。
注意点
中途採用の割合が多いと、新卒社員など若手社員の昇進やキャリアアップ機会が減る恐れがあります。新卒採用とのバランスを取るために、人員計画を踏まえた採用ポジションの設計やジョブローテーションの計画が必要です。
関連記事:人員計画の作り方を徹底解説!テンプレートや注意点も
ポテンシャルを見込んだ柔軟な採用も可能
中途採用は、即戦力を確保するというイメージが強いものの、近年は、未経験者のポテンシャル採用や、異業種からの採用など、中途採用の形も多様化しています。特に、柔軟な発想や学習意欲を持った人材を迎え入れたい企業にとっては、中途採用が有効な手段となるケースがあります。
マイナビの調査によると、「資格や経験・スキル面で当初の要件に満たなくても、最終的に採用したケースが多かった」と答えた企業は全体の45.6%と約半数を占めました。その理由を聞くと、「人柄が良かったから」が28.0%で最も多く挙げられました。こうした結果からも、スキルよりも人間性を重視する柔軟な採用姿勢が広がっていることが伺えます。
(出典:マイナビ|中途採用状況調査 2025年版(2024年実績))
注意点
将来性を重視する場合でも、基本的なビジネスマナーやコミュニケーション能力、ITリテラシーなど、最低限必要なスキルやマインドセットは明確に定義しておくことが重要です。面接や適性検査、リファレンスチェックなどを活用して多面的に評価することで、ミスマッチを防ぎやすくなります。
中途採用のメリットを最大限に活かすためのポイント
上述した中途採用のメリットを最大限に活かすために、企業が押さえておきたいポイントを紹介します。
採用目的・人材要件を明確にする
「なぜ中途採用なのか(採用目的)」「どのような業務を任せるのか」「必要なスキル」を事前に整理しておくことで、ミスマッチを防ぎやすくなります。
例えば、「営業経験3年以上(業界不問)」「自社サービスに共感し、チームプレイが得意な方」など、スキルとマインドセットの両面を具体化することで、ターゲットへの訴求力を高めましょう。
関連記事:人材要件とは?作り方や具体例、活用のポイントについて解説
スピーディーな採用プロセスを構築する
中途採用において売り手市場化(求人数よりも求職者数が少ない状態)が続くなか、候補者は、複数の企業へ応募している可能性も十分にあります。対応が遅れると、候補者が他社に流れてしまう恐れがあるため、面接日程の調整はスピーディーかつ丁寧に対応することが必要です。
例えば、書類選考を通過した候補者に対して、一次面接、二次面接(最終面接)までを1日でまとめて実施する「1day選考会」を導入したり、夜間や土日にオンライン面接に対応したりするなど、候補者の都合に柔軟に合わせる工夫も効果的です。また、候補者から質問が出やすい項目について、事前に回答を伝えることで、候補者の準備時間を短縮でき、本質的な対話が生まれやすくなります。
候補者が企業理解を深められる工夫をする
社内見学イベントや、オフィス紹介コンテンツなどを活用して、職場の雰囲気を伝えることで、候補者の企業理解を進め、安心感を与えることができます。
特に現場社員の声を直接届ける取り組みは、入社後の働き方や人間関係のイメージを具体化に描きやすく、応募意欲の向上にもつながります。動画形式の社員紹介や、1日の業務フローを紹介する記事の作成なども有効です。候補者が「この会社で働く自分」を想像できるような情報発信を心がけましょう。
入社後オンボーディングに取り組む
中途人材は、入社同期がいないケースもあり、即戦力としてのプレッシャーから、不安を抱えやすいものです。早期離職のリスクを下げるには、丁寧なオンボーディング(入社初期の受け入れ支援)が欠かせません。
オンボーディングは、以下のように段階的な支援を意識して設計するとよいでしょう。
- 業務理解の促進
- 自社のビジネスモデルや事業内容、担当業務の位置づけを整理して伝える
- 業務フローやツールの使い方、顧客情報など実務に直結する情報を提供する
- 組織理解の促進
- 所属チームの役割や上司・メンバーの紹介、コミュニケーションスタイルを共有する
- 社内のルールや文化、意思決定の流れなど、企業風土に関する背景情報を伝える
- 定着・エンゲージメントの促進
- 定期的な1on1やメンター制度を設け、相談できる機会を提供する
- フィードバックとキャリアパスの共有、心理的安全性を高める施策を行う 段階を追ってサポートすることで、中途入社者が「何をどのようにすればいいのか」を理解しやすくなり、安心してチームになじむことができます。
低コストで中途採用を成功させる3つの方法
スキルや経験が豊富な中途人材を採用したい場合、採用コストがネックになることも少なくありません。ここでは、費用対効果を高めつつ採用活動を進めるための実践的な方法を紹介します。
採用媒体の見直し・選定
媒体の特徴を踏まえて見直すことで、費用対効果が見込めます。即戦力の営業職を探す場合は専門性の高い媒体を、ポテンシャル層や未経験者の採用には柔軟な掲載枠がある媒体を活用するなど、自社の採用ニーズに合わせて媒体を使い分けましょう。
リファラル採用の導入
社員から候補者を紹介してもらう「リファラル採用」は、求人サイトやエージェントを利用しないため採用コストを抑えられる手法です。また、紹介者が企業文化を理解したうえで、マッチ度が高い知り合いを紹介するため、入社後の定着率が高い傾向があります。
ただし、紹介が集まるまでに時間がかかることや、大量採用には向かないため、制度設計の工夫が求められます。あくまで中長期的な採用戦略の一環として活用するのが望ましいでしょう。
関連記事:「リファラル採用」とは?メリットや注意点を分かりやすく解説
成果報酬型サービスの活用
採用が決定した時点で費用が発生する「成果報酬型サービス」であれば、広告費や固定費を抑えつつ効率的に候補者へのアプローチが可能になります。選考業務やスカウトの代行など、業務負担を軽減できるサービスもあるため、採用担当者の負担軽減にもつながります。
採用コストの削減について詳しく知りたい方はこちらも参考にしてください。
関連記事:採用コストの削減方法。分析から施策までわかりやすく解説
短期間で中途採用を成功させる3つの方法
優秀な人材ほど市場に出ている期間が短く、タイミングを逃すと他社に採用されてしまう可能性が高まります。ここでは、採用スピードを意識して、短期間で中途採用を成功させるための方法を紹介します。
転職活動が活発な時期を狙う
1月〜3月、6月〜7月、12月など、ボーナスを受け取るタイミングの後は、転職希望者が増える傾向にあります。この時期に合わせて募集を開始すると、採用スピードが上がるかもしれません。
特に1月~3月は「新年度に向けて転職したい」という需要が強く、幅広い層の人材が市場に出てくるタイミングです。求人を出すだけでなく、スカウトや広告出稿の強化も意識するとよいでしょう。
スカウト型サービスを活用する
求職者に企業側から直接アプローチできる「スカウト型サービス」を使うことで、応募を待たずに採用活動を進めることができます。転職潜在層(転職したいと感じているものの、積極的な転職活動は行っていない層)にもアプローチできるため、ターゲットの幅が広がり、より短期間での採用が期待できます。
募集要項を工夫する
募集要項やスカウトメッセージでは、「仕事内容」「やりがい」「入社後の成長」など、候補者の視点での情報提供が重要です。即戦力かどうかに関わらず、「なぜ自社に合っているのか」を伝えることで、応募意欲や返信率が向上し、採用成功につながりやすくなります。
また、カジュアル面談の提案や、選考ステップに柔軟性を持たせられる旨を記載することで、応募者の心理的ハードルを下げることも可能です。
中途採用のメリットを活かそう
中途採用は、即戦力人材を採用できるというメリットの他にも、教育コストの削減や、多様性の向上など、企業にとって多くのメリットがあります。また、近年では「ポテンシャル重視」「カルチャーフィット」など、企業における中途採用の目的も多様化しています。
こうした変化に対応するためには、求人媒体の使い分けや、スカウト型サービス、リファラル採用などを組み合せ、自社の採用戦略に合ったアプローチが重要です。 中途採用のメリットを最大限に活かすために、現在の採用活動を見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。
- 人材採用・育成 更新日:2025/06/30
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