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労働者側から見た副業の課題と効果とは?

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人的資本経営やリスキリングなど、働く社員の育成やキャリア形成支援に取り組む企業が増えています。その一環で、社員に副業を認める企業も増えているようです。副業を社員に認めることで社員のキャリア意識やスキル開発に効果があるのではないか、と言われています。
しかし、副業解禁をするとどのような課題があるのか、気になる企業様も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、大手IT企業に広報PR職として勤務しながら、地方自治体や地方企業を中心とした副業を実際に行なっている山田さん(仮名・40代男性)にお話を伺いました。副業実施による効果や、従業員の立場から見た副業の課題など、興味深いお話をいろいろ伺うことができたのでぜひご覧ください。

スキルではなく経験が身に付く副業

ーまず現在の本業のお仕事と、副業を行うようになった経緯を教えてください。

私は大手IT企業で広報職として働いていますが、実は今の会社は6社目なんです。大卒後、大手企業からベンチャー企業までさまざまな会社を広報一筋で経験してきましたね。その転職の間に個人事業主として活動していた期間もあるので、私にとって副業は個人事業主の延長線上みたいな位置付けです。転職活動をするときも副業が認められる会社を選んでいました。

ー副業はどんなことをされているんですか?

私の場合は本業と同じ広報職です。副業がリスキリングの文脈でよく語られるのは、本業と異なる新しいスキルを身につけるというものですが、私の場合はスキルという意味では本業と同じ。広報のプロとして活動しています。ただ、私の副業先は地方自治体や地方企業なので、本業では関われない領域の広報の仕事として自分の幅が広がっている実感がありますね。

ー地方自治体の副業を経験して本業に役立ったということはありますか?

もともと地方活性化に興味があったから地方自治体で副業をしているのですが、私の場合は先ほどもお話しした通り、スキルというよりは経験としての本業への還元はありますね。例えば自治体向けの案件を本業で行う際、自治体という組織のことや商慣習、考え方を自治体の立場で知っていることは大きなメリットになります。社内の会議で発言するときも自治体の視点で意見を言うことができます。でもそれは結果論であって、私の場合は自分の強みを自分の興味関心分野で活かしているだけで、本業に活かしたいと思って副業をしているわけではないですね。

ー副業先はどのように探しているんでしょうか?

ポータルサイト中心です。主要なサイトには登録しておいてスカウト案件をいただくこともありますし、自分で探しに行くこともあります。

副業を解禁する企業側の課題とは?

ー副業ブームで副業解禁を検討している企業も増えていますが、一方で課題もあるようです。実際に働いている山田さんの立場から見て、副業を認める企業の課題についてどう思われますか?

私は副業解禁に躊躇する企業側の事情もわかるんですよね。副業は労働者の権利の一つではありますが、自由と責任は本来セット。その前提をないがしろにして、本業での業務を疎かにしたり、労働者の権利ばかり主張する自分都合の社員が増えてしまうのではないか、というリスクはあると思うんです。副業ができる人は、自分で自分の労務管理ができる人じゃないと難しいと思います。

ー自分の労務管理というと?

これは雇用形態によっても異なるかもしれませんが、副業先の業務も本業企業の労務範囲であるケースもあります。例えばですが本業の企業で定時まで働き、定時後に副業のアルバイトで深夜まで毎日働いていた人が労働過多で体調を崩したとします。するとその働きすぎた労務上の管理責任はどこになるかというと、実は副業先だけでなく本業にも発生するんですよ。だから会社として副業を認めようとすると、副業の実態調査をして、ちゃんと労務管理をしなければならないんです。実際問題、その実態調査をちゃんとやれている会社かどうかはともかく・・・。

編集部注:副業先と従業員が、雇用ではなく業務委託契約の場合、雇用主である企業に労働時間の通算義務は適用されません。

ー山田さんはどのように働いているんでしょう?

私は本業をフルタイムで働いているので、副業は夜か週末がメインです。ただ、うちの会社は完全フレックスなので、平日の日中に副業先との会議などをすることもあります。裁量労働制やフレックス制であったり、リモートワークが認められていたり、有給休暇が自由に使いやすい職場でないと、副業を行うハードルは多少ありそうですね。

ーなかなかそれはハードルが高い会社も多いでしょうね。。

そうですね、ビジネスモデルによっては難しい会社も多いと思いますし、自律した社員でなければ成り立たないので、そういう人を採用できるか、という採用の問題も出てきます。そして、どんな仕事を副業にするかにもよると思います。例えばエンジニアなどの仕事は業務の一部を切り出して納期さえ守ってくれれば労働者の裁量でコントロールできると思いますが、私のような広報職はそうもいかず、ある程度伴走しなければなりません。

ー「こうすればOK」みたいな全社共通の万能型施策は難しそうですね。

そうですね、ただ、社員のリスキリングを目的としている場合は副業解禁だけが解決策ではないと思います。実際、うちの会社は社外の副業は選択肢の一つでしかなくて、社内副業制度も社内転職制度もあります。本人のリスキリングのために本業以外のチャレンジを認める、という根っこの考え方がまずあって、その枝葉の一つが社外副業。社外副業だけを取り上げて是非を議論するのは本質的ではないかもしれません。

副業をすると、キャリアオーナーシップの醸成につながる

ー実際、副業をするとスキル開発に役立つと思いますか?

効果はあると思いますよ。会社が従業員のキャリア開発の機会を与え続けるのは実際問題難しいですよね。でも副業許可でそれが実現できるなら会社側のメリットになるとは思います。私のようにスキルだけではなく、本業では得られない経験値が増えるのはビジネスパーソンにとってプラスでしかありませんからね。

ーただ、それを得るためには労働者側も労務管理の意識も必要だ、と先ほどおっしゃっていましたね。

はい、でもそれはキャリアオーナーシップを持つということだと思うんです。私自身は個人事業主になったことがきっかけだったので一般化はできないのですが、副業を行うことで労務だけではなく収入の面でも自分でマネジメントをしなくてはなりません。自分がいかに会社に守られていたかを気づくきっかけになったり、キャリアオーナーシップを醸成するいい機会ですよね。スキルではなく仕事をする上での目線も上がることが多いと思いますよ。

ー目線が上がるとは?

私の場合ですが本業はいわゆる有名な大企業で、副業先の地方企業や地方自治体の方が組織規模は小さいです。なので、本業ではマネージャーではないのですが、副業先では経営者や首長とのやり取りが多いので、経営的な感覚が身についていると感じます。よく従業員に「経営者目線を持ってほしい」と研修などでも言われますが、会社の中で働いているだけで経営者目線を持つことは難しいと思いますよ(苦笑)。それであれば副業先で身につけてもらって、それを本業に活かす方が効果的なのではないかなと思いますね。

ー目線が上がると退職リスクが高まるのでは、と気にする企業もいそうですが・・・。

上がった目線をよしとするかどうかは会社によって考え方が分かれるかもしれませんが、目線が上がることで会社から抜けるリスクを考えるならそれは違うかなと思います。目線が上がった従業員が働いていたいと思えるような会社にしていってほしいし、そのための人事施策じゃないかなと思いますね。

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今回は広報職として副業経験のある山田さんのお話をお届けしました。インタビュー内でもありましたが、会社でしか働いていない社員に自律やオーナーシップを持たせるのは確かに難しいかもしれません。リスキリングの観点から副業が注目されることが多いですが、マインドの面でも大きな効果がありそうです。ぜひ、参考にしてみてください。

  • 労務・制度 更新日:2024/02/13
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