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【2024年4月施行】ドライバーの労働時間規制が改正|変更のポイントを弁護士が解説

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2024年4月1日から、以下の4業種において労働時間の規制が改正されました。

  • 工作物の建設の事業(建設業)
  • 自動車運転の業務(運送業ドライバー)
  • 医業に従事する医師
  • 鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業

その中でも、トラックなどの運送業ドライバーに関する改正は、多くの労働者に適用されるため重要度が高いといえます。

本記事では、2024年4月以降、運送業ドライバーに適用される労働時間規制の変更点を解説します。運送業の経営者や人事担当者は、今回の改正を踏まえて適切に労務管理を行いましょう。

2024年4月施行|運送業ドライバーに関する労働時間規制改正の全体像

2024年4月1日から、運送業ドライバーに関する労働時間規制の改正が施行されました。

今回の改正は、労働基準法の改正と改善基準告示(=自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)の改正の2種類によって成り立っています。
労働基準法の改正は、運送業ドライバー全般に適用されます。一方、改善基準告示の改正は、ドライバー業務の種類によって適用される変更点が異なります。

運送業ドライバーに関する労働時間規制改正の全体像

  • 労働基準法の改正

    →ドライバー全般に適用
  • 改善基準告示の改正

    →ドライバー業務の種類に応じて適用

  • 一般乗用旅客自動車運送事業

    (例)タクシー・ハイヤー
  • 貨物自動車運送事業

    (例)トラック
  • 一般乗用旅客自動車運送事業以外の旅客自動車運送事業

    (例)バス

労働基準法に基づくドライバーの労働時間規制の変更点

ドライバーの労働時間規制に関する労働基準法の改正ポイントは、主に以下の2点です。

変更点1|時間外労働の限度時間の全面適用
変更点2|特別条項に基づく時間外労働の規制強化

変更点1|時間外労働の限度時間の全面適用

2024年3月まで、運送業ドライバーには、36協定に基づく時間外労働の限度時間の適用が猶予されていました。
しかし、2024年4月以降は猶予措置が撤廃され、運送業ドライバーについても「月45時間・年360時間」の限度時間の遵守が義務付けられました。

労働基準法上、法定労働時間(=原則として1日8時間・1週40時間)を超える労働は「時間外労働」とされています。

時間外労働は、「36協定」と呼ばれる労使協定を締結した上で、その範囲内でのみ指示できます(労働基準法36条1項)。
また、36協定に基づく時間外労働は、原則として「月45時間・年360時間」の限度時間内に収めなければなりません(同条3項、4項)。

この限度時間に関する規制は、以前は運送業ドライバーには適用されていませんでしたが、2024年4月以降は他業種の労働者と同様に適用されるようになりました。

変更点2|特別条項に基づく時間外労働の規制強化

運送業ドライバーには、特別条項に基づく時間外労働・休日労働の制限が適用されていませんでしたが、2024年4月以降、特別条項に基づく時間外労働を1年当たり960時間以内とする制限が新たに設けられました。

時間外労働の限度時間は、通常予見できない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に必要な場合に限り、36協定で定める特別条項に従うことを条件として超過が認められます。

特別条項には、限度時間を超える時間外労働を指示できる具体的な場合や、時間外労働・休日労働の上限時間・上限日数などを定めます。
2024年4月以降、運送業ドライバーについて特別条項を定めるに当たっては、時間外労働を1年当たり960時間以内に制限することが義務付けられたのです。

なお、通常の労働者については、特別条項に基づく時間外労働・休日労働は、以下の制限の範囲内としなければなりません。これらの制限については、運送業ドライバーは2024年4月以降も対象外です。

  • 1年当たりの時間外労働

    →720時間以内
  • 坑内労働など健康上特に有害な業務に関する時間外労働

    →1日当たり2時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計時間(1か月)

    →100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の合計時間(2~6か月平均)

    →2か月平均・3か月平均・4か月平均・5か月平均・6か月平均で、いずれも1か月当たり80時間以内
  • 時間外労働が月45時間を超える月数

    →1年のうち6か月以内

改善基準告示に基づくドライバーの労働時間規制の変更点

改善基準告示は、運送業ドライバーの労働条件を改善するために、事業者が遵守すべき基準を定めた厚生労働大臣の告示です。
労働基準法とは異なり、改善基準告示に違反しても罰則はありませんが、車両使用停止等の行政処分の対象となります。

2024年4月1日より改善基準告示が改正され、運送業ドライバーの労働時間に関する規制が強化されました*1。適用される改正点は、以下の事業の種類に応じて異なります。

  • 一般乗用旅客自動車運送事業

    (例)タクシー・ハイヤー
  • 貨物自動車運送事業

    (例)トラック
  • 一般乗用旅客自動車運送事業以外の旅客自動車運送事業

    (例)バス

タクシー・ハイヤーのドライバーに関する変更点

タクシーなど、一般乗用旅客自動車運送事業(ハイヤーを除く)のドライバーについては、改善基準告示に基づく労働時間規制について、下表の変更が行われました。

※拘束時間=労働時間、休憩時間その他の使用者に拘束されている時間
※休息期間=使用者の拘束を受けない期間

<日勤のドライバー>

改正前

改正後

1か月当たりの拘束時間

299時間以内
※労使協定によって322時間以内まで延長可能
288時間以内
※労使協定によって300時間以内まで延長可能

1日当たりの拘束時間

原則16時間以内 原則15時間以内
※14時間を超える回数をできるだけ少なくする

休息期間

勤務終了後、継続8時間以上(義務) 勤務終了後、継続11時間以上(努力義務)を基本とし、継続9時間以上(義務)

<隔日勤務のドライバー>

改正前

改正後

1か月当たりの拘束時間

262時間以内
※労使協定によって270時間以内まで延長可能
変更なし

2暦日当たりの拘束時間

21時間以内 22時間以内
※2回の隔日勤務の平均が、1回当たり21時間以内

休息期間

勤務終了後、継続20時間以上(義務) 勤務終了後、継続24時間以上(努力義務)を基本とし、継続22時間以上(義務)

ハイヤーのドライバーについては、もともと改善基準告示に基づく規制(拘束時間や休息期間など)が適用されていません。今回の改正後も同様です。
ただし、労働基準法が改正されたことに伴い、時間外労働時間数・休日労働時間数をできる限り短くするよう努めることや、勤務終了後に一定の休息期間を与えることなどが追記されました。

トラックのドライバーに関する変更点

トラックなど、貨物自動車運送事業のドライバーについては、改善基準告示に基づく労働時間規制について、下表の変更が行われました。

※拘束時間=労働時間、休憩時間その他の使用者に拘束されている時間
※休息期間=使用者の拘束を受けない期間
※連続運転時間=1回当たりおおむね連続10分以上かつ合計が30分以上、中断することなく連続して運転する時間

改正前

改正後

1年当たりの拘束時間

3516時間以内

原則として3300時間以内
※労使協定によって3400時間以内まで延長可能

1か月当たりの拘束時間

原則293時間以内
※労使協定によって1年のうち6か月まで320時間以内に延長可能

原則284時間以内
※労使協定によって1年のうち6か月まで310時間以内に延長可能
※284時間を超える月は連続3か月以内
※1か月の時間外労働・休日労働の合計が100時間未満となるよう努める

1日当たりの拘束時間

原則13時間以内
※16時間以内まで延長可能(15時間を超える日は週2回以内)

原則13時間以内
※15時間以内まで延長可能(宿泊を伴う長距離貨物運送に限り、週2回まで16時間以内に延長可能)
※14時間を超える回数をできるだけ少なくするよう努める

休息期間

勤務終了後、継続8時間以上(義務)

勤務終了後、継続11時間以上(努力義務)を基本とし、継続9時間以上(義務)
※宿泊を伴う長距離貨物運送に限り、週2回まで継続8時間以上とすることができる(運行終了後に継続12時間以上の休息期間を与える)

連続運転時間

4時間以内

原則として4時間以内
※高速自動車国道または自動車専用道路のSA・PAなどに駐車・停車できずやむを得ない場合は、4時間30分以内

バスのドライバーに関する変更点

バスなど、一般乗用旅客自動車運送事業以外の旅客自動車運送事業のドライバーについては、改善基準告示に基づく労働時間規制について、下表の変更が行われました。

※拘束時間=労働時間、休憩時間その他の使用者に拘束されている時間
※休息期間=使用者の拘束を受けない期間
※連続運転時間=1回当たりおおむね連続10分以上かつ合計が30分以上、中断することなく連続して運転する時間

改正前

改正後

拘束時間

原則として、4週間を平均して1週間当たり65時間以内
※貸切バス等のドライバーについては、労使協定により4週間を平均して1週間当たり71.5時間以内まで延長可能
以下のいずれかから選択可能

(a)1か月当たり281時間以内かつ1年当たり3300時間以内
※貸切バス等のドライバーについては、労使協定により、1年につき6か月までは1か月当たり294時間以内まで延長でき、かつ1年当たり3400時間以内まで延長可能。ただし、1か月当たり281時間を超えるのは連続4か月以内

(b)4週間を平均して1週間当たり65時間以内かつ1年当たり3300時間以内
※貸切バス等のドライバーについては、労使協定により、52週間のうち24週間までは1週間当たり68時間以内まで延長でき、かつ1年当たり3400時間以内まで延長可能。ただし、4週間を平均して1週間当たり65時間を超えるのは連続16週間以内

休息期間

勤務終了後、継続8時間以上(義務) 勤務終了後、継続11時間以上(努力義務)を基本とし、継続9時間以上(義務)
※継続9時間以上が困難な場合は、一定の要件の下で分割休息を与えることが可能
※1台の自動車に2人以上乗務する場合は、一定の要件の下で最大拘束時間を19時間(または20時間)まで延長し、休息期間を5時間(または4時間)まで短縮可能

連続運転時間

4時間以内 原則として4時間以内
※高速バス・貸切バス等のドライバーについては、おおむね2時間以内とするよう努める
※緊急通行車両の通行等に伴う軽微な移動の時間は、30分まで連続運転時間から除くことができる
  • Person 阿部 由羅

    阿部 由羅 弁護士

    ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
    https://abeyura.com/
    https://twitter.com/abeyuralaw

  • 労務・制度 更新日:2024/05/14
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