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DNPが副業解禁をする理由と、キャリア自律の取組

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企業が社員に副業を認可する割合は、2023年度の調査では7割にも上ります。ただ、認可はしているものの、社員が副業を行った結果、会社への影響や本業への効果がどの程度あるのか、という点が気になる人事担当者様も多いのではないでしょうか?
今回はキャリア自律の推進に力をいれる大日本印刷株式会社人事本部労務部 佐藤工さんと、同社で副業制度を利用して働く宮澤悠大さんにお話を伺いました。人事と従業員の両側面から捉えることで、副業制度と実際の社員への影響について深堀していきます。
副業制度がある企業様はもちろん、これから副業解禁を検討予定の企業様もぜひご覧ください。

大日本印刷が副業を解禁するのは大きなビジョンの一環

———本日はよろしくお願いします。まず、大日本印刷(以降DNP)がどうして副業を認めるようになったのかの経緯を教えてください。

佐藤:テクノロジーが進化し社会が変化する中、私たちDNPは自分たちの強みである印刷(Printing)と情報(information)を掛け合わせて事業を進めていく「P&Iイノベーション」という事業ビジョンの下、これまでの顧客の課題解決から、自ら社会課題を解決するための価値を生み出していく「第三の創業」の実現に向けて、社員の諸活動を支える人事諸制度を2019年から3年かけて変革しました。その一環として、副業は、社外の視点を取り入れることで社内のイノベーション創出が期待でき、「第三の創業」が目指すコンセプトに合致したため、一部解禁することといたしました。

———副業解禁は手段の一つ、ということですね。

佐藤:はい、まず社会を意識するなかでの人事諸制度再構築という方針があって、その中で実行可能な具体策を決めていった、という流れです。例えば、テレワークのような施策だけを単体で導入するのではなく、会社として目指す姿を掲げたうえで、中長期的に実行していくことが大切だと考えています。2022年には人的資本ポリシーも策定し、2023年にはDNP版「よりジョブ型も意識した処遇と関連施策」を策定し随時導入しています。新しい価値の創出に向けてその重要な基盤である社員に対しての「人への投資」はこれからも加速させていく予定です。

———そうした会社としての動きは、従業員の立場として宮澤さんは感じていらっしゃいましたか?

宮澤:はい、感じますね。私は2009年に入社したのですが、2019年に副業解禁されて、そこから社内の雰囲気は加速度的に変わっていきました。社長からもことあるごとに「人への投資」の重要性について発信されており、自律的・自立的なキャリア形成支援に向けた取り組みがここ数年で一層進んできていることを一人の社員として実感しています。

———宮澤さんはどのような経緯で副業を始められたのでしょうか?

宮澤:私はもともと恐竜が大好きで、DNP に入社してからも、いつか恐竜に関する仕事がしたいと思っていました。2019年に副業・兼業制度が始まってすぐに申請しましたが、その時は何か具体的に副業としての仕事があったわけではありませんでした。現業では中々経験できない恐竜の仕事のチャンスが何かのきっかけで舞い込んできた時にチャレンジできるように、自分の中の選択肢を広げる、という気持ちで副業・兼業制度の申請をしました。

———副業を認めてもらうためには事前申請が必要なのですね。申請許可には何らかの条件があるのでしょうか?

佐藤:本来の趣旨であるイノベーション創出に寄与するという目的の内容に限定し、また、厚生労働省のガイドライン等に従って制定した遵守事項を満たしている場合に申請を承認します。なお、条件を満たしているかどうかの判断については、申請者本人の業務内容と職場実態を把握している所属部門が確認し承認する運用としています。

副業制度を運営する上での課題とメリットとは?

———宮澤さんも個人事業主として開業なさっているのですか?

宮澤:はい、私も副業は全て個人事業主としてお引き受けしています。ただ先ほどもお話しした通り、すぐに案件があったわけではありません。1年くらいは特に動いていなかったと思いますが、恐竜について各所で発信をよくしていたので、ある時社内の人からプライベートで恐竜案件の相談が来たのです。そこから、地域の恐竜イベントや幼稚園のイベントで恐竜のワークショップやトークショーをする案件が増えていきました。こうした活動をDNPがオウンドメディア内で記事として取り上げてくれ、それを見た外部の会社からDNP宛に問い合わせがきて、徐々に引き合いが増えてきました。

———会社の応援する姿勢が見えますね。でも会社宛にきた依頼を個人で引き受けてしまって良いのですか?その辺りの線引きはどうなっているのでしょう?

宮澤:確かに線引きは難しいこともあります。会社として引き受けるのか、個人として引き受けるのか。その判断は基本的には個人として行なっています。会社として引き受ける場合は、上長にも申告・相談した上で私の評価に組み込んでもらえるようにして工夫しています。

佐藤:これは副業を認める際に多くの企業様も抱える課題かもしれませんね。特に競業避止の範囲は企業の規模や事業領域によって変わってくると思います。当社の場合は事業領域が幅広いので、外部専門家に相談のうえ、原則として所属部門の取引先に限定する運用としています。

———ありがとうございます。確かに競業避止は企業によって事情が異なりそうですね。それ以外に副業をする上での苦労されていることはありますか?

宮澤:本業をきちんとこなした上での副業だという大前提があるので、繁忙期が重なったら物理的に忙しくなりますが、それ以外はそんなにありません。私個人としては、やりたいことをするために、選択肢を広げる手段として副業を行っているので非常にありがたい制度です。一方、インボイスなど含め自分で決めて動かなければいけないという個人事業主ならではの悩みはあります。しかし、ビジネスパーソンとして視野を広げるために必要なことだと感じています。

———会社として課題感はありますか?

佐藤:当社はキャリア自律の文脈で各施策を推進していますが、その浸透にはやはり課題感はあります。会社としての想いを社員により浸透させるために、副業に限らず2019年から再構築した人事諸制度一つ一つを読みやすい漫画にして配信を行ったりもしました。こればかりは引き続き、繰り返しやっていくしかないと感じています。

———課題はある一方、副業解禁をしてみて得られたメリットもあったのではないかと思いますがいかがでしょうか?

佐藤:社員からは、新たな知見、スキルを獲得して本業に活かすことができた、本業では経験できない役割を担えて視座を高められた、とよく聞きますね。DNP以外の業務をすることで、本質的な課題解決のトレーニングにもなっているようです。視野が広がり、今までの仕事のやり方や考え方が当たり前じゃないと気づき、キャリア再考のきっかけになっている方が多いですね。

———今のお話に関連してお聞きしたいのですが、副業を認めると副業先に転職してしまうのではないかとリスクを感じる企業も多いですがいかがでしょうか?

佐藤:そのリスクは当然あります。ただ、それを踏まえても社員の成長や会社のイノベーションへの還元の方が大きい、という判断です。中にはDNPがいかに恵まれた環境にあったのかと気づくケースもあるようです。

副業を通して、社員も会社も共に成長する

———社員がやめないように外を見せないのではなく、社員と会社が共に成長する仕組みというわけですね。宮澤さんは社員として副業をして感じたメリットはありますか?

宮澤:副業で得た知見が本業に生きているなと感じます。副業ではまだ小さなお子様やそのご家族と直接接することが多いのですが、そこで消費者目線や生の声を聞くことができます。それが本業の企画立案に生きているなと実感しています。

———当事者だからこそ、言葉に説得力がありますね。ではDNPの今後の展望について教えてください。

佐藤:先ほどの通り、当社にとって副業解禁は会社変革の大きな流れの一つの施策にすぎません。社員のキャリア自律支援を推進していく中で、部門を越えた知識・スキルの習得や他部門との連携・協働などの促進、イノベーション創出の起点となり得るチャレンジングな人材の育成を目的として、2021年には社内複業制度を導入しました。実は宮澤さんは、社内複業制度も利用しています。

宮澤:そうなんです、今まではお客様に提案する立場の仕事が多く、運営する立場の経験がしてみたいと思って、コーポレートコミュニケーション本部の仕事を社内複業として行っています。昨年10月から今年の1月までDNPが開催している恐竜展(「見かたを変える、ふしぎな恐竜展」)も社内複業の立場で運営までを考えたうえで、企画・プロデュースしました。

———社内複業制度も申告制度なのですか?

佐藤:本人申請型と公募型の2パターンがあります。どちらも年に2回実施され、面接などを通し、受け入れ先から承認されると兼務発令がされます。あくまでもDNPグループ内の他部門を一定の範囲内で兼務できる制度であるため、社内複業によって賃金が増えるというわけではありません。

———会社としてキャリア自律を推進する中の施策として社内外含め本務以外の仕事を経験させる、という姿勢がよくわかりました。

佐藤:キャリア自律支援制度の整備化はこれからも進めていく予定です。2023年4月からはスタートアップ企業への派遣制度を導入し、越境学習を促進しています。直近では、副業に興味はあるけど自信がない、何ができるのか分からないという社員を主なターゲットとして、実際に副業をしている社員の生の声を届けるトークショーを開催したり、「一歩目」を踏み出すことを支援するオンラインスクールの受講料補助も開始しました。まだまだ試行錯誤ですが、会社全体の大きな方針としてこれからも推進していきたいと思います。

  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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  • 労務・制度 更新日:2024/03/13
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