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【パワポ芸人・トヨマネ直伝】「仕事紹介」がわかりやすく伝わるスライドの作り方

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コロナ禍をきっかけとして、採用活動は大きく変わりました。さまざまな苦労もありますが、企業・学生の双方にメリットが大きく、「ニュースタンダード」として認識されつつあるのが、WEB説明会です。

学生に自社のことを知ってもらうため、各社それぞれ工夫を凝らしていらっしゃると思いますが、中でも重要でありながら難しいのが、「仕事紹介」のパートではないでしょうか。
社会人経験のない学生にどうしたら仕事について理解してもらい、働くイメージを持ってもらえるのだろうかと頭を悩ませている方も多いはずです。

そこで今回は、以前説明会スライドの魅力的な作り方を実践的に教えてくださった豊間根青地(通称・パワポ芸人・トヨマネ)さんが再登場! 仕事紹介ページを分かりやすく、魅力的に作るポイントを「解説編」と、実際の説明会スライドを添削する「実践編」に分けて教えていただきました。

― たびたびご協力いただき、ありがとうございます。今回は分かりやすく魅力的な「仕事紹介」の方法を教えていただきたいと思っています。

トヨマネさん: はい、よろしくお願いします! 仕事の紹介は、確かに難しいですよね。事実を並べるだけでなく、その魅力ややりがいを理解してもらおうとするとさらに難しさを感じる方も多いでしょう。

まず私がおすすめしているのは「壁に向かってしゃべってみる」という方法です。

― 壁に向かってしゃべってみる……どういう効果があるのでしょうか?


トヨマネさん: 仕事の紹介は、ともすれば情報の羅列に終始してしまいがちです。実際にスライドを制作される採用担当の方は、社内でもとりわけ事業や職種について深くご存じなので、「何をどう説明すれば学生にとって魅力的か」という点が逆に見えづらくなってしまう側面もあるかもしれません。

そこで、目の前に学生さんがいると思って壁に向かってしゃべってみるんです。何度か試してみるうちに、「何をどの順番で」話すのが分かりやすく魅力的なのかが見えてくると思います。

― なるほど。スライドだけに向き合っていると、ついつい事実の羅列になってしまいがちなところですが、相手を想像しながら話してみるということですね。


トヨマネさん: そうです。ただ重要なのは、事実の羅列が悪いわけではないということです。分かりにくくなってしまう原因は、ストーリーを描いていないからです。例を出しましょう。例えばスライド構成を考えるに当たって、この箇条書きリストは悪い例です。

  • SEの1日のスケジュール
  • SEの仕事内容
  • 部署構成について
  • SEの仕事の関連図
  • SEのキャリアプラン
  • 勤務地

単に「言いたいこと」が羅列されているだけで、一つひとつの情報が独立してしまっています。構成に慣れている人ならこれでもいいのですが、そうでないと「単に必要な情報を網羅しただけのつまらない資料」になってしまいます。

でも、これを「壁に向かってしゃべってみる」を実践して同じように箇条書きにしてみると、こうなります。

  • うちの会社ってこういう組織構造になっています
  • サービス開発部門はこういう部署で、多くのSEが所属しています
  • SEって具体的にはこういうことをする仕事です
  • SEってこんな感じのスケジュールで働きます
  • SEってこういう人たちと関わります
  • SEの人のキャリアはだいたいこんな感じになります

どうでしょう。情報の量は変わっていないのに、順を追って理解しやすい構造になっていると思いませんか?

― 確かに。大きな話から小さな話へと自然につながっていて、分かりやすいですね。


トヨマネさん: そうですよね。ポイントは3つです。

  • 口語調で
  • 単体で意味の分かる文章を
  • ストーリーのようにつなげていく

シンプルな口語調にすることで語るべきメッセージの本質が見えてきますし、文章にすることで「何を伝えたいのか」が分かってきます。また、つなげて読んでも意味が通じるようストーリーにすると、スライドの順番も自然と決められますね。

— なるほど。例えば、壁ではなく学生に近い新卒社員などに聞いてもらってもいいのでしょうか?


トヨマネさん: はい、いいと思います。「初めてこの会社の説明会に参加したとして、この内容だと分かりやすいかな? 仕事の魅力は十分に伝わるかな?」と確認しながら聞いてもらえるとよりいいでしょう。

— 新卒社員に聞くというのは、説明会の時期や学生の属性(理系・文系・専門職志望・総合職志望など)に応じた理解を確認する意味でも有効になりそうですね。


トヨマネさん: そうですね。「目線を合わせる」というのは、仕事の紹介に限らず、学生向けの説明会では常に重要なポイントです。

まだ社会人としての経験がゼロの学生さんに向けて、ビジネスモデルの詳しい説明をしても理解してもらえないかもしれません。業界独自の専門用語も同様です。それらによって興味を持ってもらえるとは限りませんし、逆に理解ができなくて離れていってしまうかもしれません。

説明会の時期や学生さんの属性に合わせて、必要な情報を必要なだけ提供できるように心掛けるのは大変重要です。
その際、基本として気を付けていただきたいポイントが3つあります。

  • 一言で示す(抽象)
  • イメージで示す(具体)
  • 他社のまねをしてみる(参考)

まず、どんな仕事なのかを一言で説明することから始めると理解がしやすくなります。事業全体がどうなっていて、採用予定のポジションがどこに当たるのか、ということをざっくり説明するといいですね。
「ざっくり」が大事です。細かく説明するよりも、理解してもらいやすいはずです。

次に、イメージで示します。先輩社員のインタビューなどを掲載するといいでしょう。仕事の魅力や得られた経験、スキルなどを生の言葉で語ってもらうことで、先に示した抽象的な仕事内容が具体的に理解できます。大まかな1日のスケジュールを呈示するのもいいですね。

そして最後に、どのような内容にすれば良いか迷ったら「(会社名) 仕事紹介」などで検索すると、採用に力を入れている企業がWEBに掲載している仕事紹介コンテンツを閲覧できます。ざっくりと一言で説明する際にどう整理しているのか、インタビューでは何を聞いているのかなど、参考になる情報が得られるでしょう。

次は、サンプルの仕事紹介スライドの添削と、サポネット読者の方が実際に使っているスライドをトヨマネさん流に手直ししていただきながら、ポイントを深掘りしていきます!では、実践編を始めます。

— では続いて、サポネット編集部で用意した「イケてない会社紹介スライド」を実際に直していただきたいと思います。全体を見渡すと、このような順番・内容です。いかがでしょうか?

トヨマネさん: うーん、確かにイケてないですね(笑)。「株式会社SPNシステムデザイン」が、新卒採用でSEを募集しているという状況なのは理解できました。そして、これを「ストーリー」にしてみると、

  • SEの1日のスケジュールはこうなっています
  • そして、仕事内容はこうです
  • ところで、会社全体の組織構成はこうなっていて
  • 外部とのつながりはクライアントと協力会社があります
  • 定年までのキャリアプランはこうです
  • 転勤もあり得ます

と、こうなります。

話があっちこっちへと飛んで、支離滅裂な感じがしますよね。これがまさに「必要な情報を羅列しただけ」の仕事紹介です。
私なら、次のように整理します。

  • 弊社は3つの部署で構成され、新卒採用があるSE部門はサービス開発部門に所属します
  • そのサービス開発部門には80名を超えるSEが在籍していて、大きく3つのサービスを開発・提供しています
  • 実際の業務では、システム開発に関わる一連の業務を担当するため、プログラミング知識だけでなくさまざまなビジネススキルが身に付きます
  • 実際に皆さんの先輩となる社員は仕事についてこう語っています
  • 彼も語っているように、SEは社内外のさまざまな組織・部署と連携して仕事をしています
  • さまざまな社内研修プログラムも用意していますので、安心してステップアップできますよ

部署構成から始まり、配属予定部署の詳細、仕事内容、先輩社員の声、社内外との連携が重要であるというポイント、最後に研修プログラムについて触れました。情報が「大きなもの」から「小さなもの」へとつながっているのが分かりますか? これが、「ストーリーを描くように箇条書きにする」という方法のメリットなんです。

— はい、確かに。ぐっと分かりやすくなりましたね。その過程で情報自体も大きく整理していただいたようなので、続いて1枚ずつのスライドを拝見していただきたいと思います。


— まずは部署構成ページですね。元はこちらでした。

トヨマネさん: これは、よく見ると「管理部門」と「営業部」は新卒採用をしていないんですよね。なのに、今回の話題の中心になっている「サービス開発部門」と同様の扱いで掲載されているのが分かりにくいと思います。
このように修正しました。
トヨマネさん: タイトル下に大きく重要なメッセージを書き、仕事紹介の中心となるのが「サービス開発部門」であるということが一目で分かるように工夫しています。

— 伝えるべき情報の順序が整理されて、とても分かりやすくなりました。

— では続いて、部署の説明ページです。元のスライドには、新卒採用を行っている「サービス開発部門」の説明だけに特化したページはありませんでした。あえて言えば、部署構成のページ内のここに当たります(赤線部)。

トヨマネさん: はい。新卒採用を行っていない管理部門、営業部と同列の扱いでボックスの中に細かく提供しているサービスの内容が書いてあります。一方で管理部門と営業部のボックスには、それぞれ部署名と業務内容が書いてあり、情報の種類がずれていますね。「同じ場所には同じ種類の情報を書く」ようにしないと、直観的に分かりにくくなるので注意してください。
ただ、そもそも今回は「サービス開発部門」のことだけを詳しく学生に伝えればよいので、ページを独立させました。こちらです。
トヨマネさん: まず、今回は「学生が初めて参加する会社説明会」を想定して、開発ツールの名前など細かな部分は省きました。情報系の学生に向けた説明会などでは、追加してもいいかもしれません。

その代わり、「大きく3つの仕事がありますよ」ということが分かりやすいように構成してあります。説明する対象と目線を合わせて、情報の取捨選択をすると良いでしょう。

— 大きな変化ですね! 重要な情報のはずなのに、前のスライドでは不要な情報(管理部門・営業部)と並列で、しかもかなり小さな字で説明されていたものを分かりやすく整理していただきました。また、時期や学生の属性によって情報を出し分ける、というのも有効な方法だなと思います。

— 続いて「具体的な仕事の説明」をしているページです。元のスライドはこうでした。

トヨマネさん: ここにも、今回は情報として不要な「営業」のことが並列に掲載されてしまっていますね。必要ないのなら、思い切って削除してしまいましょう。営業の新卒採用をする年に、ページを追加する方が良いと思います。
トヨマネさん: このように整理しました。「SEの業務」と「得られる知識・スキル」を分けて、「この会社ではどんな仕事をして、どんな知識やスキルが得られるのだろう」という内容を具体的に学生に伝えることを目的とした整理です。

— 最近の学生は「成長環境」を企業に求める傾向が強いですから、より強く響く内容になったと思います。ありがとうございます!

— 次は「働き方」のページです。学生にとっては、入社後の自分の姿をリアルに想像するために重要な情報ですね。元のスライドはこうでした。

トヨマネさん: まず気になるのが、「この人は誰?」ということですね(笑)。少なくとも名前くらいはないとリアリティがありませんし、スケジュールが書いてあるだけで、「どんな気持ちでこの人が働いているのか」がまったく伝わってきません。学生さんが知りたいのは、そういった「個人の感覚」なのではないでしょうか。
トヨマネさん: そこで、このように修正しました。「江洲飯太(えす いいた)」さんと仮に名前を付けさせていただいて、簡単なインタビューも掲載しています。
また、入社年も情報として追加しましたので、「自分の○年後の姿」を想像してもらうための参考資料としてぐっと価値が上がりましたね。
「このページで学生さんにどんな気持ちになってほしいのか」をよく想像して、情報を整理することの大切さがよく分かる例だと思います。

— なるほど。冒頭のお話にあったように「新卒社員に感想を聞く」ようなことをすると、そのアイデアを得ることができそうですね。

— 次は「SEが関わる組織」のページです。どのような関係性の中で仕事をするのか、というのは会社のビジネスを理解するためにも重要な情報ですね。前のスライドではこうでした。

トヨマネさん: 言いたいことは分かるのですが、直感的に理解できないというのが問題です。クライアントから依頼がくるのは分かりますが、協力会社との関係は? 社内の連携はどうなってるの? と見れば見るほど疑問がわいてきます。
トヨマネさん: 直したものがこちらです。まず、自社を中心に持ってきて関係性を整理しやすくしています。その上で、社内での連携、外部との受発注の関係がよく分かるように配置し直しました。また、クライアントが「官公庁や大手企業など」という情報は学生にもアピールできるポイントだと思いましたので、残しています。

— 自社を中心に持ってくるだけで、かなり整理された印象になりますね!ありがとうございます。

— 最後が、「キャリアとスキルアッププラン」のページです。先ほどもお伝えしたように、最近の学生は企業に成長環境を求めますから、重要なページですね。前のスライドではこうでした。

トヨマネさん: これも必要なことは全て書いてあるのですが、入社前の学生さんに見せるものと考えると、「定年」まで入れる必要があるかな……と疑問を抱きます。最近は転職も普通のことですので、不要かもしれません。
それよりも、おっしゃっているように「成長環境」に重点を置いて整理し直しています。
トヨマネさん: こちらです。キャリアプランの中でも入社して数年のことに絞って、その中でどのようなスキルが得られるのか、という情報に的を絞っています。

— 学生のニーズに沿った、分かりやすい内容になりましたね。ありがとうございました!
またここでご紹介した「After」のスライドを、皆さまもご利用いただけるようテンプレート化いたしました。ぜひご活用ください!

— では最後に、サポネット読者の方と一緒に、実際に会社説明会で利用しているスライドを参照し、トヨマネさんに添削していただく超実践編に入りたいと思います。

最初のご相談者は、電機系メーカーのAさんです。


Aさん: 今日はよろしくお願いします。弊社の会社説明スライドなのですが、なかなか弊社独自の「色」みたいなものが出せていなくて……どう工夫すれば良いのか迷っています。

トヨマネさん: なるほど。元のスライドを拝見しました。こちらですね。

トヨマネさん: 全体として「重複している情報が多い」のが気になります。削れる情報、削れるスライドもありそうです。今回、このように整理してみました。
トヨマネさん: ポイントは、「要するに」スライドを作るということです。相手は、こちらの話を意外なほど聞いていません。学生さんのためを思って細かく説明してあげても、ほとんどは聞き流されてしまいます。
なので、ここぞというポイント、ここだけ覚えてほしいというポイントを絞って「要するに」と言えるような優先度の高い情報を的確に伝えられるように工夫しています。

Aさん: なるほど。元のスライドでは1ページ目に「求める人物像」と「価値提供モデル」を一緒に載せていましたが、「要するに、私たちが求めている人材像はこういうものです」と分かりやすい1枚が加わりましたね。

トヨマネさん: そういうことです。ほかにも、組織図が細かすぎましたので単純化したり、どなただか分からない方の写真が大きく使われていたりしたのを削除しています。「要するに、いろいろな部署が連携しているのね」「要するに、求める人材像はこうなのね」という、ざっくりした理解を得るためです。
ほかのページも同様の整理を行いましたので、ぜひ参考になさってください。

Aさん: ありがとうございました!

— ありがとうございました。続いて、もう1名いらっしゃっています。販売サービス業のBさんです。



Bさん: 今日はよろしくお願いします。弊社の営業職は、ただお客さまから言われたことだけを行うというより、こちらから商材を提案していく営業の面が強いのですが、スライドで伝えるのが難しくて……。

トヨマネさん: なるほど。こちらも元のスライドを拝見しています。こちらですね。
トヨマネさん: イラストのテイストも、色使いも統一されていて大変きれいなスライドですが、こちらも先ほどと同じく、まずは「要するに」を意識することが大切です。
また、元のスライドでは「こういう接客ではなく、こうしている」と、比較を上手に使って説明されていますね。その手法自体はいいものだと思いますので、もっと伝わりやすい構成にするといいでしょう。
このように直してみました。
トヨマネさん: 1ページ目で「要するに、ずばりこういう仕事です」と言い切ってしまい、その後は元のスライドにもあった「比較して説明する」ことが分かりやすいように構成しています。
ポイントは「同じ構図で色違い」を作り、色が付いている方を「こうなってほしいという理想の姿」にしていることです。

ぱっと見の直感で、「この会社はこんな接客ができる人材を求めているんだな」と理解しやすくなったと思います。

Bさん: なるほど!本当ですね。同じことを同じ方法で伝えているのに、ぐっと分かりやすくなりました。
ただ、全てのページが「比較」で伝えられるわけではないので…… ほかのページも同じように分かりやすくするにはどうしたらいいのでしょうか?

トヨマネさん: WEBで検索すると、参考にできる企業説明会スライドがたくさん見られるサイトが見つかります。
たくさんの事例を見て、「分かりやすいな」と思ったものを自分の中で「型」としてストックしておくんです。
多ければ多いほど、さまざまな情報、目的に沿ったスライドを作りやすくなりますよ。

Bさん: ありがとうございました! 検索してみます。
今回の記事でも、トヨマネさんのすご技をたくさん見せていただけました。ポイントは、前編の記事でも触れたように、「相手のことを考えて情報を整理する」ということです。

採用担当者として「できるだけたくさんの情報を伝えたい」と思ってしまう気持ちは誰しもあるもの。しかし、時期や学生の属性によって「必要とされている情報」は異なります。
まずは、社内の新卒社員やマイナビの営業などに相談しながら、情報の取捨選択をし、ストーリーとして理解しやすい形で並べていくのが、分かりやすい会社説明会スライドの王道です。

これを機に、長年使い回ししてきたスライドを見直してみてはいかがでしょうか?
  • Person 豊間根 青地

    豊間根 青地 シリョサク株式会社 代表

    東京大学工学部卒業。サントリー在籍時から独自の切り口で物事を捉えたスライドをTwitterに投稿し始め、現在ではフォロワー数11万人以上の絶大な支持を得る。モットーは「くだらないけど、ためになる」。
    現在はビジュアルコミュニケーションをサポートする会社を立ち上げ、講演活動や企業へのアドバイスなど精力的に活動している。
    Twitterアカウント:@toyomane

  • 人材採用・育成 更新日:2022/12/22
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