経営と人材をつなげるビジネスメディア

MENU CLOSE
1 s_saiyo_s01_s20250625155423 column_saiyo c_interviewc_knowhowc_shinsotsusaiyoauthor_organization_saponet

新卒採用20人に専属担当者が1名必要!?
採用市場の構造変化に対応するマンパワー不足の乗り越え方とは?

/news/news_file/file/thumbnail_s-column-265.webp 1

企業の成長を根幹から支え、事業を未来へとつないでいくためには欠かせない新卒採用ですが、取り巻く環境は年々変化し続けています。
中でも、近年特によく聞かれるようになったのが「マンパワー不足」に関するお悩みです。

出典:マイナビ2025年卒企業新卒採用活動調査

マイナビが行った採用活動における課題に関する調査では、「母集団不足」「選考受験者の不足」に次ぎ、「マンパワー不足(他業務との兼ね合い含む)」が3位となっています。

なぜ、多くの採用チームは「マンパワー不足」の状態に陥ってしまうのでしょうか。そして、その解決方法はあるのでしょうか。

その答えを知るべく、大手企業の人事責任者を歴任し、現在は多くの企業に採用コンサルティングを提供している、株式会社人材研究所の曽和利光さんにお話を伺いました。

\御社の採用タスクと総業務時間、把握していますか?算出方法と効率化のコツがわかる資料ダウンロードはこちら(会員限定・無料)/

なぜ採用チームは「いつもマンパワー不足」? 原因は採用市場の変化にあり

— 曽和さん、今日はよろしくお願いします。現場の採用担当者の皆さまからお話を伺うと、多くの方が「マンパワー不足」を悩みとして挙げられます。その背景にある採用市場の現状について教えてください。

曽和さん: はい。問題の根幹は、新卒採用に必要なリソースが昔よりも格段に増えていることにあります。

以前であれば、「母集団を集めて、面接して、内定を出す」というシンプルな工程が年に一度、ある程度定まったスケジュールの中で行われていました。しかし今は違います。

例えば「スカウト型採用」が広まっていますよね。これは従来型の採用手法(いわゆるオーディション型採用)とは異なり、自分たちで学生を見つけ・声を掛けていかなくてはなりません。

さらに学生本人からの応募ではないため、選考の前に「カジュアル面談」など、企業理解促進と信頼関係構築のためのステップを別で設ける必要もあります。オーディション型採用と比較して、約1.5倍以上の工数がかかると見ていいでしょう。

また、10月の内定式までに採用充足率が満たないケースも増えているため、秋採用や通年採用といった新たな採用スケジュールを並行して進めている企業も増えています。すると当然、採用業務を行うべき期間が延びるので、工数もその分だけ増えていきます。

つまり、工数が増えた上に、1年を通じてずっと採用業務をしているというような状況です。必要なマンパワーも当然、以前と比較してぐっと増えています。

— そのような採用市場の構造変化に対して、これまでどおりでは人が足りないということですね。

曽和さん: そのとおりです。これまでも「マンパワーが十分」という企業は少数派だったと思いますが、ますますひっ迫しています。

これはもう個人の努力でなんとかなるレベルではなく、採用市場の構造変化に企業側が付いていけていないということなんです。まずはその事実を、経営層も含めて理解する必要があります。

「採用人数20人に対して”専属1名”」が最低ライン まずはリソース設計を見直そう

— 多くの企業で「マンパワーが足りない」という認識はあると思いますが、具体的に「何人必要」という数字までは把握できていない場合も多そうです。

曽和さん: そうですね。なんとか個人の努力で乗り越えてしまえていたり、そもそもの採用予定人数を下方修正することによって対応してしまったりすることで、自社にとって本当に必要なマンパワーを把握できていない企業は多いかもしれません。

私の経験則では、「採用人数20人に対して、専属のフロント担当者1名」というのが、必要最低限のラインです。成長期にある企業や、採用に特に力を入れている企業であれば、その倍。つまり「採用人数10人に対して、専属のフロント担当者1名」が必要でしょう。

ただし、これは業務時間換算で問題ありません。例えば4名の採用チームでそれぞれが毎日2時間、フロント業務に専念できているのであれば、合計で8時間、つまり「フルタイム換算1名分」とカウントできます。これなら、採用人数20人に対応できるはずです。

ただし、ここでいうフロント業務の中には、面接会場の予約や、採用広報コンテンツの制作、面接資料の作成などを含めたバックオフィス業務は含みません。学生と直接コミュニケーションを取り、面談やフォローなどを行う「フロント業務」を担当する社員がフルタイム換算で1名分必要であるという点にご注意ください。

— 大企業であれば(専属のフロント担当者が)10名分以上必要という場合もありそうですし、中小企業であっても多くの場合、1名分では不足しますね。

曽和さん: そうなんです。ところが、実態としてはバックオフィスとフロントを兼任している担当者が1名とか、それに加えて総務や広報といった他の業務も兼ねている担当者が1名ということも少なくありません。

そういった場合、実際に担当者がフロント業務にかけられる労力は「1/3〜1/4名分」、つまり先ほどの基準に当てはめると「採用人数60〜80人に対して専属担当者1人」ということになります。身もふたもないようですが、これでは「採用がうまくいかなくて当然」と言えますね。

— 厳しい現実ですが、実際にマンパワー不足で困っている企業の方々は受け止める必要がありそうですね。

曽和さん: はい。「採用がうまくいかない」と悩んでいる方は、まず社内リソースを確認してください。もし「採用人数20人に対し、専属のフロント担当者1名」の基準を下回っているのであれば、リソース設計にミスがあると考えていいでしょう。まずはそこから見直すことを強くお勧めします。

マンパワー不足を補う方法1:「発見確率 × 入社確率」で採用ターゲットを見直して採用効率を上げる

— リソース設計の重要性について伺ってきましたが、すぐにマンパワーを増やすことができないという企業も多いと思います。限られた人数の中で、少しでも採用業務の効率化を図る有効な手立てはあるでしょうか?

曽和さん: いくつかありますが、お勧めは「採用ターゲットの見直し」です。

なんとなく前年踏襲で「有名大学のサークル長」や「偏差値60以上のコミュ力高め」のような、典型的なターゲティングをしている企業は少なくないと思いますが、そのような固定概念を捨て、自社だけのブルーオーシャンを探し出すことが、マンパワー不足に対する根本的な解決策の一つとなります。

— 具体的に、どのように見直しを進めるといいでしょうか。

曽和さん: 採用の期待値は「発見確率 × 入社確率」で考えることができます。

「発見確率」とは、ある集団から自社の希望する人材が見つかる確率のことです。有名大学のサークル長を経験している学生の中に希望する人材が多くいるのであれば、それは「発見確率の高い集団」といえます。

しかし同時に、それは多くの企業がターゲティングを行っている集団でもあります。そうすると、そこからの「入社確率」は低いといえるでしょう。

そこで、少し目線を変えてみましょう。弊社を例に挙げると、先ほど挙げた「有名大学のサークル長」のようなレッドオーシャンは狙いません。代わりに「音楽経験のある学生」をターゲットにしています。

— 音楽経験者ですか。その理由は?

曽和さん: 練習を重ねて楽器や歌を上達させてきた学生は、地道な努力ができる性格であることが多いんです。採用コンサルティングは地道なリサーチや提案の積み重ねですから、弊社が求める人材像に近いんですね。実際に活躍している社員の中にも音楽経験者が多くいます。その上、競合も少ない。

内定辞退率や選考辞退率が高くてリソースを圧迫しているという場合は、このように自社だけの「発見確率も入社確率も高い」集団を見つけることで問題を解決できる可能性があります。

マンパワー不足を補う方法2:RPO(採用代行)やATS(採用管理システム)を駆使する

— ターゲティング変更は、効果的な手段であることが分かりました。それ以外にも、日々の業務そのものを効率化するRPO(Recruitment Process Outsourcing:採用代行)やATS(Applicant Tracking System:採用管理システム)についてはどうお考えになりますか?

曽和さん: 採用業務の一部を「外に出す」というのは、極めて現実的な選択肢です。特にマンパワー不足に悩んでいる企業にとっては有効な打ち手だと思います。

例えばRPOでは、スカウトメールの文面考案から候補者選別、送信、日程調整、選考状況の進捗(しんちょく)管理といった時間のかかる作業を丸ごと任せることができます。

採用のような事業継続に直結する業務を外注することに抵抗のある方もいるかもしれませんが、むしろプロのノウハウに任せた方が良い結果が出ることも多いので、ぜひ検討してください。

ほかには、ATSの導入も有効な方法です。選考の進捗状況を専用システムで直感的に管理できるので連絡漏れを防いだり、オンライン面接の日程調整やセッティングを半自動で行ったりすることもできます。ATSの設定から運用までをRPOで外注するというハイブリッドな使い方もお勧めです。

— なるほど。バックオフィスを外注化・効率化すればフロント業務に集中できるので、実質的にマンパワーが強化されることになりますね。

曽和さん: はい。そして、このようにしてバックオフィス業務を外注化・効率化することで社内スタッフの負担が軽減され、その分だけ採用方針の策定、面談、面接といった「コア業務」に集中することができます。その上で、さらに人員増強ができるのであれば、それは採用力の強化に直結するはずです。

— 非常に具体的かつ実践的なアドバイスをありがとうございました!

採用は「事業に直結する」一大事業 現場から経営を動かす勇気も必要

取材の最後に、曽和さんから印象的な言葉がありました。

「マンパワー不足を補うための方法はいろいろありますが、企業が中長期的に成長し続けるためには、事業に直結する『採用』への投資が不可欠です。現場の課題を採用担当者が積極的に経営層へと伝え、人員確保のために動くことも重要です」

現場はマンパワー不足で悩んでいても、経営層からは「苦しいかもしれないが、採用はできている」と見えてしまっている状況は、多くの企業で起こっていることではないでしょうか。

その時、経営の投資判断を促すことができるのは採用担当者の皆さまです。
この記事で紹介された「採用予定人数20人に対し、専属のフロント担当者1名」という基準をベースに、自社のKPI達成率や、「学生との接点数が前年比○%減少している」といったエビデンスをもとにしながら、「会社の成長のためには人員補充が必要」と訴える勇気が、本当の意味でマンパワー不足を抜本的に解決します。

正社員での増員が難しければ、まずは派遣社員やアルバイト増員など、できることから始めてみてはいかがでしょうか。

\御社の採用タスクと総業務時間、把握していますか?算出方法と効率化のコツがわかる資料ダウンロードはこちら(会員限定・無料)/

  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

    新卒・中途採用ご担当者さま、経営者さま、さらには面接や育成に関わるすべてのビジネスパーソンに向けた、採用・育成・組織戦略のヒントが満載の情報メディアです。HR領域に強いマイナビだからこそお伝えできるお役立ち情報を発信しています。

  • 人材採用・育成 更新日:2025/06/27
  • いま注目のテーマ

  • ログイン

    ログインすると、採用に便利な資料をご覧いただけます。

    ログイン
  • 新規会員登録

    会員登録がまだの方はこちら。

    新規会員登録

関連記事