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【2023年最新】「新卒障がい者採用」は早期接触とインターンシップがポイント

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2023年6月現在で2.3%に設定されている障がい者の法定雇用率は、今後段階的に引き上げられ、26年度には2.7%になることが決定されています。

引き上げ幅だけ見ると「0.4%」は小さな数字のようですが、「1名以上の障がい者雇用が義務づけられる企業」の社員数規模で見ると、現在の43名以上から37名以上にまでラインが引き下がります。その時は自社も対象になるかも……と考えている方も多いのではないでしょうか?

そのような背景もあり、注目されているのが「新卒障がい者採用」です。

これまでの障がい者採用市場はすでに勤務実績を持つ中途人材が中心でしたが、法定雇用率の引き上げによって市場の人材が不足する可能性が高くなってきたことから注目を集めています。

そこで今回は、マイナビが23年4月に行った「大学生障がい者調査」をベースに、新卒障がい者採用をしようと考える企業が取るべき戦略、行動について解説します。

【調査概要】

大学生障がい者調査
調査手法:WEB調査
調査期間:2023年4月21日~4月26日
回答数:合計226名
調査対象:以下の条件を全て満たす方
・「障がい者手帳」を持っている または 申請中(種別・程度は不問)
・下記 のいずれかを卒業した方、もしくは卒業予定の方
大学院(19.9%)/四年制大学(56.6%)/専門学校(9.7%)/短期大学(9.3%)/高等専門学校(4.4%)
※()内は今回の調査の割合
・新卒での就職活動経験のある2022年卒~2025年卒
調査委託先:GMOリサーチ株式会社

※ 本記事に掲載されているデータ、グラフなどは特に断りのない場合、全て上記の調査を出典元としています。

― 今日はよろしくお願いします。近年、新卒採用市場全体において「早期化」が話題となっており、採用担当者はその対応に苦慮しているという声も聞かれます。新卒障がい者採用ではどのような状況でしょうか?


小久保:はい、障がいのない学生と同様に早期化の傾向が見られます。

障がいのある学生のうち、3分の1以上が一般募集枠のみで就職活動をし、併用している学生も全体の半数ほどになるため、基本的には同じスケジュールで動いているんです。

― なるほど。障がいがあるからといって、障がい者枠だけで就職活動をしているとは限らず、むしろ少数派なんですね。となると、採用側としては社内のリソース(人員など)が心配です。


小久保:障がいの類型や程度によっては、ほとんど障がいのない学生と変わらない働き方ができるという方も多いので、一般募集枠を利用・併用する方が多いですね。
しかし、採用広報や選考においては配慮が必要な場面があるため、新卒障がい者の採用をする場合には、できればチームを分けて同時に進行することをおすすめしています。

― 各社の事情によっては、2つの採用枠を同時に進行するのは難しいといった場合も多そうです。


小久保:そういった場合は、エージェントサービスを利用してもいいかもしれません。マイナビの場合は「マイナビパートナーズ紹介」というサービスで新卒障がい者採用を支援しています。

― 就職活動の早期化と併せて語られることが多いのが、採用広報前から行われている「インターンシップ」です。障がいのない学生の採用において、その重要度は年々増していますが、新卒障がい者採用においてはいかがでしょうか?


小久保:はい。インターンシップも、障がいのない学生と同様に非常に重要性が高いと言えます。理由は先ほどと同様、多くの学生が一般枠での就職活動も併せて行っているからですね。
小久保:このように、約8割の学生がインターンシップに参加しており、これは障がいのない学生とほぼ同じ割合です。

ただ、参加した形式などには違いが見られます。
小久保:こちらが、障がいのある学生とそうでない学生にアンケートを取った結果の比較です。

障がいのない学生ではインターンシップの形式として「WEB」が圧倒的な人気ですが、障がいのある学生では対面式にも一定の人気があることが分かると思います。

― 理由をぜひお聞かせください。


小久保:はい。障がいのある学生はその種別や程度によって「できる・できない」が異なるので、一度は職場を見ておかないとエントリーがしにくいという事情があるでしょう。
小久保:参加したプログラムも、このように職場が分かるもの、仕事内容がリアルに想像できるものが人気です。
実際に自分で行ってみて、その職場で働けるかどうかを確かめたいという欲求が表れています。

― 新卒障がい者採用を考えている企業は、対面でのインターンシップを実施した方が良さそうですね。


小久保:そうですね。必ず一度は職場を見てもらうために、選考の途中にインターンシップを開催する企業もあります。
ただ、障がいの種別によって対応が異なりますので、準備はしっかり行ってください。

下肢障がいがあって車椅子の方、発達障がいで時間とおり行動することに不安を覚えている方、聴覚障がいの方、視覚障がいの方などさまざまな方がいらっしゃいますから、自社でできる対応を一度整理して、必要であれば現場社員の協力も仰ぐのが良いでしょう。

また、インターンシップを開催するのであればぜひおすすめしたいのが、先輩社員との交流です。
障がいのある先輩社員が実際どのように働いているのか、何に困っていて、何が楽しいのか。そういった話を聞ける場があると、自分の目で見た情報以上のことが伝わります。

― 次に、企業選びについて聞かせてください。どのような傾向がありますか?

小久保:障がいのない学生と同様、「安定」と「成長環境」を重視する傾向にあります。特徴的なのは「希望する勤務地で働ける」が上位に入ってくる点ですね。

「一人暮らしに不安があるので親元から通いたい」や「電車に乗るのが大変なので車で通勤したい」など、それぞれの事情を抱えていることが多いためです。

また、グラフでは「福利厚生制度が充実している」とまとめられていますが、その中身は「通院のために有給の半休が取れる」など特有の配慮を求めることもあります。
先ほどもお話ししたように、障がいの種別や程度によって求めるものが違いますので、選考が進んできた段階で希望をヒアリングし、対応を考えられるようにしておくといいでしょう。

― 調査結果を拝見していると、障がいのない学生に比べてエントリー社数が少ない一方で、エントリーした企業にエントリーシートを提出する割合が高いことが気になりました。この理由は何でしょうか?

小久保:自分が働くことのできる職場を見定めてからエントリーしますので、必然的に少ない社数にエントリーし、その多くにエントリーシートを提出するという流れになります。

つまり、エントリーまでの間に「その企業で働けるかどうか」を判断できるだけの情報を伝える必要があるということです。
自分が働く姿を、よりリアルに想像できる情報提供に努めていただければと思います。

― 先ほどインターンシップでは「職場を見て判断するために」対面が人気と解説していただきました。一方で会社説明会はWEBの人気も高いというお話を聞いたことがあります。違いは何でしょうか?


小久保:障がいのある学生とWEB説明会は、基本的に非常に相性がいいと思います。移動の必要がないので、下肢障がいなどで移動に不安のある方や、発達障がいで電車に乗ることが不安な方などはもちろん、字幕を付けられるため聴覚障がいのある方にとってもメリットが大きいですね。
そのため、志望度が高ければ対面が好ましいですが、そうでない場合、例えばインターンシップ告知や採用広報においてはWEBで気軽に参加できた方が良いと言えます。

小久保:WEB型の合同会社説明会に参加したことがある学生は3分の2以上という調査結果もあり、こういった場で先ほど話題に上がったエントリー前の情報提供を行うことも可能です。
マイナビでも障がいのある学生向けのWEB合同会社説明会を行っていますので、企業を探している段階の学生と出会いたいと考えている際には、こちらを活用してみるのもおすすめです。

― ここまで、データを見ながら新卒障がい者採用のポイントを聞いてきましたが、法定雇用率があるとはいえ、採用に必要な人的コストなどを考えると尻込みしてしまう企業もありそうですね……。


小久保:実際、法定雇用率を守れずにペナルティ(罰則金、社名の公表)を受ける企業もあります。ただ、そのペナルティを避けたいというだけで障がい者採用をしても、結果として働く学生(新入社員)にとっても、会社にとっても、あまりいいことはないはずです。
企業の成長機会と捉えていただければと思っています。

― 具体的に、どのように企業の成長につながるのでしょうか。


小久保:ここまで何度かお伝えしているように、障がいのある学生はその種別・程度によって「できること・できないこと」がそれぞれ異なります。

そういった学生を社員として迎えるには、会社側にも準備が必要です。どのような仕事を、どのような種別・程度の障がいのある方に対応してもらうのか、それを考える必要があるということです。

その過程で、社内にある業務を全て棚卸しした上で、その業務内容を細かく分解・整理する必要が出てきます。

「この業務は、このステップ以外であれば上肢障がいの方が対応できる」や「この業務は発達障がいの方が対応できるように工夫の余地がある」など、考えるきっかけになり、それが業務の無駄や改善点の整理につながります。

またダイバーシティ&インクルージョンの観点からも、多様な人材・価値観のメンバー同士が互いに切磋琢磨(せっさたくま)することで、これまでにないアイデアや相乗効果が生まれ、結果的に事業成長につながることも大いに考えられます。

障がい者採用には確かに時間も手間もかかりますが、こうした副次的な効果も見込んで積極的に取り組んでいただければと思います。

― なるほど、ありがとうございました!

データで見ると、障がいの有無と採用スケジュールや学生の志向には関連性があまりないことが分かります。
これは裏を返せば「一般枠と障がい者枠の採用を同時に進めなくてはならない」ということであり、ただでさえ多忙な採用担当者の方が頭を悩ませるポイントではないでしょうか。

一方、インタビューの最後では障がい者採用をすること自体のメリットも語られました。法定雇用率を守るためだけの採用ではなく、自社にとってのメリットもしっかりと見ながら進めていただければと思います。

HUMAN CAPITALサポネットでは今、新卒障がい者採用についての記事をたくさん配信しています。成功事例から、採用広報の考え方まで、参考になる情報が盛りだくさんです。ぜひお役立てください!
  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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  • 人材採用・育成 更新日:2023/08/02
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