売り手市場における「夏採用」 その現状と第2クールならではの対策は?
現在、多くの企業でコロナ禍以前よりも一層採用意欲の高まりを見せております。
一方、学生数(就活生数)はほぼ横ばい。現在の採用市場は、売り手優位がますます進み、企業にとっては厳しい環境にあります。
そこで注目されているのが夏採用。「採用第2クール」と呼ばれることもあるように、春ごろから採用広報を始めて6月から選考と内々定出しを行う一般的な「春採用」の後に活動する採用のことを指します。
春採用で十分な人数に内々定出しができなかった企業にとっては第2のチャンスとも言えますが、その現実はどのようなものなのでしょうか。そして、どのような企業が夏採用に成功するのでしょうか。
マイナビで企業の採用活動サポートを行っている熊田実子さんに話を聞きました。
一方、学生数(就活生数)はほぼ横ばい。現在の採用市場は、売り手優位がますます進み、企業にとっては厳しい環境にあります。
そこで注目されているのが夏採用。「採用第2クール」と呼ばれることもあるように、春ごろから採用広報を始めて6月から選考と内々定出しを行う一般的な「春採用」の後に活動する採用のことを指します。
春採用で十分な人数に内々定出しができなかった企業にとっては第2のチャンスとも言えますが、その現実はどのようなものなのでしょうか。そして、どのような企業が夏採用に成功するのでしょうか。
マイナビで企業の採用活動サポートを行っている熊田実子さんに話を聞きました。
出展:「2024年卒大学生活動実態調査 (6月)」より
熊田:ただ、こちらのデータにあるように、内々定を持っていても就職活動を継続するという学生も少なくありません。
未内々定者の学生と合わせれば、約半数の学生が就職活動を継続するという意向を持っています。
内々定率・内々定保有社数のデータだけで判断して諦めてしまう必要はないと思います。
熊田:「入社先として意思を確定するまでの納得感が持てていない」とか、「家族や友人と話をしている中でなんとなく不安が出てきた」とか、とにかく就活を「やり切りたい」という心理があるようです。
未内々定者の学生と合わせれば、約半数の学生が就職活動を継続するという意向を持っています。
内々定率・内々定保有社数のデータだけで判断して諦めてしまう必要はないと思います。
― 内々定を獲得していながら就活を続けるという学生の心理は、どのようなものなのでしょうか?
熊田:「入社先として意思を確定するまでの納得感が持てていない」とか、「家族や友人と話をしている中でなんとなく不安が出てきた」とか、とにかく就活を「やり切りたい」という心理があるようです。
そういった学生にとっての「本当に入りたい会社」になることができれば、夏採用での採用成功もかなえられるでしょう。
― 一方、企業が気になるのは「学生の属性」ですね。特に夏以降も就職活動を継続する学生にどのような特徴があるのかが気になる方は多いと思います。
熊田:まず、大手企業等を志望し早期から活動していた学生は、すでに就活を終えているパターンが多いと思います。
土木・建築系や情報系など市場ニーズの高い分野を専攻していた学生も同様です。すでに第1志望の企業から内々定を取得し、かつ就活を終えていることが多いようです。
― そういった学生を採用したいと思っている企業にとっては、夏採用での成功は難しそうですね。
熊田:実際のところ、しっかり工夫をしないと簡単ではないと思います。ただし、「留学帰り」「公務員志望から民間就職への転向」「大学院進学から就職への転向」「部活引退後の体育会系」などの学生は、人によって夏採用の時期から就活を本格化させる可能性もありますので、注力する余地はありますね。
― そういった例外も含め、夏採用の時期に就活をしている学生にアプローチするにはどうしたらいいでしょうか。
熊田:「間口を広く取る」ことが重要になってきます。先ほどのデータからも分かるように、夏採用の時期に就活をしている学生は「約半数」です。つまり、春採用と同じ施策を行っても、半分かそれ以下の学生にしかアプローチできないということです。
そのため、まず一番のおすすめは学生の多くが企業探しのツールとして利用している就職情報サイト(マイナビなど)を活用いただき、露出をコントロールできる施策を利用しながら、自社が採用していることをできる限り広く告知することが重要になってきます。
― 他に行うべき施策はありますか?
熊田:繰り返しになってしまいますが、夏採用は春採用よりも厳しい環境にありますので、やれることは全部やる、という気持ちで臨んでいただきたいですね。
具体的には、就職情報サイト以外だと、エージェントが間に入って採用活動のサポートを行う「新卒紹介(エージェントサービス)」や、企業から学生へ直接オファーする「スカウト型サービス」なども組み合わせるといいでしょう。
特にエージェントサービスは、学生と企業との間にキャリアアドバイザーとリクルーティングアドバイザーが介在してマッチングをサポートしますので、採用工数をなかなか割けない場合などにも有効です。
― 夏採用の時期は次年度の学生向けに夏期インターンシップなどを行っていて企業側も忙しいですから、そういったサービスの利用は確かに有効そうですね。
熊田:はい。あとは、グローバル人材に目を向けるのもひとつの手です。マイナビでも夏採用の時期以降にグローバル人材と直接会うことのできるイベントを開催しています。
例えば、韓国はいま大変な就職氷河期の中にあり、日本での就職を希望する優秀な学生も非常に多いようです。国外に目を向けることも「採用の間口を広げる」ことの一環として考えていただくといいと思います。
― ここまでお話しいただいたように、「間口を広く取って」さらに「できることは全部やる」ことで、地道に採用母集団を増やしていくことが大事なのだと分かりました。
その後、「採用」を実現するためにはどのようなポイントがありますか?
熊田:実際に夏採用で成功されている企業を見ていると、「きめ細かなコミュニケーション」がカギになってくると思います。
なぜなら、「夏採用の時期に就活をしている学生のうち、約半数は内々定を持ちながらも納得感が持てるまでやり切りたいために就活を続けている」という話からも分かるように、夏採用で就活をしている学生は、それまでの就活で入社を決断できるような企業に出会ってこなかったということだからです。
そういった学生の立場に立って、「より働くイメージをもってもらい、安心して入社を決断できる企業」だと分かってもらうためには、きめ細かいコミュニケーションが有効なんです。
例えばエントリーシートを提出してくれた学生や選考に参加してくれた学生はもちろん、就職情報サイト上でエントリーをしてくれた学生に対しても個別にきめ細かくコミュニケーションを取って、説明会の案内や選考参加へのお誘いなどを丁寧に行いましょう。
また、1対1できめ細かなコミュニケーションをとることも非常に有効です。必要であれば先輩社員などとの面談の場もセッティングし、学生にとって自分が働く姿をリアルに想像できるように誘導してあげると良いでしょう。
― そのためには、自社の魅力について企業側がしっかりと整理しておく必要もありますね。
熊田:そうですね。加えて、採用したい学生像をしっかりと決めておき、その学生にとって「決断の理由」になるような情報を積極的に提供することも同じように重要になるでしょう。
― 25年卒のインターンシップなどがすでに進んでいる状況で、それだけのきめ細かいコミュニケーションを取るのは難しいという企業もありそうですね。
熊田:はい。ですので、次年度に目を向けるという判断も、時には重要になってくるかと思います。
24年卒で母集団形成がうまくいかなかったのであれば、その原因をきちんと分析し、25年卒の採用に活かしていくために時間を使うのもいいでしょう。
24年卒の採用目標に足りなかった分を25年卒で充足する、というくらいの気持ちで臨むのも良いかもしれません。
単年での採用人数を充足させることよりも、長い目で見て、企業活動を続けていくために必要な人材を確実に獲得していくことに注力していただけると良いかと思います。
― 今日はありがとうございました!
- 人材採用・育成 更新日:2023/10/06
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