新卒採用の「募集要項」正しい書き方と注意点を分かりやすく解説
<必ず記載すべき項目>
- 募集職種
- 勤務地
- 勤務時間
- 給与
- 福利厚生
- 休日休暇
- 受動喫煙防止措置の状況
- 試用期間
<できれば記載した方がいい項目>
- 応募資格
- 選考フロー
参考:労働者を募集する企業の皆さまへ~求人の申し込みや労働者の募集に当たっての留意事項~<平成29年職業安定法の改正等>│厚生労働省
ひとつずつ見ながら、作成時の注意点と人を集めるための工夫を解説していきます。
応募資格は法令で定められた必須事項ではありませんが、募集を大卒者に限定したいなど希望があれば掲載することができます。
ただし、男女雇用機会均等法によって性別を限定する募集は禁止されているほか、雇用対策法では年齢制限を設けた募集も禁止されています。それら以外にも、宗教、国籍、本籍・出身地、家族に関することなど適性と能力に関係ない事項の把握はNGです。
※ 性別を限定する募集の禁止と年齢制限のある募集の禁止には例外が適用される場合もあります。詳しくは下記のリンクから要件を確認してください。
参考:男女均等な採用選考ルール│厚生労働省
参考:その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?│厚生労働省
勤務地は法令で定められた必須事項に入っていますが、「地方勤務の可能性があるのに、本社オフィスしか書いていない」というミスが起こりやすい項目です。
入社後に配属される可能性のある勤務地が複数ある場合は、それらを全て記載しましょう。また、無期雇用派遣として顧客先に常駐して業務を行う場合などで募集要項に勤務地を記入し切れない場合は、「東京・神奈川・埼玉にある各プロジェクト先、取引先での勤務の可能性あり」など、どこで働くことになるかを明記する必要もありますので注意してください。
もし自社の採用サイトなどでオフィスの様子を見ることができる場合は、リンクを貼って誘導すると、働くイメージを形成しやすく、応募増につながることが期待できます。
給与は、法令で定められた必須事項です。特に注意すべきなのが、給与の異なる働き方が存在している場合。
複数のオフィスを持っている場合、地方は生活コストが相対的に低いため基本給を下げて設定している企業も多いのではないでしょうか。
サンプルで作成した募集要項では、本社と金沢オフィスで給与に差があるため、その旨を明記しています。
そのほか、最低賃金にも注意が必要です。月間の労働時間で「基本給」と「全社員に一律で支給される諸手当」の金額を割って、都道府県ごとに定められた最低賃金(※)以下になっていると法令違反になってしまいます。
賞与、通勤手当、家族手当、時間外勤務手当(残業代)などは最低賃金の対象外となりますので、計算ミスのないようにしましょう。
※ 都道府県ごとの最低賃金
最低賃金は、都道府県で個別に設定されています。22年度の改定で1時間当たりの最低賃金は、東京都が1,072円、大阪府が1,023円、愛知県が986円となりました。
そのほかの都道府県についても、最新情報を厚生労働省のサイトで確認しましょう。
参考:令和4年度地域別最低賃金改定状況│厚生労働省
受動喫煙防止措置の状況は、20年度より法令で定められた必須事項となりました。
受動喫煙防止措置の状況には、社内の喫煙ルールを明記しましょう。
記載のルールは下記のリンクから詳細を確認してください。
参考:「受動喫煙防止」のための取組を明示してください│厚生労働省
— 実際に審査をする中で、多くの企業が間違いがちな項目は何かありますか?
大沢:試用期間中の条件・待遇が違うのに記載がない、固定残業代の計算、変形労働時間制や裁量労働制など特殊な勤務形態に関する記載が誤っているなどの間違いが起こりやすいですね。
給与や勤務形態は学生にとって気になる項目ですが、採用側は日々の業務で詳細まで気にすることが少ないため、特に注意していただきたいですね。
特に固定残業代の計算などは間違いが起こりやすい複雑な項目ですので、就業規則や雇用契約を確認して、正しい情報で求人票の作成をしていただくのが適切だと思います。
— 実際に勤務していると気付きにくい部分もありますよね。単純なミスは確かに起こりやすそうです。
大沢:そうですね。また、単純な事実の誤りとは別に、優位性表現の根拠があいまいということも多いですね。例えば「業界シェア1位」「日本で初めて」など、企業としてアピールしたい項目を募集要項に入れること自体は問題ないのですが、その根拠が「自社調べ」としか示されていないと、信頼性の観点から不十分とされることが多いと思います。マイナビ新卒紹介の審査基準では、信頼できる第三者機関の調べによる根拠の提示が必要です。
— 採用側にとっては書きたくなってしまう項目ですね。
大沢:はい。でも、景品表示法や不正競争防止法など法令にも関わる部分ですので、慎重になっていただきたいです。
また、誤りとは違うのですが、他社批判となるような表現も控えていただいています。「A社よりもシェア率が高い」のようなものはもちろん、「同業他社の中では女性役員の人数がトップ」のように、間接的に他社を批判する表現は学生からの印象も下がるため避けた方が良いでしょう。
― そのほか、「こうした方が応募を集めやすい」というような情報はありますか?
大沢:募集要項に「求める人材像」を入れる場合があると思いますが、そこで「コミュニケーション能力の高い人」「明るい人」のような性格・特性に関する表現はできません。
学生側は自分がその要件に当てはまるのかどうかの確信が持てず、応募が集まりにくいことが多いですね。
そういった募集要項があった場合、より「仕事に対する姿勢」にフォーカスしていただくようにお願いしています。
― 例えばどういうことでしょうか?
大沢:「コミュニケーション能力が高い人」なら「クライアントと積極的にコミュニケーションを取って課題発見ができる人」、「明るい人」なら「前向きな姿勢で仕事に取り組める人」のような感じです。
「こんな人を採用したい」ではなく、「こんなふうに仕事ができる・したい人を採用したい」という思いを表現していただくといいと思います。その方が学生にとっても自分に合致するかどうかが分かりやすいので、間口を広げることができます。
― なるほど。確かに、自分自身の「人柄」や「性格」は客観視しにくいですよね。でも、仕事に対する姿勢なら過去の経験から自分自身に当てはまるか、確認できそうです。
大沢:はい、そうなんです。また、抽象的な表現の問題は、間口を狭めてしまうというだけではありません。 例えば、「明るい人」の募集要項を見て応募した学生が不採用になった場合、それは学生にとって「あなたは明るくない」と言われているのと同じことになってしまいます。
単に募集が集まりにくいだけでなく、人格否定につながりかねないことにも注意を払っていただきたいですね。
― では最後に、これから募集要項を作ろう・見直そうとしている採用担当者に向けてメッセージをお願いします。
大沢:募集要項は、学生との最初の接点です。WEBでの会社説明会が増えていますので、まずは映像、次に募集要項という順番で触れることも多くなってきましたが、それでも最終的に応募を決める情報として重要度が高いのは今までどおりですので、ルールを守りながら魅力的な募集要項になるよう、作成していただきたいと思います。
そして忘れていただきたくないのが、募集要項に書いたことは、学生との「約束」であるということです。
実際よりも残業時間を短く記載する、産休取得率を高く記載するといった行為は法令違反であるだけでなく、現実に触れた学生(新入社員)にとっては「裏切られた」と感じてしまいます。
結果として早期離職につながると、企業・学生双方にとって大きなマイナスです。もしこれから是正していきたい社内の状況があるのであれば、「一緒に残業時間を減らしていきましょう」と書いても大丈夫ですので、正直に、間違いのない情報を記載するようにしていただきたいですね。
― 今日はありがとうございました!
- 人材採用・育成 更新日:2023/05/16
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