介護法人の新卒採用、その選考手法で大丈夫? 見直しのポイントを解説!【介護職採用シリーズ_vol.15】
筆記試験には、主に、下記の4つの種類があります。新卒採用では、このなかから、選考の目的に応じて必要な試験を選ぶのが基本です。
■一般常識テスト
出題内容は、漢字、四則計算、時事問題など。基礎学力や社会人としての常識・教養レベルを評価することができます。■語学力テスト
採用予定の職務に必要となる英語、中国語などの語学力のレベルを評価するために行われます。■作文
主に、筆記試験の際に会場で書いてもらうケースと、説明会で課題を出して後日Webから送信、または郵送してもらうケースがあります。論理的な思考力や文章力に加え、会場で実施するケースでは字の丁寧さも評価できます。■適性テスト
さまざまな種類がありますが、大きく分けると「パーソナリティ(性格)テスト」と「能力(言語能力・数理判断能力など)テスト」の2種があります。主に、応募者の性格や能力を把握し、採用予定の職務への適性を判断するために実施されます全業種で見ると、新卒採用の選考で一般常識や語学力の試験を課す企業は減少傾向にありますが、福祉・介護業界では、過去に導入した筆記試験を、見直しすることなく実施し続けているケースも見られます。もし自法人がこれらの筆記試験を実施していて、応募がなかなか集まらないのであれば、原因の一つは筆記試験かもしれません。
というのも、選考過程に筆記試験があると、学生はその分の手間や時間をとられるため、一定数は応募をためらうおそれがあるからです。もともと介護職を目指している学生は負担をいとわずに応募する傾向がありますが、業界を絞らずに就職活動をしていて、介護業界にもなんとなく興味がある程度の学生は、選考に筆記試験を課す法人を避けるでしょう。
採用難のなかで介護法人が少しでも多く応募者を集めるためには、選考過程における学生の負担を減らすことが大切です。特定の能力を重視している場合や、志望度の高い学生しか採用したくない場合など、目的に応じて選定していくことが大切です。
ただし、筆記試験のなかでも適性テストは異なる立ち位置にあります。適性テストは、職務や法人との適性を判断してミスマッチを防ぐために実施するもので、ほかの筆記試験で多く見られる学力をメインに評価するものではありません。客観的な評価ができる、面接だけではわからない応募者の特性が見えるといったメリットも多く、入職後に配属先を決める際の参考にもなります。
学生にとっても、適性テストは一般常識や語学力のテスト、作文に比べるとハードルが低く、気軽に受けやすいといえます。また、選考過程に適性テストがあると、面接ではアピールできなかった面を見てもらえる、客観的かつ公正な評価をしてもらえるという納得感にもつながります。
適性テストを実施せずに書類と面接のみで選考を行っている法人は、導入を検討してみてはいかがでしょうか。一般常識テストや語学力テストなどを廃止する場合は、代わりに適性テストを導入するのもよいでしょう。
面接には主に、下記の3つの種類があります。それぞれの特徴を把握したうえで、自法人に合った面接手法を選ぶのが基本です。
■個人面接
応募者1人に対して面接を行います。じっくり話ができること、応募者の本音が出やすいことのほか、「面接のついでに施設見学をしたい」といったニーズに対応しやすいのもメリットです。■集団(グループ)面接
3~5人の応募者に対し、同時に面接を実施します。効率的に選考できるうえ、面接時に同じグループの応募者を比較しながら評価できます。一方、一人ひとりを見る時間が個人面接よりも少ないため、人柄を見極めにくい面もあります。■グループディスカッション・ワーク
グループディスカッションでは、応募者3~5人に課題を提示し、討議してもらいます。討議するだけでなく、グループで取り組んだ課題を提出してもらうのがグループワークです。いずれも、応募者の協調性やリーダー性、課題解決力を見極めることができます。一般企業における新卒採用では、二次または三次まで面接を行うのが一般的です。ただ、新卒採用における面接の回数は、近年、減少傾向にあります。
マイナビが新卒採用実績のある全業種の企業に対して実施した調査によると、新卒採用において実施されている面接の平均回数は2.2回です。上場・非上場の区分別に見ると、上場している法人では2.6回、非上場法人が2.1回と平均回数に開きがあります。業種や職種にもよりますが、企業規模が大きいほど面接回数が多い傾向があり、中小企業の多くは二次面接を最終面接としていると考えられます。また、前年に比べると、面接の平均回数のほか、一次面接から内々定までの平均日数も減っています。
※出典:マイナビ「2025年卒 企業新卒内定状況調査」(2024年9月~10月調査)
なお、介護法人では三次面接まで行うケースはまれで、よく見られるのは、採用(人事)担当者や現場の責任者が一次面接を担当し、理事長、所長などの管理者が二次面接で最終確認をするという選考フローです。1回の面接で選考する法人も少なくないようです。
上記の面接回数に関する調査結果からいえるのは、中小規模の法人が応募者をつなぎとめるには、できるだけ少ない選考回数と短い日数で判断して内定を出すべきだということです。とくに選考過程での応募者のキャンセルが多い法人は、選考にかかる回数・日数を、現状より少しでも短縮する工夫を考えてみるとよいでしょう。
具体例をあげると、午前中に施設見学会を開催し、希望者には午後に一次面接を行うという工夫が考えられます。また、Web面接を取り入れて面接日時の選択肢を増やすと、内定が出るまでの日数の短縮につながる可能性があります。
ただし、選考にかかる日数が短いほうがよいといっても、面接中や面接直後にその場で軽い口調で内定を出すといった極端な対応だと、応募者に「誰でもよかったのでは?」と思われかねません。内定を出す際には、法人内で十分に協議して人物像を評価した結果だと思ってもらえるように、伝え方やタイミングを工夫することが大切です。たとえば二次(最終)面接の数日後に面談を設定して、内定と管理者の評価コメントをあわせて伝えると、内定の重みを印象づけることができます。
また、法人側が面接回数は1回で十分と思っていても、短時間の面接1回で内定が出ると、応募者のなかには「私のどこを評価したの?」と不安になる人もいます。法人側の体制や状況にもよりますが、応募者に納得感を持って内定を受け入れてもらうためにも、できれば面接は二次まで行うことをおすすめします。
介護業界の採用市場は、他業界以上に売り手有利で、学生は多様な法人のなかから選べる立場にあります。介護法人にとっての面接は、応募者を評価して選ぶ場というより、応募者に選んでもらうための判断材料を提供する場といえるでしょう。したがって面接官は、いかに応募者の志望度を上げて、離脱せずに次の段階に進んでもらうかという意識で面接に臨まなければなりません。
応募者の離脱を防ぐ方法の一つが、面接官を務める予定の職員や管理者に面接官研修を受けてもらって、面接スキルを高めることです。面接官研修では、面接で効果的な質問をして応募者の志望度を上げるポイントを学ぶことができます。
管理職世代のなかには、Z世代と呼ばれる若者の価値観や感覚を把握できていない人も少なくありません。いまどきの学生には受け入れられにくい対応を改め、面接での適切な対応やマナーを身につけられるのも、面接官研修のメリットです。
なお、選考課程での離脱防止策はほかにもあります。面接辞退が多い介護法人は、下記の記事も参考にしてください。
- 人材採用・育成 更新日:2025/06/02
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