効果的なフォローで離職防止の対策を。介護職の定着率を上げる方法10選【介護職採用シリーズ_vol.6】
介護業界では、「なかなか採用できない」という悩みのほかに、「入職後すぐに離職してしまう」という悩みもよく聞かれます。十分な人数を採用するのが難しいなかで、せめて定着率だけでも上げたいと考えている採用担当者もいらっしゃるのではないでしょうか。
職員の定着率が低く、特に新人の離職が多い場合、「合わないと思ったから」という声があり、入職後のフォローが不十分なことが要因と考えられます。また、長期的に見ると、キャリアの見通しが不透明なことや働きやすい環境が整っていないことも、職員の離職を招く原因になります。
そこで今回は、介護法人が職員の定着率を上げる方法を、新人の入職後を中心とした短期的な取り組みと、キャリアパスや職場環境を整えるなどの長期的な取り組みに分けて紹介します。
まずは、介護業界と全業種の離職率を見てみましょう。
介護労働安定センターの調査によると、2021年10月から2022年9月までの介護職、訪問介護員の2職種合計の離職率は14.4% です。(※出典:介護労働安定センター「令和4年度介護労働実態調査」)
一方、厚生労働省の調査によると、2022年1年間の全業種の常用労働者の離職率は15.0% です。(※出典:厚生労働省「令和4年 雇用動向調査結果」)
上記のデータからは、自法人の離職率が10%~15%程度であれば平均的な数値であり、特に高いとはいえないことがわかります。しかし、もし20%を超えているのであれば、入職後の対応や職場環境などになんらかの問題があるサインと捉えて、改善に向けて計画を立てるべきでしょう。
ただし、職員数が少ない法人の場合、たまたま2人の職員が続けて離職しただけで離職率が20%を超える場合もあります。上記の数字は、あくまで目安と考えましょう。
最初に取り組みたいのが、定期的なフォローアップ面談の場を設けることです。フォローアップ面談では、直属の上司または管理者(所長、施設長など)が、新人から、現在の状況、職場環境や働き方に関する悩みなどを聞き出します。面談によって、たとえばOJTの担当者の指導や説明がうまく伝わっていない、職員によってシフトの組み方に偏りがあるといった課題を把握したら、法人内で改善策を考える必要があります。
一般企業では、入社の1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、1年後にフォローアップ面談を実施するのが効果的とされています。ただ、介護法人では管理職や人事担当者が手いっぱいになりがちなので、年に4回も面談を行うのは現実的ではないかもしれません。その場合は、年2回程度を目安に実施するとよいでしょう。
離職を減らしていくためには、離職する職員に対しても面談を実施して、離職理由を把握することが大切です。ただ、離職理由にはさまざまな職場の問題や個人的な事情も絡んでいるため、立場的に近い関係にある直属の上司や現場の責任者が相手だと、離職者が本音を打ち明けづらい場合があります。業務上の関わりが少ない人事担当者や管理者が面談をすると、より本音に近い理由を引き出せます。
新人向けの研修プログラムに力を入れて新人のスキルや適応力を高めることも、外せないフォローの一つです。なかでも重要なのが、入職後すぐに集合形式で実施する導入研修です。介護法人の導入研修では、2週間ほどかけて、法人や施設・事業所の概要や社会人に必要なマナー、介護技術などを学ぶのが一般的です。
新人教育をOJTのみに頼ると、OJT担当者の指導の仕方によって新人の教育レベルにばらつきが生じることがありますが、導入研修を行うと、基本的な知識・スキルを新人全員に均一に身につけてもらえます。
導入研修は、新卒採用の未経験の新人はもちろん、中途採用の新人にも実施することをおすすめします。中途入職者の多くは基本的な介護技術を身につけていますが、細かい部分は法人によって異なるため、自法人のやり方を身につけてもらう必要があるからです。また、研修を通して、自法人の理念や文化を知ってもらうことも大切です。
導入研修のほかに、入職の数ヶ月後や一年後に基本的なスキルの習得度を確認する新卒フォローアップ研修や、資格試験の対策講座などを実施している法人もあります。自法人で研修を実施することが難しい場合は、外部の研修を活用するとよいでしょう。
スキルアップのための教育や人材育成は、新人だけではなく全職員に対して必要です。ただし、経験レベルやキャリアの段階によって、職員が求める知識やスキルは異なります。
そのため法人には、上位資格取得のための研修、ユニットリーダー研修、ファーストステップ研修、マネジメント研修、認知症ケアや喀痰吸引に関する研修など、職員本人の目標やキャリアの段階に応じて、幅広い研修を受けられるように支援体制を整えることが求められます。
ただし、自法人への帰属意識が十分に育っていない状態で職員が上位資格を取得していくと、他法人への転職者が増える傾向があります。
したがって定着率を上げるには、育成に力を入れると同時に、職員が「この法人で働き続けたい」と心から感じられるように、帰属意識を育てていかなければなりません。前出のイベントや事例発表会のように自法人の理念を職員に共有する機会を積極的に設けて、職員が自分の成長と法人の成長を重ね合わせることができる状態を目指しましょう。
近年、業界にかかわらず、職員一人ひとりが努力に見合った処遇や評価を受けられる公正な組織文化を形成することが重視されています。そのような組織文化のもとでは、職員の満足度や法人への忠誠心が高まるため、定着率アップが期待できます。
組織文化の形成につながる取り組みの一つが、階層別研修です。階層別研修とは、若手、中堅、リーダーといった職員の階層に分けて実施される研修です。
組織内では、職員に求められる知識やスキルは階層ごとに異なります。それらを身につけ、その階層に求められる役割を理解してもらうことが、階層別研修の主な目的です。経験値やスキルが同レベルの者同士が集まって同じ内容の研修を受けることで、同じ階層内で新しい知識や考え方が共通認識として定着し、組織内に浸透しやすくなります。
階層別研修のなかでも、組織文化の形成にあたって特に重要なのが、施設・事業所の責任者である管理者向けの研修です。管理者に「マネジメント基礎」「育成スキル」「人事評価」「メンタルヘルス基礎」などのテーマのなかから、自法人の現在の課題に合わせた研修を受けてもらうと、職員全体の意識と行動をスムーズに変えていくことができます。
- 人材採用・育成 更新日:2024/06/28
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