複数の内定企業から入社する「1社」を決める際に重要な視点とは、若手社会人の転職理由から探る
2023年6月、24年卒の採用活動は「選考開始解禁」を迎えましたが、新卒に対する企業側の採用意欲の高まりをうけ、すでに多くの企業が面接や内々定出しを行っています。マイナビが実施した調査によると6月15日時点での内々定率は76.4%(対前年同時期2.3pt増)、内々定保有社数は2.4社(対前年同時期0.1社増)となっていました。これらの状況から考えると、 多くの学生が複数の内々定をもったうえで、いずれ入社する1社を決めるというプロセスを踏むことになると思われます。
本コラムでは、学生が少しでも納得度の高い選択をするためにどういうことを心掛けるとよいのか、就職活動中の学生に実施した調査に加えて、若手社会人の転職意向を探った調査結果を踏まえて解説したいと思います。
本コラムでは、学生が少しでも納得度の高い選択をするためにどういうことを心掛けるとよいのか、就職活動中の学生に実施した調査に加えて、若手社会人の転職意向を探った調査結果を踏まえて解説したいと思います。
マイナビの調査で入社予定先を決めた学生にその理由を聞いたところ、「説明会で興味を持ち、選考を経て志望度が上がったから」が昨年に続き最多で50.5%、次いで、「その企業の社員の雰囲気や人柄が自分に合っていると感じたから」が40.9%となりました。新卒採用は中途採用などと違って、ポストごとの採用ではなく、会社として採用活動が行われるのが一般的なため、どちらかというと「企業の社風」と「学生の人柄」のマッチングが重視される傾向にあります。もちろんこの視点は非常に重要で、採用選考の段階から内定者フォローに至るまで、この相性をしっかり確かめ合い、入社後のミスマッチを防ぐことが求められます。。
ただ、この「相性」というのは非常に主観的なものであり、なかなか判断が難しいというのも事実です。特に新卒採用の場合は、ポストごとの採用ではないので、実際に上司になる人が面接を担当するというケースは少ないと思われます。そのため、採用担当の方と選考などで会っている間は「自分にあっている」と感じていても、実際に入社し、職場に配属されたときに「思っていたのと違う」となる可能性があるので注意が必要です。
では、どのように入社する企業を決めればよいのでしょうか。大切なのは、様々な軸で多面的に判断することだと思います。特に、主観的な判断軸だけでなく、待遇や仕事内容など具体的に情報を得ることができる客観的な要素も踏まえて判断する必要があるのではないでしょうか。
ただ、この「相性」というのは非常に主観的なものであり、なかなか判断が難しいというのも事実です。特に新卒採用の場合は、ポストごとの採用ではないので、実際に上司になる人が面接を担当するというケースは少ないと思われます。そのため、採用担当の方と選考などで会っている間は「自分にあっている」と感じていても、実際に入社し、職場に配属されたときに「思っていたのと違う」となる可能性があるので注意が必要です。
では、どのように入社する企業を決めればよいのでしょうか。大切なのは、様々な軸で多面的に判断することだと思います。特に、主観的な判断軸だけでなく、待遇や仕事内容など具体的に情報を得ることができる客観的な要素も踏まえて判断する必要があるのではないでしょうか。
就職活動生が入社する企業を決める際に見るべき項目を考える際のヒントとして、20代の若手社会人が転職する理由を見てみます。マイナビが実施した「2023年4月度 中途採用・転職活動の定点調査 」によると転職理由として最も多いのは「給与を高くしたい」で、他の項目で20代が他の世代に比べて高い割合となっているのは「スキルアップがしたい」と「仕事内容を変えたい」です。一般的に転職理由として多いと言われている「人間関係をリセットしたい」の割合は20代では小さく、むしろ30代以降、とりわけ50代で高い傾向にあります。
当然ながら、働いてみないとわからないことのほうが多くありますが、実は主観的な「人間関係」よりも、具体的に情報を得ることができたはずの「給料」「スキルアップ」「仕事内容」に対する不満が転職活動を行う理由につながっているようです。
当然ながら、働いてみないとわからないことのほうが多くありますが、実は主観的な「人間関係」よりも、具体的に情報を得ることができたはずの「給料」「スキルアップ」「仕事内容」に対する不満が転職活動を行う理由につながっているようです。
上記のことより、 企業の社風と学生の人柄との相性以外に、確認しておきたい項目として「給料(広く待遇)」「スキルアップ」「仕事内容」をあげたいと思います。
まず、「給料」についてです。24年卒学生の就職活動については、ちょうど広報活動が開始される時期(2023年3月頃)に各社の初任給引き上げが話題になりました。初任給引上げを採用広報のPRとして利用している企業もあったので、これまでよりは情報を得やすかったかもしれません。
次に、「スキルアップ」「仕事内容」についてです。「スキルアップ」については若者世代の「成長できないことへの不安感」が取りざたされることもあり、新卒採用では特に「どのように育成するのか」についての情報は 提示していこう、というのが一般的な考えだと思われます。また、「仕事内容」についても、昨今、学生側に不安視 されている「配属ガチャ」への対策として、ポスト単位ではなく、会社単位で実施することが一般的な新卒採用においても、「職種別コースの導入」を積極的に取り入れようとする動きが見られます。そのため、以前よりは「仕事内容」に関する情報提供がされるようになりました。
このように、重要だと思われる「給料」「スキルアップ」「仕事内容」に関しては、企業側では採用する前に情報を開示していこうとする動きが一般的になっており、もしかしたら今後は同じような内容で転職活動を行うような人は減少傾向になるかもしれません。
ただ、注意が必要なのはそれぞれに関して、「実態を把握できているか」という点です。例えば、「給料」というのは、初任給だけでありません。入社後のミスマッチを防ぐためには、働き始めたあとの評価・昇給制度なども含めて理解する必要があるでしょう。面接の段階で待遇のことを聞くのはハードルが高く感じるかもしれませんが、内々定を獲得したあとであれば質問しやすくなります。ここで大切なのは、「給料」の情報は「どれだけお金をもらえるか」という単純な話ではないという視点です。評価・昇給制度に関する情報は、企業が従業員の評価についてどのように考え、どのような姿勢を持って向き合っているのか知るという意味で、入社後の企業と従業員の関係性を測ることのできる重要な情報だと思います。
また「スキルアップ」についても、研修などの学びの機会が豊富であればいいのか、という点には注意が必要でしょう。転職理由として挙げられていることから推察すると、おそらく「仕事を通じてスキルアップができるのか」という点が重視されているのではないかと思われます。この点については、「仕事内容を変えたい」という転職理由ともつながっているように思います。そういう意味では、「スキルアップの機会がある」ということと、「仕事内容」をそれぞれに理解していたとしても、「仕事を通じてスキルアップができるのか」は把握していないということもあるのかもしれません。
これまで述べてきたように、「社風と人柄のマッチング」「給料」「スキルアップ」「仕事内容」などはすべて就職先を決めるうえで重要な要素だと思います。ただ、それぞれを単独で判断するのではなく、それらの関係性も踏まえたうえできちんと理解し、入社する1社を選んでいく必要があると言えるでしょう。
まず、「給料」についてです。24年卒学生の就職活動については、ちょうど広報活動が開始される時期(2023年3月頃)に各社の初任給引き上げが話題になりました。初任給引上げを採用広報のPRとして利用している企業もあったので、これまでよりは情報を得やすかったかもしれません。
次に、「スキルアップ」「仕事内容」についてです。「スキルアップ」については若者世代の「成長できないことへの不安感」が取りざたされることもあり、新卒採用では特に「どのように育成するのか」についての情報は 提示していこう、というのが一般的な考えだと思われます。また、「仕事内容」についても、昨今、学生側に不安視 されている「配属ガチャ」への対策として、ポスト単位ではなく、会社単位で実施することが一般的な新卒採用においても、「職種別コースの導入」を積極的に取り入れようとする動きが見られます。そのため、以前よりは「仕事内容」に関する情報提供がされるようになりました。
このように、重要だと思われる「給料」「スキルアップ」「仕事内容」に関しては、企業側では採用する前に情報を開示していこうとする動きが一般的になっており、もしかしたら今後は同じような内容で転職活動を行うような人は減少傾向になるかもしれません。
ただ、注意が必要なのはそれぞれに関して、「実態を把握できているか」という点です。例えば、「給料」というのは、初任給だけでありません。入社後のミスマッチを防ぐためには、働き始めたあとの評価・昇給制度なども含めて理解する必要があるでしょう。面接の段階で待遇のことを聞くのはハードルが高く感じるかもしれませんが、内々定を獲得したあとであれば質問しやすくなります。ここで大切なのは、「給料」の情報は「どれだけお金をもらえるか」という単純な話ではないという視点です。評価・昇給制度に関する情報は、企業が従業員の評価についてどのように考え、どのような姿勢を持って向き合っているのか知るという意味で、入社後の企業と従業員の関係性を測ることのできる重要な情報だと思います。
また「スキルアップ」についても、研修などの学びの機会が豊富であればいいのか、という点には注意が必要でしょう。転職理由として挙げられていることから推察すると、おそらく「仕事を通じてスキルアップができるのか」という点が重視されているのではないかと思われます。この点については、「仕事内容を変えたい」という転職理由ともつながっているように思います。そういう意味では、「スキルアップの機会がある」ということと、「仕事内容」をそれぞれに理解していたとしても、「仕事を通じてスキルアップができるのか」は把握していないということもあるのかもしれません。
これまで述べてきたように、「社風と人柄のマッチング」「給料」「スキルアップ」「仕事内容」などはすべて就職先を決めるうえで重要な要素だと思います。ただ、それぞれを単独で判断するのではなく、それらの関係性も踏まえたうえできちんと理解し、入社する1社を選んでいく必要があると言えるでしょう。
先ほど転職理由を確認した調査で聴取している「転職活動をする上での悩み」の結果をご紹介します。20代で多かったのは「自分が何に向いているかわからなかった」でした。何かしら、元の職場の仕事に不満を持ち、転職活動を始めてはみたものの、目指すべき方向性がクリアにならず、悩みながら転職活動をしている様子がうかがえます。
前段でもお伝えしたとおり、様々な要素を複合的に理解することが大事だというのは言わずもがなではありますが、それが一番難しいというのも事実です。職務経験のない就職活動生がそれを本当の意味で理解するのは至難の業だと思います。そこで、もう一つの考え方として持っていただきたいのは、自分に何が向いているのだろうか」ということを働きながら探す、ということも一つの方法である、という視点です。
「実際に働いてみないとわからないこと」というのは当然ありますし、そこにミスマッチがあると、不満を感じるのも当然です。ただ、働き始めてすぐのタイミングで感じた「思っていたのと違う」という感覚については、その時点で本当に理解できたうえでの判断なのか、という問いかけも必要ではないかと感じています。心身に危険を感じるような状態ではない、というのが大前提の話ではありますが、もし安全な職場であれば、自分が下した決断がどうだったのか、働きながら納得感を確認し、もし違和感があるのならば、そのときにはまた自分の軸を調整すればいいわけです。
人生100年時代などと言われますが、実際、長い人生のなかで起こる様々なライフイベントを通じて、仕事に対する価値観も変わります。大切なのは、その都度、状況を多面的に考えて決断を下すことではないでしょうか。少し矛盾して聞こえるかもしれませんが、最初に下した決断がすべてではありません。ただ、次の決断の機会の納得度を上げるためにも、最初の決断の機会にしっかりと考え、自分なりの答えを見つけていただきたいと思っています。
前段でもお伝えしたとおり、様々な要素を複合的に理解することが大事だというのは言わずもがなではありますが、それが一番難しいというのも事実です。職務経験のない就職活動生がそれを本当の意味で理解するのは至難の業だと思います。そこで、もう一つの考え方として持っていただきたいのは、自分に何が向いているのだろうか」ということを働きながら探す、ということも一つの方法である、という視点です。
「実際に働いてみないとわからないこと」というのは当然ありますし、そこにミスマッチがあると、不満を感じるのも当然です。ただ、働き始めてすぐのタイミングで感じた「思っていたのと違う」という感覚については、その時点で本当に理解できたうえでの判断なのか、という問いかけも必要ではないかと感じています。心身に危険を感じるような状態ではない、というのが大前提の話ではありますが、もし安全な職場であれば、自分が下した決断がどうだったのか、働きながら納得感を確認し、もし違和感があるのならば、そのときにはまた自分の軸を調整すればいいわけです。
人生100年時代などと言われますが、実際、長い人生のなかで起こる様々なライフイベントを通じて、仕事に対する価値観も変わります。大切なのは、その都度、状況を多面的に考えて決断を下すことではないでしょうか。少し矛盾して聞こえるかもしれませんが、最初に下した決断がすべてではありません。ただ、次の決断の機会の納得度を上げるためにも、最初の決断の機会にしっかりと考え、自分なりの答えを見つけていただきたいと思っています。
- 人材採用・育成 更新日:2023/06/29
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