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Uターン学生の約6割は「セミナー形式が参加申し込みに影響」。―コロナ禍後のWEB活用を考える

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新型コロナウイルスの感染対策をきっかけに大きく普及した採用活動のオンライン化。移動制限などへの対処的な手段として導入されましたが、1日により多くの企業の説明会や面接に参加することが物理的に可能になるという利点も示されました。ただ、対面でこそ伝わる社風や雰囲気という要素も就職活動では重要であり、面接は対面のみで実施するなど、この数年で良い使い分けを模索してきたという状況もあります。
今後、感染対策などでの制限がなくなったアフターコロナの状況下でWEB活用はどうあるべきか。今回はUターン学生と企業セミナーに注目しながら、より多くの学生に企業情報を届けるという観点に絞ってWEB活用の在り方を考えていきます。

Uターン希望者の4人に1人は「WEB参加不可だったのでエントリーをやめたセミナーがある」


『2024年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査』によると、地元を離れた(地元都道府県外に進学した)学生で、Uターン就職を希望している人の57.9%が「セミナーの実施形式が参加申し込みに影響したことがある」と回答しました。さらに詳しく見ると、「WEB参加可能だったのでエントリーすることにしたセミナーがある」学生は45.0%、「WEB参加不可(対面のみ)だったためエントリーをやめたセミナーがある」学生は24.6%です。
Uターン希望者の実に4人に1人は、「WEB参加不可」ということがきっかけでセミナーへの申し込みをしなかった、または諦めてしまったことがあるということです。そのような経験があるかないかで聞いているので、実際にそういう経験をしたのは各学生が1社ずつ程度かもしれませんが、4人に1人という数字は決して少なくないように思えます。

「2024年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査」

地元内の大学に進学している学生との割合の差は8.9pt


24年卒の学生は入学当初から大学の授業もオンライン化されていた学年のため、企業セミナーもWEBで参加できることが当たり前になりつつあるという価値観の変化も考えられますが、要因はそれだけではないようです。

先ほどの質問に対する地元進学の学生の回答を見ると、約5割が「セミナーの実施形式がエントリーするかどうかに影響したことがある」と回答しました。「WEB参加不可(対面のみ)だったためエントリーをやめたセミナーがある」学生は15.7%で、地元進学外の学生 (24.6%)と8.9ptの開きが見られます。

「2024年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査」

WEB参加不可を理由に参加申し込みをやめた経験をしている学生は地元外に進学した人に多く、地元を離れているかどうかが影響していることが見てとれます。

Uターンでネックとなる「交通費」と「時間」


では、地元外に進学する学生にとって、それほど「WEB参加不可・対面のみ」のセミナーが参加しづらいものになるのはなぜか。それは、当たり前ですが地元企業に訪問するための移動、さらに言えば交通費や時間の問題です。
Uターン希望者が「地元への就職活動においてもっとも障害に感じるもの」を見ると、「交通費」が最多となっており、「やりたい仕事がない」「地元企業の数が少ない」などの、就職先企業自体に関する項目よりも割合が高いことが分かります。

「2024年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査」

実際にUターンの就職活動の移動に関わる調査を見ると、「Uターン学生が就職活動において利用する交通手段」として新幹線を利用する学生が東北地方では52.3%、中国地方では38.4%、長距離バスを利用する学生は東北地方や四国地方で3割以上、飛行機(LCCなどを除く)を利用する学生は九州・沖縄地方で17.4%となっています。地元地域によっては移動費用の高い交通手段を用いて就職活動している学生が少なくなく、地元に帰るために費用や時間がかかっていることが推察できます。

「2024年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査」

移動費用を縮小させたWEB化


この「移動の壁」を縮小させたのが、コロナ禍による採用活動へのオンライン導入でした。『モニター調査』で学生全体の交通費・宿泊費の経年比較を見ると、21年卒から大幅に減少していることが分かります。21年卒は2020年の3月から就職イベントが中止になるなど、移動制限や感染対策によって対面の採用活動が難しくなったことでWEB化が急激に進んだ初年度であり、交通費・宿泊費が大幅に縮小されています。また、22年卒以降もWEBと対面を使い分けながら採用活動が進められており、学生の交通費・宿泊費用は減少したままの水準を保っています。就活生全体にとって、コロナ禍による就職活動のオンライン化が移動費用の縮小に大きな影響を与えたことが分かります。

「マイナビ2023年卒 学生就職モニター調査 6月の活動状況」

実際に「地元企業への就職活動においてもっとも障害に感じていること」の経年変化を見るとコロナ禍以降「交通費」を障害に感じている学生の割合は減少しています。この図で21年卒の割合が減少していないのは、学生がインターンシップなどコロナ禍前の活動も含めて障害に感じたことを回答しているからだと考えられ、準備活動からWEB化された22年卒以降は「交通費」の割合が減少していることが見てとれます。 コロナ禍をきっかけに採用活動にWEBが導入されたことで学生の負担が減ったことが分かります。

「大学生Uターン・地元就職に関する調査(2019~24年卒)」

ここまで、Uターン学生にとっての就職活動における「移動の壁」とそれを縮小された採用活動のWEB化について見てきました。最後に、Uターン就職を希望する学生がどのような情報発信を望んでいるのかと、対して企業はどのように工夫しているケースがあるのか、実際のコメントを取り上げながら見ていきましょう。
学生のコメントを見ると、やはり地元企業へ帰って説明会に参加することへのハードルを感じているコメントと、WEBセミナーによってハードルを下げてほしいというコメントが見られました。地元を離れてしまうと、大学の所在地域の企業情報は集まりやすくても、地元企業の情報は入ってきづらいことが背景にあるようです。ただ、SNSでの情報発信やサイトの工夫、大学からの情報提供などを求める声など、WEBセミナーを実施する以外の情報発信方法も挙げられています。
「2024年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査」

反対に、企業が「地方学生や遠方からの学生の応募を増やすために取り組んでいること」のコメントを見ると、学生が求めるように「説明会のWEB開催」や「SNS活用」を実践し、学生の負担を減らしたり広く情報発信しようと努力したりしている企業があることが分かります。企業としても情報発信の工夫の必要性を実感していることが推察されます。
「マイナビ2023年卒企業新卒採用活動調査」

ここまで、就活生にとっての地元企業への移動という障害についてと、それを克服するためのWEB活用についてみてきました。コロナ禍で始まって定着した採用活動のオンライン化ですが、地元企業への時間・費用というハードルを減らしたという意味で学生にとって大きな意味を持ったことが分かります。今後、感染対策という観点では必ずしもWEB形式を続ける必要性はなくなっていきますが、「対面では参加しづらい」ということが企業情報に触れられなくなることに繋がるのはもったいないことだと思います。地元を離れた学生、もっと広く言えば遠方に住む学生全体に向けてより届きやすい情報発信をするために、さまざまな手段での情報発信を模索していくことが重要だと考えられます。

学生については、志望する企業のセミナー等が対面のみ実施だからといって「来られる人しか採用したくない」ということではないので、用意されている情報発信以外にも自分から情報を企業に積極的に聞くという発想は持っていてよいと言えます。 採用活動のWEB化という変化が、情報発信の仕方の見直しに繋がり、企業と学生双方によってよりよい形の情報発信の在り方が考えられるとよいと思います。
  • Organization 株式会社マイナビ 社長室 HRリサーチ統括部

    株式会社マイナビ 社長室 HRリサーチ統括部

    雇用や労働に関連する様々な調査データやレポートを通じて、雇用の在り方や個人のキャリアを考える上で役立つ情報を発信します。

  • 人材採用・育成 更新日:2023/05/31
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