24年卒の就活生を知る!どのような社会問題に興味を持ち、それらの問題に対してどう考えているのか
今回のコラムでは、今年の新卒採用のターゲットである24年卒の就活生についてより深く知るために「マイナビ 2024年卒 大学生のライフスタイル調査(以下、24年卒ライフスタイル調査)」のデータを元に、どのような将来像を描いているかや、どういったことに興味を持っているか、について紹介させていただきます。将来、会社を背負って立つ人材を採用するためにも、就活生たちの生の声にぜひ耳を傾けていただければと思います。
24年卒ライフスタイル調査では、直近の就活生の全体像を把握するため、学生生活や将来の志向における年次の変化を追ってきています。毎年就活生のほとんどは入れ替わるので、正しい評価のためには毎年その全体像を修正していくことが有用です。また、今年(24年卒)の調査では、いくつか過去最高または過去最小となる結果が出ており、例年以上に興味深い内容となっています。
そのうちの1つが「共働き志向の男女差が過去最小」となったことです。これは「結婚後の仕事に関してどのように考えているか」を聞く設問で、以下の選択肢からの4択になっています。
結婚後の仕事に関してどのように考えているか
- 夫婦共働きが望ましい
- 主に自分の収入のみで生活するのが望ましい
- 主に相手の収入のみで生活するのが望ましい
- 結婚せず自分の収入のみで生活するのが望ましい
この設問で「夫婦共働きが望ましい」を選択する割合は16年卒の調査開始以来、常に女子のほうが男子より高く、その差は最大で21.6ptありました(16年卒、男子 47.0%、女子 68.6%)。それが最新の24年卒では男女差9.2ptとなっています(男子 64.1%、女子 73.3%)。つまり、今年の就活生は男女共通して「結婚したら共働き」が多数派となっているのです。
結婚後の仕事に関してどのように考えているか「夫婦共働きが望ましい」の割合

もうひとつの注目点は「育児休業をとって子育てしたい割合の男女差がほぼなくなった」ことです。これは「子育てについて、あなたの考えに近いもの」を聞く設問で、以下の選択肢の6択となっています。
子育てについて、あなたの考えに近いもの
- 育児休業を取って子育てしたい *A
- 育児休業は取らないが子育てはしたい *B
- 子供ができたら仕事をやめて子育てに専念したい
- 子育てはできるだけ相手や両親にまかせたい
- 今のところあまり子供は欲しくない
- 子育てのことなど考えたこともない
この設問は15年卒から調査を開始したのですが、当時「男性の育児休業取得」は新鮮な話題で注目度が高く「育児休業を取って子育てしたい」女子 69.2%に対し、男子 40.5%は「意外と高い」ということで話題となりました。しかしその後、実際の男性の育児休業取得率がすぐには高くならなかったため、男子の「育児休業希望」割合も下がり、一時は男女差が33.7ptまで開きます。ところがそこから年々「男性の育児休業」に対する世間一般の意識が変化していき、24年卒では「育児休業を取って子育てしたい」女子 63.2%に対し、男子 61.3%で、男女差は1.9ptとほぼなくなりました。つまり、24年卒の就活生にとって「育児休業」は「男女関係なく子育てをするなら当然取るもの」という感覚になったと言えます。
子育てについての考え「育児休業を取って子育てしたい*」の割合
*23年卒までは「育児休業を取って積極的に子育てしたい」
*23年卒までは「育児休業を取って積極的に子育てしたい」

この2つの調査結果から言えることは「家庭における男女の役割」について「差がなくなってきている」ということです。今年の就活生は、妻も夫も「等しく稼ぎ、等しく子育てのために育児休業をとる」という感覚なのです。
次に「興味のある社会問題」の調査結果を紹介していきます。これは33種類の社会問題を挙げて、その中で興味のあるものをすべて選択してもらうというものです。まずは男子・女子それぞれのTOP10を見ていきましょう。
興味のある社会問題 (複数回答)
○男女別・TOP10 *男女共通してTOP10入り △男女どちらかのみTOP10入り
24年卒 | 24年卒 | |||||||
男 子 | 女 子 | |||||||
1位 | 地球温暖化 * | 28.5% | 1位 | 少子化・働く女性支援 * | 41.1% | |||
2位 | 高齢化社会・介護問題 * | 25.7% | 2位 | LGBTQ+ △ | 32.1% | |||
3位 | 格差社会 * | 25.2% | 3位 | 食品ロス・フードロス △ | 32.0% | |||
4位 | デジタル化・DX △ | 23.9% | 4位 | 同性婚・パートナーシップ制度 △ | 30.9% | |||
5位 | 年金問題 △ | 23.3% | 5位 | ジェンダー平等・社会的性差 △ | 29.8% | |||
6位 | 安全保障 △ | 22.8% | 6位 | 高齢化社会・介護問題 * | 27.8% | |||
7位 | 少子化・働く女性支援 * | 22.7% | 7位 | 格差社会 * | 26.3% | |||
8位 | 国際政治・民主化運動 △ | 22.4% | 8位 | いじめ・教育問題 * | 25.5% | |||
9位 | 世界平和・国際紛争解決 △ | 22.1% | 9位 | 貧困・食糧危機 △ | 24.6% | |||
10位 | いじめ・教育問題 * | 21.1% | 10位 | 地球温暖化 * | 24.4% |
結果を見ると、男子と女子で興味の対象となる社会問題に大きな違いがあることが分かります。女子のTOP10のうち2位~5位と9位が男子のTOP10にはランクインしていません。これらの社会問題の男子の順位は「LGBTQ+(27位・12.6%)」、「食品ロス・フードロス(12位・20.8%)、「同性婚・パートナーシップ制度(29位・10.7%)」、「ジェンダー平等・社会的性差(23位・13.7%)」、「貧困・食糧危機(17位・18.5%)」となっています。5つのうち3つが20位以下と下位に位置しており、この3つは特に男女差が大きいと言えます。
なお、逆に男子のTOP10にあって女子のTOP10にない5つの社会問題について、女子の順位を挙げると、「デジタル化・DV(22位・14.0%)」、「年金問題(12位・19.9%)」、「安全保障(26位・11.2%)」、「国際政治・民主化運動(21位・14.1%)」、「世界平和・国際紛争解決(11位・21.8%)」となっており、こちらも5つのうち3つが20位以下でした。
なお、逆に男子のTOP10にあって女子のTOP10にない5つの社会問題について、女子の順位を挙げると、「デジタル化・DV(22位・14.0%)」、「年金問題(12位・19.9%)」、「安全保障(26位・11.2%)」、「国際政治・民主化運動(21位・14.1%)」、「世界平和・国際紛争解決(11位・21.8%)」となっており、こちらも5つのうち3つが20位以下でした。
興味のある社会問題TOP10によって、多くの就活生がさまざまな社会問題に関心を寄せていることが分かりました。そしてここからは、24年卒の就活生についてより深く理解するために、「最も興味のある問題」について自由に語ってもらった内容を見ていくことにしましょう。
まずは女子で最も興味がある割合が高かった「少子化・働く女性支援」からです。
「少子化・働く女性支援(女子1位・男子7位)」について語る
- 今の世の中では、子育てや子どもに関するあたりが強くなっていると思います。そのような世の中では子どもを産んで育てたいと思う人も減ってくると思います。以前にもまして行政の介入が必要になってくると思います。(文系女子)
- 少子化を女性の社会進出の影響だけで考えてはいけないと思う。現在は、男性が家庭を支えて女性は家庭を守るという形では成り立たなくなってきているため、働く女性への支援はもちろん、働く男性への支援も進めなければならないと思う。(文系女子)
- 少子化が続くと、日本の人口が減って、日本の生産性が落ちてしまう。子育てとキャリアアップを両立させる仕組みづくりが必要だ。(理系女子)
- 少子化問題で最近今年の出生率がかなり低いことをニュースによって知った。歯止めはかからないと思うが、少子化を緩やかにすることは可能だと考えるので、政府は今の政策を見直し、少子化を緩やかにするための政策を速やかに考えるべき。(文系男子)
24年卒の就活生は、自分たち自身の将来の問題として「少子化」を考えるだけでなく、社会全体の未来を左右する問題として、真剣に考えていることが感じられました。男性・女性問わず育児休業の取得を積極的に支援するなど、採用する側も彼らの思いにこたえていく必要があると思われます。
次は男子で最も割合が高かった「地球温暖化」です。
「地球温暖化(男子1位・女子10位)」について語る
- 現在世界中で深刻な環境問題が起こっている。その中でも地球温暖化の深刻化が叫ばれている。この問題を解決するためにはまずは、全ての人がこの問題の深刻さについて学び、議論する必要がある。(文系男子)
- 地球温暖化問題について興味がある。現在世界では、ガソリン車から電気自動車ないしは水素自動車に移行しようとしている。自動車産業が盛んな日本は今後どのように対応していくのか気になる。(理系男子)
- 規制が緩くなったために、地球温暖化が進むことについて恐れています。先進国、発展途上国ともに協力して対策していかなければならない問題だと思います。(文系女子)
- 今後、人間が日常生活を送る中で大きく影響するものだ。加えて、この問題は世界全体で取り組まなければならないものであるが、国々の立場によって意見が異なるため解決が困難だと考える。(理系女子)
世界中の若者が強く行動に訴えてきた「地球温暖化」の問題は、24年卒の就活生にとって、自分たちの世代を代表する社会問題だと捉えているようです。彼らが就職先を選ぶ基準のひとつに「地球温暖化に真剣に取り組んでいるか」を挙げるのは、ごく自然なことでしょう。
次は、女子で2位、男子で27位と、男女で大きな差がついた「LGBTQ+」です。
「LGBTQ+(女子2位・男子27位)」について語る
- 最近自分の周りにもLGBTQ+に該当する人が多い為、関心があり本で勉強した。日本社会がもっとLGBTQ+に対して偏見を持たず、個々の心を尊重できる雰囲気になることが理想だ。(文系女子)
- 最近自分のありのままの姿をさらけ出しやすい世の中になってきているが、まだ嫌悪感を示す人もいる。誰もが相手の本当の姿を理解することが重要だと思う。(文系女子)
- 私がこれについて詳しく知ったきっかけは、TIkTokで実際にLGBTQ+に該当する同世代の人達が撮影した動画を見たことです。身近にも該当する子はいたし私自身は全く違和感を抱いていなかったけど、コメント欄で賛否両論飛び交っていたことが衝撃でした。異性と「普通の恋愛」をしないと少子化が進んでしまう等という意見も見たことがありますが、恋愛する相手なんて自由であることが今の普通だと思います。LGBTQ+が当たり前になって、社会問題とも言われない日が早く来たらいいなと思います。(理系女子)
- LGBTQ+コミュニティや障害者などのマイノリティがしっかりと社会参画できるような社会の実現は日本が遅れていると思うし、早く成し遂げるべき課題だと思う。(文系男子)
偏見や差別をなくしていくべき、という意見が多く見られました。また、「自分自身が当事者である」「周りにいる」という声もいくつか聞かれました。女子の仲間内でカミングアウトするというケースもあるのかもしれません。
次は男女ともに高い割合で興味を集めていた「高齢化社会・介護問題」です。すべての項目の中で最も多く語られていたのがこの問題でした。「少子化」とセットで「少子高齢化」というキーワードを挙げる人も多かったです。
「高齢化社会・介護問題(男子2位・女子6位)」について語る
- 家で介護することが難しい一方で、介護施設に入ることも難しいようです。そのような状況を家族が倒れて初めて知ることが多いようで、もう少し事前に情報があれば良いのにと思います。(文系女子)
- 現在、高齢化に伴い社会保障費が年々上がり続け、費用抑制のために薬局の収入源である調剤報酬に大きなダメージがあるといったことなどがあり、高齢化に伴う影響が就活にも影響を与えています。(理系女子)
- 年々人口が減少しているにつれて若者が少なくなっているとともにコロナウイルスの影響もあり出会いなどが活発には以前のように起こらない中で平均寿命は高くなってきている。高齢者が増えることで若者への負担が大きくなる。(文系男子)
- 年金を受給できる年齢や総額が変化し、長く働かなければ生活できないという世の中になっていっている。そのため、政府や自治体の制度・保証に頼らなくても生きていける体力が必要であり、就活においても給与を意識せざるを得ない。(理系男子)
医療従事者や介護業界の人手不足などの問題への関心のほか、高齢化社会のしわ寄せが自分たちの世代に及ぶことを懸念する声も多く見られました。特に「医療・福祉業界」を志望する学生にとっては、自分たちの就職活動に直接影響する問題という認識があります。
最後は「高齢化社会・介護問題」の次に語っている学生が多かった「食品ロス・フードロス」です。
「食品ロス・フードロス(女子3位・男子12位)」について語る
- 先進国の深刻な問題だと思う。特に、飲食店の食べ残しは顕著だと感じる。お金を払ったのだから残そうが勝手だという意見も散見するが、世界の貧困の様相や、食べ残しの不衛生さを自身で学んだ。そのため、小さなことではあるが、個々人の意識が変わることが大事だと思うので、自分は食べ残しは決してしないようにし、一緒に食事に行く友人にもそれを呼びかけるようにしている。(文系女子)
- 現在、フードバンク会社さんから食料提供を頂き食糧配布会を開催し学生を中心とした生活困窮者に配布する学生団体を運営しています。実地の際にとるアンケートによると学生(特に外国人留学生)の多くが食に対する不安を感じている現状があり、改善すべき問題だと活動を通じて実感しています。(文系女子)
- フードロスは各家庭からもだが、企業からも出ている。だが、食品の廃棄部分や、賞味期限切れで廃棄させるものなど、ものによってはバイオエネルギーにしたり等再利用できるが、それに至るまでのコスト等が思いのほかかかることなど、フードロスを減らすことは難しいことであると感じる。だが、向き合うべき課題であることには変わりないと思う。(理系女子)
- 世界の食糧を均等に配分することができれば、飢餓は起きないと言われています。それにもかかわらず、現在の世界では、多くものフードロスの問題が起きています。少しでも改善に貢献したいと考えています。(理系男子)
他の社会問題に比べ関心を持つ就活生が積極的にこの問題に関わっている様子がうかがえました。「アルバイトを通じて問題意識が芽生えた」という人も多く「身近でかつ深刻な問題」であることを伺わせます。また、大学の研究でフードロスの問題に取り組んでいたり、実際にフードロス削減の活動に取り組んでいたりする就活生もおり、学生時代に力を入れたこと(=ガクチカ)という点でも、直接就職活動に関わってくることがあるようです。
ここまで24年卒の就活生の将来像や問題意識について見てきました。マイナビ 2024年卒 大学生のライフスタイル調査ではこのほかにも、学生生活やSNS利用の実態、アルバイト・サークル経験など、さまざまな調査結果を紹介しています。就活生を知る一環として、ぜひご一読いただければと思います。
- 人材採用・育成 更新日:2023/03/01
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