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コロナ禍2年目の今だからこそ見直したい 採用広報ツールと情報整理 ―【特集】企業として出すべき採用広報とは? 第1回

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新型コロナウイルス感染拡大による2021年卒の混乱は、採用担当者の皆さまにとっては忘れられないものではないでしょうか。年度が始まって早々に1回目の緊急事態宣言が発出されたことで合同会社説明会が相次いで中止となり、対面で実施していた説明会や面談・面接の多くが延期。企業と学生が最も多く出会う時期である3~5月の活動が停滞する事態となりました。

一方で、その流れの中でWEB説明会、WEB面接が広く実施されることとなり、採用活動のあり方を再考するきっかけとなりました。

ただ、緊急事態の中で「やむを得なく」WEB化したという方も多いのではないでしょうか。

経験も蓄積されたこのタイミングで、一度立ち止まって採用ツールを含めた情報提供のあり方について振り返ってみると、新たな発見があるかもしれません。
本取材では、学生・企業の調査分析に携わるマイナビキャリアリサーチLab主任研究員の宮地太郎に話を聞きました。

― 今日はよろしくお願いします。まずは、21年卒から22年卒のWEB対応について振り返って、どのような課題が見受けられたかお聞かせください。


宮地: はい。21年卒6月のプレ広報期間(※1)直前に最初の緊急事態宣言が発出され、大きく混乱しました。とはいえ、報道されているような「採用中止・停止」された企業もありましたが、多くの企業が「なんとかして新卒採用を止めまい」と対応をされていました。

結果として、足踏みはあったものの、説明会や選考がWEB化されていくことになったわけです。

― そうするしかなかった、という面も強いですよね。


宮地: そうですね。戦略的にWEB化したというのではなく、あくまでも対面制限がある中での対応だったと思います。今でこそ、こうしてオンラインで人が集まって話すことは普通ですが、それ以前は主流ではありませんでしたから。(※編注:取材はオンラインで行いました)

― それが22年卒になって改善されたということでしょうか。


宮地: 区分けをすると21年卒、22年卒と分けることになりますが、実際には21年卒の選考中に22年卒のプレ広報期間が始まるというグラデーションを描いています。まだまだ試験的、やってみて初めて分かること、手応えを感じたこと、新たに見えてきたことがさらに出てきた。という段階かと思います。

しかし、22年卒において対照的だったことは、WEB活用に戦略的な視点が加わり、よりメリットとデメリットが見えてきたことには大きな意味があると思います。

― そうですね。この変化とノウハウの蓄積、そしてオンライン上での学生の動きも見えてきたこの状況において、採用ツールをどう使い分け、どこにどのような情報を置くべきか、ぜひ続いてお話を伺いたいと思います。


※1 プレ広報期間:3月1日の採用広報解禁までの期間のこと。インターンシップや仕事研究、業界研究イベントなどが行われる。

― 学生の動きという点で言うと、サポネットで学生へインタビューをした際、IR情報まで含めてさまざまな情報を下調べしてから企業と接触をしているという話がありました。この状況下で、企業はどのように情報を提供すべきでしょうか?


宮地: まずは何より、発信する情報を整理することが大切です。
そのときに気を付けたいのは、WEB化が進むと情報の重複が起こりやすいということですね。

例えば、説明会ひとつとっても今は対面、オンラインライブ、オンラインアーカイブと開催方法が複数あります。
学生にとって選択肢が増えているという意味では良いことなのですが、それぞれの違いを明確にする必要があるでしょう。

学生から見れば、オンラインとオフラインの説明会の両方を企業側が用意していれば、どちらも参加した方がいいのではないかと考えるかもしれません。が、ふたを開けてみると、どちらも同じことを話している上に、ナビサイトにも同じことが書いてある、という状況が生まれやすいんですね。

感覚的には理解できると思いますが、決していい印象を与えるものではありません。

― とはいえ、学生それぞれの就職活動の進捗状況や企業との接触回数などがバラバラである以上、企業側としては同じ情報を複数のツールで発信していくことは仕方のないことに思えます。


宮地: おっしゃるとおりです。なので、どこに何があるのかをきちんと開示していくことが重要なんです。

オンラインとオフラインの企業説明会で話した内容がナビサイトにも書いてあるのならそう伝えるべきだし、採用サイトに補足的な情報があるなら、それも併せて伝えるべき、ということですね。意図的に同じであれば、それも伝えてあげた方がいいと思います。

― どこにどのような情報を置くかを考える上で、採用サイトはどのように捉えるべきでしょうか。


宮地: 企業ドメインの配下に置かれることの多い採用サイトは、学生から見ても「最も公式な情報」が載っている場として認識されています。なので、網羅的に情報が載っている場所として学生の期待値も高いですね。また見られるタイミングも就活初期から内定まで長期間見られるのが特徴かと思います。

充実した採用サイトであればあるほど、情報量が多くどこに何があるのかを把握するのも難しいものです。就活初期における合同会社説明会など、「発見フェーズ」で初めて接触した学生が相手であれば、ざっくりと会社の概要を説明して「採用サイトにはこんな情報もありますので興味があったら見てくださいね」と伝えるような使い方は有効です。

さらにフェーズが進み、学生が企業情報の深堀りをしたい時期に個別の会社説明会でプロジェクトストーリーを話したとします。時間の制限もあるため全てを話すことはできないでしょう。そのときには「他にも○○という職種と○○という職種のプロジェクトストーリーが採用サイトに掲載されていますので、気になる方はぜひ見てくださいね」と案内することもできます。

― 今ちょうど説明会のお話が出たので、説明会にどのような情報を配置してどのように使うべきか、お聞かせください。


宮地: はい。先ほどもお話したとおり、学生のフェーズに合わせた情報提供という基本姿勢は同様ですが、説明会の場でしか提供できない情報にフォーカスするべきです。

これは多くの方が指摘していることですが、学生はオンライン、オフライン問わず、説明会という「社員が自分の言葉で語る場」には、調べるだけでは知ることのできない非言語情報を求めています。

企業側は学生に自社のことを理解してほしいと考えますから、ついつい情報量を増やすことを考えてしまいがちです。会社説明会なのだから、会社のことは話さなければいけないという慣例のようなものもあるかもしれません。

一方で、先ほどもお伝えしたように、学生側は企業のことを調べられる範囲で把握していることも多いので、仕事の実態や会社の雰囲気、自分が実際に働いたときのイメージをより明確につかむための情報を求めているんです。

なので、先輩社員からのカジュアルなトークや質疑応答といった内容にフォーカスするのがいいのではないでしょうか。

文字で伝えられる具体的な情報は、採用サイトを見てもらって補完すると割り切ってしまうのも重要なことだと思います。

― 企業の情報提供という話題になると、改めてRJP(※ Realistic Job Preview:現実的な仕事の情報開示)に注目が集まっているようにも感じます。この重要性についてはどうお考えでしょうか?


宮地: いま、採用は「売り手市場」といわれますが、まだまだ「企業側が学生を選んでいる」というイメージが強いですね。

しかし、実際には学生も企業を選んでいるわけなので、リアルな情報提供を通じて学生が自分に合った企業を見つける手助けをすることが必要なはずです。また、情報提供を続けることによって企業も自社を理解する場を得ることができます。

― 情報提供をするために自社の情報を深堀りすることが、自社への深い理解につながる、ということでしょうか。


宮地: そうですね。言うは易く行うは難しという前提でお話しすると、今まで踏襲してきた「型」を疑うことが重要だと思います。

近年は「ジョブ型採用」や「ジョブディスクリプション」というキーワードが注目を集めているように、学生に対して仕事をより詳細に伝えていこうという流れがあります。その点でも、まずは今まで学生に伝えてきた内容が十分かつ適切だったのか?という基本を疑ってみることから始めていただければと思います。

採用担当者は当然ながらその企業の「中」にいますので、これで十分だろう、今は伝える必要がないだろう、と安易に判断してしまうことが多くあるのではないでしょうか。

仕事や職種一つひとつに対して粒度の細かい情報を提供するだけでなく、会社の社風、働き方なども併せて伝えることで学生が仕事をするイメージを持てるようにすることです。これまで行ってきた自社の情報発信を見直し、深堀りした上で学生に提供することが大切なのだと思います。

― しかし、企業側としては提示したくない情報もその中に含まれますね。


宮地: はい。全ての情報を開示した方がいい、という意味ではありません。学生が抱えている「自分は社会に出て、この会社に入ってうまくやっていけるのだろうか」という不安を解消することができる情報を提供する必要があるという意味です。

もちろん、学生が「うまくやれそうもない」という判断を下す可能性も見据えなくてはいけません。そこでいい情報ばかりを開示して「誰でも活躍できる職場」だと勘違いをさせても、お互いにとって良い結果となりません。
とはいえ、掘り起こされるのは悪い情報ばかりでなく、いい情報もたくさんあるはずです。

― 自分たちでは気付くことのできないストロングポイントというのは、よくありますよね。


宮地: そうですね。気付けないというよりも、自分たちの良いところを認識していないという方が近いかもしれません。私が採用広報の制作に関わっていた時にもよく経験しました。

採用担当者としては「そんなことわざわざ言わなくても」と思われていることでも、第三者の視点で見ると「もっと伝わればいいのに」と感じることが多々あるんです。

― 例えばどのようなことですか?


宮地: 一般的にストロングポイントというと「風通しの良さ」や「チームワーク」などを思い浮かべるかもしれません。しかし、実際には多くの企業がキーワードとして掲げている言葉で、学生の目には新鮮に映らないことも多いんです。

一方で、「職場の椅子にこだわっている」「面談の回数が多い」「時間になったらPCが強制シャットダウンされる(長時間労働の抑制のために)」など、長く属していると見落としてしまっていることや、それ自体は言うほどのことではないと感じていることがあるのではないでしょうか。

確かにそれ自体は小さな事実かもしれませんが、そこには必ず理由や背景があるはずです。この事実と背景がまだ社会に出た経験のない学生にとって、関心を持つ情報になることも多いんです。

仮に事実自体が響かなかったとしても、企業の「伝えたい姿勢」そのものは伝わると思います。地味な話かもしれませんが、この「伝えたい!分かってもらいたい!」という姿勢が伝わることそのものが一番大事なことだと思っています。

― 企業自身では発見できなかった情報も含めて学生に提供することで、長い目で見た「分かり合える採用」が実現できそうですね。


宮地: 今日はありがとうございました!
今回の取材では、すぐに使えそうな具体的なノウハウだけでなく、情報発信の姿勢を問い直すような提言も聞くことができました。

まず重要なのが「情報を整理すること」「学生のフェーズを理解すること」と「重複した情報への接触を避けられるように案内すること」。意欲が高いであろうよく調べている学生にこそ、企業側が丁寧に案内することでわかりあえる就職活動をサポートしてあげられるようです。

また、学生が企業を選ぶための情報提供という視点も重要なものでした。学生によるセルフスクリーニングを促すことは、採用母集団の拡大という観点では必ずしもメリットばかりではありません。しかし、社員の定着や学生の人生全体を見るのであれば、企業側の責任としては欠かせない考え方ですね。

この連載では、今一度採用ツールの使い方を見直すことを目的に取材を重ねていきます。次回以降もぜひご期待ください!
  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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  • 人材採用・育成 更新日:2021/10/13
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