積極的な参加を促す空気づくり。オンラインセミナーでもっと自社について知ってもらうための仕掛けとは?
コロナ禍によって、多くの企業が否応なく会社説明会をオンラインへと移行しています。マイナビ調べでは、昨年比250%、3,000社以上の企業でオンライン会社説明会が開かれているほどです。
学生側にとっては交通費の負担が減り、さらに距離の制約なく希望する会社の説明会を受講できるという大きなメリットがあります。
これは企業側にとっても同様で、会場代やパンフレットの印刷代など大きな出費を抑えながら全国から学生が会社説明会に参加してくれる可能性がある上に、天災などによる中止リスクが限りなく小さくなるため、双方にとって良いことづくめ……のように見えます。
が、実際には「学生に自社のことをきちんと伝えられたかが不安」「学生側の熱量がどの程度のものなのか見えてこない」など、オンラインならではの心配も。
そこで、今回はイギリスの大学院でテクノロジーを活用した英語教授法について研究し、その後、国内のオンライン学習サービスで受講者の体験向上、学習効果の最適化などの施策を担当していた橋詰千彬さんに、効果の出るオンラインセミナーのポイントを伺いました。
橋詰: まず、皆さんが気付いていらっしゃるオンラインセミナー(編注:以下、オンライン会社説明会、オンライン合同会社説明会などをまとめて「オンラインセミナー」と表記します)のメリットである「距離の制約がないこと」「受講スタイルの自由さ」「時間の制約の小ささ」といった「気軽さ」が実はデメリットの裏返しになっていることは知っておいた方がいいでしょう。
参加のハードルが低い分、「とりあえず参加しておくか」という「なんとなく参加」が多くなります。結果として、受講者は多いのに受講継続が難しいというのが、オンライン学習の世界では常識です。
一つ事例をお話ししましょう。
MOOCs(Massive Open Online Courses)という、アメリカの超一流大学が複数参加している無料のオンライン学習サービスがあります。コンテンツの質という意味では世界一と言っていいと思いますが、修了率はなんと5〜10%程度。普通の大学講義では修了しない学生の率が同程度なので、完全に逆転しているんです。
原因についてはさまざまな仮説が立てられましたが、受講意欲が継続しないことが大きな理由と見られています。
これと同じことが、就活市場におけるオンラインセミナーでも起こっているのではないでしょうか。着慣れないスーツを着て、大勢が集まる会場へ行くという儀式がなく、心の準備がないままに参加することになり、学習効果が出ない、ということになると思われます。
橋詰: そうですね。そのオンラインセミナーで何を聞きたいのか、何を知りたいのかがはっきりしていない状態で参加するので、効果が出にくいんです。
すると、結果として「ながら見」が多くなります。私はいまシェアハウスに住んでいるのですが、そのシェアメイトである大学生の様子を見ていると、ほとんど1日中、オンラインなんですよね。その流れの中で、LINEで友達とチャットをしながら、ご飯を食べながら、料理をしながら…といった感じでオンラインセミナーを「ながら見」しています。
つまり、受講態度の決定権は受け手側(学生側)にあるため、オンラインセミナーでは積極的に目的意識を持たせて「飽きさせない工夫」をしないと、集中力も継続しませんし、もちろんインプットされる情報量も限られます。
橋詰: はい、そうなんです。それを選択しない理由は、積極的にアプローチをしない限り、学生側が自社に対してそこまで強い興味を持ってくれないことを知っているからですよね。これはオンラインセミナーも同じで、撮影した動画を「いつでも見てね」と置いておいても、そもそもその動画を見る動機付けが十分でないので「いつかでいいや」となってしまうんです。
だから、参加の必要性を高めるためにLIVE型のオンラインセミナーを行うという選択肢が取られやすいのではないでしょうか。そして、会社説明会の本旨は「説明」なので、どうしても講義型のスタイルを取ることになる。
ただ、それでは仮に強い動機のある学生が見に来てくれても積極的な参加の仕組みがないので、次第に意欲は薄まっていきます。
橋詰: そうですよね。そこは、企業側のリードが必要な部分です。
「ここのオープンチャットでは何を話してもOKだし、選考には全く関与しないので安心してください」というように、そのオンラインセミナーの中で推奨される行為、許される行為として最初にルールを明示してあげる必要があります。私が「場のグランドルール」と呼んでいるものです。
それでも、最初に「自由に発言してね」というだけでは尻込みしてしまう学生が多いはずなので、登壇者が自分の出身地や趣味の話を最初にして、「皆さんはどうですか?」と話し掛けるような小さなきっかけをたくさんつくってあげるのがいいでしょう。だんだんと、自由に発言する場の空気をつくっていくんです。
「コメントが他者の役に立っている」という実感がポイント
橋詰: そうです。そのために重要なのが、自身のコメントが他者の役に立っている、という実感です。
例えば、コメントで単に登壇者の話を要約するだけでもいいんです。情報の捉え方は人それぞれなので、新たな視点を提供することになります。
そういった、他者の学びを促すコメントを敏感に見つけて、きちんと取り上げてあげる。すると、受講者は自分のコメントが他者の役に立っていることを実感するので、積極的な参加に意味を見いだしていきます。
アイスブレイクから最初の10分間が勝負だと思います。その間に、コメントに意味があることを知ってもらうように振る舞うことが大切です。
その際に役に立ちそうなのが「ORIDのフレームワーク」です。
<図1>
- 人材採用・育成 更新日:2020/08/18
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