「採用学」対談(第6回対談)
「採用学」対談、第6回目のコラムです。
2017年5月より“「採用学」対談”として5回の対談記事を連載してまいりました。
連載記事も残すところ、あと3回となります。
今月以降の残り3回については、毎月行ってきたような対談ではなく、
採用学研究所のセミナーの内容について報告してまいります。
株式会社マイナビにて9月12日に開催された採用学研究所の服部泰宏氏と神谷俊氏が登壇した対談プログラム「これからの時代における新卒採用との向き合い方」の報告レポートを掲載させていただきます。
セミナープログラムは、採用学研究所のお二人による基調講演と対談で構成されています。
それぞれの内容をマイナビ編集部にて概要をまとめましたのでご一読頂ければ幸いです。
- 大量エントリーの獲得から、ダイレクトリクルーティングへアプローチがシフトしている。
- ワークサンプルを主軸とした選抜方法が一般的である。
- 採用担当者(recruiter)の重要性が強く認識され始めている。
- 過去10年で9割の米国企業が自社サイトを求職者とのコミュニケーションに活用している。
- 採用におけるSNSの利用が浸透している。
- 口コミ(word of mouse)やリファーラル採用といったアナログ的なアプローチも盛んになっている。
- キャンパス・リクルーティングが米国、中国、韓国にて浸透している。
続いて、神谷俊氏からは、「これからの時代を展望する」というテーマで、 これからの時代、人材の価値がどのように変化していくと考えられるのかについてお話頂きました。
●「2025年問題」を巡る潮流
- 高齢者比率は顕著に高まりを見せる。要介護者や認知症罹患率は増加していく。
- 生産年齢人口(15~65歳未満)は、海外と比較して急速に減少していく。
- その中で、働き方改革に端を発した生産性向上の企業姿勢はさらに高まる。
●企業における人手不足が顕著になる
- 業種によっては量的な不足が懸念される(一方で、AIに代替される業務も台頭)。
- また、新卒に関しては能力の二極化傾向が色濃くなり、質的な人材不足が顕著になる 見込みである。
- 労働生産性をいかに高めるかに注目が集まり、費用対効果がさらにシビアに検証されていく。
- 特に介護業務の増大は、人材マネジメント上の時間的・空間的なボトルネックになりかねない。
- リモートワークや、フレックスなど時間や空間の制約を軽減する取り組みが一般化していく。
- 組織に対するエンゲージメントやコミットメントが課題となる可能性が高い。
- 入社先の検討を行う際に、自らのライフキャリアとのバランスを吟味する志向が強まる。
- 新卒学生においては、転職前提での企業選択も一般化してくる。
服部: さて、これからの労働市場とどのように向き合うべきか?について語っていきたいと思います。こちらのテーマについて、神谷さんいかがでしょうか?
神谷: そうですね。まず、「これから」という時間軸ですが、先ほどの基調講演で取り上げた2025年問題も踏まえて、2025年と据えてみましょうか。2025年に向けての市場とどのように向き合うべきか。そうした場合に、まず大前提として言及しておかなくちゃいけないのは人手不足でしょう。人材が満足に採用できないという時代がやってきている。この時代をどう乗り越えていくべきか?そういう論点で話していきましょうか。
服部: そうですね。その時代展望を踏まえて私がまず感じることは、採用に関わる考え方の転換ですね。日本企業においては、必要になったら募集するという前提認識が浸透している。毎年、一定数の従業員が定年を迎えるために、一定数を採用する新卒採用が成立するわけですよね。この「必要に応じて採用する」という考えを変えていかないと、人手不足の問題はなかなか解消できないのでは?と思います。
神谷: 新卒は毎年定期的・習慣的に実施をしているのでこの前提認識はイメージしづらいかもしれないですが、中途採用などはまさにその認識で行っている企業は多いですよね。欠けたポジションを補充する、欠員募集の考えですね。
服部: そうなんですよ。それを変えていくべきかと思います。「常に募集をしている」「常に良い人を探している」という姿勢へシフトしなくては厳しいでしょう。特に優秀な人材は本当に取りにくくなってきますから、常に優秀な人材はリサーチをかけて、見つけたら即採用をする方針でアプローチをしていくっていう意識が必要でしょうね。
神谷: 言うなれば、これから企業は常に腹が減っている状態になってくるわけです。だからこそ補充できそうなときがきたらすぐに補充していく。人材の量・質のレベルがダイレクトに企業の競争優位につながる時代ですから、補充する際の初速が企業の優位性に繋がってくるとも言えなくはないです。
服部: まさに、マッキンゼー&カンパニーの言うところの「War For Talent」ですね。
神谷: まさに。ようやく日本も“War”の様相が強くなってきましたね。
神谷: さて、ここまで企業の採用に対する姿勢ついて話をしてきたのですが、求職者と向き合う姿勢についても言及しておくべきですかね。個人の仕事に対する向き合い方はこれから変わってくるでしょう。企業は、その変化にも意識的になるべきと思っています。従来通りの採用戦略やコミュニケーションでは、求職者の関心を惹きつけることは難しくなってくるのかなと。
服部: なるほど、どんなところが変わってきそうでしょう?
神谷: 仕事に対するのコストとリターンにシビアになってくるんじゃないかなと思っています。「働き方」に関する言及が増えていますが、近年のキャリア観の変化はかなり色濃くなっている。その中で、個人を主語にしたキャリア観が徐々に浸透し始めている。
服部: プライベートを犠牲にしてでも、会社で昇進することを目指すという意識ではなく、個人が生活しやすい働き方を考えるという「観」の変化ですね。
神谷: はい。さらに、介護や育児などの家庭の問題がここに絡んでくれば、ビジネスキャリアはさらに個人化していくでしょう。「課長になって、部長になって…」といった伝統的なキャリア観から離れ、「自分が」というセルフプランニングな思考が浸透していくのかなと思っています。
服部: そうですね。個人のニーズがキャリア選択に反映されてくる可能性がある。そうすると、さきほど述べたキャンパス・リクルーティングやリファーラルといったアナログなアプローチの話も関連してきます。ダイレクトに求職者とコミュニケーションを進めていき、求職者が何を「報酬」としているのかを考える。そういうスタンスが求められてきます。求職者が仕事に何を求めているのか、その「的(まと)」は捉えておくべきですよね。
神谷: そうなんです。でも、個人を主語にすると、「的(まと)」は百者百様です。捉えるのは至難の業ですね。採用担当者のコミュニケーション能力は相当な高さが求められるでしょう。この辺りはまた後のテーマで話しましょうか。
服部: はい、それでは一旦、「これからの労働市場とどのように向き合うか?」というテーマについては対談を区切りましょうか。
(実際の対談では、さらにテーマの展開がありましたが、 本連載では文字量の都合から要点のみ掲載しています。ご容赦ください。)
- 人材採用・育成 更新日:2017/11/01
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