中途採用で注目される動画コンテンツの魅力とは? 動画のトレンドと活用方法を解説
上位を占めるのは、「勤務地」「休日・休暇制度」「給与」の3つです。これらの希望条件に合致するかどうかは、求人情報のなかでも求職者が最初に見る部分で、なくてはならない情報です。
ただ、求職者は、条件面以外にも、「事業の将来性・安定性」「これまでのスキルが活かせる」「企業理念への共感」など、さまざまな情報に注目しています。
また、企業のホームページにアクセスした際に採用情報が不十分な場合、7割以上が「応募意欲が減退する」と答えたという調査結果もあります。
(※出典:三菱総合研究所「中途採用を通じたマッチングを促進していくための企業の情報公表の在り方等、諸課題に関する調査研究」報告書)
このように採用の難易度が上がり、情報発信の重要性が高まっている現状を受けて、企業が利用する採用チャネルもより多様化しています。就職・転職情報サイト、オウンドメディア、SNSなどを活用して中長期的な採用広報に取り組む企業も増えています。
- 中途採用市場の現状
求人件数は大幅に増え、過去最高水準に。採用難易度は高く、売り手市場が継続中。 - 求職者の動向
多角的に企業情報を知ろうとする傾向が見られる。情報不足は応募意欲の減退につながりやすい。 - 企業の動向
採用チャネルが多様化し、企業はさまざまチャネルを活用して採用活動を行っている。
【まとめ】
動画広告の活用で押さえるべきポイント
山田健太氏(以下、山田):ここからは、動画市場の現状と背景、動画広告のメリット、実際に動画広告を活用するにあたってのポイントを解説していきます。
動画市場の現状と背景
山田:近年、動画広告の活用は急速に浸透しつつあり、2024年には推定1兆円の市場規模が見込まれています。その背景には、3つの要因があります。
1つ目は、スマートフォンの普及です。スマホが登場するまで、私たちが情報収集するには、自宅でテレビやデスクトップパソコンを見る必要がありました。しかしスマホの普及以降、カフェでコーヒーを待つ間、電車での移動中などのスキマ時間にインターネットに触れることができるようになりました。
人々がスキマ時間にスマホを見る時間は、1~2分、ときには数秒です。そんななかで、短い時間で多くの情報量を伝えられる動画広告のニーズが高まっています。
2つ目は、スマホの普及に伴って、Facebook、X(元Twitter)、インスタグラムなどのSNSの利用が広がったことです。個人が一人につき1アカウントを持ち、画面を開いたときに表示される情報が一人ひとり異なるのが、SNSの特徴です。マーケティングでは、そんなSNSの特徴に合わせたクリエイティブ(広告)が求められます。
3つ目に、通信技術の進化があります。今後は、高速・大容量で低遅延の5G(第5世代移動通信システム)の普及がさらに進み、よりストレスなく動画が視聴できるようになるでしょう。それに伴い、今後ますます動画広告が伸びていくと予想されます。
動画広告を活用するメリット
山田:続いて、動画広告を活用するメリットを確認しましょう。
動画の利点の一つは、多数の人に視聴される可能性があることです。特に若い世代が動画を見ているイメージがあるかもしれませんが、全世代でスマホでの動画の視聴時間は伸びています。ターゲットに関係なく、動画は有効な施策といえます。
また、伝えられる情報量と情報密度が、他の手法に比べて圧倒的に多いことも大きな強みです。1分の動画で伝えられる情報量は、Webページ3600枚分ともいわれています。
動画広告の運用における注意点
山田:では、実際に動画広告を運用する際には、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。当社が多数の企業の動画広告の運用に関わった経験から見えてきた注意点をお伝えしましょう。
下記は、デジタルマーケティングで成果を出すための方程式を図にしたものです。
デジタルマーケティングでは、何をどうやって届けるかという「Contents(内容)」と「Delivery(届け方)」の掛け算が非常に重要です。特に落とし穴になりがちなのが、「Delivery(届け方)」における「配信面(広告枠)に最適化する」という部分です。
近年、広告の配信先として必ず候補に挙がるのが、一般に利用が広がっているSNSです。
ただし、SNSは種類が多く、それぞれにユーザー数はもちろん、ユーザーが視聴するシーンや態度も異なります。
たとえばLINEであれば、利用目的としては友人とのやりとりなど、1対1のコミュニケーションが中心です。情報収集ツールとして利用している人の割合は、X(元Twitter)やInstagramのほうが大きいでしょう。
したがって、目的や情報の内容に応じて最適なSNSを選択したうえで、そのSNSの特徴を踏まえ、掲載する配信面(広告枠)に合わせたコンテンツ(内容)を設定しなければなりません。
動画広告の配信先としてのYouTube
山田:数あるSNSのなかでもYouTubeは、動画広告の配信に適した媒体です。
YouTubeの最大の特徴は、利用者数が多いことです。上記の通り、18歳以上の月間利用者数は、6,900万人にも上ります。加えて、どの世代でも利用率が高いのも特徴です。
YouTubeには、幅広いユーザーに情報を伝えられるうえに、動画プラットフォームなので動画広告とのなじみがよいという利点もあります。採用活動において認知を広めるという観点に立つと、YouTubeは動画広告の有効な配信先といえるでしょう。
中途採用での動画活用
安高:ここからは、動画広告のメリットを中途採用にどう活かしていくかという観点から解説していきます。
中途採用で動画を活用する場合、「動画広告」と「採用動画」という2つの選択肢があります。
「動画広告」は、SNSや外部メディアに広告として掲載して集客します。動画の仕様は、30秒以内の短尺が基本です。先にお伝えした通り、主な目的は認知してもらうことです。
「採用動画」は、よりその企業に対して理解を深めてもらうために、採用ホームページやSNS、YouTubeなどに掲載するもので、60分程度までの長尺の動画も含まれます。採用動画の目的は、主に、企業理解の促進です。
次に、それぞれの特徴や活用のポイントを詳しく見ていきます。
動画広告の特徴と活用のポイント
安高:採用に動画広告を活用する場合、静止画を用いたスライドショー形式で求人募集や採用イベント開催などの情報を端的に伝える広告がメインになるでしょう。
下記の図は、採用チャネルとSNSなどのメディアを組み合わせることによって情報が届く範囲を可視化したものです。
縦軸が、転職情報サイト、SNS、外部メディアといった広告の配信先です。一方の横軸は、転職顕在層(すでに転職活動をしている層)、転職準健在層(転職を希望しているもののまだ動いていない層)、転職潜在層(まだ明確な転職への意志を持たない層)です。
採用成功への道のりは、まず自社を認知してもらうことからスタートします。この図は、転職情報サイトのみに求人広告を掲載していた企業が、さらにSNSや外部メディアでも情報を発信することで、転職顕在層はもちろん転職準顕在層や潜在層まで、認知の範囲が広がることを示しています。
つまり、従来から利用していた転職情報サイトに加え、YouTubeなどにも動画広告を配信することで、短期的な母集団形成はもちろん、将来の応募者を育てることもできるのです。
では、動画広告を配信・運用する際には、何を指標とすればよいのでしょうか。YouTube広告の場合、KPIは、広告表示回数・視聴数(YouTube広告の場合)になります。
さらにYahoo!広告などの外部メディアと組み合わせて、動画広告を見た求職者を外部メディアの求人広告に飛ばすことも可能です。その場合のKPIは、原稿PV数や応募数です。
採用動画の特徴と活用のポイント
企業や求人の情報をPRする採用動画には、目的に応じてさまざまなコンテンツがあります。たとえば先輩社員のインタビュー動画、WEBセミナー形式で自社の説明をする動画も、採用動画のバリエーションの一つです。
動画広告の目的は認知獲得でしたが、採用動画の主な目的は、その先のフェーズで企業理解を深め、企業への興味を醸成して応募につなげたり、応募後に入社意欲を醸成したりすることです。
企業や職種への理解を促進すると、面接への出席率や内定承諾率といった歩留まりを改善する効果も期待できます。歩留まりが改善すると、入社数アップにつながる可能性があります。
採用動画は、テキストや画像だけではなかなか伝えにくい、働く人や職場、カルチャーなどを伝えるのに適したツールです。このことを裏づけるのが、次に紹介するアンケートの調査結果です。
上記の表の左側では、マイナビ転職のユーザーに「入社決定企業と内定辞退企業の差」を聞いた結果から、上位3位をピックアップしています。1位は「仕事の中身」、2位が「会社の雰囲気」、3位が「社長の印象・対応」です。つまりこれらの要素が、入社を決めるにあたって重要な判断材料になります。
一方の右側は、ユーザーに聞いた「動画で観たいコンテンツ」の上位3位です。1位は「実際に働く人のインタビュー」、2位が「仕事の流れの紹介」、3位が「企業トップのインタビュー」と、人や仕事内容にフォーカスしたコンテンツが並んでおり、左側の入社の決め手となる要素とリンクしています。
こうした入社の判断材料となる情報発信にこそ、動画を活用すべきといえるでしょう。
採用動画の運用におけるKPIは、面接出席率、内定承諾率といった歩留まりの改善です。
動画広告の場合、媒体に掲載して数字をカウントするのが運用の基本であるのに対し、採用動画の場合、動画を制作した後に、実際に採用担当者自身が手を動かして求職者に情報を届ける必要があります。
具体的には、採用ホームページや転職情報サイトにリンクを設定する、応募者へのサンクスメールや面接確定メールに添付する、内定通知の際にメールで視聴を促すといったアクションが考えられます。
これらをきっちり行って求職者や応募者に動画を見てもらうことが、歩留まり改善につながります。
中途採用での動画活用事例
安高:最後に、マイナビの動画サービス(マイナビTVキャリア)を利用して採用に成功した企業の事例を見てみましょう。
導入事例1:動画広告の活用
安高:サービスを導入したのは関東の運送会社で、募集職種は大型トラックのドライバーです。
こちらの企業の主な課題は、職種柄、重労働のイメージがあり、若手人材からの応募が集まりにくかったことです。そこで、配信先として若い世代の視聴が期待できるYouTubeを選択し、求人や企業の魅力ポイントを伝える30秒の動画広告(求人ハイライトムービー)を制作して配信しました。
その結果、YouTube広告自体の再生回数が多数に上ったうえに、マイナビ転職のPV数もアップ。認知が広がったおかげで、合計3名の採用に成功しました。うち1名は、YouTube広告を見て応募されたそうです。
また、YouTube広告という他社とは違う取組みをしていたこと自体が、求職者が求人に興味を持つきっかけになったといいます。
導入事例2:採用動画の活用
安高:次に、関東の専門商社の事例を紹介します。募集職種は営業系のフィールドエンジニアです。
こちらの企業の課題は、求人票だけでは具体的な仕事内容が伝わらず、仕事内容のイメージが応募者によって異なっていたことで、動画で業務内容を正確に伝えてミスマッチを防ぎたいという要望をお持ちでした。
また、採用担当が1名だったため、応募から面接までに時間が空いてしまい、面接辞退が多かったのも課題でした。
それらの課題を解決するため、会社や業務内容について現場社員が具体的に紹介するWEBセミナー動画を制作。そのセミナー動画をホームページや転職情報サイトに掲載したほか、応募後のサンクスメールにもURLを付記する、面接前に視聴を促すなど、応募者に情報を届ける工夫を徹底されました。
動画視聴で企業や職種への理解が深まり、工数も削減できた結果、面接辞退が減り、歩留まりが大幅に改善。内定を出した4名のうち全員が承諾するという成果につながりました。
まとめ
安高:売り手市場が続き、求職者の情報収集手段が多様化するなかで、採用の難易度は増しています。動画が採用課題を全て解決するわけではありませんが、中途採用活動に最適な動画コンテンツを盛り込むことが、課題解決の有効な一手となることは間違いありません。
第2回目では、動画広告に着目して、より詳しく採用広報のメソッドを紹介します。
動画サービス「キャリムビ」
マイナビでは、採用広報のための動画配信サービス「キャリムビ」を提供しています。求人情報を短い動画に編集した動画広告をマイナビ転職とYouTubeに配信する「求人ハイライトムービー」、オンラインで企業の説明会を配信する「WEBセミナー」、仕事風景や社員インタビューで企業の魅力を伝える「PRムービー」といったラインナップがあり、目的に応じた動画活用が可能です。
- 人材採用・育成 更新日:2024/01/10
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