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「採用ブランディング 」でよくある3つの誤解と効果を上げるコツ

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「採用においても、ブランディングが大切」
という考え方が浸透して久しいですが、“ブランディング” の解釈があいまいなまま、言葉だけ一人歩きしている印象を受けることがあります。

筆者はマーケティング職の出身で、とくにブランディングを専門としていた経緯から、
「ブランディングとは何か?」
について、長く向き合ってきました。

採用ブランディングで、“なんとなくの効果” ではなく “明らかな効果” を上げるために、ブランディングの急所をお伝えしたい、というのがこの記事の趣旨です。

採用ブランディングに取り組み中の方は、ひとつのヒントとしていただければと思います。

確認しておきたい採用ブランディングの本質

先に、結論となる採用ブランディングの本質から、お伝えします。

企業やブランドが行う広義での「ブランディング」は、多くの研究者やマーケターが議論を重ね、さまざまな定義を提唱してきました。

それを“採用”に特化して適用する活動が、「採用ブランディング」です。

ブランディングの定義がひとつではないため、唯一の正解は存在しないと断ったうえで、「採用ブランディングとは何か?」といえば、以下のとおり定義できます。

【WHAT?】
企業の価値観、使命、カルチャーを具現化し、
それを求職者に対して、明確に伝えるプロセス。


「なぜ、採用ブランディングを行うのか?」という問いには、以下のとおり答えられるでしょう。

【WHY?】
求職者が企業の「内側」を理解し、
自分がそこにフィットするかどうかを判断するうえで、
必要かつ重要な情報を、効果的に提供するため

そもそも前提となる「ブランディング」は、PR戦略やイメージ戦略のことではありません。

“あるべき姿を描き、それに対して実体を近づけていくこと”に、ブランディングの本質があります。

この部分の認識がズレていると、採用ブランディングにおいても有効な活動ができず、活動が成果に結びつきにくくなります。

違いを一言でいうなら、「いかに魅力的に伝えるか?」よりも、「自分たちはどうありたいか?」に重点があることです。

“あるべき姿” に合わせて、行動や表現を統一していくことで、自分たちの姿を正しく認知してもらうことが目標となります。

採用ブランディングでよくある3つの誤解

続いて、採用ブランディングでは、どのような誤解が生じやすいのか、具体的に見ていきましょう。

3つのポイントをご紹介します。

  • 誤解1:ブランディングは好感度向上施策である
  • 誤解2:採用ブランディングは求人広告や採用ページで行う
  • 誤解3:採用ブランディングは採用担当者が行う

誤解1:ブランディングは好感度向上施策である

1つめの誤解は「ブランディングは好感度向上施策である」というものです。

採用に限らず、企業のイメージアップを図ったり、魅力的に演出したりする活動を指して、ブランディングの語句が使われるケースがあります。

もちろん、企業が魅力的に見えることは大切ですが、表面だけを取り繕うイメージ戦略は逆効果となるケースが多いため、注意が必要です。

というのは、現代の人々は、「広告のウソ」や「作為的に作られたイメージ」に対して、敏感だからです。採用シーンでも、同じことがいえます。

採用ブランディングにおいても、好感度の向上にとらわれると求職者のミスリードにつながり、長期的な人材の定着には、悪影響となります。

誤解2:採用ブランディングは求人広告や採用ページだけで行う

2つめの誤解は「採用ブランディングは求人広告や採用ページだけで行う」というものです。

求人広告のキャッチコピーやデザイン、採用ページに掲載する写真などを、ブラッシュアップすることは、ブランディング施策に必要です。

しかしながら、それだけでは不十分で、求職者が接触するあらゆる媒体・タッチポイント(接点)が、ブランディングの対象となります。

【ブランディング対象の例】
  • コーポレートサイト
  • ソーシャルメディア
  • 転職サイトの口コミ
  • キャリアパス
  • 福利厚生
  • オフィス環境
  • 従業員自身の行動や言葉

とりわけ重要度が高いのが、上記リストの最後に挙げた「従業員自身の行動や言葉」です。

完璧な求人広告を制作しても、面接官として接点を持つ従業員の様子が、企業の目指す「あるべき姿」に合致していなければ、採用ブランディングはうまくいきません。

「従業員の接し方や態度も、採用ブランディングの対象」という認識が、不可欠です。

誤解3:採用ブランディングは採用担当者が行う

3つめの誤解は「採用ブランディングは採用担当者が行う」というものです。

ここまでに述べたとおり、採用ブランディングがカバーする領域は、“経営そのもの”といえるほど広範囲にわたります。

採用担当者だけで実行しようとしても、付け焼き刃となってしまう可能性が高く、良策とはいえません。

経営者、企業のブランディング担当者、マーケティング担当者などと協働し、全体戦略の下位概念として、採用ブランディングを稼働させること が重要です。

具体的なアクションとしては、以下が挙げられます。

  • 全体戦略の確認


    会社の経営戦略や中長期の経営計画など、全社的なビジョンや目標を確認します。その中での採用ブランディングの立ち位置を、明確にしましょう。

  • ブランドガイドラインの共有


    企業ブランディングの要素(ロゴ、カラースキーム、メッセージングなど)を、採用関連のクリエイティブにも適用します。

  • マーケティング戦略との連携


    マーケティング担当者と協力し、効果的なアプローチ方法を共有します。とくに、顧客向けのマーケティングキャンペーンと、求職者向けの採用キャンペーンのメッセージに矛盾が生じないよう、注意します。


採用ブランディングの効果が上がる考え方

最後に、採用ブランディングの効果が上がる考え方を2つ、お伝えします。

ブランドとは「約束」である

1つめは「ブランドとは約束である」という考え方です。

ブランドは、「保証機能」と「識別機能」の2つの機能を持ち、これらの相乗によって、商品・サービスがよく売れる・高く売れる、というメカニズムがあります。

同じことが採用ブランディングにもいえます。

  • 保証機能:企業の「内側」がどのようになっているか明確に伝え、その内容を保証する
  • 識別機能:効果的なデザインや記憶しやすいスローガンで、心や記憶に残りやすくする

(2)が重視されがちですが、(1)保証(商品でいう “品質保証” の部分)が脆弱にならないよう、注意が必要です。

採用ブランディングの過程で作るイメージや制作物は、「求職者との約束」と捉えましょう。

「一貫性」が信頼を生む

2つめは「一貫性が信頼を生む」という考え方です。

採用ブランディングで、さまざまな媒体での発信や、クリエイティブ原稿をチェックする際、最も注力して確認したいのが「一貫性が保たれているかどうか?」です。

企業サイドが想像する以上に、求職者は “矛盾” を見つけることがあり、それは不信感の火種となります。

社内外のあらゆる発信と行動が、ひとつの一貫したメッセージからブレないように、マネジメントすることが求められます。

具体的には、企業のミッション・ビジョン・価値観を明確に定義し、それをもとにしたガイドラインを作成することが効果的です。

逆にいうと、社内外の発信と行動で、一貫性を担保できそうにないブランディングは、実現可能性がありません。

繰り返しになりますが、採用ブランディングによって伝えるメッセージや、構築するポジティブで魅力的なイメージは、「約束」です。

現実への反映が伴ったとき、その採用ブランディングは強い効果を発現し、自社に合う人材を引き寄せ始めます。

さいごに

さいごに、広告の父と呼ばれたデビッド・オグルヴィ(DavidOgilvy)の言葉をご紹介します。

〈どうしようもない愚か者でも取引をまとめることはできる。
だが、ブランドを構築するには非凡な才能と信念、忍耐が必要だ〉*1


「明らかな効果」を得られるところまで、本格的に採用ブランディングに取り組む場合、それはけして簡単なことではありません。

しかしながら、信念と忍耐を持って続けることで、かならず、“届くべき人たちに届き出す日” が訪れるのではないでしょうか。

必要な調整を続けながら、採用ブランディングの取り組みを継続していただければと思います。

参考

  • *1出所)フィリップ・コトラー『コトラーのマーケティング・コンセプト』
  • *注釈のない画像:筆者作成
  • Person 三島 つむぎ

    三島 つむぎ -

    ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。

  • 人材採用・育成 更新日:2023/12/26
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