出戻りさせない方がいい退職者の特徴とは? 再雇用のポイントも解説
いわゆる「出戻り退職者」とは、一度退職した人で、再度同じ会社に入社する人のことを指します。入社後のミスマッチが少ない、即戦力として期待できるなどのメリットがある一方で、その人自身に問題があったり、制度が整っていなかったりすると、既存社員に悪い影響を与えてしまうなどの可能性も存在します。
今回は人事採用担当者向けに、出戻りさせない方がいい退職者の特徴や、再雇用すべきか見極めるための具体的なポイントを解説します。
そもそも「出戻り」とは? メリットと共に解説
まずは「出戻り」とはどういう状態を指すのか、人材業界での言葉の意味や、最近注目を集めている理由、企業にとってのメリットなどを確認していきましょう。
「出戻り」「出戻り退職者」の意味
人材業界で「出戻り」とは、「いったん会社を退職した社員が再入社をする」という意味で使われています。「出戻り退職者」「出戻り社員」は、再入社をしたその人自身のことを指します。
この場合、特に近年は、退職した際の理由は問わず、転職や育児・介護などさまざまなものを含むことが多いとされています。
なお、どちらかというと正式な制度の名称というよりは、組織の中の人や当事者が、カジュアルに使う言葉といえるでしょう。
出戻り退職者が歓迎されるようになった理由
以前は、特に転職のために退職していった社員を「不義理」と見なす風潮も一部にありましたが、終身雇用制度が崩れ、転職が当たり前となった昨今では、企業や人々の意識も変わってきています。
また少子高齢化が進み、生産年齢人口(15~64歳人口)が減少し続けている日本において、出戻り退職者は、人材不足解消や優秀な人材獲得の近道として、注目されているのです。
こういった背景から、出戻り退職者を歓迎する企業も増えています。
出戻り退職者を受け入れるメリット
出戻り退職は、当然ながらその会社での就業経験があります。そのため、受け入れる企業としては、彼らに相応の業務遂行スキルや、自社への適性があることが分かっています。
本人も企業風土や職場の雰囲気を理解して応募しているため、入社後に双方のミスマッチが起こりづらいのは、メリットの一つといえます。
また、彼らは社内の仕組みや事情、製品などを既に理解しているため、入社後の教育コストなどが抑えられ、即戦力になってもらいやすいのも魅力でしょう。
さらに、自社を退職後に別の企業で働いていた場合は、そこで得た新たな知見やスキル、価値観を持って再入社してくれるのもプラス要素です。
出戻りさせない方がいい退職者の特徴とは
ここからは、出戻りさせない方がいい退職者の傾向について、確認していきます。
もちろん100%とはいえないですが、下記のような特徴を持つ退職者を再雇用した場合、トラブルを起こしたり、すぐにまた退職してしまったりする可能性があるかもしれないため、慎重に判断していきましょう。
前回の雇用期間中に問題行動を起こしていた
前回の雇用期間中に、例えばハラスメントなどの問題行動を起こしていた場合は、再雇用してそういったことが再発しないか、また既存の社員に良くない影響を及ぼす可能性がないのかなどを、慎重に判断する必要があります。
協調性がなかった・無責任で他責が多かった・勤務態度が悪かった・規則をよく破っていたなどの情報も、リサーチしておくべきだといえます。在籍当時の上長や、一緒に仕事をしていた人が社内にいれば、事前にヒアリングするといいでしょう。
前回の雇用期間中のパフォーマンスが著しく低かった
前回の雇用期間中に、著しくパフォーマンスが低かった場合も注意が必要です。
例えば「特にやむを得ない事情があるわけではないのに、欠勤が目立ち、既定の仕事量をこなせていなかった」「目標の未達が続き、改善策にも取り組まなかった」などの場合は、再雇用してもまた、パフォーマンスを期待できないかもしれません。
通常の中途採用の場合は、前職で実際にどのくらいの成果を出していたかが見えづらいものですが、出戻り採用だからこそ、社内にある情報を活用して、冷静に判断するといいでしょう。
前回の雇用期間が著しく短かった
前回、自社に在籍していた期間が、数カ月など極端に短かった場合は、自社の企業風土の理解や、業務遂行に必要なスキル習得が不十分な可能性があります。
その場合、出戻り退職者を採用するメリットの一つである「即戦力であること」が期待できなくなります。
それでも応募者が、企業・配属部署の求める人材像と非常にマッチしていて「採用したい」というケースもあるでしょう。その場合は、通常の中途採用と同様に、ある程度の教育コストが掛かることを前提とした上で、前回はなぜ短期間で退職したのかについても確認し、納得感のある理由であれば再雇用を検討してもいいでしょう。
退職から時間が経ち過ぎていて職場の変化に対応できない
前回の退職後、長い期間を経て戻ってくる場合、いくら同じ会社とはいっても、その間に社内でさまざまな変化が起きていたということはよくあります。
その時、出戻り社員が自らキャッチアップする姿勢がない人の場合、即戦力になりづらく、パフォーマンスを発揮してもらえないことや、その人自身がしんどくなってしまい、再退職してしまう恐れが考えられるでしょう。
そのため、再雇用の条件として「退職後○年以内」など、一定の期間で線引きをする企業もあります。
また、職場を離れている間に、人事異動があって一緒に働く仲間が変わる、当時の部下や同僚が上司になる、といったこともありますが、それに適用できなさそうな人も、再雇用は避けた方が無難でしょう。
さらに、事業再編や、経営者交代による社風の変化が起きている場合もあります。前回の在籍時の経験は生かしつつも、過去にこだわり過ぎず、その時々の事情をきちんと理解して対応できる人でないと、出戻り採用してもうまくいかないでしょう。
出戻り社員が嫌われるケースや出戻り採用制度のリスク
ここでは、出戻り社員が、会社でずっと働いている既存社員から煙たがられてしまうケースや、出戻り採用制度のリスクについて解説します。
出戻り社員を特別扱いし過ぎると既存社員の不満がたまる可能性がある
出戻り社員を受け入れる場合は、既存社員に不公平感を抱かせないように配慮する必要があります。
例えば、人手不足で忙しい部署から転職していった人が、出戻りしてくるケースについて考えてみましょう。その企業でずっと頑張り続けて、部署を支えてきた既存社員と、出戻り社員の待遇が同じ、または出戻り社員の方が好待遇といった場合、既存社員に不満を感じさせる可能性があります。
「真面目に頑張っていたのに報われない」「結局、上司に取り入るのがうまかったり、パフォーマンス上手だったりする人が得をする」などのネガティブな思いは、既存社員のモチベーション低下や、離職を誘発する恐れもあるでしょう。
そうはいっても、出戻り社員に対してあまりに待遇が低いと、他社と比較されて復職してもらえない可能性も高まります。双方のバランスを見ながら、皆が納得する制度設計をする必要があります。
安易な退職を誘発する恐れがある
出戻り採用制度のリスクとして、「退職してもまた帰ってくることができる」という意識が社内に生まれると、一時的とはいえ、人材流出の危険を高めてしまうことが考えられます。
出戻り希望だからといって無条件で再雇用するのではなく、応募条件や採用選考を設けるといった、丁寧なルール設計がポイントとなります。
運用ルールの整備や制度の周知が大変
一口に「出戻り採用」といっても、その方法や運用の仕方は各社によってバラバラです。しかしある程度の規模の企業であれば、組織の均衡を保つために、再雇用のルールや、就業規則をしっかりと整える必要があります。
また、企業側がいくら「出戻り採用を積極的に行っていこう」と考えていても、社員や退職者にその情報が伝わらなければ、活用してもらえません。
ルールの整備や制度の周知には専門知識が必要だったり手間が掛かったりするので、人事担当者が忙殺されてしまうリスクもあるでしょう。
そこで、アルムナイネットワークに関連する専門サービスを活用して、プロの知見を取り入れつつ、社内の労力を抑えるのも一つの選択肢といえます。
「アルムナイ」とは「卒業生」という意味の言葉で、人材業界では、一度企業を離れた人、OB・OGなどを指します。彼らとあらかじめつながっておくことで、出戻り採用をしやすい環境が構築できると考えられています。
HR領域に強いマイナビが提供するアルムナイネットワークサービス「YELLoop(エーループ)」
出戻り希望者を再入社させるか判断する時のポイント
出戻りを希望する人から企業にアプローチがあった場合には、その人を本当に採用するべきか、しっかりと吟味するのが大切です。ここからは、出戻り希望者に対して、事前のリサーチや採用選考で行うべきことを紹介します。
前回の退職理由を確認する
前回の退職理由は、しっかりと確認する必要があります。「一身上の都合」などではなく、具体的な理由をリサーチしておきましょう。例えば、社内でトラブルを起こしてそのまま退職したなどの場合、再雇用したらまた問題を起こしてしまう可能性もあります。
面接時に本人から聞くこともできますが、せっかく自社で就業していた人なので、社内の情報を参照したり、在籍時に接点があった人にヒアリングしたりすると確実でしょう。
出戻りを希望する理由をヒアリングする
なぜまたこの会社で働きたいのかをヒアリングし、それが納得感のあるものかどうかを見極めるのも大切です。
単に「新しい会社でうまくいかないから戻りたい」などの後ろ向きな理由なら、同じことが自社でも起きる可能性があるため、避けた方がいいかもしれません。
当時、この会社を退職せざるを得なかった理由が解決したか、他の会社で働いたからこそ気が付いた自社の良さを説明できるか、などがポイントとなります。
自社では身に付けることが困難だったスキルを得たくて転職や留学を行い、習得したので戻ってきた、なども納得感があるでしょう。
また、待遇や配属部署など、復職時の条件についてはしっかりとすり合わせを行い、納得してから入社してもらうようにしましょう。
会社が必要とするスキルを持っているか
自社を離れてから、どんなに華々しい経歴をたどっていたとしても、現場が必要としているスキルを持ち合わせていなければ、採用するメリットは少ないといえます。これは、通常の中途採用と同じです。
在籍当時にそういったスキルを発揮していたか、さらに現在、別の会社での経験を経てパワーアップしているかといった点は、しっかりと確認したいところです。
会社やチームに問題なくなじめるか
出戻り社員は、通常の中途採用者以上に、配属された会社やチームになじめるかを重視したいものです。
例えば在籍当時、協調性がなく周囲を困惑させていた場合などは、既にネガティブな印象を持っている既存社員も多いため、チームワークの構築が難しくなるでしょう。
逆に在籍当時、人望が厚く、退職を惜しまれていたり、辞めた後も交流を続ける人がいたりしたなどの場合は、またすぐに活躍してもらいやすいはずです。そういったケースでは、職種にもよりますが社内人脈も生かしやすく、高いパフォーマンスを期待できるでしょう。
もちろん、過去の経験や人脈は生かしてもらいつつ、離職している間に変化のあった業務や人間関係にすぐ適応できそうか、といった観点も大切です。
優秀な出戻り社員に再入社してもらえれば即戦力として活躍してくれる
「出戻り退職者」を受け入れる時は、いくつかの気を付けるべきポイントがあります。例えば彼らを特別扱いし過ぎると、ずっと自社で頑張ってきてくれた既存社員の中に不満がたまってしまいます。
また、一度自社での就業経験があるからといって、無条件で採用してしまうと、前回の在職時と同じトラブルを起こしたり、期待するパフォーマンスを発揮してくれなかったりする可能性があります。
そのため、既存社員とのバランスを丁寧に図りながら、慎重な制度設計をする、社内外への認知を高めていくといった必要があります。
一方で、優秀な元社員に再度入社してもらえれば、即戦力として活躍してくれる可能性が高いです。本人も企業についての理解が既にあるため、なじみやすく、入社後のミスマッチが起きづらいでしょう。離職中に培ったスキルや価値観を、自社に持ち込んでくれることも期待できます。
誰をどう採用するかをきちんと見極め、良い人材を獲得していきましょう。
- 人材採用・育成 更新日:2025/07/15
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