転職エージェントとは?企業が活用するメリットや仕組みを解説
人材採用において「求める人材がなかなか見つからない」「そもそも応募が少ない」「採用してもすぐに辞めてしまう」といった課題を感じていませんか。多くの企業が直面する中途採用の悩みに対して、解決策として注目されているのが、転職エージェントの活用です。
本記事では、転職エージェントの仕組みや各採用手段との違いを紹介します。あわせて、企業にとってのメリットや、利用の流れ、選び方、活用方法を解説します。
転職エージェントとは
転職エージェントとは、企業と求職者の間に立ち、人材のマッチングを支援するサービスです。求人票の作成支援から候補者のスクリーニング、面接日程の調整まで、さまざまなサポートを行うのが大きな特徴です。
マイナビが、転職者に対して行った「転職動向調査2024年版(2023年実績)」によると、直近の転職において、転職エージェントを「情報収集で使用した」と答えた人の割合は24.7%、「転職エージェントを使って応募した」と答えた人の割合は21.4%でした。
また、同調査では、転職についての相談相手として、「家族(配偶者・子供)」がトップとなりましたが、「両親・親族」、「転職エージェント・人材紹介会社」と続きました。転職エージェントは、転職希望者にとっても頼れる存在として定着していることがうかがえます。
転職エージェントの仕組み
転職エージェントの基本的な仕組みは以下の通りです。
- 企業が転職エージェントに求人依頼を出す
- エージェントが、自社の登録者ベースや独自ルートを活用し、適切な候補者を選定する
- 書類選考や面接調整を経て、採用が決定した時点で紹介料が発生する(成果報酬型)
多くの転職エージェントでは「成果報酬型」という料金体系により、採用しなければコストが発生しないという仕組みになっています。
ハローワークや求人サイトとの違い
同じく、採用手法としてよく用いられる「求人サイト」や「ハローワーク」との違いをまとめました。
それぞれの手法にメリットとデメリットがありますが、特に「採用スピード」や「マッチング精度」を重視する場面では、転職エージェントの活用が有効といえます。
企業が転職エージェントを活用するメリット
中途採用において、売り手市場(求職者の数よりも求人数が多い状態)が続いているなか、企業間の人材獲得競争も激化しています。採用活動は年々複雑化し、求められるスピードや精度も高まっているなかで、転職エージェントの活用は以下のようなメリットをもたらします。
採用の手間やコストを削減できる
転職エージェントは、求人票の作成から候補者とのやりとり、面接日程の調整に至るまで、採用にかかる多くの実務をサポートしてくれます。これにより、人事担当者の負担を軽減することが可能です。
また、料金体系が成功報酬型であるため、採用が成立しなければ費用は発生しません。広告掲載費がかかる求人サイトなどと比較して、「成果とコストが連動している」点も予算管理しやすいポイントです。
ただし、1名あたりの採用単価は他手法より高くなる傾向があるため、大量採用よりも、ポジションごとに高い確度で採用したい場面に向いています。
関連記事:採用コストの削減方法。分析から施策までわかりやすく解説
ミスマッチを減らせる
転職エージェントを活用することで、単にスキルや経験が合致する人材を紹介してもらうだけでなく、企業のカルチャーや職場環境に合った「人柄」や「価値観」に着目した提案を受けることができます。これは、履歴書や職務経歴書だけでは見えにくい定性的な要素を、エージェントが丁寧にヒアリング・把握しているからこそ可能なマッチングといえます。
例えば、「指示待ちタイプよりも主体的に動ける人材を求めている」「チーム内の空気感に合う温和な人が理想」といった要望を共有しておくことで、より的確な人選につながります。結果として、早期離職のリスクを下げ、長く活躍できる人材と出会いやすくなります。
こうした人材の「見極め」について詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
関連記事:現場担当者が身に付けるべき面接力とは? 採用を成功に導く「見抜く」「惹き付ける」の極意
採用スピードが上がる
候補者の選定やスクリーニングをエージェント側で行ってくれるため、企業側の初期選考にかかる時間を短縮できます。さらに、面接日程の調整やフィードバックのやりとりも代行してくれるため、選考工程全体がスムーズに進行します。
特に、退職者の発生による急な欠員補充などスピード感が求められる採用シーンにおいて、転職エージェントの存在は大きな強みとなります。
ただし、専門性が高い職種や希少人材の募集では、候補者の紹介までに一定の時間を要する場合もあるため、職種ごとの見極めも重要です。
関連記事:欠員補充への対応手順|欠員対策や採用活動のポイントも紹介
転職エージェントの活用が向いているケース
転職エージェントは、特に以下のような採用ニーズに対して、高い効果を発揮します。
緊急性の高い採用
急な退職や新規プロジェクトの立ち上げなど、スピード感が求められる採用では、エージェントの活用が適しているケースが多いでしょう。
登録済みの候補者の中から、要件にマッチした人材を紹介してもらえるため、応募を待たずに、採用活動を迅速に進めることができます。
採用体制が整っていない企業
専任の人事がいない、あるいは1人体制で採用業務を兼任しているような企業では、採用活動にかけられる時間やリソースが限られがちです。こうした場合でも、転職エージェントを活用することで、求人票の作成から候補者との連絡・調整まで多くの業務をサポートしてもらうことができ、担当者の負担を大きく軽減できます。
専門スキル人材の確保が必要な職種
ITやエンジニア、医療系など、専門スキルが必要とされる職種では、通常の求人媒体ではなかなか応募が集まりにくい傾向があります。こうした分野に特化したネットワークを持つエージェントであれば、確度の高い人材と効率的にマッチングできます。
非公開で採用したい場合
新規事業の立ち上げや、組織改編に伴うポジションの募集など、社外に知られたくない採用活動にもエージェントは適しています。求人を非公開で進められるため、競合他社や社内に影響を与えることなく採用活動を進められます。
転職エージェントを利用する流れ
ここでは、企業が転職エージェントを利用するフローの一例を紹介します。
1.自社の求人ニーズを共有する
まずは、エージェントの担当者と打ち合わせを行い、採用したい人材像のスキルや経験、人物像などを詳細に伝えます。募集背景や募集部署のチーム構成、社風なども共有することで、マッチング精度の高い候補者の紹介につながります。
2.転職エージェントから候補者を紹介してもらう
ヒアリング内容をもとに、エージェントが要件にマッチした人材を選定します。書類選考用のレジュメに加えて、人物面の特徴や推薦理由が添えられることも多く、事前に候補者の人物像を把握できます。
3.書類選考・面接を実施する
通常は、企業側で書類選考を行い、通過者に対して面接を設定します。面接日程の調整や連絡などはエージェントが代行することが一般的です。
4.内定・入社フォロー
採用が決定したら、内定後の条件交渉や入社日の調整、意思確認のフォローなどもエージェントが対応します。また、内定者が抱えやすい不安へのフォローやアドバイスなど、早期離職のリスクを抑えるための取り組みも実施されます。
転職エージェントの選び方
転職エージェントは多数存在しており、それぞれ得意分野や提供サービスが異なります。転職エージェントを選ぶ際にチェックしておきたいポイントをまとめました。
転職エージェントを活用するポイント
転職エージェントをより効果的に活用するためのポイントを解説します。
求人要件を具体的に伝える
スキル・経験だけでなく、人物像や価値観の共有が重要です。社風やチームの雰囲気、求める行動特性なども伝えておくことで、ミスマッチを防げる可能性が高まります。
自社の魅力や課題も正直に共有する
入社後に感じやすいギャップを減らすには、よい面だけでなく課題や実情も共有することが大切です。誠実な情報提供はエージェント側の信頼を得やすく、よりマッチ度の高い候補者紹介につながります。
開示内容の具体例
NG表現の例 |
OK表現の例 |
フラットな職場です。 |
年次問わず意見を出し合える文化がある一方で、はじめは裁量の大きさに戸惑う社員もいます。 |
アットホームな雰囲気です。 |
部署内での社員同士の距離感が近く、飲み会も多いため、個人の時間を重視する人にはやや密に感じることがあります。 |
ワークライフバランスが確保しやすいです。 |
残業は月10〜20時間程度で、有休も取得しやすいですが、繁忙期(○月~○月)には土日対応が発生することもあります。 |
上記のように、入社後のギャップ軽減につながるリアルな情報開示をすることで、信頼構築の第一歩となります。
エージェントと関係を構築する
エージェントとの信頼関係が薄いと、意図が正しく伝わらず、連携に時間がかかる、誤解が生まれるなどの問題が起こりがちです。
最初の打ち合わせで「採用方針」や「企業の特徴」などを丁寧に共有し、継続的なコミュニケーションを心がけることが円滑な協力体制につながります。
複数エージェントを比較・併用するのも有効
各社によって得意分野や紹介可能な人材が異なるため、2~3社を併用することでカバー範囲を広げられます。例えば、幅広い業種や職種に対応している「大手・総合型」と特定の業界や職種に特化した「特化型」を組み合わせると、応募者層の幅を広げつつ専門人材も狙えます。
併用時には、各社への求人情報の提供は、内容に一貫性を持たせることが重要です。同じ候補者が複数社から紹介される重複リスクもあるため、紹介ルールや候補者管理のルールを明確にしておきましょう。
なお、エージェントを選定する際は、求める人材のスキルや経験、業界特性を明確にしたうえで、自社に適したエージェントを見極めることがポイントです。必ずしも複数利用が適しているわけではなく、自社ニーズに合う1社を選ぶことが有効な場合もあります。
タイプ |
特徴 |
向いている企業 |
大手・総合型 |
多様な業種・職種の求人情報があり、人材を見つけやすいメリットがある |
幅広い人材を検討したい、採用ターゲットが広い企業 |
特化型 |
特定業界・職種に精通し、専門人材の紹介に強みがある |
特定スキル・業界経験が必須のポジションを採用したい企業 |
転職エージェントは採用の心強いパートナー
中途採用において、限られたリソースや短期間での採用成功が求められる企業にとって、転職エージェントは非常に心強い存在です。
採用に関する業務の多くをサポートしてくれるだけでなく、マッチング精度の高い人材との出会いを実現できるのがエージェント活用の最大の魅力です。特に、求人広告ではリーチしづらい層や専門スキルを持った人材にアプローチできる点は、大きなメリットといえるでしょう。
エージェントは、企業の採用課題や背景を理解したうえで動いてくれるパートナーです。今回紹介したポイントを踏まえて、自社に合った転職エージェントを見つけてみましょう。
- 人材採用・育成 更新日:2025/06/25
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