経営と人材をつなげるビジネスメディア

MENU CLOSE
1 ty_saiyo_t01_t03_mid-career-interview-inexperienced_250613 column_saiyo c_interviewc_knowhowc_saiyougakuc_hatarakikatac_senkousyuhouc_careersaiyouauthor_organization_saponet

未経験者の中途採用面接では何を確認すべき? その難しさと見極め方

/news/news_file/file/ty_saiyo_t01_t03_mid-career-interview-inexperienced_250613 (2).webp 1

中途採用というと、以前は「経験者採用」とほぼ同義でしたが、人材の不足感が強まるにつれて「未経験者の中途採用」を行う例が増えています。しかし、未経験者の中途採用には「即戦力採用」や「新卒採用」とは異なる難しさがあり、試行錯誤している企業も少なくありません。

今回は、中途採用コンサルティングの経験が豊富なマルゴト株式会社 代表取締役の今 啓亮さんに、未経験中途採用を成功させるためのポイントをお聞きしました。


  • 今 啓亮氏_プロフィール写真
  • 今 啓亮(こん・けいすけ) さん マルゴト株式会社 代表取締役

    スタートアップ勤務の後、カンボジアでの起業などを経験し、2019年に東京でマルゴト株式会社設立。22年に東京から札幌に本社移転。自身も札幌在住。著書に『中途採用の定石』。



未経験者の中途採用が難しい理由は3つの“バラ付き”

— まず、未経験者の中途採用が難しいといわれる背景について教えてください。

今さん: はい。未経験という点では新卒採用と似ているのですが、「未経験者の中途採用」に特有の難しさがあると言われる最大の理由は、一人ひとりの「スキル」、会社の「カルチャー」との親和性、候補者が持つ待遇や働き方への「期待値」という3つの要素が、候補者ごとにまったく異なる点にあります

新卒採用の場合は基本的に全員が社会人経験ゼロですので、スキルは横並びです。また、前職の影響を受けていない分、カルチャー面でも自社の施策で浸透させやすく、待遇や働き方への期待値も採用広報を通じて調整しやすい傾向にあります。さらに入社時期も一緒なので、集団研修による一律の育成やフォローもしやすい点が特徴です。

一方、未経験者の中途採用は、候補者ごとに社会人経験の年数も前職の内容もさまざまです。スキル面では前職の経験が生かせる部分とそうでない部分があり、カルチャーの面では前職の経験がむしろ新しい環境への適応を妨げる可能性もあります。また、給与などへの期待値の面でも、前職を基準とした本人の希望と企業側の評価にギャップが生じることもあるでしょう。

つまり、候補者ごとの「個別性」が非常に高いわけです。さらに入社時期もバラバラなので、個別の育成とフォローが必須になるため、リソースもかかるのが実情です。


「職場」「業務」両面でカルチャーフィットする人材を見極める。未経験採用における採用要件の考え方

— 未経験者の中途採用を成功させるには、個別の対応が重要になるということですね。とはいえ、一定の成果を上げるための採用要件も必要ではないかと思いますが、どのように採用要件を設定すべきでしょうか?

今さん: そのとおりです。採用要件を持たず、「なんとなく」で採用しては失敗につながります。

未経験者の中途採用を行うに当たって、採用要件では特にカルチャーフィットに関する項目はしっかりと言語化しておくと良いでしょう。単に「うちの会社に合いそうな人」という曖昧なものではなく、「職場」と「業務」の両面でカルチャーに合っているかを見極めるために、要件を設定しておく意識が必要です。

関連記事:採用要件とは?項目や具体例、決め方まで徹底解説


「職場」のカルチャーフィット

— なるほど。まずは「職場」のカルチャーフィットについて教えてください。

今さん: はい。「職場のカルチャー」とは、社風やコミュニケーションスタイルを指します。

例えば、「役職や序列を重んじる階層的な職場」と、「キャリアの壁を越えて風通しの良さを大切にする職場」ではカルチャーがまったく異なるため、コミュニケーションスタイルも異なります。

自社が持つ「職場」のカルチャーを言語化し、それにフィットできる人材を採用できるよう、採用要件に求めるべき候補者の資質を盛り込みます

「業務」のカルチャーフィット

今さん:続いて、業務のカルチャーとは、業務を遂行する上で求められるスタイル・価値観のことです。例えば「単独で遂行する業務」と「チームワーク重視の業務」では、働き方や求められるものが大きく異なります。

この点についても自社が持つ「業務」のカルチャーを言語化し、それにフィットできる人材を見極めるための採用要件が必要です。特に未経験者の場合は、新しい業務が自分に合っているか、候補者自身にとっても未知数な部分があるため「業務カルチャー」の相性は面接で慎重に確認しましょう。

— 中途採用では、エージェントを活用した手法も多く取られます。未経験者の中途採用をエージェント経由で進める場合のポイントはありますか?

今さん: エージェントには、単に「未経験OK」と伝えるだけでなく、求める人物像を具体的に言語化した採用要件を示すことが重要です。

また、表面的なスキル要件だけでなく、例えば「顧客と長期的な関係を築けるコミュニケーション能力が必要」といったポータブルスキル(※)や素養、そして「チームワークを大切にする人」「自ら学ぶ意欲のある人」といった自社のカルチャーに合う人物像を明確に伝えましょう。

エージェントは候補者のパーソナリティまで見てくれるのが強みですので、具体的な情報を共有することで、よりマッチ度の高い候補者を紹介してもらえる可能性が高まります。

— 面接のポイントについても、後ほど詳しくお聞かせください。

※ポータブルスキル:職種の専門性以外に、コミュニケーション能力など、業種や職種が変わっても通用する汎用的な職務遂行上のスキルのこと。



正直な情報発信でセルフスクリーニングを促し、採用広報でミスマッチを取り除こう

— 未経験者の中途採用でミスマッチを防ぐために、採用広報ではどのような工夫が必要でしょうか?

今さん: 未経験者の中途採用において、特にカルチャーフィットは書類だけで見極めることが困難です。そこで重要になるのが、広報活動で企業側から「正直な情報発信」を行い、それを通じて、候補者自身に「セルフスクリーニング」してもらうことです。

方法としては、会社のウェブサイトや採用ピッチ資料、社員インタビュー、SNSなど、さまざまなコンテンツを通して会社のリアルな姿を多角的に、できるだけ多く発信するのが良いでしょう。良い面だけでなく、例えば「スタートアップの立ち上げフェーズで教育は制度整備中のためOJTが中心」「繁忙期は残業が増えることもある」「営業は目標数字があり、達成に向けて努力する文化」といっ弱みや大変な部分もオープンにすることが大切です。

採用広報では「弱み」を隠さないことがポイント

— 採用広報で弱みまで公開することには抵抗感のある方もいそうですね。

今さん: 採用目線から見ると、弱みを自ら公開することには抵抗があるかもしれませんが、候補者の視点から見ると、これらは必要な情報です。

街で飲食店を探しているシチュエーションで考えましょう。

例えば、店先にメニューが出ている店は選びやすいですよね。自分の好きなメニューがあるのかないのか、料金設定はどれくらいなのかが判断できます。逆に、看板に書いてあるのが店名だけで、メニューがなければそのお店に入るべきかどうか判断ができません。また、店先にあるメニューや金額と、実際に出てきたものがまったく異なっていたら、これは詐欺に近い。

同じように、企業側が弱みを含めて多くの「正しい情報」を発信・提供することで、候補者は「この会社は自分に合いそう・合わなさそう」と判断しやすくなり、結果的に入社後のミスマッチを防ぐことにつながるのです。


未経験中途採用で候補者を見極める書類選考と面接のポイント

— ここからは応募があった候補者の「見極め方」についてお聞きします。まず、書類選考で見るべきポイントを教えてください。

今さん: 冒頭で述べた「スキル・カルチャーフィット・期待値」のうち、書類選考では主にスキルを見極めていくことになります。

とはいえ、「未経験者」の中途採用ではピンポイントで適合するスキルを持っている方を採用するわけではありませんので、一般的な中途採用とは異なる視点が求められます。

未経験者の書類選考は「近い経験」を重視

— 具体的に、どのような点が異なるのでしょうか。

今さん:ポイントは職務経歴を見て、募集職種に求められるものに「近い経験」がどれだけあるかをチェックすることです。

例えば、営業職の募集でクライアントワークの経験が求められる場合、営業職は未経験でも、コールセンター業務などで顧客対応経験があれば選考対象にする、逆に前職が経理や総務などで対外的な関わりがない職種は対象外にする、といった判断の仕方です。

未経験者の面接では「スキル・カルチャー・期待値」の適合性を深掘り

— 続いて、面接ではどのようなポイントを見極めていきますか?

今さん: 面接では、「スキル・カルチャー・期待値」それぞれの適合性を総合的に見極めることができます。

まずスキルについては、「〇〇経験〇年」という表面的な経歴を聞くだけでなく、 プロセスを深掘りすることが重要です。例えば「コールセンター業務で社内表彰を受けた」という話に対しては、そのためにどう取り組んだのかを具体的に聞き、同時にその過程でどんな困難があり、どう乗り越えたかを深掘りすることで課題解決能力などのポータブルスキルをチェックできます。

また、未経験者を採用するに当たっては「自ら学ぶ姿勢」を持っているかどうか、は重要なポイントです。学習意欲を確認するために「前職で学んだ新しいこと」や、「現在、希望職種についてどんな勉強をしているか」を聞いておくと良いでしょう。

続いてカルチャーフィットについては、広報活動の考え方と同じく、 会社の「実態」を正直に伝えた上で、「あなたはどう思いますか?」と率直な感想を聞くことです。




アンチパターンの提示でセルフスクリーニングを促す

— 相手に考えてもらう時間をあえてつくることで、セルフスクリーニングしてもらうわけですね。

今さん:そうです。さらに、「過去にこういう理由で辞めた社員がいるのですが、どう考えますか?」といったアンチパターン(失敗事例)を伝えるのも効果的です。

例えば弊社では採用代行事業を進めるに当たり、従業員は採用に関する膨大な知識をインプットする必要がありますが、それに付いていけないと辞めた方がいました。面接ではそうしたエピソードも伝えた上で、「当社で働くには多くの学習が必要ですが、それでも挑戦したいですか?」と問い掛け、厳しそうな反応なら、ミスマッチの可能性が高いと判断しています。

最後に、期待値をすり合わせる上で、前職の退職理由を深掘りして聞くこともポイントです。その理由が自社で解消されるなら良い転職になりますが、自社にも同じ要因がありそうならミスマッチです。早期離職を防ぐために、必ずここは押さえておきましょう。

また、会社として「将来どうなってほしいのか」を伝え、そのキャリアプランに興味はあるか、本人の意向を確認します。ここで期待値がマッチしていれば、未経験であっても入社後の成長と活躍が期待できるでしょう。

決め手に欠けたらワークサンプルテストも有効

— 書類選考や面接を行った結果、決め手に欠ける場合はどう判断すべきでしょうか。

今さん: スキル面で決め手に欠ける場合は、実際の業務に近い課題に取り組んでもらう「ワークサンプルテスト」で適性を見ることができます。カルチャー面では、配属予定の現場メンバーとカジュアルな場で話してもらい、双方の相性を確認すると良いでしょう。

期待値や意欲の面では、基本は「良い人を採用する」とシンプルに考えるべきです。言い方を変えると、「“悪くはないけれど決め手に欠ける人”は採用しない」という判断が、育成コストの削減を考えると無難ということです。

しかし、「本人の強いやる気」に賭けるのも一つの考え方です。その場合は育成コストを無駄にしないよう、育成と並行して研修資料や動画などの教育コンテンツを必ず作成・蓄積し、再利用可能にしておくことが大切です。そうすることで、その後の未経験者の中途採用にも生かすことができます。

アンラーニングの促進と期待値調整でオンボーディングをスムーズに

— 最後に、スキルの高い中途採用者が、入社後に会社のルールやプロセスに反発するケースもあると思います。これは「大人のオンボーディング」の難しさだと思いますが、どう対応すべきでしょうか?

今さん: まず、スキルについては「アンラーニング」を前提に考えることが大切です。アンラーニングとは、前職で学んだ仕事の進め方や考え方を、一度意図的に忘れてもらい、ゼロベースに戻すことを指します。

社会人経験が長い方ほど前職までの経験から「型」を持っています。それが新しい会社のやり方に合わない場合、そのまま持ち込んでも成果につながらず、時には周囲にも悪影響をもたらすなど、トラブルの原因になりかねません。

ベテランほど「自分はこのやり方でやってきた」というプライドもあるかもしれませんが、いったん、新入社員のつもりで、素直に新しいことを吸収してもらう姿勢が不可欠です。もちろん、コミュニケーション能力など、過去の経験で養ってきたポータブルスキルはどんどん生かしてほしいのですが、基本は真っさらな気持ちで学ぶ意識をもってもらうことが重要になります。

— アンラーニングですか。意図的に忘れてもらうこと、という意味は理解できますが、それ自体がトラブルの原因になることもありそうです。

今さん:そうですね。伝え方を間違えると本人のキャリアを否定することになってしまうので、確かに注意が必要です。チーム全体でサポートするポジティブな雰囲気を意識し、分からないことを質問しやすい環境や、失敗を許容する文化ができていると、未経験者でも自分の力を発揮しやすいでしょう。

また、面接段階から始まっている「期待値のすり合わせ」を継続・具体化していくことも重要です。入社時に「〇カ月後にはこのレベルに」「〇年後にはこの役割を」といった具体的な目標と期間を設定し、そのための育成プランを共有した上で、定期的な面談で進捗を確認し、期待値を調整していきましょう。

未経験中途採用の成功の鍵は「正直さ」と「丁寧さ」

未経験者の中途採用は、画一的な対応が難しく、候補者一人ひとりと向き合う誠実さが求められます。

スキル・カルチャー・期待値という3つの軸で候補者と真摯に向き合い、正直な情報開示と丁寧な対話を重ねることが採用活動成功の鍵となるはずです。

採用要件の定義から広報、選考、そしてオンボーディングまで、正直さと丁寧さを大切に一貫した視点で設計することが、企業と候補者双方にとって最良の出会いにつながるでしょう。

  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

    新卒・中途採用ご担当者さま、経営者さま、さらには面接や育成に関わるすべてのビジネスパーソンに向けた、採用・育成・組織戦略のヒントが満載の情報メディアです。HR領域に強いマイナビだからこそお伝えできるお役立ち情報を発信しています。

  • 人材採用・育成 更新日:2025/06/13
  • いま注目のテーマ

  • ログイン

    ログインすると、採用に便利な資料をご覧いただけます。

    ログイン
  • 新規会員登録

    会員登録がまだの方はこちら。

    新規会員登録

関連記事