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採用における売り手市場とは?企業に与える影響、採用のポイントを解説

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昨今の採用市場は「売り手市場」といわれており、企業間での人材獲得競争はますます激化しています。こうした状況で、企業はどのような採用活動に取り組めばよいのでしょうか。

今回は、採用における「売り手市場」とはなにか、いつから続くもので主な理由はなにか、売り手市場が企業の採用活動に与える影響、採用活動のポイントについて解説します。

採用における売り手市場とは

採用における「売り手市場」とは、企業の求人数に対して、求職者が少ない状況を指します。売り手市場では、求職者は複数の求人から自分の希望に合ったものを選びやすくなるという特徴があります。

一方、企業側にとっては人材確保が難しくなり、企業間の競争が激しくなります。そのため、競合他社との差別化を図ること、魅力的な求人を打ち出して応募を集めること、そして自社の求める人物像に合致する人材をいかに見極めて採用するかが、売り手市場の採用活動における重要なポイントとなります。

買い手市場との違い

「買い手市場」とは、企業の求人数に対して求職者が多い状況であり、売り手市場とは反対の状況を指します。この場合、企業は売り手市場のときよりも採用基準を厳しく設定し、多数の応募者のなかから自社にマッチする人材を選考しやすくなる傾向があります。

一方で求職者にとっては、限られた求人のなかから希望に合った企業を見つけるのが難しくなり、応募後の選考通過のハードルも上がります。そのため、応募には念入りな準備はもちろん、これまでの経歴やスキルのアピールがより重要になります。

売り手市場・買い手市場を見極める指標

採用市場が、「売り手市場」か「買い手市場」かを判断する指標の一つとして、有効求人倍率があげられます。有効求人倍率とは、「求職者一人あたりに何件の求人があるか」を示した数字のことで、「求人数 ÷ 求職者数」の計算式で求めることができます。

有効求人倍率が倍率1.0を超えると求人数が多いと判断でき、売り手市場の傾向を示していることがわかります。一方で、倍率が1.0未満の場合は、求職者の数が求人よりも多いため、買い手市場の傾向を示していることがわかります。

売り手市場はいつから?

売り手市場はいつから続いているものなのか、また現在も売り手市場であるかどうか、データから見ていきましょう。

マイナビキャリアリサーチLab.の市場データ「求人倍率」から、過去の有効求人倍率の推移を紹介します。

有効求人倍率の推移

転職市場の有効求人倍率は、2014年に1.09倍で売り手市場に転じて、以後、2018年まで右肩上がりで上昇傾向にあり、1.61倍にも上ります。翌年の2019年は僅かに減少して1.60倍となり、2020年、2021年は新型コロナウイルス流行によって大きく減少しています。しかし、それでも2021年は1.13倍となり、有効求人倍率は1.0倍以上を維持し続けています。2022年、2023年は新型コロナウイルス禍の雇用環境が回復に向かいつつあり、右肩上がりとなっています。

そのため、現在の売り手市場は2014年から続いているということがわかります。

出典:マイナビキャリアリサーチLab.|市場データ|求人倍率(年間推移)

採用市場の最新動向

厚生労働省が令和7年3月4日に発表した「一般職業紹介状況(令和7年1月分)」によると、令和7年1月の有効求人倍率(季節調整値)は1.26倍でした。倍率は1.0倍を超えており、転職市場全体としては、現在も売り手市場であることが示されています。この数値は、求職者が企業の求人に対して選択肢が多く、企業が人材を確保するのが難しい状況を反映しています。

業界ごとの求人倍率の分析

ただし、有効求人倍率の内訳を読み解くと、業界ごとの偏りが大きいこともわかります。サービス職業従事者は3.02倍、建設従事者は4.65倍、土木作業従事者は6.48倍と、高水準の倍率を記録しており、サービス業や建設業では売り手市場が顕著であることがわかります。

一方で、事務従事者は0.48倍と、事務系職種はむしろ「買い手市場」の傾向が見られます。このように、市場全体としては売り手市場ですが、特定の業界に関しては買い手市場のケースもあるため、自社業界の最新の動向は常に確認しておくといいでしょう。

さらに詳しい企業の動向を知りたい方は企業の調査「中途採用状況」2024版(東京エリア)」をご活用ください。

採用の売り手市場が続く主な理由

採用において売り手市場が続く主な理由を解説します。

少子高齢化の進行

日本では年々出生数が減少しており、それに伴い少子高齢化が着実に進むとされています。これにより、働き手となる現役世代の人口もさらに減少していくでしょう。

その結果、企業は人材の確保がさらに難しくなり、とくに、若手〜中堅層を中心とした人材の獲得競争の激しさを増しているのが現状です。

働き方の多様化

人々の働き方にも大きな変化が現れています。リモートワーク、フレックスタイム制度、副業や兼業の解禁など、働き方の選択肢は広がっています。また、フリーランス・業務委託などの雇用形態も普及しつつあり、個々のライフスタイルに合った働き方を望む人も増えています。

こうした背景から、求める人材の確保には、企業も柔軟な働き方を提供する必要があり、多くの求人を出す傾向にあります。実際に、有効求人倍率を見ても、求職者数の減少に対して求人数は増加しており、売り手市場の状況を反映しているといえるでしょう。

売り手市場が企業の採用活動に与える影響

今後も売り手市場が続くことで、企業の採用活動に与える影響を解説します。

母集団形成の難化

売り手市場では、求職者が数多くの求人情報のなかから、自分の希望により近い企業を選ぶことができます。そのため、自社の求人内容や採用条件が他社と比べて見劣りすると、応募が集まりにくくなることが考えられます。

また、求人数に対して求職者数が少ないため、求人情報そのものが埋もれてしまうリスクもあります。とくに中小企業は、大手企業と比べて知名度が低く、求職者の目に留まりにくい状況も生まれやすいでしょう。

さらに、スキルや経験などに一定の条件を求める場合、他社との競合も激しくなるため、希望する人材の確保が難航する可能性もあります。

選考中の辞退率が高まる

売り手市場の状況では、求職者が同時に複数の企業の選考を受けていることも珍しくありません。そのため、他社から先に内定を受けたり、より条件の良い企業が見つかった場合には、自社の選考を辞退したりするケースが増える可能性があります。

近年では、他社との差別化を図るために、給与や福利厚生などの条件を強化する企業も見られます。

地域格差が拡大する

首都圏への人口集中が続くなかで、地方や郊外に拠点を置く企業は、都市部との人材確保の格差がより顕著になる恐れがあります。少子高齢化の影響で、地方では働き手となる若年層の人口が減少しており、売り手市場のなかで地域間の採用競争に差が生まれています。

また、業種や職種によってはリモートワークの導入が難しい場合もあり、そのような企業では勤務地の制約がネックとなって、採用がさらに難しくなる可能性もあります。

業界ごとの格差が生まれる

売り手市場とはいえ、業界ごとに採用の難易度には差があります。例えば、建設や医療、飲食などは労働環境の厳しさや給与水準の低さが理由で敬遠されやすいといった、人材確保における課題を抱えやすい傾向にあります。売り手市場化は、業界ごとの格差を加速させる一因となります。

売り手市場における採用活動のポイント

売り手市場のなかで、採用活動を成功させるためのポイントを解説します。

採用条件の見直し

まずは、採用条件の見直しです。必須スキルと歓迎スキルを整理し、未経験者や異業種からの転職希望者も対象に含めることで、より多くの求職者にアプローチできます。

たとえば、「実務経験は本当に3年以上必要なのか?」「自社が求める経験・スキルの具体的な水準は?」など、条件を一つひとつ見直していきましょう。また、少子高齢化の影響で若年層の労働力が減少している今、年齢条件の緩和も重要です。ミドル層・シニア層の活用を視野に入れることで、採用の可能性が広がります。

そのうえで、「絶対に必要な条件(MUST)」と「満たしていればなお良い条件(WANT)」を明確にすることが、採用の間口を広げることにつながります。

さらに、正社員採用にこだわらず、フリーランスや業務委託で契約といった選択肢も視野に入れることで、柔軟な採用が可能になります。

採用チャネルの多様化

採用活動と一言にいってもさまざまな手法があります。従来の求人媒体に加えて、以下のような新たな採用チャネルを検討してみるのも一つのポイントです。

  • リファラル採用:社員が自社で働く人材として知人、友人などを推薦する仕組み
  • アルムナイ採用:介護や育児、引越しなどで退職した社員の再雇用
  • SNS採用:FacebookやInstagramなどのSNSを通じた企業情報の発信・応募促進活動

これらに加えて、企業が主体的に求職者へアプローチをする「ダイレクトリクルーティング」も有効な手法のひとつです。企業が気になる求職者へ直接アプローチすることで、「良い条件があれば転職したい」と考える転職潜在層とのコンタクトも可能になります。

また、転職市場で積極的な転職活動をしていないミドル・ハイクラス人材の採用にも効果が期待できます。詳しくは、ミドル・ハイクラス向け転職サービス マイナビスカウティングの資料もあわせてご覧ください。

条件・待遇の最適化

昨今では、求職者の働き方の希望も多様化しており、給与や福利厚生に加えて、働く時間や場所の柔軟性も企業選びの判断材料となっています。

たとえば、リモートワークやフレックスタイム制度など、ライフスタイルに応じた働き方が選べる環境を整えることで、より多くの求職者の関心を引くことにつながるでしょう。

採用ブランディングを強化する

採用ブランディングとは、求職者に自社の魅力を伝えるための取り組みです。企業の公式サイトやSNSで自社の仕事やオフィスの様子について紹介したり、社員インタビューを発信したりすることで、求職者が入社後のイメージをつかみやすくなります。

こうした情報発信は、入社後のミスマッチ防止や、より自社への理解度の高い求職者の応募につながるでしょう。


採用CX(候補者体験)の向上

採用CXとは、選考プロセスにて求職者の体験価値を高める取り組みを指します。選考の合否に関わらず、「この企業の選考を受けてよかった」と思ってもらえるような対応を心がけることが、企業全体の良い印象につながり、自社のブランディングにもつながります。

採用CXの取り組み例としては以下が挙げられます。

  • 応募後の連絡や選考結果の通知を迅速に行う
  • 選考に関するフィードバックを丁寧に伝える
  • カジュアル面談を実施する
  • 内定後のフォローを行う

売り手市場においては、採用活動の効率化が求められています。具体的な手法や成功事例については「圧倒的な工数削減をしながら成果を出す10のポイント」もご覧ください。

採用市場の動きに注目して、最適な採用手法を取り入れよう

少子高齢化や働き方の多様化などによって、売り手市場が続く昨今では、企業の人材獲得はますます難化するといえるでしょう。売り手市場でも求める人物を獲得するには、これまでとは異なる採用手法の導入や、採用条件の見直しなどが必要になります。加えて、採用活動を通して自社の採用ブランディングや採用CXに取り組み、求職者との良好な関係を築けることが、人材獲得にもつながるといえるでしょう。

  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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  • 人材採用・育成 更新日:2025/05/29
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