【後編】面接力向上のポイントと注意点とは?|人財を入社につなげる魅力づけの方法
中小企業の採用担当者にとって、面接における見極めと魅力づけは、採用活動のなかでも特に難易度が高い課題なのではないでしょうか。そのほかに、「面接の設定方法がわからない」「社内の協力を得られない」という悩みもよく聞かれます。
本シリーズでは、そんな中小企業の採用課題を解決する「面接力向上のポイントや注意点」を、生和コーポレーションの横川翔様が解説。
人材の見極め方を中心にお伝えした前編に続き、後編では、魅力づけのポイントをはじめ、面接後の求職者フォローのポイントや面接のブラッシュアップ方法、社内の協力を得るコツを解説します。
魅力づけのポイント
面接で採用すべき求職者を見極めたら、その求職者を入社につなげるために、自社を魅力づけていく必要があります。ここからは、そのポイントを見ていきましょう。
まずは性格判断で価値観の把握を
採用担当者なら誰もが、せっかく自社に合う求職者が応募してきたのに興味を持ってもらえなかった、内定を出したのに辞退されてしまったという経験があるのではないでしょうか。
そうした課題を解決するには、まず求職者がどんな価値観の持ち主で、何を求めているのかを把握する必要があります。そこで面接では、性格判断から入ることをおすすめします。
実際にはもっと細かいですが、ここでは、上の図のように求職者の性格を「勝負好き」「社交家」「専門家」「平和主義」の4つに分類して考えてみましょう。
なお、上の図には横軸、縦軸の2つの軸があり、横軸は「感情が顔に出るか・出ないか」で分類しています。一方の縦軸は「競争や追求が好きか・協調や社交が好きか」で分けています。
面接では、まず求職者を褒めてみると、その求職者の性格が4分類のうちどれなのかを見抜きやすいと感じています。例えば勝負好きタイプは、履歴書の内容から「こんな経験をされていて、すごいですね」といった声かけをした場合、元気に反応する傾向があります。
社交家タイプも非常にわかりやすいです。喜んでくれたうえに「どうしてそう思ってくださったんですか?」といった答えが返ってきて、会話が広がっていく傾向があります。一方、平和主義タイプの場合、褒めると「いやいや、全然そんなことないです」と謙遜する人が多いです。専門家タイプにはマニアックな人が多いので、「それはこういう経緯からこのようになったんです」と詳しく説明し始める傾向があります。
性格ごとに面接官がとるべきアクションも異なります。勝負好きタイプには「さすが!」と褒め、社交家タイプには共感を示し、専門型タイプには説明に対して質問を投げかけ、平和主義タイプには感謝を伝えるとよいでしょう。
このように、性格によって求職者の価値観は異なるため、それに合わせたコミュニケーションを意識すると、より会話が盛り上がって関係性を築きやすくなり、相手が求めている情報を伝えやすくなります。また、その後の会社や労働環境に関する魅力づけも、スムーズに行えるでしょう。
ただし、面接では、会社の魅力を伝える前に、求職者に「この人(面接官)と仲よくなりたい」と思ってもらえるような関係作りをしていかなければなりません。そのためには、求職者の話を聴きながらしっかり相槌を打つ、笑顔を向けるといった心がけも大切です。
魅力づけをしても手応えがない場合の対処法
しかし、面接において、面接官が自社を魅力づけるために会社や労働環境についてアピールするなかで、うまく伝わっていない、手応えがないと感じる場面もあるのではないでしょうか。
そんなときに思い出してほしいのが、入社を決める3要素です。
入社を決める3要素
- 会社
- 仕事
- 人
求職者が入社を検討する際には、これらが一定基準以上であるかどうかが決め手になります。面接でいろいろな話をした後に、まずは「実際に話を聞いてみていかがでしたか?」とオープンクエスチョンで問いかけてみましょう。
その答えを聞いても、まだ求職者の気持ちがわからない場合には、「入社の決め手として、会社、仕事、人の3つが大事だと言われていますが、〇〇さんは弊社のどの要素に最も興味を持っていますか?」と聞きます。
さらに、「もし弊社への入社を判断するうえで悩むポイントがあるとしたら、どの要素になると思いますか?」と聞くこともできます。このようにして、求職者が自社のどのポイントを見ているかを明らかにすると、より魅力づけがしやすくなっていきます。
面接後の求職者フォローのポイント
面接で見極めた求職者を入社につなげるためには、面接後もこまめに連絡をして求職者をフォローし、入社意欲を高めていく必要があります。面接中に下記の3点を確認しておくと、求職者に連絡をする際のコミュニケーションが円滑になっていきます。
面接で確認しておくこと
- 強み
- 転職動機
- 選考企業・選考状況
多くの採用担当者は、求職者の適性の判断や自社に関する情報を伝えることに精いっぱいになって、他社の選考状況や今後のスケジュールがどうなっているのかを聞き忘れがちです。今後の求職者フォローには必須の情報なので、付箋に書いておく、事前のヒアリングシートの項目に追加するなどして、忘れないように気をつけましょう。
さらに、特に、中途採用の面接では、家族の意向などで志望動機を固められるケースがあるので、本人以外の要素についても確認しておきましょう。具体的には、「ご家族や仲の良い方の事情によって転職を決める方もいらっしゃいますので、その方の判断材料となる情報があればお伝えしたいのですが、どなたにご相談される可能性がありますか?」「その方は、どんなポイントを気にされていますか?」と質問して、必要な情報を伝えていきます。
面接以降の求職者とのコミュニケーションの過程でも、そのポイントをしっかりと解消できているのかを確認しましょう。
面接をブラッシュアップしていく方法
ここからは、面接前の準備方法をはじめ、さらに成果を上げるために実践したい取り組みを紹介します。すでに面接をしっかりと実施しているものの、さらにブラッシュアップしていきたいと考えている採用担当者は、準備段階から面接が始まっていると考えて、PDCAサイクルを回すことを意識しましょう。
面接には、上の図のように、面接前の準備(Plan:計画)、本番の面接(Do:実行)、面接後(Check:評価)、次回(Action:改善)の4段階があるといえます。
まず面接前には、求職者をイメージして、面接トレーニングをします。履歴書などの書類を読み込んで、どんな質問をすべきか考え、求職者の性格や強みを予想した上で、希望のポジション・待遇を確認し、当日の面接の流れを想定していきます。
このように、準備段階で求職者の性格を予想したうえで、面接中に前出の方法で性格判断を行って、予想と違った部分を修正しながらコミュニケーションをとると、関係を築きやすくなります。
そして、求職者が希望するポジションや待遇がはっきりしている場合には、用意しているポジションや待遇を面接の中で伝えましょう。そうすることで、「しっかりと求職者を見てくれる会社」という印象を与えることができます。
面接後には、すぐに答え合わせをすることをおすすめします。求職者の性格をしっかりと見抜くことができたのか、聞くべきことを聞けたのかなど、今後の面接で努力するポイントを考えましょう。
加えて、今後の面接で努力するポイントや、面接を実施した求職者に対する次回のアクションも考えておくとよいでしょう。面接の振り返りは「2日後か3日後に考えたらいいかな」と先送りしがちですが、やはり面接直後に考えるのが理想です。情報が新鮮なうちに次回のアクションを決めることで、今後の面接におけるアクションにさらに磨きをかけて改善していくことができます。
全社で採用にあたる重要性
売り手市場が続く採用市況を考えると、今後の採用活動で求職者に選ばれるためには、人事部の社員だけではなく、全社員で採用にあたることが重要になってくるでしょう。
求職者は来社した際に、人事以外の社員の様子も見ています。もしそのときに自分が描いていたイメージと社員の印象が違ったら、一気に入社意欲が下がってしまうかもしれません。したがって、面接に関わらない社員にも、面接についての情報提供をする、採用に協力してもらうといった働きかけが重要になってきます。
社内の協力を得るコツ
全社採用に向けたアクションを事前・面接・事後のフレームに分けてお伝えすると、まず実践しやすいのは、社内向けの面接の手引きの作成や、人事以外の社員に面接の同席をしてもらうことです。さらに事後対応として、選考状況を共有しましょう。
もし時間に余裕があれば、人事以外の社員に、面接用の説明会やトレーニングを受けてもらう、人事が面接に同席したうえで面接官へのフィードバックを行うのも効果的です。さらに面接後には、求職者に面接での印象を電話で即確認してみましょう。求職者は想像以上に緊張をしています。「伝えきれなかった事や聞ききれなかった不安の解消のため、電話しました」とお伝え頂ければ、受験者と面接をしてくれた社員の双方への課題を確認することが出来ます。電話で得た求職者からの反応を面接官に伝えてもらうと、よりよいでしょう。
というのも、求職者の言葉を第三者から間接的に伝えることで、よりストレートに面接官に響く場合があるからです。
まとめ
本シリーズでは、人財の見極め方や入社につなげる魅力づけの方法を中心に、前編と後編に分けて「面接力向上のポイントと注意点」をお伝えしてきました。ポイントを押さえて実践を重ねることで、面接力は着実に高まっていくはずです。
前編でお伝えした内容の繰り返しになりますが、人事のミッションは、社員が楽しく活躍することです。自社の選考を受けてくれた求職者が「きっとこの会社なら自分は成長できる」「この職場で活躍してみたい」とワクワクするような面接の実施を目指しましょう。
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生和コーポレーション株式会社
人事部係長
横川 翔様大学卒業後に豆腐屋を開業。並行してMBAを修める。卒業後デロイト トーマツ グループにて主に人事領域のコンサルティングに従事。現在は生和コーポレーションにて経営企画室兼人事部係長としてマーケティングや戦略的な組織開発を担っている。
- 人材採用・育成 更新日:2024/06/13
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