採用ターゲットとは?ペルソナとの違い・設定方法・ポイントを解説
厚生労働省が公表している「一般職業紹介状況(令和7年4月分)」では、有効求人倍率が1.26倍となり、依然として、求職者よりも求人数の多い売り手市場が続いています。中途採用市場の競争も年々激しくなっている中で、自社の求める人材を獲得するためには、採用ターゲットを明確にすることが重要です。
本記事では、採用ターゲットとはなにか、採用ターゲットとペルソナの違い、採用ターゲットの設定方法、設定するメリット、ポイントについてそれぞれ解説します。
採用ターゲットとは
採用ターゲットとは、自社の採用活動における人材要件を指します。求職者のスキル・経験・年齢・人柄・資質などを基に、自社が求める理想の人材像を明確にします。これにより、採用活動の効率化やミスマッチの防止につながります。また、明確な採用ターゲットがあることで、最適な採用手法やチャネルを選定しやすくなり、より効果的なアプローチが可能になります。
マイナビキャリアリサーチLabの「中途採用状況調査2025年版(2024年実績)」によると、企業の約4割が「やっぱり離職(離職リスクが高い懸念がありつつ採用したが、やはり離職となった)」を経験しています。こうしたリスクを回避するためにも、採用ターゲットの設定は欠かせない取り組みといえるでしょう。
関連記事:人材要件とは?作り方や具体例、活用のポイントについて解説
採用ターゲットとペルソナの違い
採用ターゲットと似た概念に「ペルソナ」があります。どちらも採用活動に欠かせない重要な考え方ですが、それぞれの役割や目的には明確な違いがあります。以下で詳しく解説します。
採用ターゲットとは
採用ターゲットは、自社が採用したい人材の大まかな条件や属性を示すものです。
年齢、性別、スキル、経験、性格・人柄など、複数の条件をもとに「どのような人を求めているか」を広い範囲で定義します。例えば、「30代のITエンジニア」「営業経験のある20~40代」などが該当します。
このターゲット設定は、求人媒体の選定や募集方法、求人原稿の内容など、採用活動全体の方向性を決める際の基礎となります。
ペルソナとは
ペルソナは、採用ターゲットで示した条件をさらに掘り下げ、理想とする人物像を具体的に描いたものです。
例えば、「30歳・男性・IT系法人営業経験7年・年収550万円・地方在住・趣味はランニング・リーダー経験あり」といった形で、架空の人物像として詳細に設計します。
このペルソナを設定することで、求人原稿の表現や採用メッセージ、面接で確認すべきポイントなどが具体的になり、応募者の質やマッチ度の向上につながります。
採用ターゲットは「どんな層の人を採用したいか」という全体像・方向性を示すものであり、ペルソナはそのターゲット層の中から「具体的な人物像」を描いたものです。
そのため、両者は、どちらか一方だけを設定すればよいものではありません。ターゲットを定めたうえでペルソナを設計することで、採用活動の精度の向上につながります。
採用ターゲットの設定方法
採用ターゲットの設定方法について解説します。
採用の目的とゴールを明確にする
まずは、自社が採用活動を行う目的と、そのゴールを明確にしましょう。たとえば、以下のようなケースでは、採用の目的やゴールが異なります。
- 新規事業の立ち上げに伴う採用:事業をリードできる経験者の確保が必要
- 既存ポジションにおける欠員補充:業務の継続性を重視し、即戦力や定着を重視する
このように明確にすることで、最適な採用ターゲットを選定しやすくなります。また、将来的な事業計画や戦略を見据えて設定することで、求める人材の獲得や人材定着にもつながります。
採用の目安をデータから導くには、人事データ分析が有効です。特に「将来人員構成シミュレーション」は、採用ターゲットを検討するうえで欠かせない指標のひとつとして挙げられます。詳しくは、下記の資料をご覧ください。
人材要件の基本項目を洗い出す
採用ターゲットを明確にするために、まずは以下の項目を参考にしながら、人材要件を洗い出していきましょう。
- 属性:年齢、性別、住まい など
- 能力:学力、コミュニケーション能力、論理的思考力、語学力 など
- スキル:プログラミングなどの専門的な技術、保有資格・免許 など
- 経験:学歴、職歴、留学歴、営業経験、マネジメント経験 など
- 人柄:協調性、柔軟性、誠実性 など
これらは多くの企業で人材要件として用いられている基本的な項目といえるでしょう。さらに詳しい内容は、下記の記事も参考にしてみてください。
関連記事:人材要件とは?作り方や具体例、活用のポイントについて解説
人材要件の優先順位をつける
洗い出した人材要件をもとに、自社のニーズに合わせて優先順位をつけましょう。MUST・WANT・NEGATIVEの3つに整理することで、客観的な視点から優先度を可視化しやすくなります。
- MUST:絶対に必要な要件
- WANT:必須ではないが、あれば望ましい要件
- NEGATIVE:必要のない要件
最初にMUSTとNEGATIVEの2つに大きく分けて、次にMUSTとWANTの2つに順位付けをしていくとスムーズです。ただし、MUSTの要件を増やしてしまうと、採用ハードルが高くなりすぎる恐れがあるため注意しましょう。
また、要件の整理に関しては、採用予定の部署や部門の責任者や、経営層などにもヒアリングをすると、より精度の高い要件設定につながります。
ターゲットの具体化
採用ターゲットをより具体化していきます。以下の例を参考に情報を整理するとよいでしょう。
- 年齢層:20代後半から30歳前半
- 職種:エンジニア、営業職
- 業界経験:IT業界、製造業
- スキルセット:特定のプログラミング言語や資格
このように、ターゲットを具体的に設定することで、採用活動の方向性がより明確になります。
現場と共有してブラッシュアップする
設計した採用ターゲットは、実際の配属先となる現場責任者と共有し、ニーズに合っているかを確認することが重要です。現場の意見を取り入れ、採用活動の精度を高めることが、採用活動の成功にもつながります。
特にこのプロセスは、現場の忙しさやニーズの不一致、コミュニケーション不足、抵抗感などが影響し、難航しがちです。しかし、以下の取り組みを通じて現場を効果的に巻き込むことが可能です。
- 選考プロセスに参加してもらう
一次・二次面接などに現場担当者が参加することで、現場で必要とされるスキルや適性を的確に見極めることができます。
- 採用計画を一緒に作り上げる
トップダウンで決まった採用方針に現場の意見を反映させることで、人事と現場双方のニーズを踏まえた計画立案が可能になります。これにより、採用方針と現場の実情にギャップを最小限に抑えられるでしょう。
- 採用イベントに参加してもらう
会社説明会や合同企業説明会などの採用イベントに現場社員を参加してもらうのも方法のひとつです。求職者と直接コミュニケーションを取ることで業務内容や職場環境、現場の雰囲気、仕事の魅力を具体的に伝えることができ、求職者の理解を深め、応募意欲を高める結果につながります。
関連記事:採用のミスマッチを防ぐ。人事と現場のギャップを生まないための4つの対策
採用ターゲットを設定するメリット
採用ターゲットを設定するメリットを解説します。
自社の求める人材を獲得しやすくなる
ターゲットの属性に応じた求人媒体や広告の選定がしやすくなり、求める層へのアプローチが可能になります。ターゲットに合わせた手法を取ることで、採用活動の効率も向上します。
採用母集団の形成ができる
自社に関心を持つ求職者の集団は「採用母集団」と呼ばれます。質の高い母集団が形成されれば、多くの候補者のなかから自社に合った人材を選びやすくなります。ただし、やみくもに人を集めただけでは、母集団の質は上がりません。
採用ターゲットを設定すれば、自社への関心があり、なおかつ採用要件に合致した人材を狙って集めることができます。結果として、質の高い母集団が形成され、求める人材の採用につながりやすくなります。
選考基準のばらつきを軽減できる
採用ターゲットが不明確だと、採用担当者や面接官の間で評価基準に差が出やすくなります。採用ターゲットを明確にしておくことで採用に関わるメンバー間で共通認識を持つことができ、評価のばらつきを抑えられます。
こうした認識の共有は、書類選考や面接など各フローでの評価の質を担保することにもつながります。また、ターゲットが明確であれば、選考における意思決定もスムーズに進めやすくなります。
ミスマッチの防止につながる
せっかく新たな人材を採用しても、入社後に十分な成果を発揮できなかったり、社内文化に合わなかったりすると、早期離職につながる可能性があります。これは企業にとって、採用コストの損失です。
採用ターゲットを設定しておけば、求人票や選考を通じて明確な人物像を訴求できます。その結果、応募してくる人材も自社への理解が深く、志望度の高い人が集まりやすくなります。これにより、採用後のミスマッチを防ぐ効果が期待できます。
最適な採用ターゲットを設定するポイント
最適な採用ターゲットを設定するポイントを解説します。
模範となる社員を参考にする
自社で活躍している社員というのは、言い換えれば「自社の求める人物像」です。そうした社員が持つスキルや能力、価値観、人柄などを分析することで、採用ターゲットの具体化に役立てることができます。技術面だけでなく、パーソナリティ面にも注目しましょう。
企業理念・ミッションを反映させる
ミスマッチを防ぐためには、企業理念やミッションに共感できるかどうかを採用ターゲットの項目に含めることが重要です。理念やミッションへの共感が薄いと、モチベーションやエンゲージメントの低下につながり、最悪の場合には早期退職に至る恐れも考えられます。
長期的な定着や活躍を期待するなら、企業の価値観や目的に深く共感しているかを、採用時の重要な判断に含めることが望ましいでしょう。
最新の採用市場の動向をチェックする
採用ターゲットは一度決めたら終わりではなく、市場の変化に応じて柔軟に見直すことが求められます。そのためには、自社の業界における最新の採用動向を継続的にチェックしておく必要があります。
たとえば以下のような情報は、ターゲット設定の見直しに役立ちます。
- 採用競合他社の採用活動や条件:他社との差別化ポイントを検討できる
- 最新の働き方のニーズ(リモートワーク・副業可など):自社が対応できているか、アピールできているかを見直せる
中途採用を実施した企業のリアルなデータは、サポネットの「企業の調査「中途採用状況」2024版(東京エリア)」からもご覧いただけます。
採用ターゲットを明確に定めて、効率的な採用を
採用ターゲットを明確にすることで、自社の採用活動を効率よく進められるほか、求める人材を獲得しやすくなり、採用後のミスマッチ防止にも効果が期待できます。採用ターゲットを設定する際には、人材要件項目の洗い出しと、ペルソナの設計に取り組むところからスタートするといいでしょう。
また、最新の採用市場の動向や、自社の業界の状況、競合他社の求人などからも情報を得ることで、より精度の高い採用ターゲットの設定につながるでしょう。
本記事を参考に、採用ターゲットの明確にし、効率的な採用を目指してみてください。
- 人材採用・育成 更新日:2025/06/26
-
いま注目のテーマ
-
-
タグ
-